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ISO レポート
ISO/TC 4/AG 1 第 1 回イエテボリ会議報告
(TC 4 Advisory Group 1:TC 4 諮問グループ 1)
日本精工株式会社
三木
清史
1. まえがき
2010 年 3 月 15~17 日の ISO/TC 4/WG 17 会議に引き続き、3 月 18 日に ISO/TC 4/AG 1 第 1 回イエ
テボリ(スウェーデン)会議が開催された。日本のエキスパートとして出席したので、その概要を報
告する。
ISO/TC 4/AG 1(Advisory Group 1:Coordination of TC 4 activities)は、2009 年 7 月の ISO/TC 4 沖縄
本会議における TC 4 決議 729 により、ISO/TC 4 の組織再編検討のために組織された ISO/TC 4/CAG
(Chairman Advisary Group)を解散し、その業務を引き継ぐとともに TC 4 活動業務全体の調整の目的
で設立されたグループである(以下、ISO 及び/又は TC 4 は省略)
。
2. CAG 沖縄会議以降 AG 1 第 1 回イエテボリ会議前までの経過
(CAG の沖縄会議までの経過概要は、
“第 24 回 ISO/TC 4 沖縄会議報告書”を参照。)
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•
•
2009 年 7 月 TC 4 第 24 回沖縄本会議において AG 1 が発足(TC 4 決議 729)
8 月 TC 4 の将来の組織に関する提案の回付(N 1448、投票期限 2009-11-30)
12 月 TC 4 N 1448 に対する投票結果及び各国意見の回付(N 1461)
2010 年 1 月 AG 1 正式登録者リスト回付(N 1465)
1 月 AG 1 議長選挙の回付(N 1467、投票期限 2010-03-01)及び TC 4 の将来の組織に関
する第 2 回投票の回付(N 1466、投票期限 2010-03-18)
•
1 月 AG 1 第 1 回イエテボリ会議案内及び議題の回付(N 1468)
•
3 月 N 1467 及び N 1466 に対する投票結果及び各国意見の回付(N 1469 及び N 1470)
3. AG 1 関連文書
AG 1 関連文書を表 1 に示す。
表 1-AG 1 関連文書
TC 4 文書番号
提出国
題目又は内容
発行年月
N 1446
幹事国
TC 4 第 24 回沖縄会議議事録
2009-07
N 1448
幹事国
TC 4 の将来の組織に関する提案及び投票
2009-08
N 1461
幹事国
N 1448 に対する投票結果及び各国意見
2009-08
N 1465
幹事国
AG 1 正式登録者リスト
2010-01
N 1466
幹事国
TC 4 の将来の組織に関する第 2 回修正提案及び投票
2010-01
N 1467
幹事国
AG 1 議長の選挙
2010-01
N 1468
幹事国
AG 1 第 1 回イエテボリ会議議題
2010-01
N 1469
幹事国
N 1467 に対する投票結果及び各国意見
2010-03
N 1470
幹事国
N 1466 に対する投票結果及び各国意見
2010-03
N 1471
幹事国
AG 1 第 1 回イエテボリ会議議事録
2010-04
4. AG 1 第 1 回イエテボリ会議の目的及び議事次第
TC 4 の将来の組織について、第 2 回投票結果及び各国意見を踏まえて討議し、方向性を見出すとと
もに、今後の TC 4 の業務、会議予定などについて確認を行うことを目的として会議が開催された。
1/6
第 1 回イエテボリ会議の議事次第及び参照文書を表 2 示す。
表 2-AG 1 第 1 回イエテボリ会議の議事次第及び参照文書
議事次第
参照文書(TC 4)
1
開会
-
2
出席者の点呼
-
3
議題の採択
4
TC 4 の将来必要な業務及びその業務遂行に当たっての組織に関す
N 1448、N 1461
る自由討議
N 1466、N 1470
4.1
AG 1 議長に関する投票結果
N 1467、N 1469
4.2
AG 1 正式登録者の状況及び P メンバーごとの人数に関する決議 729
N 1468
-
の修正の可能性について
4.3
5
WG 17 におけるエキスパートの参加について
-
