IG BT-IPM

富士 IGBT-IPM R シリーズ
IGBT-IPM
IGBT-IPM
IGBT-IPM
IGBT-IPM
RRR
R R
アプリケーション・マニュアル
RH 983
ご 注 意
1.
このカタログの内容(製品の仕様、特性、データ、材料、構造など)は1998年12月現在のものです。
この内容は製品の仕様変更のため、または他の理由により事前の予告なく変更されることがあります。このカタログに記載されてい
る製品を使用される場合には、その製品の最新版の仕様書を入手して、データを確認してください。
2. 本カタログに記載してある応用例は、富士電機製品を使用した代表的な応用例を説明するものであり、本カタログによって工業所有
権、その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものではありません。
3. 富士電機は絶えず製品の品質と信頼性の向上に努めています。しかし、半導体製品はある確率で故障する可能性があります。
富士電機製半導体製品の故障が、結果として人身事故,火災等による財産に対する損害や、社会的な損害を起こさぬように冗長設計、
延焼防止設計、誤動作防止設計など安全確保のための手段を講じてください。
4. 本カタログに記載している製品は、普通の信頼度が要求される下記のような電子機器や電気機器に使用されることを意図して造られ
ています。
・コンピュータ ・OA機器 ・通信機器(端末)
・計測機器 ・工作機械
・オーディオビジュアル機器 ・家庭用電気製品 ・パーソナル機器 ・産業用ロボット など 5. 本カタログに記載の製品を、下記のような特に高い信頼度を持つ必要がある機器に使用をご予定のお客様は、事前に富士電機へ必ず
連絡の上、了解を得てください。このカタログの製品をこれらの機器に使用するには、そこに組み込まれた富士電機製半導体製品が
故障しても、機器が誤動作しないように、バックアップ・システムなど、安全維持のための適切な手段を講じることが必要です。
・輸送機器(車載、舶用など)
・幹線用通信機器
・交通信号機器
・ガス漏れ検知及び遮断機
・防災/防犯装置
・安全確保のための各種装置
6. 極めて高い信頼性を要求される下記のような機器には、本カタログに記載の製品を使用しないでください。
・宇宙機器
・航空機搭載用機器
・原子力制御機器
・海底中継機器
・医療機器
7. 本カタログの一部または全部の転載複製については、文書による当社の承諾が必要です。
8. このカタログの内容にご不明の点がありましたら、製品を使用する前に富士電機または、その販売店へ質問してください。
本注意書きの指示に従わないために生じたいかなる損害も富士電機とその販売店は責任を負うものではありません。
第1 章
特 長
1 IGBT-IPMの特長
2 R-IPMの特長
………………………………………………………………………………
1-1
……………………………………………………………………………………
1-1
3 形式・ロットNo.が示す内容 …………………………………………………………… 1-2
4 Rシリーズのラインアップ
第
1
章
………………………………………………………………
1-2
………………………………………………………………………………
2-1
第
第2 章
1 ブロック図記号
2 端子記号 …………………………………………………………………………………………… 2-1
端子記号・用語の説明
3 特性用語 …………………………………………………………………………………………… 2-2
章
第3 章
1 内蔵する電気的機能 ………………………………………………………………………… 3-1
機能の説明
第4 章
応用回路例
3-1
3 タイミングチャート ………………………………………………………………………… 3-3
章
2 機能の説明
………………………………………………………………………………………
1 全体回路 …………………………………………………………………………………………… 4-1
2 注意事項 …………………………………………………………………………………………… 4-1
3 フォトカプラ周辺回路
……………………………………………………………………
第5 章
1 冷却体
(ヒートシンク)
の選定方法
放熱設計
2 ヒートシンク選定の注意事項
1 主電源 Vd
使用上の注意事項
第
4-4
4 コネクタ …………………………………………………………………………………………… 4-4
第6 章
2
…………………………………………………
5-1
…………………………………………………………
5-1
…………………………………………………………………………………………
2 制御電源 Vcc
……………………………………………………………………………………
3
第
4
章
第
5
章
6-1
6-1
第
3 保護動作 …………………………………………………………………………………………… 6-2
4 信頼性
………………………………………………………………………………………………
6-3
章
5 その他
………………………………………………………………………………………………
6-4
6
IGBT-IPM Rシリーズ
特 長
第 1 章 特長
1 IGBT-IPMの特長
1.4 構造的特長
・セラミック基板による絶縁構造のため冷却体
(ヒートシン
I P M(インテリジェント・パワーモジュール)は、従来の
IGBTモジュールとドライブ回路の組合せと比較し、次の特
長を持っています。
1.1 ドライブ回路内蔵
・最適に設定された条件でIGBTをドライブします。
・ドライブ回路−IGBT間配線長が短く、ドライブ回路のイ
ンピーダンスが低いため、逆バイアス電源が不要です。
・必要となる制御電源は下アーム側1、上アーム側3、合計4
電源です。
ク)
に直接取り付け可能で、放熱性が良好です。
・制御入出力端子は 2.54mm標準ピッチで1列に並び、1 個
の汎用コネクタで接続可能です。ガイドピンによりプリン
ト板用コネクタの挿入も容易です。
・主電源入力(P、N)、ブレーキ出力(B)、及び出力端子
(U、V、W)
が各々近接して配置され、メイン配線が容易
なパッケージ構造です。
・主端子はM5ネジにより、大電流接続が確実に行なえます。
・取り付けネジ径は主端子と共通のM5です。
・電気的接続はすべてネジ及びコネクタで、半田付けの必要
がなく、取り外しも容易です。
1.2 保護回路の内蔵
・過電流保護
(OC)
、短絡保護
(SC)
、制御電源電圧低下保護
(UV)
、過熱保護
(OH)
、及びアラームの外部出力
(ALM)
を内蔵します。
・OC、SC はIGBTを過電流、負荷短絡による破壊から保護
する機能であり、各IGBTのコレクタ電流を検出して行な
うため、どのIGBTに発生した異常でも保護可能で、更に
アーム短絡も保護可能です。
コレクタ電流の検出は各IGBTに内蔵した検出素子により
行ないます。
・UV はドライブ電源の電圧低下に対して動作する保護機能
であり、全ドライブ回路に内蔵します。
・OH は IGBT、FWDを過熱から保護する機能であり、IPM
内部の絶縁基板上に温度検出素子を設け、絶縁基板温度を
検出します。
(ケース温度過熱保護TcOH)
・R-IPMでは更に各IGBTチップに温度検出素子を設け、
チップの異常発熱に対して高速にOHが機能します。
(チッ
プ温度過熱保護TjOH)
IGBTチップが異常発熱してからの保護動作時間はTcOH
よりTjOHの方がより短くなります。
・ALM はアラーム外部に出力する機能であり、TcOH及び
下アーム側OC、SC、UV、TjOHの保護動作時に、IPMを
制御するマイコンへアラーム
(異常信号)
を出すことにより
システムを確実に停止することが可能です。
1.3 ブレーキ回路の内蔵(7in1IPM )
・減速時の電力を消費する抵抗を付加することでブレーキ回
路を構成できます。
・インバータ部と同様にドライブ回路、保護回路を内蔵しま
す。
2 R-IPM の特長
2.1 Nモジュール、N-IPMと同等の電気的特性
・ソフトスイッチングによる低サージ・低ノイズ性でEMC
対策に貢献します。
・VCE(sat)とスイッチング損失のトレードオフの改善で
トータル損失を低減します。
2.2 高信頼性
・従来機種(J-IPM、N-IPM)
に比べ大幅な内蔵部品点数削減
により、信頼性が向上しています。
・IGBTチップ過熱保護によりチップを異常発熱による破壊
から保護します。
2.3 パッケージ互換性
・中容量系列
600V系 50A∼150A、1200V系 25A∼75A
(6ケ組、7ケ組)
主端子、制御端子、取り付け穴位置が従来機種
(J-IPM、NIPM)
と互換性があります。
・大容量系列
600V系 200A∼300A、1200V系 100A∼150A(6ケ組、7ケ
組)
J-IPMと主端子、取り付け穴位置に互換性があります。
制御端子は600V、150A以下のパッケージと同じ配列であ
り、1種類のコネクタで対応できます。
ブレーキ付き
(7ケ組)
タイプをラインナップしています。
・ふたの高さが従来機種より低く互換性を維持しつつコンパ
クト化しています。
1-1
第
1
章
IGBT-IPM Rシリーズ
特 長
3 形式・ロットNo.が示す内容
・ロットNo.
