土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) Ⅲ-263 多孔質材料を用いた水質浄化実験のモニタリングとその評価 日本大学理工学部 正 会 員 下辺 悟 日本大学大学院 学生会員 ○江戸 将 循環式浸透ろ 1.はじめに 環境問題の一つに、水質汚染問題がある。様々な水 過試験では、図- 質浄化技術があるが、その改善方法の一つとして、多 2 に示す水平土壌 孔質材料の有効活用があげられる。多孔質材料とは、 カラム(長さ その表面に大小無数の細孔が存在し、優れた調湿、吸 33cm、幅 13cm、 着、ろ過などを持つ機能性素材である。 高さ 12cm)を用 本研究は、これらの優れた特性を生かした水質浄化 図-2 水平土壌カラム装置 い、測定濃度調整した園芸用液体肥料を 20ℓ循環させる 機能をモニタリング手法により検討したものである。 たびに前述した測定を行った。 ここでは、ADR プローブ(以降、SM200 と呼ぶ)と 4 3.懸け流し式浸透ろ過試験の結果と考察 電極式土中導電率計(以降、4 極センサー(FES)と呼 各試料の懸け流し式浸透ろ過試験における流出水の ぶ)を用いて、土壌カラム法に基づく多孔質材料の汚 水質特性について、図-3 に相対 COD(CODr)、図-4 濁原水浸潤による水質浄化過程について、その全体像 に pH の経時変化を示す。なお、COD の除去率につい の把握を主眼としている。 ては、図-3 では COD の初期値が試験ごとに若干異な 1) っているため、正規化表示としている。図-3 より、液 2.浸透ろ過試験の概要 懸け流し式浸透 体肥料での各試料における平均 CODrの除去率は、珪 ろ過試験では、図- 藻土の場合 84%、ゼオライトで 69%、備長炭では 54% 1に示す鉛直土壌 を示した。一方、サンゴ砂は 20%の除去率で期待した カラム(内径 12.5cm、 ほどの結果は得られなかった。 高さ 37cm)に粒径 1.2 0.850~2.000mm に 1 平均CODr 相対COD (CODr) サンゴ砂(液体肥料) 粒度調整した試料 (珪藻土、ゼオライ 珪藻土(液体肥料) ゼオライト(液体肥料) 備長炭(液体肥料) サンゴ砂(液体肥料) 懸け流し式 図-1 鉛直土壌カラム装置 ト、備長炭、サンゴ砂)と蒸留水を入れて飽和させて、 0.8 0.6 備長炭(液体肥料 ) 0.4 珪藻土(液体肥料) 0.2 繰り返し前処理を行った後、貯水タンク内の濃度調整 ゼオライト(液体肥料) 0 した園芸用液体肥料を土壌カラム内に流入させた。カ 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 経過時間 t (分) 図-3 相対 COD の経時変化 ラムの流出口から流出水が出水し始めたら、計測を開 10 始した。計測開始後、カラムからの流出量を考慮し、1 ア ル カ リ 性 懸け流し式 9 時間から 6 時間は 30 分毎に、6 時間から 12 時間は 1 時 8 7 間毎に流出水の COD、pH、T-P(全リン)、T-N(全 酸 性 pH 6 窒素) 、気温、水温、湿度、流入出水量を測定した。さ 5 4 らに、流出水の電気伝導度 ECw、カラム内の所定位置 3 に挿入した SM200 および 4 極センサーの各出力電圧を 1 珪藻土(液体肥料) ゼオライト(液体肥料) 2 備長炭(液体肥料) サンゴ砂(液体肥料) 0 0 計測し、カラム内の浸潤過程のモニタリングとその評 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 経過時間 t (分) 図-4 pH の経時変化 価を行った(図-1 参照) 。 キーワード 水質浄化、多孔質材料、土壌カラム法、浸透ろ過実験 連絡先 〒274-8501 千葉県船橋市習志野台 7-24-1 TEL 047-469-5241 FAX 047-469-2581 -525- 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) Ⅲ-263 図-4 より、珪藻土の流出水の pH は試料の素材の影 その結果、図-6 より SM200 4 の予測体積含水率が 響を受け、酸性となった。ゼオライト、備長炭は弱ア 高い。