数値流体力学的手法に よ る船の推進性能に関する研究 - 横浜国立大学

戯費/鑑
数値流体力学的手法による船の推進性能に関する研究
(課題番号07455395)
平成7年度∼平成9年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成果報告書
平成10年3月
横浜国立大学附属図書館
lllllllll柵1朋1
!05!8941
研究代表者 池畑光尚
(横浜国立大学工学部教授)
は し が き
最近の数値流体力学の発達はめざましく、幅広い分野で適用されて多くの成果をあげて
いる。その手法には、解を求める場を、流場全域にとる有限要素法(FEM)、有限差分法
(FDM)、有限体積法(FVM)と、境界上にとる境界要素法、サーフェイス・パネル法、ラ
ンキン・ソース法がある。前者は粘性流体のナビエ・ストークス方程式又はその時間平均
をとったレイノルズ方程式の解法に、後者は自由表面流や翼・プロペラ周りのポテンシャ
ル流を解くのによく用いられる。本研究では、主として、後者のサーフェイスパネル法と
ランキン・ソース法の応用により、舶用プロペラの性能解析や三胴船まわりの自由表面流
の解について興味深い結果を得ることが出来たので、ここに成果として報告する。
研究組織
研究代表者
池畑光尚 (横浜国立大学工学部教授)
研究分担者
鈴木和夫 (横浜国立大学工学部助教授)
研究分担者
甲斐寿(横浜国立大学工学部助手)
(旧姓山崎)
研究経費
平成7年度
平成8年度
平成9年度
計
2,800
2,300
1,500
6,600
千円
千円
千円
千円
一1一
研究発表
(1)学会誌等
1)Dian J. Georgicv, Mitsuhisa Ikchata and Hisashi Kai
”Application of DirichletもPrinciple in A New Panel Method for Surface and Tip Flows
of Lifting Bodios”,
Joumal of the Society of Naval Architects of Japan, Vol.182, December 1997.
2)Yumin Su Mitsuhisa Ikehata and Hisashi Kai
,
”ANumerical Meth・曲r Dcsigning hec・Dimensi・nal Wing Based・n Su㎡ac弓Panrl
Method”,
Joumal of the Society of Naval Architects of Japan, Vol.182, December 1997. 1
3)Kazuo Suzuki, Yuji Nakata, Mitsuhisa Ikehata and Hisashi Kai
”Numerical Prediction on Wave Making Resistance of High Speed Trimaran”,
Proceedings of Thc 4th Intemational Confercnce on Fast Sea Transportation, Sydney
Australia,1997(FAST’97)
(2)口頭発表
1)池畑光尚
「サーフェイス・パネル法とその応用」
特別講演、川崎重工業(株)神戸工場1号館
平成9年9月25日.
一2一
研究成果
1.
池畑光尚
”サーフェイス・パネル法とその応用”
し
2.
Dian Georgicv, Mitsuhisa Ikehata and Hisashi Kai
”Application of DirichletもPrinciple in A New Pancl Method for Surfacc and Tip Flows
of Lifting Bodies”
3.
Yumin Su, Mitsuhisa Ikehata and Hisashi Kai
”ANumerical Method fbr Desig血g Three−Dimensional Wing Based on Surface Panel
Method”
4.
