平成27年度税制及び税務行政 の改正に関する意見書 平成26年3月20日 東京税理士会 【目 次】 Ⅰ.意見書の基本的考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.意見書作成に当たって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.あるべき税制構築のための基本理念・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 (1)負担能力に応じた公平性に配慮した税制 (2)立法過程などの透明性に配慮した税制 (3)国民の納得が得られる税制 (4)時代に適した税制 Ⅱ.今後の税制改革について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.平成 26 年度税制改正大綱について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (1)消費税の軽減税率制度 (2)デフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置 (3)税制抜本改革の着実な実施 ~車体課税、給与所得控除の見直し~ (4)復興支援のための税制上の措置 (5)円滑・適正な納税のための環境整備 2.国際課税に関する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3.マイナンバーについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 4.法人税の実効税率の引き下げと課税ベースの拡大について・・・・・・・・・ 7 Ⅲ.重要な改正要望事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 【一.所得税及び法人税に関する事項】 1.所得控除全体の見直しを行い、その中でも人的控除については税額控除 制度等へ移行すること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.土地建物等の譲渡所得を総合課税に変更し、これらの所得の損失の 損益通算等を認めること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 3.報酬に係る復興特別所得税の源泉徴収制度を不適用とすること【最重要項目】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 4.いわゆるNISAにおいて、設定後5年の取引はすべて非課税とし、 相続等による非課税制度終了時のみなし譲渡を廃止すること(新規要望) ・・・・ 10 5.役員給与の損金不算入規定の見直しを図ること【最重要項目】 ・・・・・・・・・ 11 6.金銭債権の貸倒れ確定時期を弾力化すること・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 7.特定の資産の買換えの場合等の課税の特例の面積制限を廃止すること・・・・・ 11 【二.消費税に関する改正要望事項】 8.基準期間又は特定期間の課税売上高により納税義務の有無を判定する 納税義務免除の制度を廃止し、新たに小規模事業者に配慮した申告不 要制度又は基礎税額控除制度を創設すること【最重要項目】 ・・・・・・・・・・ 12 9.簡易課税適用事業者が高額な設備投資等をした場合は、期首にさかの ぼって原則計算への変更を認めること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 【三.相続税及び贈与税に関する事項】 10.二世帯住宅の小規模宅地等の減額の特例の適用について、構造上区分 されている一棟の建物(集合住宅(マンション等)を除く)の区分所 有登記の有無による差異を解消すること(新規要望)【最重要項目】・・・・・・・ 13 11.納付困難要件の判定に係る財産の範囲の見直しを図ること【最重要項目】・・・・ 14 12.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直しを図ること・・・・・・ 14 (1)5年間の平均従業員数が当初の8割を下回った場合に納税猶予の全 額が期限確定するのではなく、下回った割合に応じた納税猶予税額 のみの期限が確定する制度とすべきである。 (2)資産保有型会社の判定時期を現行の期間判定から、年に一度設定さ れる報告基準日において判定する制度に改めるべきである。 (3)贈与税の納税猶予の適用があった場合に、贈与者の存命中に受贈者 が対象株式を次世代等へ生前贈与した場合にも、先の贈与より一定 期間経過後かつ次世代等が贈与税の納税猶予の適用を受けることな どの条件のもと、先の贈与税額の猶予税額を免除すべきである。 (4)資産保有型会社の判定における割合算定方法を見直すべきである。 (5)贈与税の納税猶予が打切りとなった場合に、相続時精算課税制度の 選択を可能とすべきである。 【四.その他国税に関する事項】 13.印紙税を廃止すること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 【五.地方税に関する事項】 14.個人住民税の均等割及び所得割の非課税の基準と所得税の基礎控除を 統一すること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 【六.税務行政に関する事項】 15.国税通則法第1条を改正し納税者権利憲章を制定すること・・・・・・・・・・・ 16 16.国税不服審査制度の抜本的な見直しを図ること・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 Ⅳ.その他の改正要望事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 【一.所得税及び法人税、消費税に関する事項】 1.経済的利益に対する給与課税の適正化を図ること・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.事業から対価を受ける親族がある場合等の必要経費の特例規定を撤廃すること・・ 19 3.給与所得者に対する課税制度の見直しを図ること・・・・・・・・・・・・・・・ 19 4.不動産所得に係る損益通算制度の特例を廃止すること・・・・・・・・・・・・ 19 5.個人である白色申告者の純損失等の繰越控除の期間を5年にすること・・・・・ 20 6.所得控除における雑損控除の順序の取扱いの見直しを図ること・・・・・・・・ 20 7.交際費課税について、経営の実態に適合した課税対象の範囲となる様 に改善整備を図ること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 8.個人である青色申告者の純損失の繰越控除の期間を青色申告法人と同 様に9年にすること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 9.特定同族会社の留保金課税制度を全面廃止すること・・・・・・・・・・・・・ 21 10.中小企業の賞与・退職給付引当金制度を復活すること・・・・・・・・・・・・ 21 11.一括償却資産の損金算入制度等の廃止及び少額減価償却資産等の 損金算入限度額を引き上げること(30 万円未満) ・・・・・・・・・・・・・・・ 21 12.退職所得課税の見直しを図ること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 【二.消費税に関する事項】 13.中間申告による納税を任意に選択できる制度を新設すること・・・・・・・・・ 22 14.仕入税額控除の帳簿等記載要件を簡略化すること・・・・・・・・・・・・・・ 23 【三.相続税及び贈与税に関する事項】 15.相続財産に関する費用は課税財産から控除すること・・・・・・・・・・・・・ 23 16.相続時精算課税制度の見直しを図ること・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 17.財産評価の基本的事項を本法に規定するとともに公正な評価のための 整備を図ること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 18.相続税の更正の請求に関する特則事由の見直しを図ること・・・・・・・・・・ 25 【四.地方税に関する事項】 19.住民税に関する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 (1)少額配当に係る非課税措置を復活すること (2)法人住民税の均等割の算定基礎の見直しを図ること 20.事業税に関する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 (1)個人事業税の事業主控除額の引き上げ及びその対象事業の見直しを図ること (2)法人事業等の損失の繰戻還付制度を創設すること (3)社会保険診療等に係る事業税の非課税制度の見直しを図ること 21.不動産取得税の課税要件の見直しを図ること・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 22.固定資産税に関する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 (1)固定資産税の免税点制度等の見直しを図ること (2)土地、家屋の評価方法を見直しすること (3)減価償却制度の改正に伴い償却資産の課税標準額の算定方法の見直しを図ること 【五.税務行政に関する事項】 23.行政立法手続に関する規定を創設すること ・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 24.税理士を納税者の代理人として選任できる旨の規定を創設すること・・・・・・ 28 25.税務調査手続に関する事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 (1)反面調査の通知義務及び制限規定を定めること (2)事前通知を要しない調査であった場合における当該理由の通知規定を定めること 26. 