2010 年の WG 会議の予定、2011 年の TC 4 及び SC 会議の場所及び
-
日程
その他の業務
6
6.1
-
ISO 3290-1:2008(鋼球)正誤票 1 について
ISO 3290-1:2008/
Cor 1:2009
6.2
ISO/TC 213 関連規格用 CD-ROM への転がり軸受関連規格掲載の可
-
能性
7
TC 4 への推奨
-
8
次回会議
-
9
閉会
-
5. 会議の結果
議題 1 開会
TC 4 議長 Mr.M.Gorenne が定刻に開会を宣言した。
議題 2 出席者の点呼
AG 1 第 1 回イエテボリ会議には、次の 8 か国 20 名が参加した。
•
Mr.H.Wiesner
:オーストリア(SKF)
•
Mr.W.Verhaert
:ベルギー(WV Consult、元 SKF)
•
Mr.M.Gorenne
:フランス(元 SKF、AG 1 議長及び TC 4 議長)
•
Ms.N.Ludivion
:フランス(UNM、SC 5 幹事)
•
Mr.J.Schmitt
:フランス(Schaeffler Group、次期 SC 5 議長)
•
Mr.M.Correns
:ドイツ(Schaeffler Group、SC 8 議長)
•
Mr.F.Götz
:ドイツ(Schaeffler Group)
•
Mr.S.Schneider
:ドイツ(DIN、SC 7 及び SC 8 幹事)
•
Mr.A.Weidinger :ドイツ(SKF)
•
樋口国男氏
:日本(JTEKT Europe)
•
白木利彦氏
:日本(JTEKT)
•
上埜保博氏
:日本(NACHI)
•
三木清史
:日本(NSK)
2/6
•
Mr.V.Lapenko
:ロシア(EPK)
•
Ms.L.Nechaeva
:ロシア(EPK、通訳)
•
Mr.A.Gergely
:スウェーデン(AG Metrology、元 SKF)
•
Ms.A.Hulegårdh :スウェーデン(SIS)
•
Mr.R.Thesslin
:スウェーデン(SIS、TC 4 幹事)
•
Mr.R.Bhatia
:アメリカ(Timken、SC 9 議長)
•
Mr.M.Kotzalas
:アメリカ(Timken)
議題 3 議題の採択
N 1468 に以下を追加して承認した。
•
議題 4 に N 1470 を加える。
•
議題 4.1、4.2、4.3、6.1 及び 6.2 を追加する。
議題 4 TC 4 の将来必要な業務及びその業務遂行に当たっての組織についての自由討議
A. N 1466 による第 2 回提案内容について
将来の組織について、次の二つの組織案が事前に提案された。
a) 組織案 1
N 1448 で提案された分科委員会(SC)構造を採用するが、SC 6 の適用範囲を“インサート軸
受”から“玉軸受(インサート軸受を含む)”とは拡大せずに、“玉軸受”の新 SC 12 を設立し
てその幹事国に日本(JISC)を推薦する。
b) 組織案 2
現在の組織を段階的に作業グループ(WG)だけの構造へ変更する。まず SC 4 を解散し、その
担当項目を TC 4 直下へ移動する。
B. 討議結果
N 1448 による提案、それに対する N 1461 の投票結果及び各国意見、並びに N 1466 による第 2 回
修正提案、それに対する N 1470 の投票結果及び各国意見を基に討議した。その確認事項は以下のと
おりである。
 現在、TC 4 の活動中の業務が限られているので、組織の変更には良い時期である。
 今までの投票結果及び各国意見から、現在の SC のある組織を維持する。
 N 1466 の組織案 1 に対するアメリカの修正提案*(N 1470)について討議したが、どこからも
賛成が得られなかった。
*アメリカ修正提案の概要(参考)
•
SC 8 の担当範囲を、性能に関する規格 ISO 15242 シリーズ(軸受の振動の測定方法)、ISO 15243(軸
受の損傷)などを含めて拡大する。
•
SC 9 の担当範囲を、“円すいころ軸受”だけでなく“自動調心ころ軸受”、“円筒ころ軸受”、現在 SC 5
担当の“針状ころ軸受”など全てのころ軸受に拡大し、アメリカ(ANSI)が担当する。
•
SC 7(球面滑り軸受)の適用範囲に、“球面滑り軸受の定格荷重及び寿命”を含め、SC 8 の担当とはし
ない。
•
SC 6 の幹事国をアメリカから日本への移動を検討してもよいが、全ての組織変更がまとまるまで、その
決定をする立場にはない。
•
新 SC 12 の幹事国を、フランス(AFNOR)とする。