・形式
8 1 01
7 MBP 50 R A 060 -01
機種の追番(無い場合もあります)
追番(01∼99)
耐圧
060: 600V
120:1200V
生産月
1: 1月
∼ ∼
9: 9月
O:10月
N:11月
D:12月
シリーズの追番
シリーズ名
RÅF R-IPM
生産年
8:1998年
インバータ部電流定格
50: 50A
IGBT-IPMを表す
主素子数
7: ブレーキ内蔵
6: ブレーキ無し
4 Rシリーズのラインアップ
定格電流
形 式
7MBP50RA060
パッケージ
P610
VCES
600V
7MBP75RA060
7MBP100RA060
P611
7MBP150RA060
7MBP200RA060
P612
7MBP300RA060
6MBP50RA060
P610
600V
6MBP75RA060
6MBP100RA060
ブレーキ
50A
30A
75A
50A
100A
50A
150A
50A
200A
75A
300A
100A
50A
無し
75A
100A
P611
150A
6MBP150RA060
6MBP200RA060
インバータ
200A
P612
300A
6MBP300RA060
7MBP25RA120
P610
25A
15A
7MBP50RA120
P611
50A
25A
75A
25A
P612
100A
50A
150A
50A
25A
無し
1200V
7MBP75RA120
7MBP100RA120
7MBP150RA120
6MBP25RA120
P610
6MBP50RA120
P611
50A
P612
100A
75A
6MBP75RA120
6MBP100RA120
6MBP150RA120
1-2
1200V
150A
IGBT-IPM Rシリーズ
端子記号・用語の説明
第 2 章 端子記号・用語の説明
1 ブロック図記号
記 号
内 容
VZ
制御信号入力端子の信号H(off信号)電圧を決めるツェナードダイオードVZの
値はスペック表の電気的特性に示す。
RALM
アラーム出力(ALM)の絶縁用フォトカプラ1次側電流を決める抵抗
アラーム出力時に、Vcc=15Vで約10mAの電流を流す。
RALMの値はスペック表の電気的特性に示す。
第
2 端子記号
端子記号
2
内 容
P
インバータ装置の整流コンバータ平滑後の主電源Vd入力端子
N
P:+側、N:−側
B
ブレーキ出力端子:減速時に回生動作用抵抗電流を出力する端子
U
3相インバータ出力端子
章
V
W
① GND U
上アームU相の制御電源Vcc入力
③ Vcc U
Vcc U:+側、GND U:−側
④ GND V
上アームV相の制御電源Vcc入力
⑥ Vcc V
Vcc V:+側、GND V:−側
⑦ GND W
上アームW相の制御電源Vcc入力
⑨ Vcc W
Vcc W:+側、GND W:−側
⑩ GND
下アーム共通の制御電源Vcc入力
⑪ Vcc
Vcc:+側、GND:−側
②Vin U
上アームU相の制御信号入力
⑤ Vin V
上アームV相の制御信号入力
⑧ Vin W
上アームW相の制御信号入力
⑬ Vin X
下アームX相の制御信号入力
⑭ Vin Y
下アームY相の制御信号入力
⑮ Vin Z
下アームZ相の制御信号入力
⑫ Vin DB
下アームブレーキ相の制御信号入力
⑯ ALM
保護回路動作時のアラーム信号ALM出力
2-1
IGBT-IPM Rシリーズ
端子記号・用語の説明
3 特性用語
用 語
記 号
内 容
電源電圧
VDC
電源電圧
(サージ)
VDC
(surge) スイッチングによりPN端子間に印加できるサージ電圧のピーク値
PN端子間に印加できる直流電源電圧
電源電圧
(短絡時)
VSC
短絡・過電流保護可能なPN端子間直流電源電圧
コレクタ・エミッタ間電圧
VCES
内蔵するIGBTチップのコレクタ・エミッタ間最大電圧及び、FWDチップの繰返し
ピーク逆電圧
(ブレーキ部はIGBTのみ)
逆電圧
VR
ブレーキ部FRDチップの繰返しピーク逆電圧
コレクタ電流
IC
IGBTチップに許容される最大直流コレクタ電流
ICP
IGBTチップに許容される最大直流パルスコレクタ電流
ーIC
FWDチップに許容される最大直流順電流
FRD順電流
IF
ブレーキ部FRDチップに許容される最大直流順電流
コレクタ損失
PC
IGBTチップ1素子に許容される最大電力損失
チップ接合部温度
Tj
IGBT、FWDチップが連続動作できるチップの接合部最大温度
制御電源電圧
Vcc
各GND-Vcc端子間に印加できる電圧
入力電圧
Vin
各GND-Vin端子間に印加できる電圧
入力電流
Iin
各GND-Vin端子間に流せる電流
アラーム印加電圧
VALM
GND-ALM端子間に印加できる電圧
アラーム出力電流
IALM
GND-ALM端子間に流せる電流
保存温度
Tstg
電気的負荷をかけずに保存または輸送できる周囲温度の範囲
動作時ケース温度
Top
電気的動作ができるケース温度範囲
(ケース温度Tc測定点を図1に示す。)
絶縁耐圧
Viso
全端子を短絡した状態で端子と冷却体取付け面間に許容される正弦波電圧の最大実効値
コレクタ・エミッタ間遮断電流
ICES
全入力信号H
(=Vz)
でIGBTのコレクタとエミッタ間に指定の電圧を印加した時のコレク
タ電流
コレクタ・エミッタ間飽和電圧
VCE
(sat)
測定対象素子の入力信号のみをL
(=0V)
他の全素子の入力をH
(=Vz)
とした時の指定のコレクタ電流におけるコレクタ・エミッ
タ間電圧
ダイオード順電圧
VF
全入力信号H
(=Vz)
でFWDに指定の順方向電流における順方向電圧
Pサイド回路消費電流
IccP
Pサイド
(上アーム側)
制御電源各GND-Vcc間の電流
Nサイド回路消費電流
IccN
Nサイド
(下アーム側)
制御電源GND-Vcc間の電流
入力しきい値電圧
Vinth
(on)
IGBTがoffからon状態になる制御信号電圧
Vinth
(off)
IGBTがonからoff状態になる制御信号電圧
ツェナー電圧
Vz
各GND-Vin間に内蔵され制御信号off時に各GND-Vin間をクランプする電圧
Tc過熱保護動作温度
TcOH
ケース温度Tc過熱保護動作温度
ヒステリシス
TcH
TcOH保護動作後、Tcが下がり復帰するケース温度とTcOHとの差