「災害税制に関する基本法」を恒久法として整備すべきこと・・・・・・・・・・ 29 27. マイナンバー法に関する事項(新規要望) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 (1)個人番号関係事務実施者等のセキュリティの具体的方策を周知徹底すること (2)番号の記載誤りについて、補正制度を導入すること (3)税務調査時の番号利用について、手続規定を設けること (4)マイ・ポータルは電子申告と連携すること (5)マイナンバー制度に関係する命令等を制定する際は、例外なくパブリック・コメン トを実施すること Ⅰ.意見書の基本的考え方 1.意見書作成に当たって 本会は、平成 27 年度税制改正に関する要望事項の収集のため、本会関係役員及び支 部関係役員等より意見を聴取し、また本会法対策委員会から各支部法対策委員会等に 対して任意による意見の提出依頼を行った。その結果、当該税制改正に係る要望事項 について、122 件の意見が提出されている。 本意見書は、これらの意見要望を参考とし、かつ、これまで本会が作成した税制改 正に関する意見書及び日本税理士会連合会の税制改正に関する建議書等を比較検討し て、支部長会の協議及び理事会の議決を経て取りまとめたものである。 2.あるべき税制構築のための基本理念 租税には、国や地方公共団体などの公共部門の活動を維持するための財源として、 金銭その他の財貨を法律に従い、強制的に徴収する機能を有している。安定財源の確 保という租税の直接的な目的を達成するためには、租税の社会的経済効果を考慮しつ つ、税制を考えていく必要がある。 近年における経済のグローバル化の急速な進展は、わが国の企業も自国の市場経済 に留まることなく、世界的な市場を視野に入れた経済活動へと変貌している。そのた め、法人所得課税においては、わが国企業の国際競争力を削ぐことのないように配慮 すべきである。また、企業の経済活動に対する税制の検討は公平性や中立性を尊重す べきであり、租税特別措置法に見られる特定業種の保護政策は必要最小限に留める必 要がある。 また、これまでわが国では、終身雇用の理念や退職金制度などにより、企業が中心 となって雇用や退職後の生活を支援していた。高齢者の介護等については、主に家族 の連携により行ってきた。しかし、多くの企業は国際競争や長引く不況の中で、終 身雇用の理念が衰退し、さらに核家族化や少子高齢化が進んだことによって、行政の 支援なしでは国民の生活環境を守りきれなくなっている。これにより、現在では、雇 用や医療・年金・介護などの社会保障費が急激に増加し、深刻な財政不足に陥ってい る。財政を健全化を推進するには、所得課税中心では賄いきれるものではなく、所得・ 消費・資産のバランスよい課税を行っていくことが必要である。 そこで、あるべき税制の具体化にあたっては、下記の視点を十分配慮し、税制を構 築していくべきである。 (1)負担能力に応じた公平性に配慮した税制 租税は、負担能力に応じて公平に配分されるべきで、租税原則の中で最も重要視 されているところである。公平の原則で留意すべき点は、水平的公平や垂直的公平 とともに世代間の公平も考慮していく必要がある。 1 (2)立法過程などの透明性に配慮した税制 税制は、国民生活、経済活動、さらには社会制度そのもののあり方に密接に関係 するものであり、税に対する信頼性を確保することは重要で、そのためには広く国 民の意見を吸い上げるとともに、立法過程についても透明性を高めていかなければ ならない。 (3)国民の納得が得られる税制 税制は、納税者の権利についても十分配慮し、誰にでも理解できる簡素で納得の 得られるものでなければならない。 (4)時代に適した税制 税制は、景気回復などの経済政策並びに少子高齢化社会への対応や所得再分配な どの社会政策といった様々な政策を考慮しつつ、その時代に適した税制を構築して いかなければならない。 2 Ⅱ.今後の税制改革について 政府は、わが国の直面する最重要課題として、デフレからの脱却と経済再生の実現、そ の目線の先には財政の健全化を掲げている。これに基づき、平成 25 年度税制改正及び平成 26 年度税制改正大綱では、成長戦略としての政策的な税制の整備が多く取り込まれており、 政府の構想の大胆な取り組みを読み取ることができる。 財政の健全化の議論を行うためには、先ずわが国の真の財政状態を把握する必要がある。 しかし、現行の予算に基づく現金主義会計の手法だけでは、適正な財政状態を把握するこ とは困難である。政策等に基づく増税や歳出削減の状況に対して国民の理解を得るために は、複式簿記に基づく損益会計の手法を取り入れて財務諸表の信頼性を高め、資産評価に ついて時価法を採用することにより検証可能性を向上させるべきである。 税制改革の方向性は、平成 25 年 12 月 12 日与党から公表された「平成 26 年度税制改正 大綱」及び平成 25 年 12 月 24 日閣議決定された「平成 26 年度税制改正の大綱」の改正案 等から捉えることができる。そこで、当該改正案等の基本理念を踏まえ、主要項目につい て、意見を付すこととする。なお、 「 」書は、平成 26 年度税制改正大綱(与党)の基本 的考え方(以下「与党大綱」という。)を要約したものである。 1.平成 26 年度税制改正大綱について (1)消費税の軽減税率制度 消費税の軽減税率制度は、消費税率引き上げに伴う低所得者世帯(年間総収入金額 が 248 万円以下の世帯とする。以下同じ。)に対する配慮等として検討されている。 しかしながら、同制度の導入は、低所得者世帯に対する効果が限定的であるのに対 して、税収減収額=逸失税収額が多額になるという点に最大の問題がある。 また、軽減税率対象品目の選定や中小事業者の事務負担、中小特例の形骸化という 観点からも問題のある制度である。 したがって、同制度は、次に掲げる理由により、導入するべきではない。 酒類・外食を除く「全食料品」に対して、消費税率 10%時に軽減税率5%を適用 ① した場合の逸失税収額は、1兆 3,056 億円と試算される。このうち、低所得者世帯 に効果が及ぶ軽減税額の総額は 1,632 億円と算出され、残りの1兆 1,424 億円(逸 失税収額の 87.5%)は、低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となり、低所得 者に対する負担軽減策としては極めて効率の悪い制度である。 ② 軽減税率適用対象品目を「基礎的食料品」に限定した場合における逸失税収額は、 8,352 億円となると試算される。このうち低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額は 1,056 億円で、残りの 7,296 億円(逸失税収額の 87.4%)は、低所得者世帯以外の世 帯に対する軽減額となり、低所得者に対する負担軽減策としては①と同様に効率の 悪い制度である。 3 ③ 低所得者世帯の年間支出額に占める酒類・外食を除く「全食料品」に対する支出 の割合は、21.89%と試算され、低所得者世帯に対する消費税負担軽減策としては十 分ではない。低所得者世帯の消費税負担を十分に軽減させるためには、低所得者世 帯の消費支出行動を調査して、軽減税率適用対象品目を食料品以外にも際限なく広 げなければならない。しかしながら、軽減税率適用対象品目の拡大は、税収を大き く減少させ、また、低所得者世帯以外の世帯への効果もさらに大きくなることから、 望ましいことではない。 ④ 軽減税率を適用した場合、事業者の事務負担が増加する。また、事業者によって は、消費税還付申告のために課税事業者(本則課税)を選択せざるを得ない状況を 誘引し、結果として、小規模事業者に配慮した事業者免税点制度・簡易課税制度が 形骸化する。 上述のとおり、消費税の軽減税率制度は、必要な財源を確保することが困難であり、 関係事業者を含む国民の理解を得ることは困難である。そのため、同制度は、消費税 率 10%時に導入することは適当ではなく、現行の単一税率を維持するべきである。 ところで、単一税率を前提に逆進性の緩和を考える上において、消費税の給付付き 税額控除制度は必須な措置となる。それは、給付付き税額控除制度が軽減税率に比べ 事務負担が少なく、給付も低所得者層に限定されるため、歳出を低く抑えることがで きるからである。 そこで、マイナンバー制度の施行によって給付付き税額控除制度の課題が払拭され るまでの間は、簡素な給付制度を推進する。次の段階では、マイナンバー制度の施行 と同時に、給付付き税額控除制度を導入する。これにより、わが国は、低所得者世帯 の生活環境に公平と安心を提供し、その役割を全うすることになる。 (2)デフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置 政府は、「景気回復の実感は中小企業や地域経済にはまだ十分浸透していない」と 認識している。多くの中小企業の実情は、本指摘のとおりであろう。その一方で、 平成 25 年における実質金利はマイナスまで低下し、予想物価上昇率は最高で約2% まで上昇している。このデータからは、政府の金融政策や設備投資促進税制の推進 等によって、少なからず景気浮揚の後押しになったことが感じられる。与党大綱で は「経済の好循環を早期に実現する観点」から、民間投資を促す生産等設備投資促 進税制の創設及び消費拡大のための賃上げ支援策として所得拡大促進税制の拡充を 行っている。景気浮揚は、現下の中小企業経営の喫緊のテーマであり、政策のビジ ョンに即して税制改正が有効に機能することが求められる。 また、「消費の拡大を図る観点」からは、近年交際費課税の見直しの検討が行われ てきた。今般、大企業も含め、接待等に伴う飲食のために要した費用は、支出額に 対して 50%相当額の損金算入を認める措置を講じている。法人にとっては、業務に 不可欠な費用である交際費等の取扱いに対して、損金としての本質を尊重した大き な転換である。 さらに政府は「日本経済の真の再生のためには、地域経済の活性化を図る必要が 4 ある」としている。少子高齢化及び郊外化・都心空洞化等の進展に歯止めをかける ため、政府が目指す中心市街地の活性化やコンパクトシティの形成支援としての政 策税制措置の効果は、大いに期待したい。 (3)税制抜本改革の着実な実施 ~車体課税、給与所得控除の見直し~ 自動車取得税等の適用税率の引き下げ及び廃止等の車体課税の見直しは、 「経済情 勢に配慮する観点から消費税率引き上げの前後における駆け込み需要及び反動減の 緩和も視野に入れた」措置である。