バーゼルⅢの実施及びG-SIFIに関する新たな枠組みについて 平成24年2月23日(木) 於:財務省財務総合政策研究所「国際的な資金フローに関する研究会」第8回会合 金融庁国際室参事官 氷見野 良三 (意見にわたる部分は個人的な見解です) 1 国際的な金融規制改革 リーマンショック(2008年9月) 危機の経験 を踏まえ ― 金融市場の混乱が世界的な 経済危機に発展 金融危機を防止するための国際的な金融 規制改革の議論(G20首脳会合 等) ○ 金融規制の枠組みの整備 → 金融システムの安定の確保 → 持続的な経済成長の礎 - 金融規制と監督の適切なバランス - 金融規制改革においては、①金融システムの強化を図る一方で、実体経済への影響についても十分 に配慮し、両者の間の適切なバランスをとること、②資本規制の強化のみに偏ることなく、適正な検 査・監督の実施や破綻処理制度の整備などの多様な施策を包括的に実施していくことが重要 国際的な金融規制改革の主な課題 (1)国際的に活動する銀行の自己資本・流動性規制(バーゼルⅢ) (2)システム上重要な金融機関 (3)シャドーバンキング(銀行システム以外で行う信用仲介) (4)店頭デリバティブ市場改革 (5)保険監督者国際機構(IAIS)における議論 2 金融危機を受けた新たな国際交渉の枠組み~FSB G20首脳会合 • アジア金融危機を受けて設立された旧 金融安定化フォーラム(FSF)を、全ての G20諸国をメンバーに加えるとともに、よ り強固な組織基盤と拡大した能力を持つ 組織として再構成。 •事務局はスイス・バーゼル。 FSB (金融安定理事会) BCBS IOSCO IAIS (バーゼル銀行監督委) (証券監督者国際機構) (保険監督者国際機構) • 各国・地域の銀行監督当局や 中央銀行等から構成されている 国際機関。 • いわゆるバーゼルⅢなど、銀 行に関する原則・指針等の国際 的なルールを策定。 • 事務局はスイス・バーゼル。 • 各国・地域の証券監督当局や証券取 引所等から構成されている国際機関。 • 各国・地域の保険監督当局等から構成され ている国際機関。 • 証券監督に関する原則・指針等の国 際的なルールを策定。 • 国際的な保険監督に関するルールを策定、 保険監督者の協調を促進 。 • 最高意思決定機関は専門委員会(議 長:日本・金融庁)。 • 主要な意思決定を行うのは執行委員会( 副議長:日本・金融庁)。 • 事務局はスペイン・マドリッド。 • 事務局はスイス・バーゼル(事務局長は日 本の河合美宏氏)。 3 IOSCO 平成 24 年2月現在 代表委員会 (President Committee) BCBS アジア・太平洋地域委員会 事務局 米州地域委員会 ヨーロッパ地域委員会 自主規制機関諮問委員会 アフリカ・中東地域委員会 理事会 アセスメント委員会 (Executive Committee) 戦略的方向性作業部会 原則実施作業部会 専門委員会(年 3 回) (Technical Committee) リスク・リサーチ常設委員会 (システミック・リスク) IAIS 新興市場委員会 (Emerging Markets Committee) 商品先物市場作業部会 コーポレート・ガバナンス作業部会 非規制金融市場・商品作業部会 ソブリン・ウェルス・ファンド作業部会 店頭デリバティブ規制作業部会 空売り作業部会 非規制金融事業体作業部会 CPSS-IOSCO 基準見直し運営グループ 監督協力作業部会 BCBS/IOSCO/CPSS/CGFS 非清算集中 店頭デリバティブのマージン規制に関す る WG ※ CPSS (BIS 支払・決済システム委員会)と IOSCO は、決済シス テムの頑健性向上の観点から、既存の国際基準の包括的見 直しを進めている。 第1 第2 第3 第4 第5 第6 常設委員会 常設委員会 常設委員会 常設委員会 常設委員会 常設委員会 会計・監査・開示 流通市場規制 市場仲介者 法務執行・情報交換 投資管理 格付会社 バーゼルⅢ - 国際的に活動する銀行の自己資本・流動性規制 – 資本の質の向上 ①普通株等Tier1に調整項目を 適用 ②Tier1、Tier2適格要件の厳格 化 資本水準の引き上げ 普通株等Tier1比率、Tier1比 率の最低水準を引き上げ 自己資本 自己資本比率 = ―――――― リスク・アセット リスク捕捉の強化 カウンターパーティー・リスクの 資本賦課計測方法の見 直し 補 完 エクスポージャー積み上がりの抑制 自己資本 レバレッジ比率 = ――――――――― ノン・リスクベースのエクスポージャー 定量的な流動性規制(最低基準)を導入 ①流動性カバレッジ比率(ストレス時の預金 流出等への対応力を強化) ②安定調達比率(長期の運用資産に対 応する長期・安定的な調達手段を確 保) プロシクリカリティの緩和 資本流出抑制策(資本バッファー<最低 比率を上回る部分>の目標水準に達す るまで配当・自社株買い・役員報酬等を 抑制)など 2013年から2019年まで段階的に実施 5 「グローバルにシステム上重要な銀行に対する評価手法と追加的な損失吸収力の要件」 (1)G-SIFIsの判定手法と数 全世界73行のサンプル中から、 「グローバルな活動」 、「規模」、「相互連関 性」、「代替可能性/金融インフラ」、及び「複雑性」の5つのリスク要因に対応した 指標で判定し、G-SIFIsを選定し公表(2011年11月公表の2009年末のデータを 適用したリストでは、当初29行、日本からは3メガバンクがG-SIFIsに選定。