Tj過熱保護動作温度
TjOH
IGBTチップ接合部温度Tj過熱保護動作温度
ヒステリシス
TjH
TjOH保護動作後、Tjが下がり復帰する接合温度とTjOHとの差
過電流保護動作電流
IOC
過電流保護
(OC)
動作するIGBTコレクタ電流
過電流遮断遅れ時間
Tdoc
図2に示す
制御電源電圧低下保護動作電圧
VUV
制御電源電圧低下保護
(UV)
が動作するVcc
ヒステリシス
VH
UV動作後再びVccが上昇し保護が復帰するVccとVUVとの差
アラーム出力保持時間
tALM
Nサイド保護機能が動作しALM端子からアラーム出力
(ALM)
が出力し続ける期間
2-2
IGBT-IPM Rシリーズ
端子記号・用語の説明
用 語
記 号
内 容
短絡保護遅れ時間
tsc
図3に示す
アラーム出力抵抗
RALM
ALM出力のフォトカプラ1次側電流を制限する内蔵抵抗の値
スイッチング時間
ton
図4に示す
toff
tf
trr
チップ・ケース間熱抵抗
Rth
(j-c)
IGBTまたはFWDのチップ・ケース間熱抵抗
ケース・フィン間熱抵抗
Rth
(c-f)
サーマル・コンパウンドを用いて推奨トルク値にて冷却体に取り付けた状態での
ケース・冷却体間の熱抵抗
締め付けトルク取り付け部
IPMを冷却体に取り付ける時のネジ締めトルク
締め付けトルク端子部
主端子を電気接続する時のネジ締めトルク
質量
第
2
章
IPM単体の質量
IPMスイッチング周波数
fsw
制御信号入力端子に入力できる制御信号周波数範囲
逆回復電流
Irr
図4に示す
逆バイアス安全動作領域
RBSOA
ターンオフ時に指定の条件にてIGBTを遮断できる電流と電圧の領域
スイッチング損失
Eon
ターンオン時のIGBTスイッチング損失
Eoff
ターンオフ時のIGBTスイッチング損失
Err
逆回復時のFWDスイッチング損失
1 4 7 10 16
1
4
7
10
16
P
B
P
P
B
N
W
V
N
N
U
U
V
W
図1 Tc測定点
2-3
IGBT-IPM Rシリーズ
端子記号・用語の説明
Ioc
Ic
IALM
tDOC
図2 過電流保護遅れ時間
(tDOC)
tsc
Isc
Ic
Ic
Ic
IALM
IALM
IALM
図3 短絡保護遅れ時間
(tsc)
Input signal
(Vin)
Vinth(on)
Vinth(off)
trr
Irr
90%
90%
Collector current
(Ic)
10%
tf
ton
toff
図4 スイッチング時間
2-4
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
第 3 章 機能の説明
1 内蔵する電気的機能
1. 3相インバータ用 IGBT、FWD
2. ブレーキ用 IGBT、FRD
(6MBP□ RA060にはブレーキを内蔵しないため、B端子
は内部無接続)
3. 全IGBTのドライブ機能
(7MBP□ RA060はブレーキ部のドライブ機能内蔵)
4. 全IGBTの過電流保護機能
(OC)
5. 全IGBTの短絡保護機能
(SC)
6. 全IGBTのドライブ回路の制御電源電圧低下保護機能
(UV)
7. 全IGBTのチップ過熱保護機能
(TjOH)
8. 全IGBT、FWDを搭載する絶縁基板に基板温度過熱保護機
能
(TcOH)
9. Nライン側OC、SC、UV、TjOH及びTcOH動作時、保護
が動作したことを出力するアラーム出力機能
(ALM)
2 機能の説明
2.1 3相インバータ用 IGBT、FWD
図5に示すように、3相インバータ用IGBT及びFWDを内蔵
し、IPM内部で3相接続されています。P、N端子に主電源
を、U、V、W端子に3相出力線を接続すれば主配線は完成し
ます。
サージ電圧を抑えるために、スナバ回路を接続して使用くだ
さい。
2.2 ブレーキ用 IGBT、FWD
図5に示すように、ブレーキに使用されるIGBT及びFRDを
内蔵し、B端子に内部接続されています。ブレーキ抵抗をB
端子に接続してブレーキIGBTを制御することで、減速時の
エネルギーを消費しPN端子間電圧上昇を抑えることができ
ます。
・誤オン防止
オフ時にIGBTのゲート電圧を低インピーダンスで接地す
る回路を設けているため、ノイズ等でV G E が上昇して
誤ってオンすることを防止できます。
2.4 過電流保護機能(OC)
IGBTの過電流保護はコレクタ電流を検出して行ないます。
約6∼8μs(tDOC)
の期間、Iocレベルを連続して越えた時、
IGBTをソフト遮断します。
ただし、tDOC以下の期間に Iocレベル以下に復帰した場合
と、tDOC期間内にオフ信号を入力した場合はOC保護機能が
働きません。
また、オフ期間中はOC、SCともに動作しません。
・ブレーキを含め全IGBTにOC保護機能搭載
・検出ロスが小さい
IGBTチップに内蔵する電流センスIGBTに流れる検出電流
は主IGBTのIcに比較して非常に小さく、シャント抵抗に
全OC保護機能は約2msのラッチ期間を持っており、保護
が動作したIGBTはラッチ期間にオン信号を入力しても動
作しません。
章
3
さらに、下アーム側はブレーキを含め各相ALM間相互接
続しているため、下アーム側が保護動作すると下アーム
全IGBTがラッチ期間停止します。
・ソフト遮断
(UV、OHも共通)
保護動作時にはIGBTをソフト遮断するため、遮断時のdi/
dtが小さく、サージ電圧が低く抑えられます。
・動作遅れ時間
(保護動作しない期間)
tDOC期間連続してIocレベルを越えないと保護動作しない
ため、瞬間的な過電流やノイズによる誤動作を起こしま
せん。
2.5 短絡保護機能
(SC)
OC保護機能にはすべてSC保護機能が連動し、負荷短絡や
アーム短絡時のピーク電流を抑制します。
2.3 IGBTのドライブ機能
全IGBTのドライブ機能を内蔵しています。
本ドライブ回路は下記の特長を持っています。
第
比べ検出ロスを小さくできます。
・誤動作防止用ラッチ内蔵
(UV、OHも共通)
2.6 制御電源電圧低下保護機能(UV)
・ソフトスイッチング
UV保護機能は制御電源電圧
(Vcc)
がVUVまで低下すると、
入力信号がONの場合はIGBTをソフト遮断します。
単一のゲート抵抗
(Rg)
を用いず、駆動素子の特性により
