膨張コンクリートの適用による トンネル 2 次覆工の温度応力 - 大成建設

大成建設技術センター報
第 42 号(2009)
膨張コンクリートの適用による
トンネル 2 次覆工の温度応力低減効果
臼井
達哉*1・大友 健*2・須藤 敏明*3・大西 吉実*4・沢藤 尚文*5
Keywords : expansive concrete, concrete lining, thermal stress, autogenous shrinkage,measurement
膨張コンクリート,覆工コンクリート,温度応力,自己収縮ひずみ,計測
はじめに
1.
割れ抑制効果および背面の拘束状態を定量的に評価し
た。あわせて,計測機器を設置した施工ブロックにお
トンネル 2 次覆工コンクリートは,通常,無筋コン
クリートであること,主に遮水性能を要求される部材
いて,散水養生を行い,養生によるコンクリートの収
縮抑制効果の検証をした。
であることから,歴史的に構造体としての品質確保に
ついて一般のコンクリート部材ほどの重要性を考慮さ
2.
実施概要
2.1
コンクリートの配合・材料と硬化物性
れてはいなかった。しかしながら,1999 年の鉄道トン
ネルの覆工コンクリートのはく落事故を契機として,
第三者安全性の確保に必要な性能としての施工時のひ
び割れに対する抵抗性が意識されるようになった
2)
例えば 1),
コンクリートの仕様,配合および使用材料を表-1 に
示す。膨張コンクリートは普通コンクリートの単位セ
。平成 12 年7月に土木学会から刊行された「トンネ
メント量に対して 20kg/m3 の低添加型膨張材を内割置
ルコンクリート施工指針(案)3)」では,第 1 部:山岳
換した配合である。JIS A 6202「コンクリート用膨張
トンネルの覆工コンクリートに関する規定と併記の扱
材」の付属書 2(参考)「膨張コンクリートの拘束膨張及
いとして,第 4 部に覆工コンクリートのひび割れ対策
び収縮試験方法」による材齢 7 日の膨張率は,188×
に関する特別な部が設けらている。
10-6 であり,膨張コンクリートの中で収縮補償用コン
2 次覆工コンクリートは,トンネル軸方向と周方向
クリート 4)(JIS A 6202 による材齢 7 日の膨張率の範囲
のいずれにおいても断面の厚さに比べて延長が長く,
150×10-6 以上,250×10-6 以下)に分類されるものであ
また全長にわたって外周面は 1 次覆工の吹付けコンク
る。
リートに接しているためコンクリート自体の変形が拘
各配合のコンクリートの硬化物性値を図-1 に示す。
束されやすい構造となっており,コンクリートの収縮
圧縮強度,引張強度およびヤング係数は,各々標準養
変形が拘束される場合に引張力が生じてひび割れが発
生供試体から測定した。これによると,普通コンクリ
3)
生する可能性が高い構造となっている 。
ートと膨張コンクリートは,ほぼ同一の硬化物性であ
本研究では,実構造物において,温度ひび割れの発
生する可能性が高い夏期施工の 2 次覆工に膨張コンク
ることがわかる。
表-1
コンクリートの仕様と配合
リートを適用し,現場計測を実施した。普通コンクリ
Table 1 Specification and mix-proportions
ート,膨張コンクリートの施工ブロックの一部に計測
仕様 Gmax:20mm,スランプ15cm,空気量4.5%
W/B s/a
単位量 (kg/m3)
配合
(%)
(%)
W
C
Ex
S
G
Ad
788 1031 3.19
普通 52.9 44.2 169 319
20
788 1031 3.19
膨張 52.9 44.2 169 299
C:普通ポルトランドセメント,Ex:低添加型膨張材(石灰系)
S:千葉県市原産陸砂
G:山口県伊佐産石灰砕石
Ad:AE減水剤標準型
B = C+Ex
機器を設置し,計測結果から膨張コンクリートのひび
*1
*2
*3
*4
*5
技術センター土木技術研究所土木構工法研究室
