コールドチェーンを目的とした 機能性氷・氷スラリーの開発 Development of functional ice/ice slurry for cold chain 中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授 松本 浩二 2010.11.25(木) JST新技術説明会 於:JST東京本部 1 コールドチェーンを目的としたオゾン マイクロバブルによるオゾン氷の生成 研究背景 近年 品質管理と食料品価格の高騰 鮮度保持技術の向上 ☆食品の輸送エネルギーの減少 ☆食品の貯蔵効率の向上 注目 鮮度保持技術 食品流通システムに 大きな貢献 従来の生鮮食品の鮮度保持方法 オゾン水が効果的 そこで 効果の保持が困難 オゾン氷が注目 2 研究目的 オゾン氷を用いた食品の鮮度保持 ・エネルギーコストの減少 冷凍することに比べ、 ・解凍による品質や鮮度の劣化がない オゾン氷が安価・容易に製造 オゾン氷の普及 従来の生成方法 密閉加圧式によるオゾン氷の生成 問題点 装置の耐圧化 大型化 ・ 高コスト 3 本研究のオゾンMB含有氷生成方法 気泡を用いた 生成方法 マイクロバブル(MB)を用いたオゾン氷の生成 オゾンマイクロバブル 注入 水 マイクロバブル ●粒子径数十μm程度の気泡 ●高密度に分散 冷却 オゾンMB含有氷 特徴 オゾンガス ●殺菌・脱臭効果 ●残留性がない 耐圧構造不要 ⇒ 『 システムの安価・小型化実現 』 氷によるオゾンマイクロバブルの保持 ⇒ 『生鮮食品の鮮度保持・殺菌・消臭 』 MBによる「溶存+気泡」の高気泡含有率の氷生成 ⇒ 『 高濃度オゾンMB含有氷が生成可能 』 『 常圧下で,溶存+気泡で溶解度以上の氷の生成可能 』 ⇒生鮮食品の輸送(コールドチェーン)に有効!! 4 本研究のMB含有氷生成方法 平板状の冷却板を用い,MB含有水中で氷の生成を行う θ + MB含有水 冷却板 気泡含有氷 研究の初期段階として… 酸素MBを用いて,冷却面角度を変化させることで 生成される氷の特徴を検討 5 気泡含有率測定 オゾン濃度測定 実験装置・実験条件 ρ0 − ρ φ= ρ0 KI法 Water Thermostat bath ただし Brine tube φ: 気泡含有率 ρ 0: 純氷の密度 ρ Cooling plate O2 cylinder Ice Stirrer Tank オゾン封入率 e r 氷中オゾン濃度 × 100 液中オゾン濃度 MB generator MB water : MB含有氷の密度 水量 液温 冷却面平均温度 製氷時間 酸素流量 攪拌速度 約20[L] 2.5~3.5[℃] ‐10[℃] 20[min] 0.45[L/min] 180[rpm] 6 実験結果 ー 生成した氷の形状(O2ガス使用) (MBなし) 0° 0° 多 45° 90° 気泡による窪み 少 冷却面を0°から傾けていくことで肥大化した気泡 が除去されやすくなり窪みが減少 7 30 20 10 0 0 20 40 製氷量 [g] 60 冷却面をある程度傾けることで肥大 化した気泡が除去され,気泡含有率, 気泡含有率 製氷量が増加 製氷量 オゾン封入率 氷中オゾン濃度 60 15 40 10 20 5 0 0 15 30 45 60 75 冷却面角度 [°] 90 氷中オゾン濃度 [ppm] 冷却面角度 0°( MBなし) 0° 45° 90° オゾン封入率 [%] 氷中酸素気泡含有率 [%] 実験結果 ー 気泡含有率,製氷量,オゾン濃度 0 氷中 氷中気泡含有率が高くなると, 氷中気泡含有率 オゾン濃度も上昇 オゾン濃度 8 -20℃程度の低温食品冷蔵が可能な 人に優しい氷スラリーの提案 研究目的 研究目的 従来の工業材料を使用した二次冷媒 ⇒ 漏洩時の安全性に影響がある ⇒ 管内での生成氷による管内閉塞の可能性 環境にやさしく,人体への安全性の確保 壁面氷結せずに連続生成できる 壁面氷結せず 食用植物油,食品添加物,食用乳化剤で生成した W/Oエマルションによる氷スラリーを使用した二次冷媒を提案 9 W/Oエマルション・氷スラリー W/Oエマルション(23℃) W/Oエマルション拡大図 氷スラリー(IPF30%) 氷スラリー 内の氷粒(IPF30%) 10 氷スラリーの利用温度 必要とされる氷スラリー温度 ・2~5℃の食品冷蔵 -5℃程度 ・チルド・スーパーチルドでの利用 -5℃~-20℃程度 人に優しい氷スラリーの特徴 ・人に優しく,食品の低温域での冷却・冷蔵に利用可能 ・長時間の氷スラリー生成でも壁面氷結を起こさない ・食用材料を使用しているため廃棄時の環境負荷を低減す ることが可能 ・氷スラリーのため循環させて利用することが可能 ・氷スラリーのため搬送の自由度大 ・熱負荷追従性が良い 11 W/Oエマルション・氷スラリー生成 実験装置 実機での利用例 攪拌機 製氷部 貯蔵部 Ice slurry