on/off のdv/dtを独立にコントロールしています。
また、UVヒステリシスが設けてあるので、Vccが復帰する
場合はVUV+VHに達した時、入力信号がオフであればア
・単電源駆動で逆バイアス用電源は不要
ドライブ回路とIGBT間の配線が短いので、配線インピー
ラームが解除されます。
ダンスが小さく、逆バイアス無しで駆動することができ
ます。
下アーム側は制御GNDが共通で1電源駆動であり、IPM
全体の駆動は4個の絶縁電源が必要です。
3-1
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
2.7 ケース温度過熱保護機能
(TcOH)
・上アーム
TcOH保護機能は、パワーチップ
(IGBT、FWD)
と同一のセ
上アーム側の保護動作
(OC、UV、TjOH)
のみの状況では
アラームは出力されません。
ラミック基板上に設けられた温度検出素子により絶縁基板温
度を検出し、検出温度が保護温度レベル
(TcOH)
を一定時間
(約1ms)
以上連続して越えた場合、保護動作します。
下アーム側IGBTの入力信号がオンの場合はソフト遮断し、
下アーム側全IGBTを約2msのラッチ期間中オフに保持しま
す。
・OHヒステリシス
TcOHにもチャタリング防止のためにヒステリシスTcHを
設けています。
約2ms経過後にケース温度TcがTcOH-TcH以下に下がると
保護が解除されます。
・保護動作遅れ時間
ノイズ等による誤動作を防止するため、約1ms(tDOH)
の
期間連続してTcOHを越えないとOH保護機能が動作しま
せん。
ラッチ期間2ms経過後に入力信号がオフであれば保護は解
除されます。
・下アームのアラーム相互接続
下アーム側各ドライブ回路のアラーム端子は相互接続され
ているため、アラーム出力時にはDBを含む下アーム側全
IGBTが停止します。
ラッチ期間2ms経過後に入力信号がオフであれば保護は解
除されます。
2.10 IPM内部ブロック図
図5にIPM内部ブロック図
(ブレーキ内蔵)を示します。
図6にIPM内部ブロック図
(ブレーキなし)を示します。
P
VccU ③
VinU
②
Pre-Driver
VZ
2.8 チップ温度過熱保護機能
(TjOH)
TjOH保護機能は、全IGBTチップに設けられた温度検出素子
によりIGBTチップ温度を検出し、検出温度が保護温度レベ
ル
(TjOH)
を一定時間
(約1ms)
以上連続して越えた場合、保
護動作します。
入力信号がONの場合はIGBTをソフト遮断し、2msのラッチ
期間中停止します。
下アームでTjOH保護が動作すると、下アーム側全IGBTを
2msのラッチ期間中停止します。
・OHヒステリシス
TjOHにもチャタリング防止のためのヒステリシスTjHを
GNDU ①
VccV ⑥
VinV
U
Pre-Driver
⑤
VZ
V
GNDV ④
VccW ⑨
VinW ⑧
Pre-Driver
VZ
GNDW ⑦
Vcc
⑪
VinX
⑬
GND
⑩
VinY
⑭
W
Pre-Driver
VZ
Pre-Driver
VZ
設けています。
2ms経過後にチップ温度TjがTjOH-TjH以下に下がり、入
力信号がオフであれば保護が解除されます。
・保護動作遅れ時間
ノイズ等による誤動作を防止するため、約1ms
(tDOH)
の
期間連続してTjOHを越えないとOH保護機能は動作しま
VinZ
⑮
Pre-Driver
VZ
B
VinDB ⑫
Pre-Driver
VZ
N
せん。
RALM
ALM
2.9 アラーム出力機能(ALM)
下アーム側OC、UV、TjOH及びTcOH各保護動作のラッチ
期間中、アラームを出力します。
ラッチ期間が終了してもVinがオンの状態では保護及びア
ラームは復帰しません。
この場合、Vinがオフになる瞬間に保護及びアラームが復帰
します。
3-2
⑯
1.5kΩ
Over heating protection
circuit
Pre-drivers include following functions
① Amplifier for driver
② Short circuit protection
③ Undervoltage lockout circuit
④ Overcurrent protection
⑤ IGBT chip over heating protection
図5 IPM内部ブロック図(ブレーキ内蔵)
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
P
VccU ③
VinU
Pre-Driver
②
VZ
U
GNDU ①
VccV ⑥
VinV
⑤
Pre-Driver
VZ
GNDV ④
VccW ⑨
V
VinW ⑧
Pre-Driver
VZ
GNDW ⑦
Vcc
⑪
VinX
⑬
GND
⑩
VinY
⑭
W
Pre-Driver
VZ
Pre-Driver
VZ
VinZ
⑮
Pre-Driver
VZ
B
NC
⑫
第
3
NC
N
ALM
RALM
⑯
Over heating protection
circuit
1.5kΩ
章
Pre-drivers include following functions
① Amplifier for driver
② Short circuit protection
③ Undervoltage lockout circuit
④ Overcurrent protection
⑤ IGBT chip over heating protection
図6 IPM内部ブロック図(ブレーキなし)
3 タイミングチャート
保護機能のタイミングチャートを示します。
制御電源電圧低下保護(UV)
-1
VUV+VH
VUV
<5μs
<5μs
Vcc
Vin
Ic
5μs
IALM
5μs
tALM
①
②
③
tALM
④
⑤
⑥
⑦
⑧
①Vcc起動時はVUV+VH以下でアラームを出力
する。
②VccがVUV以下に低下した期間が5μs以下で
は保護は動作しない。
(Vinオフ時)
③Vinがオフ時はVccがVUV以下になって約5μs
後にアラームを出力しIGBTはオフを維持す
る。
(上アームVccのみの場合はアラームを出
力しない。)
④VccがtALM経過前にVUV+VHまで復帰する
