砂質土供試体の一軸圧縮試験における AE 計測

砂質土供試体の一軸圧縮試験における AE 計測
AE measurement of soil sample with single-axial compression test
○田中
信爾*,
小林
TANAKA Shinji,
晃*
KOBAYASHI Akira
1.はじめに
土に関する AE による非破壊検査の研究は,金属やコンクリートのそれに比べると,土中の波の
減衰が非常に大きいことや発生する波の周波数が低いことなどの理由で、あまり行われていない。
しかし土構造物に対する AE での非破壊検査が可能となれば、その維持管理に対し大いに貢献でき
ると考えられる。今回,砂質土供試体の一軸圧縮試験における AE 計測の手法を考案したので、そ
の結果とともに、ここに報告する。
2.試験法
直径 15cm,高さ 30cm の砂質土供試体を作
水比を 2.3%,6.7%,10.2%の3段階変化させ
た.図 1 の実線の細粒分の多い試料を M,破
線粗粒分の多い試料を N とし,それぞれ含水
比の低いものから順に 1、2、3・・と番号を
付けた。
一軸圧縮はε=0.1%/min の速度で載苛した。
通 過 質 量 百 分 率 ( %)
成し,2種類の粒度の試料に対しそれぞれ含
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.01
試料 M
試料 N
0.1
囲が狭いので,6つの AE センサ(Physical
1
10
粒径 (mm)
また,砂質土においてはセンサの計測可能範
図 1.供試体の粒径加積曲線
Acoustics 社製 R6、R6I)を供試
体円柱の中間高さの円周上に等
間隔で配置し,全てのセンサで
計測したカウントの合計値を記
録した。ここで,AE センサを取
り付ける際にピンが付属したソ
ケット状の器具を作製し,それ
を直接供試体に突き刺すことに
図 2 AE センサとソケットと試験の概観
より供試体に固定した。また,AE センサは 60dB のプリアンプに通し,しきい値を周囲のノイズ
などを考慮して約 0.02mV (26dBae) に設定した。
なお,圧縮の際,供試体がむき出しのままだと土の表面が剥がれ落ちる音をひろってしまうため,
ゴムスリーブを装着させて実験を行った。
3.実験結果
データを分析する際,AE 係数に着目した.ここで,AE 係数とは 1 分間に生じた AE のカウン
ト数のことである。以下,実験結果を示す。図 3-1∼3-6 において,棒グラフは AE 係数(AE count
*京都大学農学研究科
Department of Agriculture, Kyoto University
非破壊検査
AE
砂質土
40
ε(%)
図 3-4 N-1(γd =16.8kN/㎥)
3.9
3.6
3
3.3
2.7
2.4
2.1
1.8
100
80
1500
60
1000
40
500
20
3.9
3.6
3.3
3
2.7
2.4
2.1
1.5
1.2
0.9
0
0
0
3.9
3.6
3.3
3
2.7
2.4
2.1
120
σd (kPa)
AE count rate (/min)
σd (kPa)
10
0
0
1.8
3.9
3.6
3.3
3
2.7
2.4
2.1
1.8
1.5
0
1.2
0
1.5
10
100
2000
30
20
500
1.2
20
200
1000
0.9
30
300
2500
80
70
60
50
40
1500
0.6
40
400
2000
0
500
σd (kPa)
50
0.3
600
100
90
0.6
2500
図 3-3 M-3(γd =22.1N/㎥)
0.3
3000
60
0.9
1.5
0
3.9
3.6
3
3.3
2.7
2.4
2.1
1.8
1.5
1.2
0.9
0
70
700
AE count rate (/min)
800
0.6
0
ε(%)
図 3-2 M-2(γd =20.2kN/㎥)
0
50
0
ε(%)
図 3.1 M-1(γd =18.1kN/㎥)
0.3
100
2000
0
ε(%)
AE count rate (/min)
150
3000
1000
20
0
200
4000
σd(kPa)
60
500
3.9
3.6
3
3.3
2.7
2.4
2.1
1.8
1.5
1.2
0.9
0.6
0
0.3
0
1000
0.6
20
0
80
250
5000
1.8
10
100
1500
300
6000
1.2
20
120
0.3
60
40
2000
7000
0.9
30
140
0.6
40
100
80
160
AE count rate (/min)
50
140
120
180
2500
0.3
3000
σd (kPa)
60
AE count rate (/min)
70
180
160
σd (kPa)
AE count rate (/min)
200
ε(%)
ε(%)
図 3-5 N-2(γd =17.5kN/㎥)
図 3-6 N-3(γd =19.0kN/㎥)
rate)を,プロットされた点は軸力(σd )をそれぞれ示
している。図 3-1∼図 3-6 から,AE 発生数のひずみ
18000
増加にともなう増減は軸力のそれとおおよそ似た遷
16000
14000
ピークと AE 発生のピークがずれる傾向にある。強
度の高い試料では硬化域での AE 発生が多く、軟化
域で急激に減少する傾向にある。
また,図 4 は試料 M,N の一軸圧縮強度(σf )と AE
カウントとを示したものである。ここでの AE カウ
ントとは,軸力が最大となったときの時間幅の AE
AE count
移をすることが分かる。詳細に見ると、強度の低い
試料では軟化域での AE 発生が多く見られ、強度の
試料M
試料N
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
0
100
200
σf (kPa)
300
図 4 試料 M、N の AE カウントとσf の関係
係数と,その前後 1 分間 (ひずみ変化では±1%)の計
3 分間の AE 係数を足し合わせたものである.同図より、同じ粒度の土では強度と AE カウントの
関係が一次関数的であることがわかる。また、同じ強度では、粒径が大きい粒子を多く含む試料の
ほうが AE の発生回数は多くなるようである。
4.まとめ
今回の実験から,比較的強い強度を有する砂質土の供試体において,AE 係数の推移から軸力の
変化が予想できることがわかった。また,同じ粒度では強度が強くなるにつれて AE 発生回数は増
加し(図 3-7 ,3-8 での定義による AE カウントでは強度に関し線形的に増加),AE 係数と軸圧力の
遷移のし方はより似通ったものになることがわかった。さらに同じ強度の場合、粒径の粗い粒子の
割合が大きい試料のほうが AE の発生回数は多くなるようである。
以上より、AE による土構造物のモニタリングでは、強度の高いものほど状態を推定することが
可能であるといえる。また、強度が低く細粒分の多い土では強度の増大が見込めないため、計測が
困難となる傾向が見受けられる。