 新 SC 12 の適用範囲において、“附属品及びハウジング”は削除する。
 ISO/TC 123(平軸受)が、“特殊平軸受”という新 SC を設立した。これは、TC 4/SC 7(球面
3/6
滑り軸受)を含む TC 4 の適用範囲に影響する可能性があるので討議した。
球面滑り軸受の製造業者は、通常、平軸受製造業者とは異なることから、“球面滑り軸受”を
TC 4 の適用範囲内に残すことを決定した。
なお、SC 7 が、TC 123 新 SC とのリエゾン(liaison)を確立することに同意した。
 SC 4 の適用範囲を討議し、“公差、公差の定義及び量記号”とした。したがって、“一般的な
用語”、“主要寸法”、“軸受の損傷”及び“軸受の振動の測定方法”は含めない。
これにより、ISO 15、104、5593、15241、15242 シリーズ、15243、21107 及び TS 23768 を SC 4
の担当に含めない。
 以上の討議に基づき、N 1466 を修正して、該当する ISO 規格を TC 4 直下の担当とし、SC 12 の
適用範囲修正を行った組織案 1 を、TC 4 で承認する提案を行う。
組織案 1 修正後の TC 4 組織、担当項目及び担当 ISO 規格を表 3 に示す。
表 3-組織案 1(修正後)
担当項目
TC/SC
担当 ISO 規格
幹事国
TC 4
転がり軸受
幹事国:スウェーデン(SIS)
現在の担当 ISO 規格
追加される ISO 規格
15、104、5593、15241、
−
15242 series、15243、
21107、TS 23768
TC 4/SC 4
公差、公差の定義及び
199、492、5753-1&-2
幹事国:スウェーデン(SIS) 量記号(GPS を含む)
113、464、582、2982-1
& -2、1132-1 & -2、
1224-1 & -2
TC 4/SC 5
自動調心ころ、円筒こ
幹事国:フランス(AFNOR) ろ及び針状ころ軸受
TC 4/SC 6
1206、3030、3031、3096、 246、12043、12297-1 &
3245、7063
-2
インサート軸受
3228、9628
−
球面滑り軸受
6811、12240 series
−
定格荷重及び寿命
76、281、TR 1281-1 &
−
幹事国:アメリカ(ANSI)
TC 4/SC 7
幹事国:ドイツ(DIN)
TC 4/SC 8
幹事国:ドイツ(DIN)
-2、TR 10657、14728-1
& -2、15312、TS 16281
TC 4/SC 9
円すいころ軸受
355、10317
リニア軸受
10285、12090-1 & -2、
−
幹事国:アメリカ(ANSI)
TC 4/SC 11
幹事国:アメリカ(ANSI)
24393
13012-1 & -2
−
(新提案 SC 及び幹事国案) 玉軸受
3290-1 & -2 、 8443 、
12044、20515、20516
TC 4/SC 12
幹事国:日本(JISC)
議題 4.1 AG 1 議長に関する投票結果
TC 4 議長である Mr.Gorenne を AG 1 議長とする提案(N 1467)に対する投票結果(N 1469)に基
づき討議した。
TC 4 議長と AG 1 議長とは異なる人物にするべきという意見もあったが、投票結果に基づき多数
の賛成を得て、Mr.Gorenne が AG 1 議長を兼務することを承認した。
4/6
議題 4.2 AG 1 正式登録者の状況及び P メンバーごとの人数に関する決議 729 の修正の可能性につ
いて
2010 年 3 月 17 日時点での AG 1 エキスパートの登録は、6 か国 11 名となっている。情報の伝達
などに影響を及ぼす可能性があるが、AG 1 を限られた小グループとして、エキスパートの人数に関
する TC 4 決議 729 を修正する必要はないことを確認した。また、AG 1 会議と同時期に開催される
他の TC 4 関連会議の参加者も、オブザーバとしての AG 1 会議への参加を認めることを確認した。
議題 4.3 WG 17 におけるエキスパートの参加について
GPS に関する WG 17 の業務は、数年間にわたる TC 4 の主要業務の一つであり、遂行にあたって
は GPS に関する共通の知識を持つエキスパートの継続的参加が重要であることを確認した。
議題 5 2010 年の WG 会議の予定、2011 年の TC 4 及び SC 会議の場所及び日程