Kazuo Suzuki, Yuji Nakata, Mitsuhisa Ikehata and Hisashi Kai
”Numerical Prediction on Wave Making Resistance of High Speed Trimaran,曾
一3一
演題: サーフェイス・パネル法とその応用
月日: 平成9年9月25日(木)
場所: 川崎重工業(株)神戸工場1号館
講演者: 横浜国立大学工学部 池畑光尚
内容:
1.パネル法の基礎
2.直接法(Morino法一狭義のパネル法)
3.Hess・Smith法
4.Rankine Source法
5.表面渦格子法
6.無揚力体と揚力体
7.船体への応用
8.3次元翼への応用
9.舶用プロペラへの応用
一4一
1.パネル法の基礎
粘性、圧縮性の影響を無視すると、流れはポテンシャル流として取り扱える。
(a)流速成分:
げ一(姻一聯(糖窪)
(1)
但し 幹=速度ポテンシャル
(b)連続の方程式:
液体では密度は一定、故ρ=c・η8オα撹
連続の方程磯+鋤窪一醐一・又1まq
(2)
(3)
但し、qは吹出(吸込)がある場合
速度ポテンシャルに書き換えると
亜+亜+亜一△曽一丁一。又は9
(4)
∂∬2 ∂シ2 ∂22
(ラプラスの方程式又はポアソンの方程式)
(c)グリーンの定理及グリーンの公式
グリーンの定理の元式を次式とする。
撒傷+鍔+窪)dy一蕉伽+糾醐5
(5)
但し、(λ,μ,のは、表面8上の外向法線の方向余弦とする。
書き換えると、
左辺一〃々酬y一〃ん△¢V
(6)
右辺一/ゐ(淵8−/加3−/艦d5
(7)
〃ん△曜一/艦d8
(8)
をGreenの定理といい,発散総量=境界からの流出量という関係を表している。
(Gaussの発散定理とも呼ぶ)
今(u,”,ω)=ヴ9mdρ又はψgrαdψ*とおいて代入すると、つぎの2式を
得る。
//ん(ヴムψ+9脚・g卿)dV−/ゐ斎8
一5一
(9)
//ノニ(望)△(ρ*十9γ・α(1(ρ・9γ・α(∫(ρ*)dy−/ゐ・ρ筈一(∫5
(10)
両辺の差をとると
1/ん(ヴム仰△の4y−/ゐ磯一喋)43
(11)
これをGreen公式という。
ρもヴもともに、領域V中で△ψ=0,ムヴ=0を満たすポテンシャル流の解で
あるとき、左辺=ゼロとなるから、
/ゐ(昏倒筈)d8一・
(12)
である。
領域V中に2点君Qをとり、その2点間の距離をγとすると、
1
一厨 (13)
は、P点(又はQ点)に点吹出しが存在するときの速度ポテンシャルである。こ
れをヴに入れて、その点吹出しを中心に無限ノト半径εの球だけ領域Vをくり抜
いた領域を考えると(12)式が適用できる。そのときこの微小球面を3’とすれ
ば、(12)式は次のようになる。
川蕩一ψ器)} 罵{}霧一暢e)}
1 1
__ (」8=一 (z8
4π
4π
篇[FLε2面イ[Lε2伽
一藷4π1 歪 一三(14)
トう 実は点吹出しが、境界3上にあると、くり抜く微小球は半球になるので、立体
角(ω)の積分上限が2πとなって結局器ψ=麺となる。点吹出しが境界より外
側にあれば、領域内いたる所で△(1/T)=0であるから、初めから(12)式が成
り立つ。
結局次式を得る。
Eψ一凱侵(綜(1)}d8 (・5)
但し、E=1(領域内の点),巷(境界上の点),0(外の点)
この式は、境界上に幹のモーメント密度の二重吹出しと一霧の流量密度の吹出
しとが分布するとき、領域内における速度ポテンシャル甲は(15)式の境界上の
積分で与えられることを示している。従って、境界上における法線速度と速度
ポテンシャルの値さえ知れば問題は解けるという事になる。(15)式は境界上の
速度ポテンシャル望を求めるための積分方程式にもなっている。この積分を実行
一6一
するとき境界と微ノト平面要素に分割して離散化する事から、境界要素法(BEM)
とか、サーフェイス・パネル法(パネル法)と呼ばれているのである。
物体まわりの流れのように無限遠まで領域が広がっているとき、境界として物