土木本部プロジェクト部
横浜支店土木工事作業所
関西支店土木工事作業所
土木本部土木設計部
06-1
40
膨張
30
20
10
0
1
10
100
1000
積算温度 [Σ℃・日]
4
普通:
ft = 0.176f’c^0.800
3
2
膨張:
ft = 0.183f'c^0.740
普通
膨張
1
0
10000
(a) 圧縮強度
第 42 号(2009)
ヤング係数 Ec [×104 N/mm2]
普通
引張強度 ft [N/mm2]
50
2
圧縮強度 f'c [N/mm ]
大成建設技術センター報
0
20
40
圧縮強度 f'c [N/mm2]
(b)
圧縮強度と引張強度の関係
図-1
60
5
普通:
Ec = 1.037f'c^0.326
4
3
膨張:
Ec = 0.8961f'c^0.370
2
1
普通
膨張
0
0
(c)
20
40
圧縮強度 f'c [N/mm2]
60
圧縮強度とヤング係数の関係
各配合の硬化物性
Fig.1 Strenth growth of hardened concrete
2.2
ひび割れ制御対策の概要
夏期施工ブロックにおけるひ
適用ケース
施工ブロック
打設日
Case1
1BL
2BL
7/14
7/16
Case3
3BL
4BL
7/18
7/22
Case2
5BL
6BL
7/24
7/28
び割れ対策の適用概要を図-2 に
脚部
示す。
通常の普通コンクリートを全
周方向計測
↑
↓
断面に適用したブロック(Case1) ,
↑
↓
↑
↓
↑
↓
↑
↓
←→
5日
←→
1日
←→
5日
←→
1日
↑
↓ 頂部
膨張コンクリートを全断面に適
軸方向計測
←→
1日
ートコンクリートの拘束が厳し
いと考えられるスプリングライ
ン(SL)より下部を膨張コンクリー
ト,上部を普通コンクリートを
適用したブロック(Case3)の 3 ケ
湿潤養生期間
普通コンクリート
膨張コンクリート
ブロック長:12.2m
図-2
ースにおいて計測を実施した。
各々のケースにおいて,養生に
←→
5日
脚部
ひずみ計
応力計
無応力計
計測機器設置方向
←→ トンネル軸方向
←→
周方向
ひび割れ制御対策および計測機器設置の概要
Fig.2 Summary of preventive measures of theramal crack and measurement items
よるひび割れ低減効果を確認す
頂部の計測位置
吹付け
t=150
るため,散水養生を 1 日間と 5 日間実施し,
覆工厚中央部,周方向
ブロック中央(6.1m)
生であり,簡易的に実施可能な養生により,
ひび割れ低減効果が得られるか否かを検討
55
1=
SL
トンネル中心
したものである。
道路中心
計測機器の設置箇所を図-3 に示す。イン
11208
バートコンクリートの拘束が厳しく温度応
ひずみ計
応力計
無応力計
R
7950
構造物に適用した養生は,3 回/日の散水養
二次覆工
t=300
2000
効果についても検討を行った。ここで,本
00
養生による材齢初期における自己収縮低減
600 400
用したブロック(Case2)とインバ
脚部の計測位置
覆工中央部,軸方向
前ブロックから5.3m地点
単位:mm
力が発生しやすい脚部のトンネル軸方向に
図-3 計測機器設置箇所
測温機能付埋込み型ひずみ計を設置した。
Fig.3 Detailed place of measurement items
頂部では,背面の吹付けコンクリートの拘
Case2 の全ブロックに,周囲から絶縁した容器の内部
束状態を把握するために,周方向に測温機能付埋込み
に埋込み型ひずみ計を設置した無応力計を設置し,コ
型ひずみ計を設置した。あわせて,コンクリートのひ
ンクリートの自由収縮ひずみを測定した。
ずみデータから,応力へ算出するために Case1 と Case2
の 1BL,5BL の脚部に有効応力計を設置した。また,
散水養生による収縮低減効果を確認するため Case1 と
06-2
3.
