編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社 2014.9.1 第 1406 号 SMBC経営懇話会 TEL:フリーダイヤル 0120-7109-49 FAX:(03)5255-5564 URL:http://www.smbc-consulting.co.jp 【ワーク・ライフ・バランス実現のための】 「時間」「半日」単位の有給休暇運用のポイント 日本橋人事賃金コンサルタント 社会保険労務士小岩事務所 特定社会保険労務士 小岩 和男 1. 効果的に年次有給休暇の取得を促すために、「時間」「半日」単位付与を検討しましょう。 2. 「時間単位」年休の導入には、労使協定で内容を詳細に取り決める必要があります。 3. 「半日単位」年休は、労使協定の取り決めなしで比較的容易に導入できます。 労働基準法で規定されている年次有給休暇(以下「年休」という)は「日単位」での付与が原則ですが、労使協 定によって所定の事項を定めれば「時間単位」での付与が可能です。また、労働者が取得時季を指定して企業 が同意した場合、「半日単位」での付与も可能となります。 1.「時間単位」年休導入方法(「労使協定」が必要) 私的な簡易的用事であれば、時間単位年休は利便性が高いといえますが、導入には「労使協定」の締結が 必要です。 労使協定とは、導入する事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組 合、当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面協定のことです。 (1)労使協定で合意すべき4事項 ①時間単位年休の対象労働者の範囲 対象となる労働者の範囲を明確に決めておきます。仮に一部を対象外とする場合は、事業の正常な運 営との調整を図る観点から労使協定でその範囲を定めることとされています。なお、取得目的によって対 象労働者の範囲を決めることはできません。 ②時間単位年休の日数 5 日以内の範囲で定めます。前年度からの繰り越しがある場合であっても、当該繰り越し分を含めて 5 日以内となるので注意が必要です。 ③時間単位年休 1 日の時間数 1 日分の年休に対応する時間数を 1 日の所定労働時間数を基に定めます。日によって所定労働時間 数が異なる場合は、1 年間における 1 日平均所定労働時間数を基に定めます。時間に満たない端数があ る場合は時間単位に切り上げて計算します。 ④1 時間以外の時間を単位とする場合はその時間数 2 時間、3 時間等、1 時間以外の時間(分単位は不可)を付与単位とすることも可能です。ただし 1 日の 所定労働時間を上回ることはできません。 (次頁に続く) (1406-2/2) (2)時間単位年休に支払われる賃金額 ①平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③標準報酬日額(労使協定が必 要)をその日の所定労働時間数で割った額です。①~③のいずれにするかは、日単位の場合と同様、就業規 則等に定めることが必要です。 (3)時間単位年休 就業規則規定例 下記を参考に、自社版を作成してみましょう。 (時間単位年休)第○条 労働者代表との書面による協定に基づき、年次有給休暇の日数のうち、1 年について 5 日の範囲で次 により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という)を付与する。 (1)時間単位年休付与の対象者は○○に従事する労働者とする。 (2)時間単位年休を取得する場合の1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。 所定労働時間が 5 時間を超え 6 時間以下の者…6 時間 所定労働時間が 6 時間を超え 7 時間以下の者…7 時間 所定労働時間が 7 時間を超え 8 時間以下の者…8 時間 (3)時間単位年休は○時間単位で付与する。 (4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃 金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。 (5)上記以外の事項については、第○○条に規定する、日単位の年次有給休暇と同様とする。 2.「半日単位」年休導入方法 労働基準法には半日年休の規定がありません。通達【S.63.3.14 基発 150 号】により、労働者が希望し会社が 同意した場合であれば、労使協定がない場合でも半日単位年休が可能とされています。また、付与日数の上限 もありません。 (1)半日の考え方 労働基準法に規定がないので、就業規則等で考え方を取り決めることになります。例えば、次のような場合 は単純に半日で割り切れません。 (例)9 時~18 時が所定労働時間、途中 12 時~13 時が休憩時間の企業(=実稼働時間は 8 時間) この場合、休憩時間の前後で区分して午前休(3 時間分)、午後休(5 時間分)で区分する企業が多いようで す。時間数では差が出ますが、そもそも有給は請求によりますから、どちらを選択するかは自由です。就業規 則等できちんとルール化されていれば差が出ても問題はありません。ただし、時間差を避けるのであれば、前 述の時間単位年休の導入を検討するとよいでしょう。 (2)半日単位年休 就業規則規定例 下記を参考に、自社版を作成してみましょう。 (半日単位年休)第○条 会社は、年次有給休暇の付与単位を午前と午後の半日ずつに分割して付与することができるものとす る。労働者が当該半日単位年休を取得した場合は、0.5 労働日の年次有給休暇を取得したものとする。 【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-7109-49 Netpress 経営に関するタイムリーなトピックスを掲載しています! 詳しくはこちら
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