しかし、同じ時期における本趣旨に反する軽自 動車税等の引き上げは、消費税率の引き上げに伴う購買意欲の低下、都市圏以外に 居住等している国民の移動手段の調達・保有に対する圧迫が懸念される。 給与所得控除は、「現行の水準が所得税の課税ベースを大きく浸食しており、実際 の給与所得者の勤務関連支出に比しても、また、主要国の概算控除額との比較にお いても過大となっている」として見直しがなされている。しかし、単に高所得の給 与所得者に上限を設けるという見直しでは、給与所得控除の本来の機能を尊重した ものとはいえない。 (4)復興支援のための税制上の措置 与党大綱の「東日本大震災からの復興支援は税制面においても最優先課題であり、 起業や新設企業の誘致、被災者の住宅確保に関する支援制度の拡大及び現行制度の 要件緩和等」を実施することについては、大いに同調することができる。 さらに、復興支援を急進するためには、税制面のみならず、被災者に対する補助 金交付のための予算措置等、生活基盤の早期安定に資する後押しが必須である。 (5)円滑・適正な納税のための環境整備 ① 税理士制度の見直し 税理士制度の社会的機能の拡充は、 「申告納税制度の円滑かつ適正な運営」に直 結するものである。その意味において、税理士法第 30 条の規定による書面を提出 している代理人税理士への事前通知の規定の整備が示されたことを評価したい。 「税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点」から、税理士制度のあ り方については、今般の改正に留まることなく、引き続き議論を推し進める必要 がある。 ② 猶予制度の見直し これまで換価の猶予を適用するか否かは、税務当局の裁量に委ねられ、かつ、 換価の猶予を適用しないことに対する納税者からの不服申立ての手続きも認めら れていなかった。今般の改正において、滞納者に係る事業の継続又は生活の維持 を尊重し、納税者の申請に基づく換価の猶予が可能になったことは大きな転換と いえる。 5 ③ 国税不服申立制度の見直し 国税通則法の事後救済手続に関しては、平成 26 年度税制改正大綱において、行 政不服審査法の見直しに伴う改正の方向性が具体的に示された。この方向性は、 本会がこれまで要望してきた内容に概ね沿うものであり評価したい。行政不服審 査法の改正は平成 18 年から政府で検討が進められてきたものであるが、長期間に 渡る検討の成果であるから、できるだけ早期の改正実現を期待する。 ④ 遡及立法について 税制改正に伴う遡及適用については、租税法律主義における予測可能性や法的 安定性を害されることがないように、本会は「租税法規不遡及の原則」を強く主 張してきたところである。 この点、平成 26 年度税制改正大綱では、ゴルフ会員権等の譲渡損失の損益通算 に制限を設ける改正につき、「平成 26 年4月1日以後に行う資産の譲渡等につい て適用する。 」こととされており、予測可能性と法的安定性への配慮がみられるこ とを評価したい。 2.国際課税に関する事項 (1)法人税等の国際課税原則の見直し 「外国法人及び非居住者に対する国税の課税原則について、総合主義から帰属主義 に見直される」ことは、租税条約加盟国と非加盟国との課税原則におけるダブルスタ ンダードからの脱却、国際的二重課税及び二重非課税を払拭することになろう。 これにより、わが国法人税等の課税は、グローバルな視点において公平に実施され ることが期待される。 (2)デジタルコンテンツに係る消費税課税の適正化 インタ-ネットを通じて配信が行われる電子書籍・音楽等のデジタルコンテンツに 係る国内取引・海外取引の判定は、役務提供者の役務提供に係る事務所等の所在地に よって行うこととなっている。そのため、国内事業者が配信した役務に消費税が課税 されるのに対して、国外事業者が配信した役務に対しては、国外取引として消費税が 課税されていない。また、国外事業者が国内事業者に対して無形資産の譲渡を行った 場合にも、国外取引として消費税が課税されない。 こうした状況を放置することは、国内事業者が国際的な競争上不利な立場に立たさ れることになり、国内事業者の経営を圧迫するとともに、わが国経済競争力の低下に も派生することになる。 消費税は、消費地において課税するのが原則であるから(仕向地主義)、このような 取引においても消費税を課税する仕組みを構築すべきである。そこで、国内消費者に 配信する国外事業者に対しては、EU加盟国で導入されている課税事業者登録制度(消 費者向け取引の場合)にならって、課税事業者としての登録並びに消費税の納税義務 を課すべきである。また、国外事業者より無形資産を購入した国内事業者については、 EU加盟国で導入されているリバース・チャージ制度(事業者間取引の場合)になら 6 って、国外事業者に代わって当該取引に係る消費税を国内事業者が申告納税する制度 を創設すべきである。 3.マイナンバーについて マイナンバー制度については、いわゆる番号関連4法案が平成 25 年5月末に公布さ れ、平成 28 年1月からの番号利用開始が予定されている。当面、個人番号については、 社会保障、税及び災害対策の3分野についての行政内の利用に限定されているが、源 泉徴収義務や支払調書の提出義務のある民間事業者等(代理人たる税理士事務所等を 含む。以下同じ。)は、番号の管理者として、安全確保の必要性から、重大な責務を負 うことになる。番号利用開始に向けて、番号の管理者となる民間事業者等へのセキュ リティ対策の周知徹底等、円滑な導入に向けたきめ細やかな対応が必要である。 平成 29 年1月から運用開始が予定されているマイ・ポータルについては、情報検索 の効率化というメリットを税務行政においても活かすためには、既存の電子申告シス テムとの効率的な連携が必要である。 また、今後予定されている法定調書の拡充や個人番号の利用範囲の拡大などの検討 については、中小事業者の事務負担が過度とならないよう、慎重になされるべきであ る。 マイナンバーの制度設計にあたっては、行政事務の効率化だけでなく納税者利便の 向上に資する観点が重視されなければならない。 4.法人税の実効税率の引き下げと課税ベースの拡大について 近年における先進諸外国の法人税制は、国際競争力の強化、国内の雇用促進、国外 からの投資拡大など、産業の空洞化を防止する観点から、実効税率の引き下げが行わ れている。その一方で法人税の実効税率の引き下げを行う場合には、それに見合う財 源の確保を図る必要があり、同時に法人税の課税ベースの拡大が行われている。 わが国法人税の課税ベースの拡大にあたっては、税制の公平性と透明性の観点から、 租税特別措置を可能な限り縮減するべきである。ところが、現下では、欠損金の繰越 控除期間9年の短縮、繰越額に制限を設けるなどの案が浮上している。課税ベースを 拡大する制度の選定は、本来の制度としての機能を果たしていないものを対象とすべ きであり、単に税の減収効果が大きいという理由のみで議論に浮上すること自体、租 税負担の公平を著しく阻害することになる。そのため、課税ベースの拡大にあたって の制度の見直しは、慎重に検討しなければならない。 7 8 Ⅲ.重要な改正要望事項 意見書における重要な改正要望事項は、次のとおりである。 【一.所得税及び法人税に関する事項】 1.所得控除全体の見直しを行い、その中でも人的控除については、税額控除制度等へ移 行すること。 (所法 72~86)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 一般家庭の世帯構成も従来とは変わってきており、現行のすべての所得控除に存在意 義があるとは考えられない。 また、現行の所得控除制度は、適用税率の高い高所得者に有利な制度であり、所得に よる格差が生じているのが実情である。 そこで、その所得による格差を是正するために、現行の所得控除のように、控除しき れない部分が足切りとなってしまう制度よりも、控除しきれない部分については還付等 される「給付付き税額控除制度」等の導入を検討すべきである。 特に人的控除については、課税最低限を考慮した上で、それぞれの必要性を検討し、 それらの多くのものは、給付付き税額控除制度等へ移行すべきである。 なお、人的控除以外のものについては、それぞれの必要性を見直す必要がある。 2.土地建物等の譲渡所得に対する課税は、分離課税から総合課税に変更し、これらの所 得の金額の計算上生じた損失の金額は損益通算および翌年以降の繰越しを認めること。 (措法 31、同 32 等)(継続要望) 【意見及び理由】 土地建物等の譲渡所得については、長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分の上、分離課 税制度を適用しているが、所得金額が少ない階層には一層割高となり問題が多いので、 総合課税に移行すべきである。生活に通常必要でない資産の譲渡による損失以外の損失 は、給与所得、事業所得など他の所得との損益通算が認められており、租税法の基本で ある担税力に見合った課税の実現が計られている。また、バブル崩壊後、不動産の譲渡 による損失が多くの納税者に生じており、このような経済変動に租税法が対応すること は社会的にも求められていることである。 不動産の譲渡損失を他の所得との損益通算により、土地の流動化を促進し、課税の公 平を計ることは、経済の活力を取り戻し、国民生活の向上にとって不可欠の政策であり、 他の譲渡益の生じる資産譲渡との譲渡所得内での通算のみでは、一部の資産家を利する のみである。 3.報酬に係る復興特別所得税の源泉徴収制度を不適用とすること。 (復財法 28)(継続要 望・一部修正)【最重要項目】 【意見及び理由】 復興財源確保法によって、復興財源の1つとして復興特別所得税(以下「付加税」と いう。)が課され、所得税の納税義務者はその納付義務を負い、源泉徴収を行う場合にも 9 付加税を考慮した税率で行う必要がある。 具体的には、 (1)給与等に係る源泉所得税、 (2)利子・配当等に係る源泉所得税、 (3) 報酬等に係る源泉所得税のケースがあるが、(1)の給与所得者の大半については年末調 整制度があり、(2)の利子・配当所得については、一定のケースを除いては申告不要で あるのに対し、(3)の報酬については、ほとんどの受給者が確定申告によって精算する という大きな違いがある。 