2010 年 11 月8日~12 日の間に、WG 17 会議を開催することが提案された。WG 17 会議と関連さ
せて WG 18 会議(用語)を開催する可能性もある。場所としては、アメリカ東海岸での開催希望が
出された。
2011 年 6 月に、ベルギーにおいて TC 4 会議を開催することが提案された。会議開催が可能かど
うか、Mr.W.Verhaert が後日回答する。
議題 6 その他の業務
議題 6.1 ISO 3290-1:2008(鋼球)の正誤票 1 について
ISO 3290-1:2008 の正誤票 1 が 2009 年 4 月に発行された。これは、国際規格案(DIS)の段階で
鋼球の材料に関して、
“in accordance with ISO 683-17 or equivalent”となっていたものを、最終国際
規格案(FDIS)の段階で、ISO 中央事務局(ISO/CS)が了解なしに“or equivalent”を削除したた
め、修正依頼を日本から申し出て、ISO/CS の検討に基づき“in accordance with ISO 683-17, including
those defined as comparable in ISO 683-17:1999, Annex C”と訂正する正誤票が発行されたものである。
この正誤票に対して、
“ISO 683-17:1999, Annex C に記載された全ての材料が適用可能という間違
った判断がなされる可能性がある。
”という意見が出された。
この意見に基づき、TC 4 議長が当初の“in accordance with ISO 683-17 or equivalent”に戻すよう
ISO/CS と折衝し、変更できない場合には、“If different material is used, it shall be agreed between
customer and supplier.”というような文章を加えることになった。
議題 6.2 ISO/TC 213 関連規格用 CD-ROM への転がり軸受関連規格掲載の可能性
TC 213(製品の寸法・形状の仕様及び評価)関連で、2009 年 11 月に 240 以上の ISO 規格を含む
最初の CD-ROM が発行された。これには、GPS 関連規格のみならず、ねじや歯車の規格も含まれ
ている。
Mr.H.Wiesner から、GPS システムを考慮した規格となっていなくとも、次回の CD-ROM 見直しの
際に TC 4 関連規格の掲載を含めてもらってはどうかとの提案があった。
その結果、Mr.H.Wiesner が、CD-ROM に含めるのがよいと考える TC 4 関連規格のリストを TC 4
幹事に送付し、TC 4 幹事は、TC 213 の意見を求めるとともに、次回の CD-ROM 見直し時期を確認
することになった。
議題 7 TC 4 への推奨
5/6
AG 1 は、次の二つの TC 4 への推奨を確認した。
1)
既存の SC の適用範囲を見直すとともに、新 SC 12 を設立する。
2)
議題 6.1 の結果に基づき、ISO 3290-1 の正誤票 1 の見直しを図る。
議題 8 次回会議
次回の TC 4 本会議での討議事項の準備のために、2011 年の TC 4 本会議と同期間に AG 1 会議を
開催する。
議題 9 閉会
AG 1 議長から、会議ホスト国であるスウェーデン及び会議参加者に謝意が述べられ、予定時刻に
閉会した。
6. あとがき
今回の会議の重要事項として、TC 4 組織の再編が挙げられる。2007 年の TC 4 パリ本会議において
正式に討議することが決定され、これまでの 3 回の CAG 会議及び TC 4 沖縄本会議で討議されてきた。
全ての SC を解消して WG だけにする案、SC 構造は維持するものの担当範囲を見直す案、また、
SC 6 の幹事国をアメリカから日本へ移す案などなどいろいろ提案されたが、今回の会議で最終的に表
3 に示した形に落ち着いた。
今回まとまった組織再編案は、今後 TC 4 の投票にかけられるため、まだ最終決定とは言えないが、
2011 年開催予定の TC 4 本会議において正式決定されるものと期待している。
新 SC 12 の幹事国として日本が推薦されたことは、これまでの TC 4 における日本の貢献が認めら
れたことによるものであり、現在まで携わった諸先輩の方々、ベアリング工業会技術部会及び事務局
の皆様に、誌面を借りて感謝の意を伝えたい。
TC 4/AG 1 第 1 回イエテボリ会議出席者
6/6