PDF版 - Barnes Thornburg

LABOR & EMPLOYMENT LAW
August 2014
2 週連続で組合側に有利な裁定が下る
先ごろ、組合に関する 2 件の裁定が下り、全国的に組合化活動に
拍車がかかることが予想されている。7 月 17 日、インディアナ州
では“Right to Work 法(RTW 法)”に同州憲法違反の裁定が下さ
れた。その翌週の 7 月 22 日、NLRB(全国労働関係局)では、マ
サチューセッツ州のメイシーズ百貨店に対し、1 店舗内の化粧品売
り場従業員による「マイクロユニット(極小規模の組合ユニット)」
が 3 対 1 で認められた。組合組成を促進するはずだった Employee
Free Choice Act 法案が頓挫したことから、新法実施ではなく、裁判、
行政手続きで組合に有利なポリシーを引き出して有利な材料にす
るという、最近の組合化戦術の傾向を示している。
全米鉄鋼労組対ゾーラー州司法長官事件は、2012 年 2 月に実施と
なったインディアナ州 RTW 法の違憲性に関する訴訟である。RTW
法とは、従業員の組合参加、又は従業員からの組合費徴収の義務
化を組合に対して禁じる法律で、同州では、同法実施日から組合
費を義務付ける団体給与契約の交渉が禁じられた。同法により、
違反には重度の軽犯罪(gross misdemeanor)として刑法罰則を科し、
また、従業員個人が金銭的損失、弁護士費用を申し立てられるこ
とになっていた。
概要
組合側に有利な裁定が最近 2 週連続
で下った。組合化に拍車をかけるもの
になるとして注目されている。
インディアナ州では、Right to Work
(“RTW”)法が憲法に反するとの裁
定が下り、同法が無効とされた。
マサチューセッツ州では小売店で“マ
イクロユニット”が NLRB に認められ
た。
これらの裁定は、新法実施ではなく、
裁判、行政手続きで有利な裁定を得る
という、組合化戦法の新たな傾向を示
している。
しかし鉄鋼労組は今回の訴訟事件で、RTW 法が政府による無償労
働の強要を禁じる同州憲法第 1 条 21 項「特別サービス条項」に違反しており、非組合員の従業員に無償でサ
ービスを強いられているのと同じことだと訴えた。インディアナ州レイク郡ジョージ・P・パララス裁判官は、
「個人の資産が政府に占有されたり、無賃労働させられるほど忌まわしいことはない」として、同法を違憲
とした。
インディアナ州側は、RTW 法は特別サービス条項が禁ずる「強要」にあたらないと抗弁したが、インディア
ナ労働局による行政手続き、個人の行動権によって、組合費を納めずに組合に無償労働を強要するものであ
るとみなした。インディアナ州は既に控訴を提起しているが、RTW 法はパララス裁判官の裁定によって無効
化された。
この裁定により、組合は従業員から組合費徴収を義務付ける団体契約が交渉できる。多くの組合を持つイン
ディアナ州の雇用者は、RTW 法の合法性がはっきりするまで組合との再交渉を禁じ、RTW 法実施以前に結ん
だ組合との団体契約に手をつけずにいた。今回のパララスの裁定により、組合は財源を増やし、新しい団体
契約を求めてくることが予想される。
btlaw.com |
本訴訟事件とは別に、レイク郡の事件でも RTW 法が同州憲法第 1 条 21 項に違反している、という裁定が出
されている。2013 年 9 月、インディアナ州裁判所のジョン・セディア裁判官はスウィーニー対ゾーラー州司
法長官事件で、RTW 法によって労組が無償でサービスを提供させられることは州憲法違反であるとされた。
本事件の裁定は RTW 法の実施を禁じ、その法的効力を無効として破棄しており、更に一歩進んだものになっ
ている。
この訴訟事件から 1 週間たたずに NLRB から出された裁定も、組合化を促すものとして注目を集めた。百貨
店の従業員グループの組合化を認めたメイシーズ対 Local 1445 国際食品商業労働組合(UFCW)事件である。
過去に NLRB で審議された Specialty Healthcare 対 Rehabilitation Center of Mobile 事件で定められた原則に則っ
て、NLRB は UFCW 労組の「マイクロユニット」組成を認めた。従業員全体として経営を考える雇用者にと
って新たな問題になっている。
メイシーズ(マサチューセッツ州サーガ店)化粧品売り場の従業員グループは、同店舗総従業員の 1/3 に満た
ないが、その他の従業員とは異なる特質をいくつも持っている。具体的には、「必要時に呼び出される待機
従業員」として雇用されており、他部門への異動がなく、他部門と接することもなく、コミッション制の雇
用であり、決められたレジだけで販売を行う、などが挙げられる。NLRB はこれらの要素により、同店の化粧
品売り場従業員がその他の社員と別に、UFCW 労組のユニットとなることを認めた。
メイシーズ側は「Specialty Healthcare 事件による原則(マイクロユニオンの承認)を用いると、扱う商品ごと
にマイクロユニットが作られかねず、事業に混乱と障害をもたらす」という異議を唱えたが、NLRB は意見書
の中で「純粋な憶測」として退けている。NLRB は「Specialty Healthcare 事件の原則がなくとも、このユニッ
トは適切である」とし、「メイシーズの化粧品売り場従業員は、他の売り場の従業員とは接することもない
非常にユニークなグループであるため、特別に他部門から独立して団体交渉の代表を立てることが出来る」
とした。
本事件での NLRB の裁定は、NLRB が引き続き組合側寄りであることを示している。組合は NLRB を通じ、
このように従業員を細分化してマイクロユニオン組成の可能性を拡大することが予想される。職単位でのマ
イクロユニオン化は、従来の組合回避対策に対抗する戦法といえる。従業員の中に特別な、分化したグルー
プを持つ雇用者は、マイクロユニットの組成に結びつくような、部門に特化したマネージメントや独特な販
売業務などが発生しないよう、部門単位で詳細に見直す必要があるだろう。
Employee Free Choice Act 法案が暗礁に乗り上げたことにより、組合化活動の焦点は裁判や NLRB の裁定にシ
フトしている。米国最高裁は、欠員補充によって出された NLRB の裁定(NLRB 対 Noel Canning 事件)を全
員一致で無効にしたが、第三者を介入させない企業マネージメントを望む雇用者にとって、組合は引き続き
障害になるといえる。
© 2014 Barnes & Thornburg LLP. All Rights Reserved. 書面での許可なく複製することを禁ずる。
本ニュースレターは、法律の最新情報、動向を御案内するもので、いかなる場合も法務サービス、法務アドバイスの意味を持ちません。本ニュ
ースレターは、一般的な案内目的でのみ配布されるものですので、個々の問題については弁護士までご相談下さい。
当 Newsletter に関するご質問は、山本真理(312.214.8335、[email protected])までお問い合わせ下さい。アドレス変更は、
[email protected] まで、E-mail にてご連絡下さい。
btlaw.com |
2