そもそも、報酬等を支払う際に源泉徴収を行うのは、国が税金を徴収する事務の効率 化及び便宜性を考慮したものであることから、10%(又は 20%)という分かりやすい税 率にしているところ、付加税を考慮した 10.21%にした場合には、支払者に多大な事務負 担が課される結果となる。 特に実務上は、源泉徴収後の手取額から支給総額を逆算する方式が採られることも少 なからずあることからすると、事務処理はかなり煩雑になるとともに、計算上のミスが 生じやすくなることも容易に想定できる。 確かに、受給者が申告不要のケースもあるが、そのほとんどの者が確定申告により付 加税の負担を含めて精算する実情に加え、多大な事務負担の増加による労働力のロス等 を総合的に考えた場合、いたずらに杓子定規な取扱いをするよりも、企業や事業者の事 務処理の簡便化を優先すべきことから、報酬に係る源泉所得税については、付加税を不 適用とすべきである。 4.いわゆるNISAにおいて、設定後5年の取引はすべて非課税とし、相続等による非 課税制度終了時のみなし譲渡を廃止すること(措法第 37 条の 14)(新規要望) 【意見及び理由】 これは、個人投資家の証券市場への参加拡大による家計の安定的な資産形成の支援と 経済成長に必要な成長資金の供給拡大の観点から非課税範囲の拡充と利便性の向上のた めの要望である。 非課税口座内の少額上場株式等の非課税制度は、年間 100 万円を限度とし、上場株式 等の取得後最長5年以内の取引であるが、上場株式等の売却又は解約を行った場合には、 その時点で非課税制度は終了し、譲渡分の非課税枠を再利用することができない。した がって、再投資を行う場合には、新たに非課税枠を消費することになり、最大 500 万円 の投資総額に非課税枠を継続的に使用することはできず、個人投資家の投資額の拡充の 観点からも、5年間に限り非課税枠の再利用を認めるべきである。 また、5年間の非課税期間の経過または相続等によって非課税制度が終了した場合に は、その時点で譲渡があったものとみなし、当該株式等は時価で取得されたものとさる。 限定承認以外の相続等による承継の場合には、被相続人の譲渡損益も含め相続人が譲渡 損益の精算を行うことに対する国民のコンセンサスが得られていること及び当事者の意 思に基づかない自然な移転でないため、みなし譲渡とせずに、本来の取得費等の引き継 ぎを認めるべきである。 10 5.役員給与の損金不算入規定の見直しを図ること。 (法法 34) (継続要望・一部修正) 【最 重要項目】 【意見及び理由】 現行法における役員給与は、「定期同額給与」・「事前確定届出給与」・「利益連動給与」 のいずれかに該当しなければ損金不算入、さらにそれらに該当する場合であっても、「不 相当に高額」か「仮装・隠ぺい」によるものは損金不算入という、いわば原則損金不算 入という規定になっている。 その中でも、特に「定期同額給与」・「事前確定届出給与」という概念は、いわゆる社 会通念上の報酬・賞与とは異なった税法固有の概念となっているため、たとえば期中に 経営判断から役員報酬を引き下げた場合に、形式的にその概念に該当しないということ で、課税処分を受けるケースも生じている。 役員給与の本質は職務執行の対価であるから、恣意性のないものについては損金算入 されなければならない。 したがって、損金不算入となる役員給与を限定した上で別段の定めとする条文構造に 見直すべきであるとともに、その内容も課税要件が明確かつ常識的なものにすべきであ る。 6.金銭債権の貸倒れ確定時期を弾力化するとともに法令で規定すること。 (法基通9-6 -1~3)(継続要望) 【意見及び理由】 金銭債権の貸倒れの計上の時期は、その金銭債権が法的に回収不能となった時期とさ れている。しかし、金銭債権が通達で定める貸倒れ計上時期までに数年を要したりある いはその確定が不明確となったりすることがある。そのため債権者が貸倒損失を計上で きない状態におかれることが実務上見受けられる。 そこで、貸倒損失の計上時期を債権者集会協議決定等の時期(法人税法施行令第 96 条 第1項第1号のイ~二の定める時期)まで前倒しを法定すべきである。また、実務上定 着している貸倒損失の取扱いについては、基本通達での規定から法令で規定し、その適 用要件を明確にすべきである。 7.特定の資産の買換えの場合等の課税の特例の面積制限を廃止すること。(措法 37①九, 措法 65 の7①九)(継続要望) 【意見及び理由】 平成 24 年度税制改正において、特定の資産の買換えの場合等の課税の特例における長 期所有の土地等及び建物等から国内にある土地等、建物及び機械装置等への買換え(い わゆる9号買換え)に係る買換資産の見直しが行われ、買換取得土地等が 300 ㎡以上の ものに限定されることとなった。 従来から買換取得土地等は、譲渡土地等の面積の5倍を超える部分は圧縮記帳の対象 とされない面積制限の規定(措法 65 の7②)が存置されており、これら買換取得土地等 に対する面積制限の規定により 60 ㎡(300 ㎡÷5)までの譲渡土地等については買換取 得資産として土地等を取得できないこととなった。 この改正により、譲渡土地等の面積制限及び取得土地等の面積制限の要件が厳しすぎ 11 るため、例えば、首都圏等の主要都市で土地等を譲渡した場合又は共有土地等を譲渡し た場合等は、9号買換えが適用できないこととなり、土地等の有効活用等が阻害される 要因となるであろう。そこで、9号買換えにおける取得土地等の 300 ㎡の面積制限は廃 止すべきである。 なお、個人の事業用資産の買換え特例の規定についても同様である。 【二.消費税に関する改正要望事項】 8.基準期間又は特定期間の課税売上高により納税義務の有無を判定する納税義務免除の 制度を廃止し、新たに小規模事業者に配慮した申告不要制度又は基礎税額控除制度を 創設すること。(継続要望・一部修正)【最重要項目】 【意見及び理由】 現行の納税義務免除の制度は、免税事業者と課税事業者とで価格設定のあり方が異な るとの前提にたち、課税期間開始前の基準期間又は特定期間の課税売上高により納税義 務の有無を判定している。しかしながら、この制度では、課税期間の課税売上高が多額 となった場合でも納税義務が生じない場合や、課税期間の課税売上高が少額となった場 合でも納税義務が免除とならない場合があり、小規模事業者への配慮という制度趣旨に そぐわない事象が散見されている。 また、免税事業者が多額の設備投資を行い、消費税の還付を受けようとする場合、課 税期間開始前に「課税事業者選択届出書」を提出しなければならないが、この取扱いが すべての免税事業者に周知・理解されているとは言い難く、また、すべての免税事業者 に課税期間開始前に届出書を提出すべきか否かという高度な判断を求めることは困難で ある。届出書の事前提出を行わず、本来受けられるべき消費税の還付を受けられていな い事例は少なくない。 こうした弊害を解消するためには、現行の納税義務免除の制度を廃止し、すべての事 業者を課税事業者として取り扱うこととし、その上で、小規模事業者に配慮した新たな 制度を創設することが必要である。具体的には、課税期間の課税売上高が1千万円以下 の場合には、売上げに対する消費税額と控除税額を同額とみなすことにより、申告・納 付を不要とすることができる制度を創設すべきである。 9.簡易課税適用事業者が高額な設備投資等をした場合は、期首にさかのぼって原則計算 への変更を認めること。 (消法 37・37 の2)(継続要望) 【意見及び理由】 簡易課税適用事業者が不意な設備投資をした場合に備え、事前提出が義務付けられて いる「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」について、当該届出書の提出日の属する 課税期間からの原則計算への変更を認めるべきである。 (注)消費税法 37 条の2(災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額 の控除の特例の届出に関する特例)では、災害等に伴う不意な設備投資に備え、期首に さかのぼって簡易課税制度の適用を受けることをやめることが認められている。したが って、本件要望についても、届出制度の趣旨に反するものではない。 12 【三.相続税及び贈与税に関する事項】 10.二世帯住宅の小規模宅地等の減額の特例の適用について、構造上区分されている一棟 の建物(集合住宅(マンション等)を除く)の区分所有登記の有無による差異を解消 すること。(措法 69 の4③二イ、措令 40 の2④⑩)(新規要望)【最重要項目】 【意見及び理由】 措置法施行令40の2⑩において措法69の4③二イに規定する政令で定める部分は「被 相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関する法律第1条の 規定に該当する建物である場合には、当該被相続人の居住の用に供されていた部分」と されたため、いわゆる二世帯住宅であっても建物部分が区分所有登記されている場合に は、特例の対象となるのは、被相続人の居住の用に供されていた部分に限られる<事例 2>。一方、区分所有建物でない場合には、被相続人の居住の用に供されていた部分に 被相続人の親族の居住の用に供されていた部分も含まれる<事例1>ため(措令40の2 ④)、区分所有登記の有無により特例の可否に差異があることになる。しかし、この差 異に合理的な理由がないため、いわゆる二世帯住宅について、建物の登記の形態による 取扱いの差異を解消すべきである。 <事例1> 2階 (現行取扱い) 長男丙家族 (甲と生計別) 区分所有登記ではない 2階 丙家族が 引き続き居住 甲単独名義 1階 1階 被相続人 甲・配偶者乙居住 乙が引き続 き居住 2 階対応敷地 2 階対応敷地 乙取得分○、丙取得分○ (甲所有) 甲単独名義 1 階対応敷地 (甲所有) 土地は、乙と丙が 1/2ずつ取得 <事例2> 2階 1 階対応敷地 乙取得分○、丙取得分○ (現行取扱い) 長男丙家族 (甲と生計別) 2階・・丙所有 2階 丙家族が 引き続き居住 区分所有登記 1階 被相続人 1階・・甲所有 甲・配偶者乙居住 2 階対応敷地 (甲所有) (甲所有) 乙が引き続 き居住 2 階対応敷地 1 階対応敷地 1階 乙取得分×、丙取得分× 土地は、乙と丙が 1/2ずつ取得 13 1 階対応敷地 乙取得分○、丙取得分× 11.