養生によるコンクリートの収縮低減効果
大成建設技術センター報
第 42 号(2009)
コンクリート
t=450x450x450
60
1BL(普通)
温度 [℃]
50
5BL(膨張)
坑内温度(普通)
40
坑内温度(膨張)
30
10
0
5
図-4
10
材齢 [日]
15
無応力計のコンクリート温度
図-5
60
断熱温度上昇量 [℃]
普通コンクリート
膨張コンクリート
坑内温度
50
40
簡易断熱マスブロック試験体
Fig5 Insulated mass block
80
70
60
単位:mm
バタ角
(通気する)
20
Fig.4 Concrete temperature measured by nonrestricted strain meter
温度 [℃]
埋込み型
ひずみ計
コンパネ
t=12
20
30
20
10
0
50
40
30
20
普通コンクリート
10
膨張コンクリート
0
0
10
20
0
30
2
材齢 [日]
図-6
マスブロック試験体の中心温度
図-7
Fig.6 Temperature change of center of mass block
250
無応力計:普通コン-養生期間1日
無応力計:普通コン-養生期間5日
無応力計:平均
マスブロック試験
200
150
100
自己収縮ひずみの差:約30×10 -6
50
0
-50
0
10
20
30
40
50
有効材齢 [日]
(a) 普通コンクリート
図-8
4
材齢 [日]
6
8
推定された断熱温度上昇特性
Fig.7 Estimated adiabatic temperature rise
自己収縮ひずみ [×10-6 ] +:膨張
自己収縮ひずみ [×10-6 ] +:膨張
熱電対 外気温
スタイロ
t=200
250
自己収縮ひずみの差:約60×10 -6
200
150
100
無応力計:膨張コン-養生期間1日
無応力計:膨張コン-養生期間5日
無応力計:平均
マスブロック試験
50
0
-50
0
10
20
30
40
50
有効材齢 [日]
(b) 膨張コンクリート
無応力計から算出された自己収縮ひずみ
Fig.8 Autogenious shrinkage measured by nonrestricted strain meter
3.1
コンクリートの温度
性を図-7 に示す。図-4 によると,コンクリートの最高
各配合の無応力計のコンクリート温度データおよび
温度は,膨張コンクリートの方が普通コンクリートよ
坑内温度データを図-4 に示す。また,2 次覆工に打ち
りも大きい。これは,余堀などによるコンクリート厚
込んだコンクリートと同じコンクリートにより作製し
の違いではなく,コンクリートの終局温度上昇量が膨
た無拘束簡易断熱マスブロック試験体
5)
(図-5,以降,
張材を添加することにより上昇したためである(図-7)。
マスブロック試験体)においてマスブロック中心部の温
膨張材を添加することによりコンクリートの最高温度
度履歴(図-6)と,この履歴とブロックからの放熱特性
が上昇するのは既往の文献
を考慮して推定した
5)
コンクリートの断熱温度上昇特
06-3
6)
においても確認されてお
り,本実験おいても同じ傾向が確認された。
大成建設技術センター報
3.2
第 42 号(2009)
されていることが確認された。それに対し,膨張コン
散水養生による自己収縮ひずみの低減効果
各無応力計で計測された全ひずみから,熱膨張係数
クリートでは,図-8(b)によると,湿潤状態が保たれて
-6
いる本構造物では,収縮ひずみが確認されなかったの
(普通コンクリート:6.8×10 /℃,膨張コンクリート:
-6
6.3×10 /℃)を用いて,熱膨張・収縮ひずみ成分を差し
に対して,封緘養生であるマスブロック試験体では,
引き,自己収縮ひずみを算出した。熱膨張係数は,熱
有効材齢 5 日(材齢約 1 日)時点で収縮ひずみが発生し
膨張係数測定用供試体(φ100×200)を作製し,水和に
た。封緘養生下では,湿潤状態が保たれている条件下
よる収縮の影響がほぼ無視できると考えられる材齢 28
と比較すると,有効材齢 50 日時点で約 60×10-6 の自己
日以降で 20-60℃の温度変化を与えて測定した。なお, 収縮ひずみの差が発生している。これは,膨張コンク
自己収縮ひずみの起点は,凝結始発時間とした。
リートを施工する場合,適切な養生を実施しなければ,
算出された自己収縮ひずみを図-8 に示す。普通コン
クリート,膨張コンクリートともに,散水養生期間の
収縮ひずみが材齢初期に発生し,十分なひび割れ低減
効果が期待できないことを示している。
違いによって自己収縮ひずみに有意な差はなく,散水
本計測データから,湿潤養生による自己収縮ひずみ
養生による収縮低減効果は確認されなかった。これは, の低減効果を確認することができた。特に,膨張コン
計測を実施したトンネル坑内湿度が非常に高い状態
クリートは,普通コンクリートと比較し,養生の影響
(図-9)であり,脱型翌日には,コンクリート表面の一
が大きいことが明らかになった。
部に結露が確認されていたことから,常時湿潤状態で
あったためであると考えられる。指針
3)
においても,
4.
