地盤改良土の攪拌・混合特性と土の粒度特性との - 学校法人東海大学

地盤改良土の攪拌・混合特性と土の粒度特性との関係
指導教員
藤井
衛
8JCA2203
教授
安藤
8JCA2208
1.はじめに
武志
横前
誠
表2-1-1 物理諸元
深層混合処理工法による地盤改良体の構造には,設計
図書に示される要求性能を満足させるため,品質管理の
試料土
採取場所
充実が極めて重要となる.しかし,現実には地盤内での
施工であるため目視による確認が不可能であり,また一
見きれいに出来上がったと見える改良体であっても中心
部は十分な撹拌がなされていない場合もある.事前に混
ざりにくい土であるかどうかが把握できれば,施工管理
の面において十分な注意が払われ,出来ばえをより良く
する事が可能となる.そこで,本研究では土塊混入の割
湿潤
密度
液性
限界
塑性
限界
3
(%)
61.92
58.30
61.75
61.57
65.70
45.37
64.56
(%)
44.37
41.44
45.53
47.31
48.01
32.76
20.61
(g/cm )
関東ローム① 茨城県総和
1.25
関東ローム② 埼玉県上尾
1.37
関東ローム③ 千葉県山田
1.35
関東ローム④ 千葉県船橋
1.32
関東ローム⑤ 神奈川県桜ヶ丘 1.18
黒ボク
茨城県総和
1.41
凝灰質粘土
茨城県総和
1.70
塑性
指数
17.55
16.86
16.22
14.26
17.68
12.61
43.95
合の大きさと土の物性との関係から,地盤改良土の混ぜ
やすさ,混ぜにくさについて調べてみることにした.
2.実験方法
試料土
2-1.試料
今回実験で用いた試料の物理諸元を表 2-1-1,2-1-2 に
示す.また,セメント,水の配合表を表 2-1-3 に示す.
2-2.一軸圧縮試験方法
試験供試体は,直径 50 ㎜,高さ 100 ㎜の型枠を用いて
作製した.養生方法は,型枠から供試体を脱型させた後,
ラップフィルムで被覆し,養生容器で保管した.養生日
数は 28 日間とした.
関東ローム①
関東ローム②
関東ローム③
関東ローム④
関東ローム⑤
黒ボク
凝灰質粘土
実験に用いた対象土は,表 2-1-3 の配合表に示すように,
7 種類とし,原土をそのままの状態で使用した.これらの
土の種類
試料に固化材として普通ポルトランドセメント(太平洋
セメント製)をセメントミルクとして使用し,実現場で
設定される事の多いセメント添加量
300kg/m3 とし,セメ
ントミルクを試料土に投入した.水セメント比について
は比較しやすいように全て 100%とした.供試体作製時の
混合攪拌は,人の手で行い,混合攪拌時間は 3 分で供試
体を作製した.また供試体は各試料で 25 本ずつ作製し,
関東ローム①
関東ローム②
関東ローム③
関東ローム④
関東ローム⑤
黒ボク
凝灰質粘土
表2-1-2 物理諸元
土の物性
粘土分 シルト分 細砂分 中砂分 粗砂分
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
17.80
28.12
25.71
32.77
18.27
17.62
84.66
75.98
66.19
68.45
62.33
77.36
55.95
14.58
表2-1-3
セメント
W/C
添加量
(kg/m3) (%)
300
100
300
100
300
100
300
100
300
100
300
100
300
100
4.52
3.93
4.09
3.77
2.59
18.02
0.30
配合表
セメント
投入量
(kg)
0.07779
0.07306
0.07384
0.07494
0.08079
0.07179
0.06265
1.42
1.62
1.60
1.03
1.78
7.60
0.31
水
投入量
(kg)
0.07779
0.07306
0.07384
0.07494
0.08079
0.07179
0.06265
0.28
0.14
0.15
0.10
0
0.81
0.15
試料土
投入量
(kg)
0.32442
0.33387
0.33232
0.33012
0.31841
0.33643
0.35470
室内にて整形,養生し,比較対照するため一軸圧縮試験
塑性指数を考慮し Ip<20 と思われる場合は試料を分散容
機を用いて試験を行った.
器に移し,蒸留水を加えて全量を 700m にし,そして分
2-3.簡易粒度試験
散剤 10m を加え,分散装置で約 1 分間撹拌した.Ip>20
粒度試験で用いられる浮標を使って,浮標の沈みの速
と思われる場合は,ビーカーに試料と過酸化水素水 6%溶
さから土の混ぜやすさ,混ぜにくさを判断する.これを
液約 100m を入れ,一様になるまで撹拌した.その後は
今回,簡易粒度試験と呼ぶ.
Ip<20 の場合と同様のことを行った.分散後の試料の全
試験手順は,乱した土を 2 ㎜ふるいで裏ごしし,炉乾
量を容量 1 のメスシリンダーに移し,1 になるまで蒸留
燥質量に換算して,砂質土系の土では 115g程度を採取,
水を加え,ふたをして,上下左右に撹拌・混合する操作
粘性土系の土では 65g程度を採取した.試料の分散は, を 1 分間続けて内容物を均一な懸濁液にし静置後,1,2,
Investigation of mixture characteristics of improvement soil based on the grain size distribution.