エマルション・氷スラリー 恒温槽 (オーロラブライン) Emulsion エマルションの組成比 水溶液 と油の組 成比 水溶 液 油 水溶液 濃度 乳化剤添 加濃度 8:2 7:3 880ml 770ml 220ml 330ml 5vol% ~ 25vol% 0.03vol% ~ 0.09vol% 12 氷スラリーの二次冷媒としての評価 見かけの粘度(Pa・s) エマルションの見かけの粘度 Harmless emulsion (PG solution) * 人に優しいエマルション(PG水溶液) 20 分散相を水溶液化 エマルションの 見かけの粘度が上昇 15 従来の人に優しいエマルション 0 10 20 水溶液濃度(vol%) 氷スラリーの流動性低下 * PG:プロピレングリコール 粘度は電圧印加により大幅に低減可能! 13 氷スラリーの二次冷媒としての評価 製氷量と使用可能温度 低温冷蔵の温度領域で・・・ 使用可能温度[℃] Temperature (℃) 0 ・十分な製氷量が得られる -5 (7:3) -10 (8:2) -15 0 10 20 30 IPF (%) IPF(氷充填率)[%] PG5vol% PG10vol% PG15vol% PG20vol% PG25vol% PG5vol% PG10vol% PG15vol% PG20vol% PG25vol% 40 ・-20℃程度まで流動性を維持 二次冷媒として使用可能 水溶液濃度を変化させることで適した冷媒温度が得られる 14 エマルション・氷スラリーの再生成 氷スラリー生成(IPF30%以下) (1) 無攪拌状態 二種類の方法で融解 (2) 攪拌状態 再度エマルション, 氷スラリー生成 攪拌,無攪拌ともに繰り返し生成可能 IPF30%以下で蓄熱材として使用可能 15 従来技術とその問題点 ・オゾンマイクロバブル含有オゾン氷: ・既に実用化されているものには,圧力容器によるオゾン氷が, 1)圧力容器が必要で,設備が大規模・高コストになる. 2)氷中のオゾン濃度が低い 等の問題がある. ・人に優しい氷スラリー: ・工業製品から生成されたものは,食品と直接接触すると 人体被害が起こる可能性がある. 16 新技術の特徴・従来技術との比較 ・オゾンマイクロバブル含有オゾン氷: 1)高濃度のオゾンの保持が可能となる. 2)食品の冷蔵・殺菌・消臭が同時に可能. 3)次亜塩素酸ナトリウム等を使用しないで殺菌でき,そ れらの廃棄による環境汚染もない. 4)殺菌後の食品は処理なしで食べることができる. ・人に優しい氷スラリー: 1)-20℃程度の低温域での食品冷蔵が可能. 2) ビル空調,食品の冷蔵,及び空調・食品冷蔵を同時に行う ハイブリッドシステム等が実現可能. 3) 保冷車での冷凍機の代替冷蔵が可能. 17 想定される用途 ・食品冷蔵・殺菌・消臭 ・生鮮食品の流通(コールドチェーン) ・保冷車での冷凍機の代替冷蔵 ・食品冷蔵と空調のハイブリッドシステム 18 想定される業界 ・食品製造業,食品加工業,食品小売業,生鮮 食品流通業,運輸,食品ショーケース製造, 冷蔵システムの設備関連企業など 19 実用化に向けた課題 • 氷・氷スラリー生成システムの簡素化 • 実機に近いスケールでの実証実験. • 効率の更なる向上. ・殺菌効果の実証実験. 20 企業への期待 • 食品関連,食品流通関連企業と共同研究を希望 • 新たに食品の冷蔵・殺菌・消臭分野,生鮮食品流 通分野への展開を考えている企業には,本技術 の導入が有効と思われる. 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:氷の気泡含有率の高いオゾン氷、 該オゾン氷の製造方法及び製造装置 • 出願番号 :特願2009-199063 • 出願人 :学校法人中央大学 • 発明者 :松本 浩二・寺岡 喜和・清水 芳郎 • • • • 発明の名称:蓄熱材,蓄熱システム及び蓄熱材の製造方法 出願番号 :特願2007-217475 (特開2009-51878 ) 出願人 :学校法人中央大学 発明者 :松本 浩二・松本 健吾 22 研究プロジェクトの紹介 ・ プロジェクト名:機能性氷・氷スラリーの食品冷蔵 への展開 ・ 主管学会:日本冷凍空調学会 ・ 期間:2010.9~2012.8 ・ 主査:松本 浩二(中央大) ・ 参加企業:9社(東京電力,新日本空調,大氣社,高砂熱 学工業,東洋製作所,新菱冷熱工業, 前川製作所,ニチレイフーズ, 日立プラントテクノロジ-) ・参加大学:4校(中央大学,青山学院大学,信州大学, 東京海洋大学) 23 お問い合わせ先 中央大学 研究支援室 渡部,加藤 TEL 03-3817 - 1603 FAX 03-3817 - 1677 e-mail [email protected] 24
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