明治の大プロジェクト「万世大路」~福島を知る講座 - わが大滝の記録

【報告】
明治の大プロジェクト「万世大路」~福島を知る講座
大滝会特別会員(万世大路研究会)鹿摩貞男
はじめに
平成 26 年 1 月 25 日(土)、福島県立図書館において開催された「福島を知る講座」に講師として参
加してきましたので概要を報告します。
当日は約 150 名の参加者があり予定の人数を遙かにオーバーしたため会場に入りきれない方もおら
れたと聞いています。万世大路にたいする関心の高さを感じ大変嬉しく思いました。大滝会からは木
村会長さんをはじめ 10 名の方々が参加され、万世大路研究会からは阿部会長、近内副会長が参加され
ています。(写真-1、写真-2、写真-3)
〈講座概要〉
開催日時
平成 26 年 1 月 25 日(土)14:00~
場
所
福島県立図書館
講
話
①明治の大プロジェクト「万世大路」
第 1 研修室
講師:万世大路研究会、大滝会特別会員
鹿摩貞男
②万世大路の楽しみ方
講師:ふくしま 100 の会副会長
松田裕子
主
催
福島河川国道事務所
共
催
福島県立図書館、万世大路研究会、ふくしま 100 の会
【写真-1】
福島県立図書館
【写真-2】
右写真
【写真-3】
あふれんばかりの聴講者の皆さん
1
講座会場、福島県立図書館第 1 研修室
講話:明治の大プロジェクト「万世大路」について(講師:鹿摩貞男)
最初に鹿摩貞男から万世大路について講話をおこないました。万世大路は 3 世代に亘り続いてい
ることやその建設の意義・工事状況、時期等概要について述べています。
まず明治 14 年 10 月 3 日に、明治天皇ご臨席のもと開通式おこなわれた初代の万世大路は、人・
荷車(荷馬牛車)を対象とした道路であったこと、福島県側は中野新道、山形県側は刈安新道と称
し両県が約定を結び協力して工事が進められたこと等について説明しました。栗子隧道(約 870m)
をはじめとして工事は困難を極めたけれども関係者の努力で見事に完成させたものである。特に栗
子隧道工事では、アメリカから掘削機を輸入しておこなわれたけれども、貫通に当たっては東西か
ら掘り進められた導坑が上下左右ピタリと一致し当時の測量技術がいかに高かったかについて説明
しています。開通翌年の明治 15 年 2 月には天皇陛下から「万世大路」の名前を賜ったこと、開通後
は大変な賑わいを呈したこと等についてお話ししました。
その後、明治 32 年 5 月の奥羽線の開通を契機として万世大路の利用者が激減したこと。しかし、
日本も昭和に入り自動車の保有台数が増加し産業経済の発展の為には、自動車の通行可能な道路が
必要とされ、昭和 8 年 4 月から昭和 12 年 3 月の 4 箇年に亘り昭和の大改修がおこなわれたこと。工
事は内務省直轄でおこなわれ、最盛期には 1,000 人もの人々が山中に合宿し作業に当たったことな
どエピソードを交えて述べています。また、昭和の大改修の大きな特徴として、板谷駅から二ツ小
屋隧道米沢側坑口現場まで約 11 ㎞に及ぶトロッコ線路を敷設して資材運搬がおこなわれたことな
どを紹介しました。
昭和の大改修の完成後は一応自動車の通行可能な道路として約 30 年に亘って使用されました。
しかし万世大路、当時の国道 5 号(後の国道 13 号)は、未舗装砂利道の上、冬期 5 箇月間は交通
止めであったこと。戦後、自動車保有台数の飛躍的な増加と経済の発展により通年交通の可能な近
代的な国道が必要とされ、昭和 36 年 10 月から昭和 41 年 5 月にかけて山岳部の抜本的な改築工事が
建設省により実施されたこと。山岳部の改築工事終了後は冬期交通も可能な近代的な道路となり現
在に至っていること等を説明しています。
また現在は、4 代目とでも呼ぶべき第 4 世代の東北中央自動車道の建設が国土交通省によって進
められており、平成 29 年の開通を目指していることを紹介し講話を終えました。
(写真-4、写真-5、写真-6、写真-7、写真-8)
【鹿摩貞男が講話で使用した「明治の大プロジェクト『万世大路』」を添付した(PDF)】
【写真-4】
【写真-5】
講話①:明治の大プロジェクト「万世大路」
2
講話①鹿摩貞男講師 (渡辺文朝氏提供)
【写真-6】
講話①(滝口敏之氏提供)
【写真-7】
講話①
【写真-8】
講話①
講話:万世大路の楽しみ方(講師:松田裕子)
松田裕子氏からは万世大路の楽しみ方と云
うことで講話がありました。かつて万世大路
を初めて歩いた時の感動が忘れられないと云
います。万世大路は単なる土木遺産と云うだ