金銭又は延納による納付困難要件の判定から納税者固有の財産の範囲を除外すること。 (相法38①、41①、相令12①、相令17①、相基通38-2、相基通41-1)(継続要望) 【最重要項目】 【意見及び理由】 平成 18 年度税制改正では、金銭又は延納による納付困難要件を判定する際には、相続 財産だけではなく、納税者の固有の財産もその判定の対象とされることとなった。 しかし、相続税は、所得金額を課税標準とする所得税及び法人税とは異なり、取得し た相続財産そのものを評価し、課税価格とする財産税の性質を有するため、その納付方 法として「延納」及び「物納」が金銭納付の例外として認められている。 財産税である相続税は、本来課税対象となった相続財産そのもので納付を完結すべき であり、金銭又は延納による納付困難要件の判定においても、相続財産でその判定を行 うべきであると考える。そこで、金銭又は延納による納付困難要件の判定から、納税者 固有の財産を除外すべきである。 12.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の事項の見直しを図 ること。(継続要望) (1)5年間の平均従業員数が当初の8割を下回った場合に納税猶予の全額が期限確定す るのではなく、下回った割合に応じた納税猶予税額のみの期限が確定する制度とす べきである。(措法 70 の7④二他) 【意見及び理由】 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度においては、納税猶予適用後5年 間の平均従業員数が当初の8割を維持できなければ納税猶予税額の全額の期限が確定す ることとされている。 昨今の厳しい経済情勢の下、中小企業の経営の見通しは甚だ不透明であることから、 一括納付というリスクを恐れるあまり真に制度の対象とすべき中小企業においてもその 活用が躊躇されている。また、当該雇用維持要件へ固執するあまり経営改善の手段が制 限され、不要不急の人件費を抱え続けることによる財務体質の圧迫という本末転倒の事 態も想定される。 さらに、製造業等にあっては生産技術向上による生産ラインのオートメーション化に より効率化を図ることは競争力の強化のために不可欠の取組みであるところ、当該雇用 維持要件はこれらの企業努力に水を差す結果となることも想定される。 (2)資産保有型会社の判定時期を現行の期間判定から、年に一度設定される報告基準日 において判定する制度に改めるべきである。(措法 70 の7④九、他) 【意見及び理由】 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度においては、判定対象期間中一の 時点において資産保有型会社(総資産のうちに特定資産の占める割合が 100 分の 70 以上 である会社をいう。)に該当すれば、納税猶予の期限が確定することとされている。 14 これは、例えば設備投資の為に銀行借入を行い遅滞なく対象設備を取得した場合にあ っても、その借入直後において特定資産割合が 100 分の 70 以上となっていれば納税猶予 の期限が確定することを意味するものであり、中小企業の資金計画を著しく阻害する内 容となっている。 (3)贈与税の納税猶予の適用があった場合に、贈与者の存命中に受贈者が対象株式を次 世代等へ生前贈与した場合にも、先の贈与より一定期間経過後かつ次世代等が贈与 税の納税猶予の適用を受けることなどの条件のもと、先の贈与税額の猶予税額を免 除すべきである。(措法 70 の7他) 【意見及び理由】 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度の適用があった場合において、贈与者の存 命中に受贈者が納税猶予対象株式を後継者へ生前贈与した場合には、受贈者の納税猶予 の期限は確定することとされている。 そのため、受贈者がこの先数十年に及ぶ自身の存命中納税猶予対象株式を保有し続け ることを求めるものであり、中小企業の計画的な事業承継を阻害するものとなっている。 (4)資産保有型会社の判定における割合算定方法を見直すべきである。(措法 70 の7④ 九) 【意見及び理由】 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の対象とならない資産保有型会社 については、その判定は総資産価額のうちに占める特定資産(現金・預貯金その他一定 の資産)の価額の割合によるものとされている。 そのため、敷金・補償金や預託金などを受け入れる慣習のある業種などにおいては、 その事業の実態性の有無に関わらず必然的に判定割合が高く算出されるという弊害が生 じている。 したがって、敷金・預託金のようなその事業の性質上不可避的に発生する預かり金的 性質を有する負債については、判定割合の算定上総資産の価額及び特定資産の価額から 控除する制度に改めるべきである。 (5)贈与税の納税猶予が打切りとなった場合に、相続時精算課税制度の選択を可能とす べきである。(措法 70 の7他) 【意見及び理由】 本来の贈与税の課税関係においては、いわゆる暦年贈与と相続時精算課税贈与のいず れかを選択できる制度となっているところ、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度 における税額は暦年贈与により計算することとされており、猶予打切りとなった場合に は当該税額を納付すべきこととなっている。 つまり、贈与時に納税猶予制度を選択することにより相続時精算課税制度の選択可能 性を放棄することとなっており、これが贈与税の納税猶予制度の適用を躊躇する大きな 要因となっている。 15 よって、贈与時において相続時精算課税制度の適用要件を充足していることを前提に、 贈与税の納税猶予制度が打切られた場合には相続時精算課税制度により算出した税額を 納付し、同制度による課税関係に移行することを認めるべきである。 【四.その他国税に関する事項】 13.印紙税を廃止すること。(継続要望) 【意見及び理由】 印紙税は、経済取引により生じる経済的利益に担税力を求め課税する間接税に近い流 通税であると言われている。これは文書課税ともいわれるように経済取引において作成 される課税事項が記載された文書に対して課税されるものである。 現在の経済取引は、事務処理の機械化、取引形態の変化により作成される文書の形式 や内容が変化し、電子決済、ペーパーレス化等が進み、文書課税としての印紙税には不 合理・不公平な現象が生じているので廃止すべきである。 【五.地方税に関する事項】 14.個人住民税の均等割及び所得割の非課税の基準と所得税の基礎控除を統一すること。 ( 地法24の5③、295③、附則3の3①、④)(継続要望) 【意見及び理由】 合計所得金額で比較すると、現在、所得税の基礎控除は 38 万円、個人住民税の非課税 の基準は、均等割の場合、各市町村で異なり 35 万円、31.5 万円、28 万円の3通り、所得 割の場合、35 万円と紛らわしい状況である。控除対象配偶者及び扶養親族の要件が合計 所得金額 38 万円以下であることは、所得税及び個人住民税も統一されている。したがっ て、地方分権改革の進む中であるが、個人住民税の均等割及び所得割の非課税の基準も 所得税の基礎控除に合わせ 38 万円とすべきである。 【六.税務行政に関する事項】 15.国税通則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加し、 納税者権利憲章を制定すること。(継続要望) 【意見及び理由】 平成23年度税制改正において、国税通則法改正案のうち、税務行政において納税者の 権利利益の保護を図る趣旨を明確にするための第1条の改正及び納税者権利憲章の策定 が見送られたことは、これらの改正を長年要望してきた本会としては、遺憾である。 「政府は、国税に関する納税者の利益の保護に資するとともに、税務行政の適正かつ 円滑な運営を確保する観点から、納税環境の整備に向け、引き続き検討を行うものとす る。」とする平成23年度税制改正法附則第106 条(注)の趣旨を踏まえ、早急に国税通 16 則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加し、あわせ て納税者権利憲章を制定するべきである。 なお、国税通則法の目的規定を改正し、税務行政において納税者の権利利益の保護を 図る趣旨を明確にすることについて、行政手続法の目的規定と平仄をとるためには、行 政運営における透明性の向上を図る趣旨も明確にすべきである。 また、納税者権利憲章には「国民の行った手続は、誠実に行われたものとしてこれを 尊重すること。」の文言を入れるべきである。憲章を行政文書とするのであれば、その 作成過程においてパブリック・コメントを実施する等、国民(納税者)の十分な参加と 監視が不可欠である。 さらに、これらの改正とあわせて国税通則法の題名を改正後の法律の内容をよく表す ものとなるよう変更するべきである。 (注)この条項は三党合意にもとづき挿入されたものであるから、政権交代を経ても 当然に遵守されるべきである。 16.国税不服審査制度を抜本的な見直しを図ること。(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 租税に関する不服申立手続・国税不服審判所のあり方については、平成26年度税制改 正大綱において、「行政不服審査制度の抜本的見直しに合わせて、国民の権利利益の救 済等に資する国税・地方税の不服申立手続の見直しを行う。」と記述されている。具体 的には、①現行の「異議申立て」を選択性の「再調査の請求(仮称)」に改める、②申 立期間の3月以内への延長、③担当審判官の職権収集資料を含め物件の閲覧及び謄写を 可能とする、④審理手続規定の整備、⑤国税不服審判所長への国税庁長官の指示の廃止 (国税審議会へ直接諮問)などの改正内容が示されている。 この改正の方向性は、本会がかねてより表明してきた意見に概ね沿うものであるから、 行政不服審査制度の抜本的見直しができるだけ早期に実現することを期待する。 17 18 Ⅳ.その他の要望事項 【一.所得税及び法人税に関する事項】 1.経済的利益に対する給与課税の適正化を図ること。(所基通36関係)(継続要望) 【意見及び理由】 給与所得者に対する経済的利益の非課税制度は、20年以上見直されていないものがほ とんどであり、現実には一部の特定の者の優遇となっている。 