体表面をとる以外に無限遠方の無限大半径の球面を考える必要があるが、この
無限遠方では速度ポテンシャル曽=0となる解を考える事にすれば、無限遠方
球面上の積分は消滅してしまうので考慮しなくてもよいことになる。自由表面
がある場合は、自由表面(F)も一つの境界であるから、自由表面(F)上での積
分が新たに加わることになる。
即ち、
Eψ一
E川下(1)一霧(})}d5+/み侵G)一瓢)}d8
(16)
物体が揚力体の場合、速度ポテンシャルの不連続面(後続自由渦面に相当する)
が存在する。上面のポテンシャルをψ+、下面での値をザとすると、この不連
続面(D)に沿っての(12)式の積分は、法線方向が上面と下面で逆向きになる事
を考慮すると、
霧+霧一黒帯一・(速度の属性) (・7)
幹+
f(1)+ザ器(1)一ψ+蒜(1)一ブ蒜(1)一(ψ+一の券(1)
一△礁(1) (18)
ここで、ザーザ=△曽 (速度ポテンシャルのジャンプ量)
(17),(18)を考慮すると、結局揚力体としての物体まわりの流れのポテンシャ
ルは、
転/艦(1)一斑O}d5+岩/ん△翻d3(19)
となる。自由表面があれば、
Eψ一
M1ゐ鵬(})一霧(1)}d5+姦/ル緩(})一霧(})}d3
+岩/ん△噺)d5 (2・)
である。
2.直接法
自由表面のない場合に広く用いられている。物体が一様流ベクトルδ中に静止して
いるとき、物体表面上の境界条件は、
霧一一〇・充 (21)
一7一
で与えられるので、境界上の吹出し分布の密度は(21)で既知となる。(19)式に代入
すると、
4πE曽一川翻+σ・π王}d8+1ん△暢Od3(22)
これを境界上の幹に関する積分方程式の形にすると
2πψ一/緩Od8−1ん△暢(})d3−1ゐδ・蜘8(23)
(23)式を解くために、積分を離散化して、{臓}を未知数とする連立一次方程式にす
る。手順は次のとうりである。
(a)まず、物体表面(5)と後流県社(D)を四辺形又は三角形要素Σ鳶,Σ髭,に分割
する。
(b)各要素上の変数ψ,△ρ,ηは要素の中心における値の差で代表させ、要素内は
一定とする。
(c)△ψの値はtrailing edgeに接する要素の上下面のρの値の差で近似する。(Kut七a
の条件を陽に課さないが、近似的に満足している。)
(23)式は次のような連立一次方程式になる。
{δんん一〇ん発}禰一下{卿}一國{σ・充髭} (24)
δんんはクロネッカーのデルタ、0娩,W読,.Bんんは次式で定義される影響係数である。
娠一
Bんゐ一
賑一
m㌫/謡伽]既(刷,・(岡
m㌫/伸31p一五(刷,・圓
(25)
m碁/謡(1)dθ]既
(25)式で定義された影響係数を四辺形要素について解析的に計算する式をMorinoは
与えた・このようにグリーンの公式から導いた(15)式を用いて、直接、ポテンシャ
ル曽を解く方法を直接法と呼び、Morino法はその代表である。通常パネル法という
と、このMorinoの方法のことである。
自由表面がある場合は、今少し面倒な事になる。というのは、(20)式から出発する
から、積分方程式に自由表面(F)に関する積分項が入ってくる。この積分は、境界
条件の(21)中の法線充の方向が、自由表面の形が分かっていないので未知であり、且
つ、圧カー定という動力学的条件も加わるので、厳密に扱うのは容易でない。通常、
一8一
自由表面を静水面で近似し、∂/∂η=∂/∂ZQ(鉛直上向微係数)の近似を用いれば、物
体表面上における積分方程式は次式になる。
2πρ一
P緩G)d8−/紬G)d3+/居d8−/ん△暢(1)d5
一/ゐδ・峠d8 (26)
ここで、σは自由表面における∂卿∂ηの事で、自由表面上の吹出分布密度を表し、新
しい未知数である。一方線形化した自由表面条件式は、
券+禮一・(2一叫但し輪一9/σ2 (27>
である。ここで静水面に劣〃平面をとり、の軸は、一様流の方向、〃軸は左舷方向ミ2
軸は鉛直上向きにとることにする。(27)式に(20)式を代入して、前述と同様の近似