けでなく、観光的・芸術的・体感的・景観的・
歴史的・交流的・人物的・土木的あらゆる面
から楽しめるところであるという紹介があり
ました。
次に土木学会の選奨土木遺産について解説し、東北における主な土木学会選奨土木遺産を
ご自身の体験を交えて紹介されました。
野蒜築港関連事業(宮城県)
・安積疎水関連施設(福島県)
・十綱橋(福島県)
・明鏡橋(山形県)・
品井沼干拓関連施設(宮城県)
・最上川橋梁(山形県)
・直江兼続治水利水施設群(山形県)
・山形石
いぼいわ
橋群(山形県)
・奥州街道の一里塚群(青森県)・西根堰(福島県)・疣岩円形分水(宮城県)・万世
大路(山形県、福島県)などです。
この中で特に円形分水については、福島県内は勿論他県分についても各地を訪れたことなど興味
ある話題を提供して頂きました。
また、この度の震災で破損した文化施設についても紹介がありました。
最後に次のように結んでおられます。
いつまでも追求心を失うことなく、自分の目を通して、後世につないでいくこと、更に見逃され
ている先人の遺産を発掘していくことも大切であり、楽しみにつながっていくと思う。そして万世
大路を通して「感動の輪」が次から次へと広がっていくことを願っている。
(写真-9、写真-10、写真-11、写真-12)
3
)
(写真-10)講話➁
【写真-9】 講話➁:松田裕子講師(滝口敏之氏提供)
【写真-11】
【写真-10】
【写真-12 】
講話➁
講話➁
講話➁ (滝口敏之氏提供)
その他のイベントについて
上記の「福島を知る講座」の他福島県立図書館では 1 月 5 日~2 月 11 日にかけて次のような関連
の行事が催されており多くの方々が見学されております。
(1)パネル展示 「万世大路」の今昔 (建設から現在、そして将来)
明治時代の万世大路、昭和の大改修の状況、栗子ハイウェイの工事状況、現在工事中の東北中央
自動車道など貴重な写真を展示している。(写真-13)
開催日時 : 平成 26 年 1 月 5 日(日)
~ 2 月 11 日(火)
場
所 :
福島県立図書館
ロビー展示スペース
主
催 :
福島河川国道事務所
左写真
【写真-13】 パネル展示「万世大路」の今昔
(建設から現在、そして将来) (H26.01.05~02.11)
4
(2)歴史のみち・万世大路を知る (図書展示)
明治から現在までの万世大路の歴史を知る
図書の展示、その他の資料が紹介されていま
す。展示図書の中には、大滝会編纂の『わが
大滝の記録』
、万世大路研究会が中心となって
編集した『万世大路を歩く』などが展示され
ています。(写真-14)
開催日時 : 平成 26 年 1 月 5 日(日)
~2 月 11 日(火)
場
所 : 福島県立図書館
主
催 : 福島県立図書館
ロビー書棚
【写真-14】
りつれいきかん
(3)栗子隧道十二景「栗嶺奇観」(菅原白龍画)
「歴史のみち・万世大路を知る」
万世大路関連図書の展示,図書館ロビー
画集の一般公開展示
この画集は、出羽国時庭村(現・山形県長井
市)出身の南画家菅原白竜が、明治 14 年(1881
年)7月、完成間近の栗子隧道を歩き、その眺望
に感動し、景色を 12 枚の彩色画として描いたもの
です。
白竜はこの画集を3冊作り、1冊を開通式の際
明治天皇に、もう1冊を自家版とし、最後の1冊
は、隧道を案内した、伊達郡湯野村(現・福島市)
の高橋百菜翁に贈りました。当館所蔵のこの画集
は、高橋百菜翁に贈られたものです。巻末にこの
旨の書き入れがあります(福島県立図書館デジタ
ルライブラリーより)。(写真-15)
【写真-15】
「歴史のみち・万世大路を知る」
(菅原白龍栗子隧道十二景「栗嶺奇観」原画展示(中央展示ケース)
開催日時 : 平成 26 年 1 月 5 日(日)
~2 月 11 日(火)
場
所 : 福島県立図書館
ロビー展示ケース
主
催 : 福島県立図書館
※原本を見る機会はなかなかないので是非見ておきたい。工事中の明治期万世大路が生き生きと描か
れ、建設時当初の姿を見ることが出来る貴重な資料である。
なお、原本の画像は県立福島図書館デジタルライブラリーで見ることが出来る(下記)
http://www.library.fks.ed.jp/ippan/degital/degital_lib.html
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以上
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