色素増感太陽電池における半導体光電極に関する研究 ∼半導体光電極のクラック抑制について∼ E-98103 中尾 良昭 松浦研究室 【はじめに】色素増感太陽電池における半導体光電極(TiO2 電極)は太陽電池の陰極にあたる部分 である。透明導電膜(SnO2 膜)上に TiO2 電極を作製する過程で焼成を行う 1)。しかし、焼成を行 うことにより、TiO2 電極にクラック(ひび割れ)が発生することがある。このクラックを通して色 素及び電解液が直接透明導電膜と接触し変換効率が低下する。そこでクラックの発生を抑制するこ とのできる、TiO2 電極の作製法を調べる事を目的とする。 【実験】TiO2 粉末(P-25)を溶質、純水を溶媒とした TiO2 ペーストを作製した。この TiO2 ペース トの濃度を 5、10、20、30、40%と調整した。また、増粘剤としてポリエチレングリコール(PEG: 分子量 20000)1)をそれぞれ2,4g加えたものを調整した。これらのペーストを、SnO2 膜付きガ ラス板に塗布し、電気マッフル炉内において 450℃で 30 分間焼成を 行い、TiO2 電極を作製した。作製した TiO2 電極表面を光学顕微鏡を 用いて観察した。 【結果及び考察】PEG をしない TiO2 ペーストでは TiO2 粒子を均一 に分散させる力がなく、その結果 TiO2 粒子が部分的に凝集しクラッ クが発生した。そこで、TiO2 粒子を均一に凝集させるために PEG を 加えた。TiO2 ペーストの濃度を 30%に固定し、PEG の添加量を変 0.1mm (a)PEG 添加なし 化させたときのクラックの様子を図1に示す。図1から PEG の添加 量が増加するにともないクラックの幅(図の黒い部分)が狭くなり、 数も少なくなることがわかる。したがって、TiO2 粒子を均一に凝集 させるためには、増粘剤として PEG を添加することが有効である。 次に PEG の添加量を 4g に固定し、TiO2 ペーストの濃度を変化させ た場合の表面を観察した。TiO2 ペーストの濃度が 40%の場合、クラ ックが大量に発生した。次に 20%の場合、図1(c)よりもクラック 0.1mm (b)PEG2g添加 が減少した。10%の場合はさらに減少することがわかった。5%の 場合は SnO2 膜上に均一に広がらず SnO2 膜の中心付近に集まり、そ の部分に図1(a)と同じようなクラックが発生した。これらのこと より TiO2 ペーストの濃度が 10%で PEG4g を添加されたものがクラ ックの抑制された TiO2 電極となることがわかった。 【結論】濃度 10%の TiO2 ペーストに PEG を 4g 添加することによ りクラックを抑制した TiO2 電極を作製することに成功した。 【謝辞】表面観察を行うにあたりご協力を賜りました。瀧川研究室 0.1mm (c)PEG4g添加 図1 PEG の添加量と 半導体光電極の表面状態 (二酸化チタンペースト濃度 30%) の戸出真由美氏に深く感謝します。 【参考文献】1) 荒川 裕則 監修:色素増感太陽電池の最新技術 2001 発行 発行所:シーエムシー 第4章 pp 45-47
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