を行うと、自由表面上における積分方程式は次のようになる。
最/ゐ侵晶(1)+・・暢O}d3
謡/ゐσ鋤d8+最1ん△嶋・晶Od8
+嚇川ψ器e)+δ・π£(})}d5+岩1緩・島(⇒d8
−1σ(P)+岩1ん△嚇(1)d8]一・瞬一・)(28)
(26)式と(28)式を連立させて・幹とσについて解くことになる。(28)式の積牙外側の
∂/∂姻こは、上流差分を用いて離散化すれば、造波は物体の後方にしか伝播しないと
いうradiati・n c・nditi・nを満足させることができる。離散化は、物体表面(5)静水
面(F)、不連続面(D)を、四辺形又は三角形要素に分割して行うことは前と変わら
ないが、連立方程式は、次のように複雑になる。
{δんん一〇励}{幹鳶}一臨伽}一{Eん‘}{ψ信}+鰯{σ琶}一[B九ゐ】{0・臨}(29)
{σん綱+{賄}伽}+{瓦掴一天{δん琶}{σ¢}一[臨み]{δ・喝(3・)
{悔}は物体表面上のポテンシャル、{ψ¢}は自由表面上のポテンシャル、{σ¢}は自由
表面上の吹出密度の離散値を表し、{.E厨,{1㌦¢},{Gん尋,{呪た,},{」㌦},{1臨}は
新しい影響係数で、(25)式のように簡単には書けない。このように自由表面がある
と格段に複雑化し、解法にもいろいろ工夫が必要である。
一9一
3.Hess・Smith法
(15)式で示したように、物体まわりのポテンシャル流の解は、物体表面上に分布し
た二重吹出し分布と吹出し(吸込み)分布の組合せで与えられることが分かった。今
少し考察すると、二重吹出し分布だけ、又は、吹出し(吸込み)分布だけでも表すこ
とが出来ることが分かっている。ただし、その際、モーメント密度、および吹出し
(吸込み)密度がそれぞれ未知の関数となり、問題は、境界条件からこの未知の分布
密度関数を決めることに帰着する。
Hess・Smith法は、後者の吹出し(吸込み)分布で速度ポテンシャルを与える方法を
採っている。即ち、吹出し(吸込み)分布密度をσとし、面素をd5、物体表面を5と
すると、速度ポテンシャルは、次式で与えられる。
ψ(P)一一凱γ綿)d5(Q) (3・)
物体表面上の境界条件は(21)式で与えられるので、(31)式を法線方向に微分して(21)
式に代入して積分方程式の形に書くと
%σ(P)=/ゐσ(Q)∂毒){姦Q)}d5(Q)一碑)(32)
このように∂ψ/∂ηの速度場について方程式を立てて、速度ポテンシャルでなく、間
接的に速度ポテンシャルを与える吹出し(吸込み)分布密度に関する方程式を解くの
で、このような方法を間接法と呼ぶ。
直接法の時と同じ様な手順で離散化する事が出来て、次のようなσに関する連立一
次方程式となる。
{δ九ゐ一婦{σゐ}一一{δ・充ん}
(33)
ただし、影響係数{、4尉は次式で定義される。
晦一髪/ム誌{ 1r(・RQ)}雌(Q)(醐,
0(た=ん)
(34)
Hess・Smithは、自由表面のある場合、これを固体壁と見倣して、正鏡像近似即ち、
二重模型まわりの流れを求めた。正鏡像近似というのは、(31)式の代わりに、
ψ(P)一一凱σ(Q){試Q)+訪)}d8(Q)(35)
を用いる。Q*点は、 Q点のz=0(静水面)に関する鏡像点を表す。この場合、連立
方程式は(33)と同形で与えられ、影響係数、4肋が(34)の代わりに、次式になるだけ
である。
一10一
Hess・Smithは、この影響係数ム舳の四辺形パネルの場合の解析的な計算式を与え、
更に、γ(君Q)が大きい場合の近似公式も与えて計算の便を図った。
4.Rankine Source法
Hess・Smith法では、自由表面を固体壁と見倣して二重模型流れを解く方法を示し
た。これを自由表面に波のでる形に拡張したのがRankine Source法と言える。従っ
てRankine Source法も間接法の一種である。基本式は、物体表面(3)と自由表面(F)
の両者の上に、吹出し分布を置き、その分布密度関数σを解く方法である。即ち、