今後、 毎年11月にリストを更新)。 (2)自己資本の上乗せ規制 (イ) 上乗せ幅 G-SIFIsを重要度に応じ以下の4グループに区分。こ の区分に従い、バーゼルⅢの規制水準に自己資本を 上乗せ。 第5バケット(空) (普通株資本3.5%) 第4バケット 普通株資本2.5% 第3バケット 普通株資本2.0% 第2バケット 普通株資本1.5% 第1バケット 普通株資本1.0% (ロ) 実施時期 2016年1月1日から段階的に実施し、2019年1月1日 より完全実施。 ※ この実施時期は、バーゼルⅢの資本保全バッ ファーの段階的導入スケジュールと整合的。 G-SIFIsに特定された金融機関 Bank of America Bank of China Bank of New York Mellon Banque Populaire CdE Barclays BNP Paribas Citigroup Commerzbank Credit Suisse Deutsche Bank Dexia Goldman Sachs Group Crédit Agricole HSBC ING Bank JP Morgan Chase Lloyds Banking Group Mitsubishi UFJ FG Mizuho FG Morgan Stanley Nordea Royal Bank of Scotland Santander Société Générale State Street Sumitomo Mitsui FG UBS Unicredit Group Wells Fargo 6 自己資本規制の経過措置 (%) 10 「グローバルな」システム上重要な銀行について、 2.5%~1%の範囲で上乗せ規制を段階的に導入 第1グループ 9.5% 9 8 7 6 第4グループ 8% バーゼルⅢ 7% 資本保全バッファー 5 4 普通株等Tier1 4.5% 3 最低基準 2 1 0 2013年 14 15 16 17 18 19 7 システム上重要な金融機関に対する資本規制以外の対応 「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」 ○金融機関の破綻処理に関し、納税者に損失を負わせることなく、システミックな損害 を防ぐ枠組みとして以下を提示。 ① 破綻処理制度の改善(当局が有すべき破綻処理の権限を国際基準として整理) ② 破綻処理コストの負担方式(破綻時に債権者に負担を負わせる方式(ベイル・イ ン)を選択肢の一つとして提唱) ③ 当局間の協力取極め(G-SIFI毎に締結。取極めの内容を整理) ※ 2011年11月時点のG-SIFIsについて2012年末までに締結 ④ 再建・破綻処理計画(G-SIFIs毎に危機対応計画の策定を義務付け) ※ 2011年11月時点のG-SIFIsについて2012年末までに計画策定 ⑤ 破綻処理のしやすさの評価(一定の基準に基づきSIFI毎に評価) ※ 2011年11月時点のG-SIFIsについて2012年10月までに評価を実施 「システム上重要な金融機関(SIFIs)への監督の密度と実効性」 ○ システム上重要な金融機関に対するより密度が高く実効的な監督へ向け以下を提示。 ・ 監督当局の責務、資源及び権限の強化 ・ リスクマネジメント機能、データ集積能力、リスクガバナンス及び内部統制についての監 督上のより高い期待 等 8 金融規制改革:ロスカボス・サミットに向けての主要課題 • システム上重要な金融機関(SIFI) – 国内金融システム上重要な銀行(D‐SIB) – グローバルな金融システム上重要な保険会社(G‐SII) – システム上重要な市場インフラ – システム上重要なノンバンク • 店頭デリバティブ市場改革 • シャドーバンク – 銀行の関与 – MMF – MMF以外のシャドーバンク – 証券化 – 貸株・レポ取引 • 合意された改革の実施状況のモニタリング – バーゼルⅢ 9 Phase 2 3 Ph a se 1 Ph a Underlying graph taken from Tang and Upper, “Debt reduction after crises” (2010) se 4 Phase 5 10 Tang and Upper (2010) 11 BIS Annual Report, 2011 12
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