と、Vinオフ時にはtALM経過時にUVは復帰
し、同時にアラームも復帰する。
⑤VccがVUV以下に低下した期間が5μs以下で
は保護は動作しない。
(Vinオン時)
⑥Vinがオン時はVccがVUV以下になって約5μs
後にアラームを出力しIGBTはソフト遮断す
る。
(上アームVccのみの場合はアラームを出
力しない。)
⑦VccがtALM経過前にVUV+VHまで復帰する
と、Vinオフ時にはtALM経過時にUVは復帰
し、同時にアラームも復帰する。
⑧Vcc停止時はVUV以下でアラームを出力する。
3-3
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
制御電源電圧低下保護(UV)-2
VUV+VH
VUV
①Vcc起動時はVUV+VH以下でアラームを出力
する。(Vinがオフになるまで)
②VccがtALM経過以後にVUV+VHまで復帰す
ると、Vinがオフ時にはVUV+VH復帰と同時
にUVとアラームは復帰する。
③VccがtALM経過前にVUV+VHまで復帰して
も、Vinがオン時にはtALM経過時にUVは復
帰しない。Vinオフと同時にUVとアラームは
復帰する。
④Vcc停止時にVinオンの場合には、VUV以下
でアラームを出力しIGBTをソフト遮断する。
Vcc
Vin
Ic
5μs
5μs
IALM
tALM
tALM
①
②
③
④
過電流保護(OC)
Vin
Ioc
Ic
IALM
tDOC
tDOC
<tDOC
①
3-4
<tDOC
tALM
tALM
②
③
④
⑤
⑥
①IcがIocを上回った時からtDOC経過後にア
ラームを出力しIGBTをソフト遮断する。上
アームの場合はアラームを出力しない。
②tALM経過時にVinがオフの時はOCとアラー
ムは同時に復帰する。
③IcがIocを上回った時からtDOC経過後にア
ラームを出力しI G B T をソフト遮断する。
上アームの場合はアラームを出力しない。
④tALM経過時にVinがオンの時はOCは復帰し
ない。オフ信号入力時にOCとアラームは同時
に復帰する。
⑤IcがIocを上回った後、tDOC経過前にVinがオ
フになると保護動作せず、IGBTは通常の遮断
をする。
⑥IcがIocを上回った後、tDOC経過前にVinがオ
フになると保護動作せず、IGBTは通常の遮断
をする。
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
短絡保護(SC)
Vin
Isc
Ioc
Ic
IALM
tDOC
tDOC
<tDOC
tALM
①
<tDOC
tALM
②
③
④
⑤
⑥
①Icが流れ始めた後に負荷短絡が発生しIscを越
えると瞬時にIcピークを抑制する。
tDOC経過後にアラームを出力しIGBTをソフ
ト遮断する。
上アームの場合はアラームを出力しない。
②tALM経過時にVinがオフの時はOCとアラー
ムは同時に復帰する。
③Icが流れ始めると同時に負荷短絡が発生しIsc
を越えると瞬時にIcピークを抑制する。tDOC
経過後にアラームを出力しIGBTをソフト遮断
する。
上アームの場合はアラームを出力しない。
④tALM経過時にVinがオンの時はOCは復帰し
ない。オフ信号入力時にOCとアラームは同時
に復帰する。
⑤Icが流れ始めた後に負荷短絡が発生しIscを越
えると瞬時にIcピークを抑制する。その後、
tDOC経過前にVinがオフになると保護動作せ
ず、IGBTは通常の遮断をする。
⑥Icが流れ始めると同時に負荷短絡が発生しIsc
を越えると瞬時にIcピークを抑制する。その
後、tDOC経過前にVinがオフになると保護動
作せず、IGBTは通常の遮断をする。
ケース温度過熱保護
(TcOH)
①ケース温度Tcが約1msの期間継続してTcOH
を越えるとアラームを出力し、Vinがオンの
場合は下アーム側全I G B T がソフト遮断す
る。
②tALM経過前にTcOH-TcH以下に復帰すると
tALM経過時にアラームが復帰する。
③Tcが約1msの期間継続してTcOHを越えると
アラームを出力する。
(Vinオフ時)
④tALM経過時にTcOH-TcH以下に復帰してい
ない場合はアラームは復帰しない。
tALM経過後にTcOH-TcH以下に復帰すると
アラームが復帰する。
Vin
TcOH
TcOH-TcH
Tc
Ic
IALM
1ms
①
tALM
1ms
②
③
tALM
1ms
③
tALM
④
3-5
第
3
章
IGBT-IPM Rシリーズ
機能の説明
IGBTチップ過熱保護(TjOH)-1
①IGBTチップ温度Tjが約1msの期間継続して
TjOHを越えるとアラームを出力し、IGBTを
ソフト遮断する。上アームの場合はアラーム
を出力しない。
②tALM経過前にTjOH-TjH以下に復帰すると
tALM経過時Vinがオフの場合はOHとアラー
ムは同時に復帰する。
③Tjが約1msの期間継続してTjOHを越えるとア
ラームを出力しVinがオフの場合は、オフを保
持する。
上アームの場合はアラームを出力しない。
④tALM経過後にTjOH-TjH以下に復帰する場
合、Vinがオフの時はOHとアラームは同時に
復帰する。
Vin
TjOH
TjOH-TjH
Tj
Ic
IALM
1ms
tALM
①
1ms
②
tALM
③
1ms
tALM
③
④
IGBTチップ過熱保護(TjOH)-2
①TjがTjOHを越えて約1ms以内にTjOH以下に
下がると、Vinがオン・オフいずれでも OHは
動作しない。
②TjがTjOHを越えて約1ms以内にTjOH以下に
下がると、Vinがオン・オフいずれでもOHは動
作しない。
③TjがTjOHを越えた後約3μs以上の期間TjOH
以下に下がると、その後のTjOHを越えた期間
が約1ms経過時にOH動作する。
Vin
TjOH
TjOH-TjH
Tj
3μs<
Ic
IALM
1ms
①
3-6
<1ms
<1ms
tALM
②
1ms
③
tALM
IGBT-IPM Rシリーズ
応用回路例
第 4 章 応用回路例
1 全体回路
図7に応用回路例
(ブレーキ内蔵タイプ)を示します。
2.5 信号入力端子のプルアップ
図8に応用回路例
(ブレーキなしタイプ)を示します。
制御信号入力端子は20kΩの抵抗でVccにプルアップしてく
ださい。また、ブレーキ内蔵IPMでブレーキを使用しない場