膨張コンクリートのひび割れ低減効果
4.1
コンクリートの温度
トンネル坑内は,高湿度が保たれ,湿潤状態が保たれ
ているとみなせると記述されており,本実験における
計測データからも同様の傾向が確認された。
マスブロック試験体から測定した全ひずみから算出
100
ック試験体は,封緘養生状態であることから,外部と
90
坑内湿度 [%]
した自己収縮ひずみとの比較を行った(図-8)。マスブロ
の水分移動はない条件下の自己収縮ひずみである。そ
れに対し,本構造物では,常時湿潤状態が保たれてい
る条件下の自己収縮ひずみである。図-8(a)によると,
構造物内の普通コンクリートでは,有効材齢 50 日時点
80
70
60
で湿潤状態が保たれている条件下では 5-25×10-6 の自
構内湿度
50
7/21
己収縮ひずみが算出されており,封緘養生下では,45
×10-6 程度の自己収縮ひずみが算出された。湿潤養生
7/31
の効果により,30×10-6 程度の自己収縮ひずみが低減
8/10 8/20
日付
図-9
8/30
9/9
坑内湿度
Fig.9 Humidity at construction site
60
40
脚部:5BL(膨張)
頂部:5BL(膨張)
坑内温度
50
温度(℃)
50
温度(℃)
60
脚部:1BL(普通)
頂部:1BL(普通)
坑内温度
30
20
10
40
30
20
10
0
0
0
5
10
15
20
0
材齢(日)
10
材齢(日)
(b) 膨張コンクリート
(a) 普通コンクリート
図-10
5
脚部および頂部におけるコンクリート温度の経時変化
Fig.10 Time dependent change of temperature in top and bottom of concrete lining
06-4
15
20
脚部全ひずみ
温度ひずみ
自己収縮ひずみ
有効ひずみ
0
10
20
材齢 [日]
(a) 普通コンクリート (1BL,脚部)
図-11
250
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
-200
+:膨張
250
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
-200
第 42 号(2009)
ひずみ [×10-6 ]
ひずみ [×10-6 ]
+:膨張
大成建設技術センター報
脚部全ひずみ
温度ひずみ
自己収縮ひずみ
有効ひずみ
0
30
10
20
30
材齢 [日]
(b) 膨張コンクリート (5BL,脚部)
全ひずみ,自己収縮ひずみ,温度ひずみ,有効ひずみの経時変化
1.5
1
1
応力 [N/mm 2 ]
応力 [N/mm 2 ]
Fig.11 Time Dependent Change of total strain,effective strain,thermal strain and effective strain
1.5
0.5
0
1BL_脚部ひずみ計-換算データ
1BL_応力計データ
-0.5
-1
0
10
20
0.5
0
5BL_脚部ひずみ計-換算データ
5BL応力計データ
-0.5
-1
0
30
10
図-12
30
材齢 [日]
材齢 [日]
(a)
20
(b)
普通コンクリート (1BL,脚部)
膨張コンクリート (5BL,脚部)
有効応力計から実測されたコンクリートの応力とひずみ計から算出したコンクリート応力
Fig.12 Thermal stress measured by stress meter and calucuated by strain meter
表-2
普通コンクリート,膨張コンクリートの脚部および
頂部のコンクリート温度を図-10 に示す。図-10 よると
脚部に比べ,頂部のコンクリートの方がコンクリート
温度が高いことがわかる。これは,余堀により覆工コ
ンクリートが頂部の方が厚いことが大きな要因である
計測データから算出したヤング係数の補正係数
Table2 Compensating facter of young’s modulus
配合
温度上昇時 温度降下時
普通コンクリート
0.80
0.64
膨張コンクリート
0.45
0.89
7)
0.42
0.65
ひび割れ制御指針
5)
と考えられる。なお,計測機器を設置したブロックに
ヤング係数を積和して応力の時刻歴変化を算出した
おいて打設前のコンクリートの型枠(セントル)から,
ここで,ヤング係数の補正係数は,1BL と 5BL におけ
防水シート(吹付けコンクリート)までの距離を測定
る同位置に設置したひずみ計と有効応力計のデータを
したところ,脚部では,平均 335mm,頂部では,平均
もとに有効ひずみから算出した換算応力と有効応力計
380mm であった。
の計測データが,一致するように設定した(表-2,図-
4.2
4.2.1
。
12)。
コンクリートの応力
ヤング係数の補正係数を比較すると,温度上昇時に
有効ひずみとコンクリート応力の算出
各配合の熱膨張係数と自己収縮ひずみデータを用い
おいて,膨張コンクリート:0.45,普通コンクリー
て,脚部および頂部の実測の全ひずみから有効ひずみ
ト:0.80 であり膨張コンクリートは普通コンクリート
を算定した(図-11)。なお,自己収縮ひずみは,2 つの
の 0.56 倍であった。計測結果から算出されたヤング係
無応力計から算出したデータ(図-8) の平均値を用い,
数の補正係数は,覆工コンクリートでは,コンクリー
全ひずみの起点は,自己収縮ひずみを算出した際と同
ト厚が薄いため,温度上昇期間が打設後 8 時間程度と
様に凝結始発時間とした.