ψ(P)一一右/綴紹)d8(Q・)一右/儲篶1)d8(・)(37)
とおいて、物体表面上の境界条件(21)式と自由表面条件式(一様流で線形化した場
合が(27)式)に代入する事が考えられる。
現在最も広く用いられている方法は、Dawsonの方法である。この方法はまず、 Hess・
Smith法で二重模型流れのσoを決め、次いでその二重模型流を基礎流として線形化
した自由表面条件を用いて残りの部分を決めるという方法である。(37)式から二重
模型流れのポテンシャルを抜き出して一様流を加えると、
σ脚(P)一σ一壷施(動){試動)+試Qδ)}d3(Q)
一姦/ん畿})d5(Q・)+姦/ん絵㍗1)d8(Q・) (38)
のような形になる。一様流も含めた二重模型流れの部分をφo、それ以外をφ1(波動ポ
テンシャルと呼ぼう)とおき、それぞれに対する境界条件を次のように設定する。
物体表面上で、
讐一・,讐一・ 』、 (39)
自由表面上(之=0)で、
φ言護φ1配十2φozφoπφ1謬十gφ1z=一φ言εφo〃 (40)
ここに、添字Zは流線に沿っての微係数を表す。二重模型流れはHess・Smi七h法で
容易に解ける。このφoの解は(39)式の第一条件を満足している。しかし、このφoの
解σoを(38)式の最後の項に入れたのでは未知数がσ1しかないので、二つの境界条件
((39)の第二条件と(40)式)を満たすことは出来ない。そこで、φ1のσoの項を書き換
えて、物体表面上に未知の付加吹出し△σoを分布させたもので置換すると、
ト凱r融)d3(Q1)一病/ゐ軍職5(Q・)(41)
のようになる。こうしてやれば、(39)式の第二条件と(40)式の両方を満たすように
σ1と△σoを決める連立方程式が立てられる。離散化のやり方は前述と全く同様であ
一11一
るが、自由表面条件の(40)式が複雑なので、行列方程式とその行列要素の影響係数
を書き並べることは容易ではない。実際にコード化するとき、間違いなく書き下さ
なければならないのは、直接法で(29)式と(30)式の連立方程式を解く場合と同様で
ある。
次に揚力体の場合を考えてみよう。間接法では、未知関数を特異点の分布密度関数
にとり、速度ポテンシャルをその積分の形で与え、法線速度で与えられた境界条件
に、速度の形にして代入する。揚力体の場合、後流渦の誘導速度がビオ・サバール
の法則で与えられるので、間接法の境界条件が速度で与えられていることはお眺え
である。そこで、表面パネルの一つ一つに馬蹄渦を配置すると、表面渦格子が形成
される事になる。しかし、各パネル上のコントロールポイントにおける法線速度の
境界条件と後縁におけるKuttaの条件だけでは、渦格子全部の循環強さを決める事
は出来ない。そこで揚力を与える渦格子の分布を揚力体のキャンパー面に採り、各
格子の中心点で法線速度がないという条件を付加し、後縁:において上下面の圧力が
一致するというKuttaの条件と組み合わせると、後続自由渦まで含めて、全渦格子
の循環強さが決定できる。
キャンパー一面のコントロールポイントにおける法線ベクトルを暖とおくと、キャン
パー面における付加条件は、波動ポテンシャルを無視すれば、
(▽φo十す)・γΣと=0 (42)
但し、引ま、渦格子を構成する渦糸の全誘導速度である。ビオ・サバールの法則に
より、
す一Σ几ム望 (43)
¢
で与えられる。瓦は盛番目の馬蹄渦の全経路であり、r¢はこの馬蹄渦の循環強さで
、ある。礎は馬蹄早上の線素ベクトル、Rはこの線素から任意の点Pへ向かう距離ベ
クトルであり、×の演算はベクトルの外積を意味する。
5.表面渦格子法
自由表面のない揚力体のポテンシャルは(19)式で与えられる。物体表面上の境界条
件(21)式に入れるため、(19)式の法線微分をとり、P点を物体表面上のコントロー
ルポイントとし、Q点を積分要素とすると、
鳴一一/畿害)轟{ 1r(・RQ)}d%+1ゐ曽(Q)煮Q{讃Q)}賜
+/ん△曽(Q)轟Q{賦Q)}d殉 (44)