3,4,5,10,15,20,30,45,60 分に浮標を浮かべ,
3.実験結果と考察
表 3-1 に一軸圧縮試験結果,表 3-2 に簡易粒度試験結果,
表 3-3 に考察を示す.また表 3-1,3-2 を基にグラフ(図
3-1)にする.
25
quの変動係数(%)
その読みと懸濁液の温度を測定した.
20
15
関東ローム①~⑤
黒ボク
凝灰質粘土
10
5
0
表 3-3 に示す考察と図 3-1 の結果より,qu の変動係数
1
1.01
すなわち強度のバラツキは土の粒度と密接な関係を有す
1.02
1.03
1.04
浮標(比重)の読み(5分)
1.05
る事が分かった.
標準偏差
0.064
0.050
0.047
0.072
0.052
0.012
0.128
変動係数
(%)
12.6
11.4
10.5
8.8
12.4
7.7
23.0
表 3-2 簡易粒度試験結果
浮標の読み
試料土
1分後 5分後 10分後
関東ローム① 1.031 1.018 1.009
関東ローム② 1.043 1.036 1.022
関東ローム③ 1.037 1.030 1.017
関東ローム④ 1.032 1.027 1.016
関東ローム⑤ 1.034 1.028 1.018
黒ぼく
1.018 1.003 1.003
凝灰質粘土 1.046 1.043 1.042
浮標の沈み
15分後
1.008 徐々に沈む
1.018 徐々に沈む
1.012 徐々に沈む
1.014 徐々に沈む
1.014 徐々に沈む
1.003 急速に沈む
1.040 緩やかに沈む
表 3-3 考察
quの変動係数(%)
関東ローム①
関東ローム②
関東ローム③
関東ローム④
関東ローム⑤
黒ぼく
凝灰質粘土
平均密度 平均応力度
(N/mm2)
(g/cm3)
1.38
0.510
1.42
0.433
1.40
0.446
1.24
0.821
1.32
0.422
1.56
0.151
1.57
0.558
25
20
15
関東ローム①~⑤
黒ボク
凝灰質粘土
10
5
0
1
quの変動係数(%)
表 3-1 一軸圧縮試験結果(手練り 3 分)
1.01
1.02
1.03
1.04
浮標(比重)の読み(10分)
1.05
25
20
15
関東ローム①~⑤
黒ボク
凝灰質粘土
10
5
0
1
図 3-1
1.01
1.02
1.03
1.04
浮標(比重)の読み(15分)
1.05
qu の変動係数と浮標の読みとの関係
4.まとめ
今回の実験で粒径の細かい土は浮標の沈みが遅く,ま
黒ボク
説明
た団粒化しやすいために混合・撹拌が困難で一軸圧縮強
細砂,中砂,粗砂分が多く,またシルト分が 5 割
さの変動係数も高くなった.逆に粒径の粗い土では浮標
ほどあることが分かる.簡易粒度試験では浮標が
の沈みが早く,混合・撹拌が容易で一軸圧縮強さの変動
5 分を経過する前に沈んでしまうことで,粒径の
係数が低くなった.ゆえに簡易粒度試験試験を行いおお
大きい細砂に近いシルト分が多く含まれているこ
よその粒径が分かることにより,一軸圧縮強さの変動係
とが分かる.そのために一軸圧縮強さの変動係数
数を想定できると思われる.
関東ローム① ⑤
~
が小さい値を取ることができると考えられる.
そこで簡易粒度試験の結果で浮標の沈みが遅ければ,
凝灰質粘土
シルト分が 6 割から 8 割ほどあるが,グラフから
混合・撹拌時間を増やすことで一軸圧縮強さの変動係数
浮標は徐々に沈むことが読み取れる.その結果粘
も低い値に抑えられると考えられる.簡易粒度試験を現
土分に近いシルト分から細砂に近いシルト分まで
場で行うことで,地盤改良土の混ぜやすさ,混ぜにくさ
均一に存在していると考えられ,一軸圧縮強さの
が把握できれば施工管理の面において十分な注意が払わ
変動係数のばらつきが,ある程度出てきてしまう
れる.すなわち,品質管理が現状以上に充実してくるは
と思われる.
ずである.
シルト分が 1 割ほどであり,浮標の読みも高い数
値である.最も細かい粘土分が 8 割と非常に多く
含まれているために,浮標の沈みがとても遅く,
一軸圧縮強さの変動係数も高い数値が出たと考え
られる.
<参考文献>:2000 年度卒業研究論文
地盤改良土の混合撹拌性状に関する研究
:土質試験―基本と手引き―
(発行)社団法人
2001 年度卒業論文梗概集
地盤工学会,2000 年
東海大学工学部建築学科