非常に短いことから定量的な評価は難しい。しかしな
次に有効ひずみの時間差分ごとにその材齢時の有効
06-5
がら,既往の研究
8)
においても指摘されているように,
第 42 号(2009)
1.5
1.5
1
1
1
2
2
応力 [N/mm 2 ]
1.5
応力 [N/mm ]
応力[N/mm ]
大成建設技術センター報
0.5
0
最大応力
-0.5
最大圧縮応力
最大引張応力
-1
0
最大応力
-0.5
最大圧縮応力
最大引張応力
-1
0
10
20
材齢 [日]
30
0
3BL 4BL
N/mm2
-0.32 -0.59
0.81 0.38
10
20
材齢 [日]
0.5
0
30
0
4
4
4
2
1
1BL
3
ひび割れ指数
5
最小ひび割れ指数
1BL:2.50(材齢1.52日)
2BL:2.23(材齢1.56日)
最小ひび割れ指数
3BL:2.78(材齢2.78日)
4BL:6.10(材齢1.82日)
2
1
2BL 普通
3BL
0
10
(a)
20
最小ひび割れ指数
5BL:3.57(材齢1.67日)
6BL:2.77(材齢1.33日)
2
1
4BL 膨張
10
20
30
0
材齢 [日]
材齢 [日]
1BL,2BL (Case1)
(b)
普通コンクリート
3BL,4BL
(Case2)
(c)
膨張コンクリート
図-13
30
5BL
6BL 膨張
10
20
0
0
30
5BL 6BL
N/mm2
-0.39 -0.40
0.85 0.73
10
20
材齢 [日]
3
0
0
最大圧縮応力
最大引張応力
-1
5
3
最大応力
-0.5
5
ひび割れ指数
ひび割れ指数
1BL 2BL
N/mm2
-0.11 -0.19
1.26 1.19
0.5
30
材齢[日]
5BL,6BL (Case3)
膨張コンクリート
脚部のコンクリート応力とひび割れ指数
1BL
1
0.5
0
-0.5
-1
-1.5
-2
-2.5
2BL 普通
0
3BL
10
20
材齢 [日]
(b)
普通コンクリート
3BL,4BL
30
(Case2)
普通コンクリート
図-14
5BL
6BL 膨張
0
-1
-2
-3
-4
0
10
20
30
材齢 [日]
(a) 1BL,2BL (Case1)
1
4BL 普通
応力 [N/mm2]
1
0.5
0
-0.5
-1
-1.5
-2
-2.5
応力 [N/mm2]
2
応力 [N/mm ]
Fig.13 Thermal stress and crack index at bottom of concrete lining
0
10
20
材齢 [日]
(c)
5BL,6BL
30
(Case3)
膨張コンクリート
頂部のコンクリート応力とひび割れ指数
Fig.14 Thermal stress at top of concrete lining
膨張コンクリートでは,温度上昇過程時のヤング係数
の大きな圧縮応力が作用している。その後,温度降下
の補正係数を普通コンクリートに比べ,小さく設定す
に伴い引張応力が発生するが,膨張コンクリートでは,
る必要があることがわかる。
覆工内の無応力計から測定された自己収縮ひずみが,
4.2.2
膨張挙動しか示していないの対し(図-8(b)),普通コン
脚部におけるコンクリートの応力低減効果
脚部に設置したひずみ計から計測された有効ひずみ
クリートでは,収縮している (図-8(a))。そのため,コ
用いてコンクリートの応力と最小ひび割れ指数を算出
ンクリート温度が外気温まで低下した時点で,膨張コ
した(図-13)。まず,温度上昇時において,膨張コンク
ンクリートの引張応力は,概ね 0.7-0.8 N/mm2 であり,
リートは, 0.3-0.5N/mm2 程度のケミカルプレストレ
普通コンクリートと比較して,0.3-0.5N/mm2 程度の
ス力が導入され普通コンクリートに比べ約 0.2 N/mm2
引張応力が低減することを確認できた。また,最小ひ
06-6
大成建設技術センター報
び割れ指数は,膨張コンクリートを用いることにより,
れない可能性があることがわかった。
(3) 膨張コンクリートを使用することにより,インバ
