2011/12/17 学生後援会 資料 見る法則 -海難防止のための見張り(Look-out)- ふる 古 しょう 莊 雅 生 神戸大学 大学院 海事科学研究科 国際海事研究センター 1.はじめに (1) 海運の役割 (2) シーマンシップと国際条約(STCW条約) 2.見る法則 (1)「見る」能力と視力 (2) 視線方向と視対象物 (3)選択の法則 (4)対象物の選択 -選択要領- (5)客観的世界と主観的世界のズレ (6)人間の情報処理は3ビット (7)意識的観察 3.航海視環境 (1) 海運の役割 四面環海 船舶による物資・エネルギーの輸送 海上貿易の恩恵 ①木材 ②大豆 ③石炭 ④鉄鉱石 ⑤羊毛 ⑥綿花 ⑦原油 ⑧天然ガス ⑨小麦 3 (2)シーマンシップと国際条約(STCW条約) シーマンシップ(海事社会の目標) 安全で安心できる船舶の運航を実現 シーマンシップ(Seamanship)とは? 基本的な身のこなし方、作法、運用規範 辞書的意味 船舶操縦術or 操船術、船舶運用技術 100人の船長: 100通りのシーマンシップ “スマートで、目先が効いて几帳面、負けじ魂これぞ○○○ STCW条約 International Convention on Standards of Training, Certification and Watchkeeping for Seafarers (STCW), 1978 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約 1967年英仏海峡大型タンカー「トリーキャニオン号」座礁海難⇒船員の資 質と技能(シーマンシップ)に関する国際基準の必要性 1978年採択、1984年発効、1995年第1次改訂、2010年第2次改訂 4 平成19年 海 難 海難種類別海難原因分類 原 因 見張り不十分 航法不遵守 服務に関する指揮・監督の不適切 居眠り 信号不履行 船位不確認 主機の整備・点検・取扱不良 潤滑油等の管理・点検・取扱不良 船舶運航管理の不適切 針路の選定・保持不良 甲板・荷役等作業の不適切 操船不適切 水路調査不十分 気象・海象に対する配慮不十分 報告・引継の不適切 原因数 400 115 104 101 63 55 55 39 38 36 32 31 29 27 27 その他/補機等の整備・点検・取扱不良/漁労作業の不適切/荒天措置不 適切/船体・機関・設備の構造・材質・修理不良/発航準備不良/旅客・貨 物等積載不良/錨泊・係留の不適切/灯火・形象物不表示/操舵装置・航海 計器の整備・取扱不良/電気設備の整備・点検・取扱不良/火気取扱不良/ 速力の選定不適切/不可抗力 174 割合 % 30.1 8.7 7.8 7.6 4.7 4.1 4.1 2.9 2.9 2.7 2.4 2.3 2.2 2.0 2.0 ☆「見る」法則 (1)~(7) ①「見る」能力と視力とは必ずしも一致しない/ 視力とは? 非常にカンよく見る人/必要なものを全く見ない人 網膜上の相対的視力分布 (2)視線方向と視対象物 目が向いていても、視対象物(ター ゲット)を見ているとは限らない 人間の視野: 水平方向:200° 上下方向:120° 注視点範囲: 2° (視力と注視点範囲の図) (3)選択の法則 外の世界から 選択して見ている 人は外にあるす べてを見ているわ けではない。 (4)対象物の選択 選択の仕方は人に よって異なり、同 じものでも人によ り見え方が違う 女子学生: 「男性の顔」 男子学生: 「女性の裸」 ☆「見る」法則 (5) 客観的世界と主観 的世界のズレ 自分が見ているとお りに外界があるとは 限らず、外界にある とおりに自分が見て いるとは限らない。 ☆「見る」法則 (6) 人間の情報処理は3ビット ◎多くのものを同時に見ることはできない。 ◎ものがたくさんあると、認識できるのはそ のうちのいくつかに限られる。 【白丸カウント実験】 ☆「見る」法則 (6)【白丸カウント実験】 (6)人間の情報処理 ○次のスライドに示す 白丸の数 をカウントして下さい。 ○白丸の数を用紙に記入して下さい。 ○数えられない場合:“ - ” と記入。 白丸の数と正解率の関係 '09.08.23 Sun. 100 90 正解率 [パーセント] 80 70 60 1P 50 3P M1 40 4N 30 全体 20 4年 20090704 10 水先免講20090823 0 2 3 4 5 6 7 8 白丸の数 [個] 9 10 11 12 13 14 15 ⑦意識的観察 ○ 見ようとしていることは見落とさない。 ○ 見ようとしていないこと、他のことを見 ようとしていると、気づかないで見落と してしまう。 ************************************** ○ 見ようとしても見えないことがある。 見張り(Look-out)の盲点 ⑦意識的観察 こちらから見ようとしている ことは見落とさないが、見よう としていないことや他のことを 見ようとしていると、気づかな いで見落としてしまう 船は晴れた日に衝突する A:SHINKO MARU B:NEW AKASHIA C:FUKAE MARU D:RAINBOW BELL ☆ディジタル照 度計 型式:IM-3 測定範囲 0.01~199900 lx ☆プリンター 型式:DP-2 トプコン製 ↓照度計 10000 照度(lx) 1000 100 96/7/24 AM 96/7/24 PM 96/7/31 AM 96/7/31 PM 10 1 0.1 0.01 -15 96/9/4 AM 96/9/4 PM 96/9/5 AM 96/9/5 PM 深 江 丸 :7/24 足摺岬→佐多岬 7/31 尾 道 → 高 松 九越フェリー :9/ 4 博 多 →直江津 9/ 5 直江津 → 博 多 0 15 30 45 60 75 太陽高度(度) 航海船橋の水平面照度<太陽高度による標準化> 航海船橋の水平面照度-太陽高度との関係- 太陽高度 10°以上 10° 0° 航 海 船 橋 の 水 平 面 照 度 (lx) 1000~10000 1000 100 -3° 10 -6° 1 -9° -18° 0.01~0.1 (水平線視認不可)※ 天文薄明 開始/終了 [備考:※太陽方位を除く場合] (%) -45゚ -90゚ 25 0゚ 20 15 (%) -45゚ 45゚ 0゚ 20 15 10 10 5 5 90゚-90゚ 0 -135゚ 135゚ 180゚ (a) 太陽高度-9゚~10゚ 晴天:178 曇天:66 (%) 25 45゚ 90゚-90゚ 0 -135゚ -45゚ 135゚ 25 20 15 10 5 0 45゚ 90゚ 135゚ -135゚ 180゚ 180゚ (b) 太陽高度10゚~40゚ 晴天:328 曇天:127 晴天 0゚ 曇天 (C) 太陽高度40゚以上 晴天:204 曇天:97 ビジビリティレベル(VL)VL=ΔL/Δlmin 16 15 14 13 12 ビジビリティレベル(VL) ΔL: 背景の輝度と視対 象の輝度との差 <輝度差> Δlmin: 輝度差弁別閾 太陽高度10°以上 11 太陽高度2~5° 10 太陽高度0~2° 9 8 7 太陽高度-1~0° 6 5 4 3 見張り (Look-out) の盲点 2 1 0 0 1 №9 2 №10 3 №16 4 5 距離(海里) 近№16 近似線 6 7 近№9 8 近№10 図1.31 船舶までの距離に対するビジビリティレベル(VL) 9 ご静聴ありがとうございました。
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