合もDB入力端子をプルアップしてください。プルアップし
2 注意事項
ない場合、dv/dtにより誤動作する可能性があります。
2.6 スナバ
2.1 制御電源
スナバはPN端子に直接接続してください。
図7、8に示すように制御電源は上アーム側=3、下アーム側=
1、合計4系統の絶縁電源が必要です。
P612パッケージの場合、両側のPN端子にそれぞれスナバを
設置してください。
市販の電源ユニットを使用する場合は、電源出力側のGND
端子は接続しないでください。
出力側GNDを出力の+または−に接続すると、電源入力側
アースで各電源が接続されるため、誤動作の原因となりま
す。
また、各電源間とアースとの間のストレーC(浮遊容量)
はで
2.7 B端子
6ヶ組
(ブレーキなし)
タイプの場合、B端子はNまたはPの電
位に接続することを推奨します。B端子フローティング状態
での使用は避けてください。 きるだけ低減してください。
2.2 4電源間の構造的な絶縁(入力部コネクタ及びプ
リント板)
絶縁は各々4電源間と主電源間に必要です。
また、この絶縁部にはIGBTスイッチング時の大きなdv/dtが
加わりますので、充分な絶縁距離を確保してください。
(推奨2mm以上)
第
4
2.3 GND接続
章
下アーム側制御電源GNDと主電源GNDはIPM内部で接続
されていますがIPM外部での接続は絶対に行なわないでくだ
さい。
接続すると下アームにIPM内外で発生するdi/dtによりルー
プ電流が流れ、フォトカプラ、IPM等の誤動作を引き起こし
ます。
更には、IPM入力回路が破壊する可能性もあります。
2.4 制御電源コンデンサ
図7、8に示す各制御電源に接続される10μF及び0.1μFは、制
御電源を平滑化するためのコンデンサではなく、IPMまでの
配線インピーダンス補正用です。
平滑用のコンデンサは他に必要です。
また、10μF及び0.1μFから制御回路までの配線インピーダ
ンスで過渡変動が発生するので、IPM制御端子にできるだけ
近接して接続してください。
電解コンデンサについても、インピーダンスが低く周波数特
性の良い物を選定し、さらにフィルムコンデンサ等周波数特
性の良い物を並列に接続してください。
4-1
IGBT-IPM Rシリーズ
応用回路例
+
IF
Vcc
③
10μF
②
AC200V
P
20kΩ
IPM
0.1μF
①
U
20kΩ
+
IF
Vcc
⑥
10μF
⑤
0.1μF
V
④
20kΩ
+
IF
Vcc
⑨
10μF
W
⑧
0.1μF
⑦
B
20kΩ
+
IF
Vcc
⑪
10μF
⑫
0.1μF
N
⑩
20kΩ
+
IF
10μF
⑬
0.1μF
20kΩ
+
IF
10μF
⑭
0.1μF
20kΩ
+
IF
10μF
⑮
0.1μF
5V
1k
⑯
図7 応用回路例
(ブレーキ内蔵タイプ)
4-2
M
+
IGBT-IPM Rシリーズ
応用回路例
20kΩ
+
IF
Vcc
③
10μF
②
IPM
AC200V
P
0.1μF
①
U
20kΩ
+
IF
Vcc
⑥
10μF
⑤
0.1μF
V
M
+
④
20kΩ
⑨
+
10μF
IF
Vcc
W
⑧
0.1μF
⑦
B
⑪
⑫
Vcc
N
⑩
20kΩ
+
IF
10μF
⑬
0.1μF
20kΩ
+
IF
10μF
⑭
0.1μF
20kΩ
+
IF
10μF
第
⑮
4
0.1μF
章
5V
1k
⑯
図8 応用回路例
(ブレーキなしタイプ)
4-3
IGBT-IPM Rシリーズ
応用回路例
3 フォトカプラ周辺回路
良い例:トーテムポール出力IC
フォトダイオードのカソード側に電流制限抵抗
3.1 制御入力用フォトカプラ
1)フォトカプラ定格
フォトカプラは下記の特性を満足する物を使用してください。
・CMH=CML>15kV/μs または10kV/μs
・tpHL=tpLH<0.8μs
・tpLH-tpHL=−0.4∼0.9μs
・CTR>15%
例)
HP社製:HCPL-4504、HCPL-4506
東芝製 :TLP759(IGM)
また、UL、VDE等の安全規格にも注意してください。
良い例:トランジスタC-E 間でフォトダイオードA-K間をショート
(特にフォトカプラオフに強い例)
2)フォトカプラ・IPM間配線
フォトカプラとIPM制御端子間は配線インピーダンスを小さ
くするために最短で配線し、1次−2次間は浮遊容量が大きく
ならないよう、各々の配線は近づけないように注意してくだ
さい。1次−2次間には大きなdv/dtが加わります。
3)発光ダイオード駆動回路
フォトカプラは入力の発光ダイオード駆動回路によっても
dv/dt耐量が低下します。図9に示すように良い例での駆動を
悪い例:オープンコレクタ
推奨します。
3.2 アラーム出力用フォトカプラ
1)フォトカプラ定格
汎用フォトカプラを使用できますが、下記特性のものを推奨
します。
・100%<CTR<300%
・1素子入りタイプ
例)
TLP521-1-GRランク
悪い例:フォトダイオードのアノード側に電流制限抵抗
また、UL、VDE等の安全規格にも注意してください。
2)入力電流制限抵抗
フォトカプラ入力側発光ダイオードの電流制限抵抗は、IPM
に内蔵されています。RALM=1.5kΩであり、Vccに直接接
続した場合、Vcc=15VでIF=約10mA流れます。従って、電
流制限抵抗の接続は必要ありません。
ただし、フォトカプラ出力側で大きな電流 Iout>10mAが必
図9 フォトカプラ入力回路
要な場合は、フォトカプラのCTR値を必要な値まで大きく
してください。
4 コネクタ
3)フォトカプラ・IPM間配線
アラーム用フォトカプラにも大きなdv/dtが加わるので3.1-2)
項と同様の注意をお願いします。
4-4
RシリーズIPMはすべて1種類のコネクタで制御系の接続を
することができます。下記製品を推奨します。
コネクタ推奨品:ヒロセ電機
(株)製 MDF7-25S-2.54DSA
IGBT-IPM Rシリーズ
放熱設計
第 5 章 放熱設計
1 冷却体(ヒートシンク)の選定方法
IGBTを安全に動作させるためには接合温度TjがTjmaxを越
えないようにする必要があります。定格負荷時はもちろんで
すが、過負荷時等の異常時にも必ずTjmax以下になるよう充
分に余裕を持った熱設計を実施してください。