0.3-0.8 程度大きくなることがわかった。
4.2.3
第 42 号(2009)
ートコンクリートの拘束が厳しい脚部においてコ
頂部におけるコンクリートの応力低減効果
頂部に設置したひずみ計から算出した有効ひずみと
ンクリート温度が外気温まで低下した時点で引張
有効ひずみから算出したコンクリートの応力を図-14
応力が 0.3-0.5N/mm2 程度低減することを確認で
に示す。図-14 によると,膨張コンクリートと普通コ
きた。また,最小ひび割れ指数は 0.3-0.8 程度大
ンクリートともに圧縮応力が作用している。これは,
きくなった。
覆工コンクリートでは,防水シートの縁切により背面
(4) 頂部のひずみ計を用いて算出した応力から頂部で
の拘束がほとんど無いことを示している。このことか
は,防水シートの縁切により背面の拘束が極めて
ら背面の拘束度が低いスプリングラインより上部に,
小さいことがわかった。背面の拘束度が低いスプ
膨張コンクリートを用いてもケミカルプレストレスに
リングラインより上部に,膨張コンクリートを用
よる有効な圧縮応力が作用せず,温度ひび割低減効果
いても温度ひび割低減効果は小さいことがわかっ
が小さいことがわかった。また,スプリングラインよ
た。
り上部では,常に圧縮応力が発生しており,防水シー
トの縁切によりスプリングラインより上部がアーチ構
本研究では,材齢 30 日まで材齢初期の計測データを
造となることによって圧縮応力が作用している可能性
まとめた。普通コンクリートの品質が良好であったた
が考えられる。今回計測した頂部の中央断面のデータ
め,自己収縮ひずみが指針
のみではスプリングラインより上部がアーチ構造とな
通コンクリートの脚部における最小ひび割れ指数が
っているかを判断することは難しい。この点について
2.23(2BL)であった。このため,膨張コンクリートを適
は,今後の検討課題としたい。
用しなくても,温度ひび割れが発生しておらず,ひび
7)
よりも非常に小さく,普
また,スプリングラインより下部と上部で膨張コン
割れ発生の有無という観察できる形では,温度ひび割
クリートと普通コンクリートと配合を変更した 3BL,
れ抑制効果を確認できなかった。しかしながら,計測
4BL において,ひび割れが発生しなかった。このこと
データから,膨張コンクリートの温度応力の低減効果
から,膨張コンクリートと普通コンクリートの境界に
を定量的に評価することができたことから,今後施工
おいて,膨張コンクリートの自己収縮ひずみ(図-8(b),
する 2 次覆工コンクリートのひび割れ制御対策として
-6
約 180-200×10 (膨張))と普通コンクリートの自己収
-6
縮ひずみ(図-8(a),10-25×10 (収縮))の差に起因する
適用する予定である。
また,施工後 1 年を経過した 2009 年 7 月時点におい
て覆工コンクリートにひび割れは発生していない。今
ひび割れは,発生しないことが確認された。
後,トンネル貫通時の外気温低下に伴う温度収縮や通
5.
結論
風に伴う乾燥収縮によりひび割れが発生する可能性が
ある
トンネル覆工コンクリートの施工時のひび割れ対策
3)
ことから長期計測を実施し,これらの影響を把
握する予定である。
として,夏期施工の覆工コンクリートに膨張コンクリ
謝辞
ートを適用した。覆工コンクリートの各種ひずみと応
力を計測し温度応力低減効果を検討した結果,以下の
知見が得られた。
(1) 計測されたコンクリートの最高温度は,膨張コン
クリートが普通コンクリートに比べ高い結果とな
った。これは,膨張材を添加することによりコン
本研究の実施に際して,現場計測においては,工事関係者
の皆様のご理解と多大なご協力をいただきました。ここに記
して感謝いたします。
参考文献
クリートの終局断熱温度上昇量が上昇するためで
ある。
(2) 坑内湿度が非常に高いため,基本的には養生の必
要がないことがわかった。ただし,膨張コンクリ
ートでは,坑内湿度が低い場合,材齢初期におい
て収縮ひずみが発生し,ひび割れ低減効果が得ら
06-7
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