特に住宅家賃については、一般相場から見るとその数分の1以下の少ない金額を徴収 することにより課税が行われないという、隠れた給与所得が存在しているのが事実であ る。 納税者の公平性の面から考えても、それらの基準全体について見直すべきである。 2.事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例及び事業に専従する親族があ る場合の必要経費の特例等の規定は廃止すること。(所法37、同56、同57)(継続要 望) 【意見及び理由】 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例の規定はシャウプ勧告により、 世帯単位課税を個人単位課税に変えたときに、要領のよい納税者に対する抜け道封じの ためにできたもので、同じ趣旨の資産所得の合算課税制度は既に廃止されている。 複式簿記による記帳慣行が成熟した現在において、個人単位課税に立脚した事実関係 が証明できる場合には、小規模法人と同様に親族間における相当な対価として認められ るものは必要経費として認めるべきである。 3.給与所得者に対する課税制度の見直しを図ること。(所法28、同57の2、同181~198) (継続要望) 【意見及び理由】 現行の年末調整方式は徴税コストや給与所得者の利便性に優れた面があるが、他方納 税義務者として税法上の権利を行使できないことやプライバシーの面等で欠点がある。 プライバシー保護の観点からも給与所得者が確定申告を行うことにより、自らの所得及 び税額を確定させ、税の使途についての関心を広げることにも繋がる。したがって、給 与所得者に対する課税制度の原則を申告納税方式とし、年末調整方式との選択制にすべ きである。 4.不動産所得に係る損益通算制度の特例は廃止すること。(措法41の4)(継続要望) 【意見及び理由】 この特例は不動産を借入金によって取得することにより、その利息が多額となり不動 産所得に損失が生じ、損益通算の結果、所得が減少し、所得税額等の減少又は還付を受 けることの節税対策に対するものとされている。 19 しかし、利息の負担により、資金が流出して課税対象所得が減少していることや、総 合課税の観点から、損益通算を制限することは所得のないところに課税することになる。 この制度は、土地税制の緩和が求められている現状にはなじまない。 また、平成10年度の税制改正により、法人税においては新規取得土地等に係る負債利 子の課税の特例が廃止されたことからも不公平であるので、早急に廃止すべきである。 5.個人である白色申告者の純損失及び雑損失並びに上場株式等の譲渡損失の繰越控除の 期間を5年にすること。 (所法 70、措置法 37 の 12 の2)(継続要望) 【意見及び理由】 現行法では、所得計算の期間を暦年としているが、担税力に応じた課税を行うためには、 生涯所得の方がより課税の公平を確保できる。 したがって、損失を単一年で切り捨てせず、翌年以降に繰り越すことにより、多額の損 失発生による担税力の減殺を救済することができると思われる。 また、平成 23 年度税制改正により増額更正期間も5年に延長されたため、最低でも繰越 控除期間を5年に延長すべきである。 6.所得控除における雑損控除の順序の取扱いの見直しを図ること(継続要望) 【意見及び理由】 東日本大震災による損害は増大であり、いまだに復興したとはいえない状況は続いて いる。したがって、蒙るダメージも大きく納税者の負担力を大きく阻害している。所得 税法上、所得控除の順序として雑損控除が最初に控除されることになっている。これは、 3年間の繰越控除が認められている為と考えられる。 しかし、震災からの迅速な復旧・復興を考慮すると、納税者の担税力低下の救済を第 一に考えて、震災特例法上では他の所得控除をまず控除し、最後に雑損控除を適用する ことが相当である。 7.交際費課税について、経営の実態に適合した課税対象の範囲となる様に改善整備を図 ること。(措法 61 の4)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 法人が支出した交際費等の額は、原則としてその全額が損金の額に算入されないこと とされている。ただし、平成 25 年度税制改正では、資本金が1億円以下の中小法人につ いては、年 800 万円までの定額控除限度額以下の支出した交際費等の額は、全額が損金 算入できることとされた。さらに平成 26 年度税制改正大綱では、大企業も含め、接待等 に伴う飲食のために要した費用は、支出額に対して 50%相当額の損金算入を認める措置 を講じている。 しかしながら、中小法人においては、大法人等の事業関係者との取引及び業務の円滑 化を図る目的で支出される交際費等も多いため、その支出の目的に応じて社会通念上必 要と認められる祝い金、香典等又は受領者側で益金に計上されることによって二重課税 となるものについては、交際費課税の範囲から除外すべきである。 20 8.個人である青色申告者の純損失の繰越控除の期間を青色申告法人と同様に9年にする こと。(所法 70)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 シャウプ勧告における損金の繰越控除の趣旨は、所得額の変動がもたらす不合理を解 消することであり、相殺すべき所得を有する者と有しない者との不公平の解消を根拠と するものである。本来的に必要経費性等があるものを所得の計算上控除することは、当 然のことであり、人為的に区切られた所得の計算期間を超えても考慮すべきである。 現行の所得税の繰越控除期間(3年)は、法人税における欠損金の繰越控除期間(9 年)とのバランスを考慮し、その延長を行うべきである。 9.特定同族会社の留保金課税制度を全面廃止すること。 (法法 67)(継続要望) 【意見及び理由】 特定同族会社の留保金課税は、法人の過剰留保に対して法人と個人の税負担を考慮し て課税するものとして昭和 29 年に創設された制度である。 平成 19 年度の税制改正では、特定同族会社の留保金課税制度について、適用対象から 資本金の額又は出資金の額が1億円以下である会社が適用除外されることとなった。 しかし、導入当初と比べ所得税の最高税率も引き下げられ、法人税との税率の乖離が 少なくなっていること及び再建途上の赤字法人が資金調達のために保有資産の売却を行 ったときに、繰越欠損金により本来の法人税等の負担がなくても、留保金課税の対象と なる場合があるなどの理由から、適用除外法人の拡大ではなく、特定同族会社の留保金 課税制度そのものを廃止すべきである。 10.中小企業の賞与・退職給付引当金制度を復活すること。 (法法 54、同 55) (継続要望) 【意見及び理由】 法人税法上の各事業年度の所得金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準 にしたがって計算されるものとする(法法 22④)とし、各事業年度末までに債務の確定 しないものは除く、として債務確定主義を採っている。その例外として、別段の定めを もって各種引当金の計上が認められていたが、平成 10 年に課税の明確性、統一性を図る 観点から賞与引当金が、同 14 年に連結納税制度の創設に伴い退職給与引当金の計上が経 過期間を経て廃止された。 引当金に関する法人税法の改正は法人税の体系を著しく歪めるものであり、会社法に より会計参与制度が導入され、計算書類を作成するに当たって拠ることとなる「中小企 業の会計に関する指針」及び「中小企業の会計に関する基本要領」においても当期の負 担に属する金額を当期の費用に計上しなければならないとしていることからも、中小企 業については両制度の復活をするべきである。 11.一括償却資産の損金算入制度及び中小企業等の少額減価償却資産の取得価額の損金算 入の特例制度を廃止するとともに、少額減価償却資産の取得価額及び繰延資産の一時 損金算入限度額を 30 万円未満に引き上げること。 (所令 138、同 139、同 139 の2、法 令 133、同 133 の2、同 134、措法 67 の5)(継続要望) 21 【意見及び理由】 10 万円以上 20 万円未満の減価償却資産については、一括償却資産の損金算入制度とし て一時損金算入は認められず、3年間で損金算入されることとされている。 また、取得価額 30 万円未満の減価償却資産のうち年間 300 万円までは、中小企業者等 の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度により、全額損金算入が認められ ている。 しかし、事務処理の簡便化、償却資産の多種多様化などの見地より、すべての個人と 中小企業について、一括償却資産の損金算入制度及び中小企業の少額減価償却資産の取 得価額の損金算入の特例制度を廃止するべきである。 また、少額減価償却資産の取得価額及び繰延資産の一時損金算入限度額を 30 万円未満 に引き上げるべきである。 12.退職所得課税の見直しを図ること。(所法 30、89)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 退職所得は、労務の対価の後払いとしてのものであることから、所得税法上退職所得 控除が設けられているうえ、課税対象を2分の1とする優遇措置が取られている。 特に一部の企業などでは、この課税方式を利用した給与部分を退職給与に振りかえる などの過度の節税が行われているケースが見受けられる。 平成 24 年度税制改正大綱によると、役員等としての勤続年数が5年以下の役員等が支 払いを受ける退職手当については、退職所得控除後の残額を1/2とする措置が廃止さ れたが、根本的な見直しになっているとは言い難い。 そこで、退職給与課税については課税方式を全面的に見直し、一定の控除を認めたう えでN分N乗方式(退職金を在職期間で除した金額に基づき税額を算出し、それに在職 年数を乗ずる方式)を検討すべきである。 【二.消費税に関する事項】 13.中間申告による納税を任意に選択できる制度を新設すること。(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 平成 24 年8月 22 日に公布された消費税法の一部改正により、中間申告義務のない事 業者であっても、選択による六月中間申告納付ができることとなった(改消法 42⑧~⑪)。 