Tjmax以上の温度で動作させるとチップが熱破壊する危険性
があります。
RシリーズIPMではIGBTのチップ温度がTjmaxを越えると
TjOH保護が動作しますが、温度上昇が急激な場合、保護で
きない可能性もあります。
FWDについてもIGBTと同様にTjmaxを越えないように注意
してください。
具体的設計については、下記資料を参照してください。
「IGBTモジュールNシリーズ アプリケーション・マニュアル
RH982」
内容:・発生損失の求め方
・ヒートシンク
(冷却体)の選定方法
・ヒートシンク
(冷却体)への取り付け方法
2 ヒートシンク選定の注意事項
マニュアルRH982に選定方法は記載されていますが、下記の
点に注意してください。
・ヒートシンク面の平坦度
取り付けネジピッチ間で平坦度0∼+100μm、粗さ10μm以下
理由 マイナスの場合:ヒートシンク−IPM間に隙間がで
き、放熱性が悪化します。
第
+100μm以上 : IPMの銅ベースが変形し、内部絶
縁基板に割れが発生する可能性が
5
章
あります。
5-1
IGBT-IPM Rシリーズ
使用上の注意事項
第 6 章 使用上の注意事項
1 主電源 Vd
2 制御電源 Vcc
1.1 電圧範囲の考え方
2.1 電圧範囲の考え方
主電源の電圧を規定するIPMスペックとしては、VDC、
Vccには電圧低下保護機能UVがありますが,使用電圧範囲
VDC(SURGE)
、VSC、VCESの4項目あります。
(内容は第
2章、3項の特性用語を参照ください)
を下記に示します。
主電源電圧範囲はこの4項目から、以下のようになります。
・0V以下
(逆電圧の印加について)
制御回路が破壊します。絶対に印加しないでください。
・主電源の変動範囲は600V系では400V以下であること。
1200V系では800V以下であること。
・0V∼VUV+VH、VUV∼0V
制御回路は破壊することはありませんが、動作しません。
・ブレーキ動作電圧は600V系では400V以下であること。
1200V系では800V以下であること。
この範囲ではIGBTゲートのオフバイアスが不充分なの
で、主電源を印加するとdv/dtによりIGBTが誤オンする
・インバータ装置の主電源の保護動作電圧は600V系では400V
以下とし、保護動作遅れ時間内の上昇を含め450V
(=VDC)
可能性もあります。
主電源の印加は13.5V以上になってから行なってください。
以下であること。
(1200V系ではそれぞれ800V以下、900V以下とする。)
・VUV+VH∼13.5V、13.5V∼VUV
制御回路は動作します。ただし、ドライブ電圧不足のため
・スイッチング時の最大サージ電圧は6 0 0 V 系では5 0 0 V
(=VDC
(SURGE)
)
以下であること。1200V系では1000V以下
損失が増大します。
また、保護特性がシフトするため、保護が不充分で破壊に
であること。
ただし、前項のすべての範囲において、この値以下になるよ
うスナバをPN端子直近に設置してください。
至る場合もあります。
この範囲での動作はさせないよう、注意してください。
・13.5V∼16.5V
・スイッチング時のdi/dtによりIPM内部配線インダクタン
スにサージ電圧が発生します。この最大サージ電圧を600V
IPMが正常に動作する電圧範囲です。
できるだけ15Vに近い電圧での使用を推奨します。
(=VCES)
以下に抑えるように回路・構造・素子が設計され
ています。
(1200V系では1200V以下)
・16.5V∼20V
制御回路は動作します。
1.2 外来ノイズ
ただし、IGBTとFWDはドライブ電源電圧過剰で保護特性
がシフトするため、負荷によっては破壊する可能性もあ
IPMは内部で外来ノイズに対する対策を行なっていますが、
ノイズの種類や強度により誤動作、破壊の可能性がまったく
ります。
この範囲での動作はさせないよう、注意してください。
ない訳ではありません。
IPMに加わるノイズに対し、充分な対策を行なってください。
・20V以上
制御回路が破壊する可能性があります。絶対に印加しない
でください。
装置外部からのノイズ
・ACラインのノイズフィルター、及び絶縁アース等での対策
・全相の信号入力・信号GND間に1000pF以下のコンデンサ
2.2 電圧リップル
を付加することでの対策
装置内部のノイズ
です。
Vccの変動が短時間でもドライブ電圧の過不足により、UV、
整流器外:上記内容と同等
整流器内:PNラインのスナバ等による対策
OC等の保護が期待通りに動作しない可能性があります。
制御電源の製作においては電圧リップルを充分低くするよう
(1個の整流コンバータに複数のインバータを接
続する場合など)
2.1に示す13.5V∼16.5Vは、Vccの電圧リップルを含んだ範囲
注意してください。
また、電源に乗るノイズについても低く抑えるよう注意して
ください。
6-1
IGBT-IPM Rシリーズ
使用上の注意事項
2.3 電源立上げシーケンス
し、IGBTのチップ温度が急激に上昇します。このような場
2.1に示すようにVccが13.5V∼16.5Vの範囲になってから主電
合はケース温度の上昇は遅れるためTcOHでは間に合いませ
んが、チップ温度がTjmaxを越えるとTjOHが動作し、過熱
源を印加してください。制御電源電圧が所定値に達する前に
主電源が投入されると、最悪の場合、保護特性が充分機能で
きずにIPMが破壊する可能性もあります。
2.4 電源立上げ時、立下げ時のアラーム
電源立上げ時、
VUV+VH以下ではアラームが出力されます。
VUV+VH以上になると復帰しますが、オン信号が入力され
ているとアラームが解除されないので、制御回路側での対応
による破壊から保護されます。
しかしながら、TjOHにも1ms程度のディレイ時間があるた
め急激な温度上昇では保護が遅れて破壊する可能性もありま
す。
起動時の最初の入力信号を10μs以上のパルス幅とすること
で、短絡による過電流を確実に検出し、OC保護動作による
アラーム出力で異常を検出できます。
をお願いします。
電源を立下げる時もアラームを出力しますので、同様に対応
4)上下アーム短絡
してください。
上下アーム同時にオン信号が入力されると上下アームの
IGBTが同時にオンするため、上下アーム短絡が発生しま