これは SM200 4 が流出水出口に近く、カラム下 ルカリ性で安定している。サンゴ砂は、途中 pH が若干 部まで飽和しているためと考えられる。また図-7 より、 高くなるものの、ほぼ弱アルカリ性で安定した。図-5 4 極センサーの値が上部からカラム下部にかけて予測 に全リン、全窒素の経時変化を示す。その結果、珪藻 電気伝導度が低下し、さらに流出水の電気伝導度も低 土で全リンの値がかなり軽減された。ゆえに、珪藻土 くなっていることから、カラム内における水質浄化過 は全リンを吸着ろ過する特徴がある。また、ゼオライ 程のモニタリングが可能であることがわかった。 トは全リン・全窒素ともに吸着ろ過するようである。 4.循環式浸透ろ過試験の結果と考察 珪藻土の循環式浸透ろ過試験における計測データを 30 懸け流し式 ゼオライト(液体肥料.全リン) 備長炭(液体肥料.全リン) サンゴ砂(液体肥料.全リン) 珪藻土(液体肥料.全窒素) ゼオライト(液体肥料.全窒素) 備長炭(液体肥料.全窒素) サンゴ砂(液体肥料.全窒素) 以下の図-8 に示す。なお、図中の 1~10 はサイクル数 である。 20 20 15 全リン (mg/ℓ) 汚濁原水 蒸留水 18 循環式 珪藻土 (液体肥料) 全窒素(mg/ℓ) COD (mg/ℓ) 10 16 全リン (mg/ℓ)、全窒素(mg/ℓ)、 COD (mg/ℓ)、pH 全リン T-P (mg/ℓ) 全窒素 T-N (mg/ℓ) 25 珪藻土(液体肥料.全リン) pH 14 5 12 0 0 60 10 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 経過時間 t (分) 図-5 T-P、T-N の経時変化 次に、浸潤浄化過程の全体像を珪藻土を一例として 示す。カラム内に挿入した SM200 の出力電圧から求め 8 6 4 2 0 0 1 * られた予測体積含水率 θw を図-6 に、4 極センサーか ら得られた間隙溶液の電気伝導度 ECw*と流出水の ECw * 5 二 6 三 7 8 四 五 六 七 八 九 十 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 経過時間 t (時間) 図-8 より、循環式浸透ろ過試験における COD 除去 率は平均 27%となった。また、全リン、全窒素は循環 掛け流し 珪藻土(液体肥料) 90 予測体積含水率 θw (%) 一 4 COD、pH の経時変化 れたキャリブレーション試験結果に基づいている。 サイクル毎に見ると、全リンの値が上昇すると全窒素 80 の値も上昇し、全リンの値が低下すると全窒素の値も 70 60 低下する傾向が見受けられる。pH は徐々に低下してい 50 40 くが、懸け流し式浸透ろ過試験よりは高い値を示し、 30 SM200 1 素材の影響を抑制してくれるようである。 SM200 2 20 SM200 3 10 SM200 4 5.結論 0 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 1 経過時間 t (分) 図-6 珪藻土における予測体積含水率の経時変化 2 予測電気伝導度 ECw (dS/m) 流出水の電気伝導度 ECw(dS/m) 掛け流し 珪藻土(液体肥料) 1.6 FES 2 FES 3 1.2 珪藻土の循環式浸透ろ過試験では、5 サイクル終了 時までは浄化機能が維持でき、それ以降は浄化機能 FES 1 1.4 懸け流し式浸透ろ過試験では珪藻土が最も高い水 質浄化機能を有している。 1.8 * 3 図-8 循環式浸透ろ過試験による T-P、T-N、 を図-7 に示す。なお、いずれの値もあらかじめ求めら 100 2 が発揮されているとはいいがたく、試験方法の改善 FES 4 流出水の電気伝導度 ECw 1 も含め今後の課題である。 0.8 参考文献 0.6 1)下辺悟・江戸将:多孔質材料による水質浄化実験、 0.4 0.2 第 64 回土木学会全国大会講演概要. 0 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 経過時間 t (分) 図-7 珪藻土における ECw*、ECw の経時変化 -526-
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