境界条件式(21)を代入すると、
一轟一
ハ(σ・喝)誌{讃Q)}蜘/を(Q)煮Q{履Q)}働
一12一
+/ん△ρ(Q)∂η二等Q)}晦 (45)
となる。この式は、ポテンシャルρに関する積分方程式であるが、第一種積分方程
式のため解きづらい。第2項、第3項はいずれも物体表面上と後流渦面に分布する
二重吹出し(軸は法線方向)のP点における法線方向の誘導速度である。二重吹出し
の誘導速度は、その軸と直角な渦糸(馬蹄渦)の誘導速度と等価であるから、踏越の
分布で物体表面を覆うことにより、表面渦分布誘導速度に置換できる。Q点を中心
点とするサーフェイスパネル上の馬蹄渦の循環密度を物とし・その渦ベクトルを萄
とすると、(45)式は次のように書き換えられる。
一2πび痂一一1ゐ(σ・喝)誌{賦Q)}幽+/耐晒{論)}]莇
/ん痂・[喝×w{ 一17(・P;Q)}]
十 (」5b (46)
渦の面分布のま∼では計算できないので、例によってサーフェイスパネル臨,Σ鳶,に
要素分割すれば、右辺第一項の吹出分布の積分は(34)式の、4ん鳶により容易に求まる
ので、後は第2項と第3項の渦分布をパネル上の1/4弦長点においた馬蹄渦で離散
化し、コントロールポイントを3/4弦長点にとって、spanwise vortexの循環物につ
いて連立一次方程式を解けばよい。(46)を離散式に書き換えると次のようになる。
一驚一
所A)婦垢・¥がムd肇(揃(・EQP,Q))
+垢・写かムd∼歪(祠(・RQ君Q))、 (47)
ここに疏はパネルΣ鳶とΣゐ+1の1/4弦長線を接いだ四辺形の周を表し、凌はその周
上を時計回りに周回する線素ベクトルである。玩’は後流渦をスパン方向に離散化
した無限後方まで尾を引いた馬蹄渦の線上を表し、凌はその周上を時計回りに周わ
る信託ベクトルである。この表面渦格子法では、Kuttaの条件を陽に課す必要がな
いのが便利である。しかし、(47)式を解いて{7倉を求めるにはその係数の計算に膨
大な時間を要するのが欠点である。この表面面格子法は原理的にポテンシャル流れ
を仮定していないので、粘性流中あるいは回転流図に揚力体が存在する場合でも何
ら支障なく適用出来ることが長所である。
6.無揚力体と揚力体
無揚力体では、渦の流出が無いのに対して、揚力体では後流中に渦の流出(あるい
は、ポテンシャルの不連続面)が存在するところに、大きな相違がある。サーフェイ
ス・パネル法は、Hess・Smith法以外は、どれも、無揚力体にも揚力体にも適用で
きる。表面渦格子法は、揚力体の場合だけを説明したのは、無揚力体の場合は渦の
一13一
流出が無いという条件を満足させる必要があるので、揚力体に適した方法だと考え
たたあである。
直接法(Morino法)は、どちらにも比較的容易に適用出来るので、船体にも、プロペ
ラにも応用されている。又、核関数には、ラプラス方程式の主要解なら何でもよい
ので、今回お話しした点吹出し以外でも、正鏡像吹出し、逆鏡像吹出し、線形自由
表面条件を満たすグリーン関数(ケルビン・ソース)や他のグリーン関数を採用すれ
ば違った解法が展開できる。
ランキン・ソース法は、現在船体まわりの自由表面流れに専ら応用されているが、
ストラット付水中翼船や、双胴船、三三船及びそれらに水中翼を装備した場合等々
にも応用できる。
表面渦格子法は、その特性上、揚力体(水中翼、スクリュープロペラ等)への応用に
その威力を発揮している。とくに伴流の不均一流場における非定常問題では、他の
方法の追従を許さない強みを持っている。
Hess・Smith法は、サーフェイス・パネル法もしくは境界要素法の先駆者であり、も
うすでに盛んに実用されている。その意味では他の方法を数回もリードしていると
言える。
7.船体への応用
[OHPのパネルによる。〕
8.3次元翼への応用
[OHPのパネルによる。1
9.舶用プロペラへの応用
[OHPのパネルによる。】
一14一
以下の頁は著作権者の許諾を得ていな
いため、公表できません1