この制度は、消費税の滞納防止と徴税の効率化の観点から非常に有効であると思われ る。 そこで、この制度の普及を促進するために、次の①から③の項目について、追加の改 正を要望する。 ① 中間申告義務の有無にかかわらず、一月中間申告や三月中間申告についても選択 することができるようにすること。 また、前納報奨金制度を設けることにより、納税者の積極的な中間申告制度の活 用を促すべきである。 22 (注1)還付加算金を目当てに前納することを防止するために、確定申告で中間申告 納付額が還付となる場合には、従来の中間申告制度により義務付けられた中 間申告納付額を基に計算した還付加算金を超える部分の金額は、なかったも のとみなす旨の規定を設ける。 (注2)三月中間申告の適用対象事業者が、六月中間申告を選択することは認められ ない。また、一月中間申告の適用対象事業者が、三月中間申告又は六月中間 申告を選択することは認められない。 ② 前納報奨金制度を設けることにより、納税者の積極的な中間申告制度の活用を促 すこと。 ③ 任意の中間申告制度についても、通常の中間申告と同様に「みなし申告制度」を 設けること。 14.仕入税額控除の要件とされている帳簿の記載は、一定の要件を満たす請求書等を保存 している場合は簡略化すること。(消法 30)(継続要望) 【意見及び理由】 仕入税額控除の要件として、記載要件を満たした帳簿及び請求書等の両方の保存を義 務づけていることから、事業者の事務負担が過重になっている。請求書等により仕入税 額控除要件が確認できるのであれば、重複して帳簿に記載しない場合でも取引の検証は 十分に可能であるから、帳簿への記載を簡略化すべきである。 【三.相続税及び贈与税に関する事項】 15.相続財産に関する費用は、相続税の課税財産から控除すること。(相法 13、同 14) (継続要望) 【意見及び理由】 民法第 885 条は、「相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。」と ある。相続税の課税価格の計算には、遺言執行費用(民法第 1021 条)等、相続財産に関 する費用も相続財産から控除できるよう改めるべきである。 16.相続時精算課税制度について、次の事項の見直しを図ること。(継続要望・一部修正) 資産の贈与につき相続時精算課税を選択した場合には、無償による資産の移転に伴う 経済的利得に対する税額の確定を相続時まで繰り延べが行われるが、その経済的利得は 贈与時に受贈者が享受しており、贈与時の時価を基準に課税を行うことが合理的である と考えられる。また、所有権の移転が行われた資産は、受贈者の責任で運用が行われる ため、贈与後の価値の変動を考慮することは、暦年の贈与課税を受けた者との公平性の 観点からも問題がある。 23 (1)特定贈与者の死亡以前に相続時精算課税適用者が死亡した場合の、同一財産二回課 税を排除すること。(相法 21 の 17①、②) 【意見及び理由】 相続時精算課税適用者である子が特定贈与者である親より先に死亡するケースでは、 その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、特定贈与者を除く。)が被相続 人の相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税の権利義務を法定相続分(特定 贈与者を除く。)に応じて承継することになる。 これにより当該制度の適用対象となった贈与財産が子の死亡による相続税の課税対象 となり、更に親の死亡時に同一財産が相続時精算課税の対象財産として親の死亡による 相続税の対象となるケースもあり、二回課税の不合理が生じる。 また、子の死亡に伴う相続において、実際には財産を相続していない子の相続人につ いても特定贈与者である親の死亡による相続税においては、子に係る相続時精算課税の 納税の権利義務を法定相続分に応じて承継する不合理も生じる。 したがって、これらの不合理が排除されるような規定に改めるべきである。 (2)相続時精算課税の適用を受ける宅地等についても小規模宅地の評価減特例の適用を 受けられるようにすること。(措法 69 の4) 【意見及び理由】 相続時精算課税制度の適用を受けた宅地等については、当該規定により相続税の課税 価格に算入されることとなっても、 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の 特例」の適用を受けることができないこととされている。そこで本来、当該制度の対象 となる可能性のある事業用宅地や居住用宅地などを相続時精算課税の対象として生前贈 与することは、特定贈与者及び受遺者にとって著しく不利であり、当該制度普及の妨げ となっている。 したがって、原則として相続時精算課税の適用を受ける宅地等についても小規模宅地 の評価減特例の適用を受けられるようにすべきである。 17.財産評価の基本的事項を法律に規定するとともに、公正な評価が行われるようその方 法及び手続を法定するなど整備をすること。また、相続財産の価値が申告期限までに 著しく低下した場合には、救済措置を講じること。 (相法 22、同 26 の2) (継続要望・ 一部修正) 【意見及び理由】 相続税等における財産評価は、課税標準に直接影響を及ぼすものであるにもかかわら ず、評価方法は法令で定められていない。そのため、多くの部分が執行上で決められて いる傾向にある。財産評価は租税法律主義に基づき、評価の基本的事項を法律本文で明 確に定め、具体的な評価方法については法令で明定すべきである。現行の評価通達のよ うに評価の裁量権が国税庁長官にあるような実態は改めるべきである。 土地評価については、相続税法第 26 条の2(土地評価審議会)の規定があるが、より 納税者の意見が反映される実効性のある手続として、公正な評価のための協議機関等の 導入が必要である。また、取引相場のない株式の評価については、①相続開始前3年以 内に取得した土地・建物等についても通常の評価とすること、②退職給付引当金につい 24 て負債とすること、③比準要素数1の会社・土地保有特定会社・株式保有特定会社・開 業後3年以内の会社の特殊な評価方法を廃止することを特に要望する。 また、貸付金の評価については実際の回収可能性を考慮し、相続開始時点における貸 付金の時価評価を認めるべきである。 さらに、相続財産の価値が申告期限までに著しく低下した場合には、納税者の実質的 担税力が失われており、原則的な評価の方法により難い場合の救済措置を設けるべきで ある。 18.相続税の更正の請求の特則事由に「相続した保証債務の履行が当該相続開始後3年以 内に行われ、求償権の行使が不能な場合」を加えること。 (相法 32)(継続要望・一部 修正) 【意見及び理由】 保証債務は、相続開始時において負担が確実なもの以外は、債務控除の対象とならな いとされている(相法 14、相基通 14-3)。したがって、相続開始後に被相続人の保証 債務の履行があり、求償権の行使ができない場合に、相続開始時に保証債務の負担が確 実と認められない限り、救済できない。 そこで、少なくとも相続開始後 3 年以内に発生した保証債務の履行に対しては、当然 相続税の課税価格を修正すべきであり、これを容認しないのは相続税本来の目的に反し 不合理である。 【四.地方税に関する事項】 19.住民税に関する事項 (1)少額配当に係る非課税措置を復活すること。(旧地方税法施行令附則4条)(継続要 望) 【意見及び理由】 平成 15 年度税制改正において、支払いを受ける配当金額が5万円以下(年1回決算の 場合には 10 万円以下)のいわゆる少額配当に対しての個人住民税につき、平成 16 年度 の個人住民税から非課税措置は廃止された。 上場株式について申告は選択性であるが、非上場株式については少額配当であっても 住民税のみの申告を要することとなった。申告も懈怠しがちであるが、課税捕捉も困難 と予想される。 上場株式の総合課税制度を復活するとともに、非上場株式配当については、従来の少 額配当についての住民税非課税措置を復活すべきである。 (2)法人住民税の均等割の算定の基礎となる期末資本金等の金額は、欠損填補の無償減 資があった場合には、資本金等の金額から控除して算定すること。 (地法 52、同 312) (継続要望) 25 【意見及び理由】 無償減資があっても形式的には資本金等の金額は変わらない。ただし、欠損填補の場 合は、実質的に規模が縮小しているのであるから、資本金等の金額から当該無償減資し た金額を、控除して算定すべきである。 20.事業税に関する事項 (1)個人事業税について青色申告特別控除を認め事業主控除額を引き上げること。また、 対象事業の見直しを図ること。 (地法 72 の 49 の 14、同 72 の2) (継続要望・一部修 正) 【意見及び理由】 個人事業税は所得税を土台に算定され、また、青色申告特別控除の趣旨には青色申告 制度の普及及び奨励があるので、個人事業税においても所得税及び個人住民税で認めて いる青色申告特別控除を認めるべきである。 個人事業税の事業主控除は、平成 11 年度の税制改正で 290 万円に引き上げられたが、 平成 24 年分の民間給与平均額は、408 万円(国税庁の平成 24 年分民間給与の実態)とな っている。給与所得者の平均給与額と乖離しないよう見直しする必要があろう。事業主 控除額を同程度引き上げるべきである。 また、個人事業税の課税対象事業を見直すべきである。 (2)法人の事業税、都道府県民税及び市町村民税に欠損金の繰戻し還付制度を創設する こと。(継続要望) 【意見及び理由】 中小法人における法人税(国税)にかかる欠損金の繰戻し還付の停止措置については 平成 21 年4月に廃止され、本則どおり繰戻し還付規定の適用が認められている。 中小法人は経営基盤が弱く、景気低迷により受ける影響は特に深刻であり、中小法人 の事業税、都道府県民税及び市町村民税に欠損金の繰戻し還付制度を創設すべきである。 (3)社会保険診療等に係る事業税の非課税制度の見直しを図ること(地法72条の49の12、 地法72の23) (継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 社会保険診療報酬等に係る事業税については非課税とされている。税負担の公平を図 る観点からは、特定の業種の税負担を一律に軽減するような制度は廃止すべきである。 21.