す。この場合、Icピークが瞬時に抑制され、tDOC経過後
3 保護動作
IGBTはソフト遮断しアラームが出力されます。
5)地絡
3.1 保護動作共通
1)保護の範囲
IPMに内蔵された保護は、非繰返しの異常現象に対応するも
のです。
最大定格を越える定常的なストレスを印加しないでください。
2)アラーム出力に対する処置
モータの絶縁異常等により地絡が発生し、下アームに過電流
が流れた場合はIGBTがソフト遮断しアラームが出力されま
す。
過電流が上アームに流れた場合はIGBTはソフト遮断します
がアラームは出力されません。自己遮断の状態は約2ms間維
アラームが出力された場合、直ちにIPMへの入力信号を停止
持されますが入力信号が停止されない場合、2ms後に保護状
態が解除されます。
して装置を停止してください。IPMの保護は自動復帰するの
でIPMの保護動作だけではIPMと装置を保護できません。
一般的にはAC入力位相が10ms後に反転するため、短絡電流
が下アームに流れこの時にアラームが出力されます。
異常の原因を除去した後に再起動してください。
3.3 上アーム側のアラームについて
3.2 負荷異常によるOC動作例、及び注意事項
1)過負荷
上アーム側からはアラームが出力されません。
OC、SC、UVはブレーキを含む全IGBTに設けられ、2msの
モータの負荷異常等によりIPM出力電流が上昇した場合は
ラッチがあります。
アラーム出力は下アーム側1系統で、上アーム側にはありま
OCが動作します。tDOC経過後にIGBTはソフト遮断し、下
アーム側の場合はアラームが出力されます。
2)負荷短絡
モータの短絡及びIPM出力端子で短絡が発生した場合等で
は、過大な電流が流れないように、Icピークを瞬時に抑制し
ます。tDOCの期間に短絡の状況が改善されない場合はIGBT
はソフト遮断し、
下アーム側の場合はアラームが出力されます。
せん。
この結果、上アーム側だけで保護が動作してもアラームは出
力されません。
しかしながら、2msラッチ期間は上相電流が欠相し、下相に
位相が移った段階で下アーム側に過電流が流れ、OC動作に
よりアラームが出力されます。
第
3.4 FWDの過電流について
3)負荷短絡起動
OCには10μs程度のディレイ時間があり、これ以下の入力信
号パルス幅ではOCは動作しません。従って、負荷が短絡し
OC、SCはIGBTのコレクタ電流を検出して動作しますが、
FWDのアノード電流は検出していません。このため、FWD
のみに異常電流が流れた場合は保護は動作しません。
た状態で起動した場合に入力信号パルス幅が長時間(数
10ms)にわたり10μs以下であると、短絡が連続して発生
6-2
6
章
IGBT-IPM Rシリーズ
使用上の注意事項
3.5 ケース温度保護(TcOH)の温度検出点
ケース温度保護の温度検出点は、パワー素子を搭載したセ
ラミック基板上半田付けされています。基板上の位置は下
アームX相IGBTの近傍で、基板の端部です。TcOHは基板
全体が温度上昇した場合の保護であり、1つのメイン素子
が集中発熱した場合には3.6項のチップ温度保護TjOHが対応
します。
3.6 チップ温度保護(TjOH)
1∼2ケのIGBTに電流が集中して流れると、チップ温度が
急激に上昇し、ケース温度保護では間に合いません。この場
合、IGBTチップに内蔵した温度検出素子により熱破壊から
保護されます。
チップ温度保護はブレーキ部を含む全IGBTに内蔵しています。
4 信頼性
4.1 パワーサイクル寿命
半導体製品の寿命は永久ではありません。特に自己発熱での
温度上昇・下降による熱疲労寿命には注意が必要です。温度
の上昇下降が連続的に発生する場合は温度変動幅をできるだ
け小さくしてください。
4.2 信頼性試験項目
項 目
準拠規格
方法・条件
熱衝撃
JIS C7021 A-3
0/100℃、各5分、10サイクル
温度サイクル
JIS C7021 A-4
–40/RT/125℃、60/30/C630分、100サイクル
衝撃
JIS C7021 A-7
1000G、0.5ms、XYZ各3回
振動
JIS C7021 A-10
10G、10∼500Hz、15分間、XYZ各6時間
端子引張り強度
JIS C7021 A-11
制御端子垂直方向へ10N
締付け強度
EIAJ ED-4701 A-112
方法2
(締付トルク試験)
、3.5Nm
断続動作
JIS C7021 B-6
定格Pc、2/18秒
(オン/オフ)
、3000サイクル
高温逆バイアス
JIS C7021 B-8
125℃、VDCX0.8、1000時間
高温保存
JIS C7021 B-10
125℃、1000時間
低温保存
JIS C7021 B-12
–40℃、1000時間
湿中保存
JIS C7021 B-11
85℃、85%、1000時間
プレッシャークッカー EIAJ ED-4701 B-123
6-3
2気圧、121℃、100%、20時間
IGBT-IPM Rシリーズ
5 その他
5.1 保管・運搬上の注意事項
1)常温・常湿で保存してください。
(5∼35℃、45∼75%)
2)急激な温度・湿度変化を避けてください。
特にIPM表面に結露させないでください。
3)腐蝕性ガスの発生場所・塵埃の多い場所を避けてください。
4)IPMに荷重がかからないように注意してください。
特に制御端子が曲がらないように注意してください。
5)IPMの端子は荷重がかからないように未加工の状態で保
管してください。
6)IPMの運搬時に衝撃を与えたり、
落下させないでください。
5.2 装置への組み込み、使用時の注意事項
1)装置への組み込み、運搬、運転時に衝撃を与えたり落下
させないでください。
2)IPMに荷重がかからないように注意してください。
特に制御端子が曲がらないように注意してください。
3)主端子、制御端子にリフローによる半田付けは行なわな
いでください。
他の部品の半田付け等による熱、フラックス、洗浄液が
IPMに影響を与えないよう注意してください。
4)急激な温度、湿度変化を避けてください。
特にIPM表面に結露させないでください。
5)腐蝕性ガスの発生場所・塵埃の多い場所を避けてください。
6)搭載されているIGBT、
ICは静電気に対して弱い素子です。
高電圧の静電気が主端子、制御端子に加わらないように
注意してください。