不動産取得税の課税要件の見直しを図ること。(地法 73 の7)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 不動産取得税は、不動産の取得の事実に着目して課税される税とされている。不動産 の所有の事実に着目して課税する固定資産税とは異なるが、一般的には取得者は、所有 者であり、不動産取得税と固定資産税の納税者は同一といえる。 しかし、取得原因となる売買、贈与等が裁判等により所有権の移転が無効となった場 26 合には、所有権は実際には移転しないのであるから、不動産取得税の課税要件は成立し ないことになる。 したがって、第三者のためにする契約では不動産取得税を課税していないこともあり 一定期間内に相当な理由によって所有権の移転が取り消された場合には、不動産取得税 を取り消すべきである。 22.固定資産税に関する事項 (1)固定資産税の免税点を基礎控除額とし、その金額を引き上げること。また 30 万円未 満の少額資産を課税対象から除外すること。(地法 351)(継続要望) 【意見及び理由】 固定資産税は免税点制度として、同一市町村ごとに土地 30 万円、家屋 20 万円、償却 資産 150 万円と定めている。 現在の固定資産の評価方法による固定資産税の負担は重く、負担の軽減を図るために 免税点制度を基礎控除制度に改める。その金額は、土地及び家屋は100万円、償却資産は 300万円程度に引き上げるべきである。 また、租税特別措置法で定めている 30 万円未満の少額資産については法人税及び所得 税で費用化を認めていることから、固定資産税においても同様とすべきである。 (2)土地、家屋の評価方法の見直しを図ること。(継続要望) 【意見及び理由】 土地の評価は、地価公示価格の7割評価額とする評価基準を基に負担調整率を採用し 課税標準額を決めている。 家屋については再建築価格を基準とし、経年減点補正率をもって評価をしているが、 土地、家屋とも評価時期は原則として3年ごとに評価を行い、価格を決定している。時 価の下落が続いている中では、実際の取引価格との格差は大きく、時価を反映しない負 担調整率、経年減点補正率による課税標準の決定は、固定資産税の過大な負担をもたら すものであり、国民の理解は得られない。 したがって、固定資産税に対する国民的関心を踏まえ、また、租税法律主義の観点等 から現行の固定資産評価制度の抜本的改革を図り、固定資産税評価額決定のあり方、評 価方法、評価の時期を検討し見直しを行うべきである。 (3)減価償却制度の改正に合わせて、固定資産税においても同様に償却を行って償却資 産の課税標準額を算定すること。(地法 349 の2、同 350、同 351)(継続要望) 【意見及び理由】 平成 19 年度の税制改正において、減価償却制度が改正され、平成 19 年4月1日以降 取得減価償却資産については償却可能限度額及び残存価額が廃止され、平成 19 年3月 31 日以前取得減価償却資産については前事業年度までの各事業年度においてした減価償却 費の累積額が、取得価額の 95%相当額まで到達している減価償却資産については、その 到達した事業年度の翌事業年度(平成 19 年4月1日以後に開始する事業年度に限られる。) 以後において、残存簿価を5年間で均等償却計算した金額を償却限度額として償却を行 27 い、それぞれ残存簿価1円まで償却できるようになった。一方、固定資産税の償却資産 については、現行の評価方法(最低評価額5%)を維持することとされている。しかし、 実態としては、耐用年数を経過した資産は残存価値が概ね無くなったと考えるべきであ り、むしろ、廃棄のための費用負担を考慮するとマイナス価値とも考えられる。したが って、償却資産の課税標準額算定にあたっては、残存簿価1円まで償却を進めて評価す べきである。 【五.税務行政に関する事項】 23.行政立法手続に関する規定を創設すること。(継続要望) 【意見及び理由】 政省令の制定改廃に関しては、公正の確保と透明性の向上を図るため、国税通則法に 下記の規定を設けるべきである。 ① 内閣及び税務行政庁は、政省令及び通達の制定改廃に当たって、あらかじめその内 容を公表して広く文書による意見を求め、その制定改廃に納税者の意見を反映させる こととすべきであること。 ② 租税に関する法令通達等の制定に当たっては、納税義務者等にとって不利益となる 事項については遡及してはならないこととすべきであること。 ③ 税務行政庁が発遣する通達は、税法を解釈するに当たり実質的に納税者を羈束する ものであるから、発遣された税務通達については、すべて公開する措置を講じること。 24.税理士を納税者の代理人として選任することができる旨の規定を国税通則法に創設す ること。(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 納税義務者は、租税に関する法令もしくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、 請求、もしくは不服申立て(以下「申告等」という。)について、又はその申告等もし くは調査・処分に関し税務行政庁に対する主張・陳述について、税理士を税務代理人と して選任する権利がある旨を明確に規定すべきである。 25.税務調査手続に関する事項 (1)反面調査の通知義務及び制限規定を定めること(国通法74の9)(継続要望) 【意見及び理由】 反面調査の権限は、調査担当職員に対して、質問検査権が付与されているものとして 解釈されている。反面調査の目的は、取引先や金融機関等(以下「取引先等」という。) から、当該職員が税務調査の対象となっている納税者の取引に関する証拠資料等の情報 を収集することである。しかし、反面調査に制限が存しない場合には、納税者は取引先 等との信頼関係が失墜する恐れもある。 そこで、反面調査は、納税者に対する調査を行った場合において、取引の実態が把握 できなかったとき、納税者が調査に非協力的だったとき、その他これらに類するやむを 28 得ない事情があるときに制限し、納税者の理解を求めて、当該取引先等に対して取引の 状況を確認することができるとすべきである。さらに調査の事前通知に定める規定(国 通法74の9)の適用を法令上明確に定める必要がある。 (2)事前通知を要しない調査であった場合における当該理由の通知規定を定めること。 (国通法74の10)(継続要望・一部修正) 【意見及び理由】 調査担当職員が保有する情報等によっては、事前通知を行わずに税務調査を実施する ことを認めている。この事前通知を行わずに調査を行う理由としては、「違法又は不当な 行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれがある」、又は 「調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」と規定している。 しかし、事前通知がなく調査が実施された場合には、当該判断した内容を納税者に通 知することにより、手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税 者の協力を促し、より円滑かつ効果的な調査の実施と申告納税制度の一層の充実・発展 に資する観点及び税務行政庁の納税者に対する説明責任を強化することに繋がるものと 解される。したがって事前通知を要しない調査であった場合における当該理由の通知規 定を法定化すべきである。 26. 「災害税制に関する基本法」を恒久法として整備すること。(継続要望) 【意見及び理由】 わが国では、阪神淡路大震災や東日本大震災のような大規模な震災がいつ発生しても おかしくない状況にある。災害の復旧・復興には迅速性が要求されるため、災害が発生 する度に震災特例法等の救済法の立法手続きを行うのではなく、 「災害税制に関する基本 法」を恒久法として整備すべきであると考える。 27. マイナンバー法に関する事項(新規要望) (1)個人番号関係事務実施者等のセキュリティの具体的方策を周知徹底すること。 【意見及び理由】 平成 25 年5月末に公布されたいわゆるマイナンバー法(行政手続における特定の個人 を識別するための番号の利用等に関する法律)では、制度が開始される平成 28 年1月か ら、税理士事務所等も該当することとなる個人番号関係事務実施者等に従事する者が、 正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供したときは、4年以下の懲役若しくは 200 万以下の罰金又はこれを併科などの厳しい罰則が規定されている。特に、特定個人情報 ファイルの管理方法等のセキュリティの具体的方策については、制度開始前に全ての税 理士事務所等が把握しておかなければならない。したがって、税務行政庁においても、 かかる方策をマニュアル化するなどして、周知徹底を図られたい。 29 (2)番号の記載誤りについて、補正制度を導入すること。 【意見及び理由】 配偶者控除や扶養控除等の人的控除の適用に番号の記載が義務付けられることになる としても、単純な番号の記載誤りによって控除が否認されることは納税者にとって酷で あるので、番号記載を控除の要件とせず、補正制度を導入するなどして、善意の納税者 に不利益な取扱いとならないようにするべきである。 (3)税務調査時の番号利用について、手続規定を設けること。 【意見及び理由】 一般の税務調査時の特定個人情報の提供の制限については法律上明確にされていない が、今後、政省令に規定されるとしても、税務行政庁において通達を発遣するなどし、 具体的な取扱いを広く一般に周知する必要がある。 (4)マイ・ポータルは電子申告と連携すること。 【意見及び理由】 平成 29 年に設置が予定されているいわゆるマイ・ポータル(情報提供等記録開示シス テム)は、現行の e-Tax 及び eLTAX と連携することにより、行政機関へのワンストップ サービスの徹底を図るべきである。 (5)マイナンバー制度に関係する命令等を制定する際は、例外なくパブリック・コメン トを実施すること。 【意見及び理由】 マイナンバー制度に関係する政省令や通達などの命令等を制定する際は、税務行政に 関する事項を定めようとするときであっても、例外なくパブリック・コメントを実施す べきである。 30
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