全国市議会議長会研究フォーラム報告書 - 貝塚市

全国市議会議長会研究フォーラム報告書
平成 24 年 10 月 15 日
貝塚市議会議長 食野雅由殿
自由市民 田畑庄司
田中 学
池尻平和
食野雅由
日 時
第 1 日:平成 24 年 10 月 10 日(水)13:00 開会
第 2 日:平成 24 年 10 月 11 日(木)
9:00 開会
会 場
ひめぎんホール(愛媛県松山市道後町 2 丁目 5 番 1 号)
主 催
全国市議会議長会
後 援
総務省
実 施
第 7 回全国市議会議長会研究フォーラム実行委員会
第1日
第1部
平成 24 年 10 月 10 日(水)13:00 開会
基調講演
「地方自治の課題と議会のミッション」
片山 善博氏 前総務大臣・慶応義塾大学法学部教授
先ず、義務教育と議会というテーマで講演が始まりました。その内容は、日本の義務教
育は、自治体にとって最重要課題である。したがって教育現場の課題は、議会が把握して
いなければならない、また、その課題に対して自治体が応えているかが問われている。全
国的に見て、教育委員会(教育長をはじめ教育委員たち)の力量が充分であるかどうかが
大いに問われている、その教育委員の選任に最終的責任を持っているのは議会である。市
長の選んできた教育委員に対して議会が責任を持って選任しているか。また、日頃の活動
に対してチェックができているか、議会は責任を有するものであるので議員の活動の中で
その問題を注視しなければならない。という内容でした。
次に、地域主権改革と議会というテーマに移り、地域主権改革についての片山氏の持論
が紹介されました。それは、地域主権改革とは、地域のことは地域に住む住民が責任を持
って決められる仕組みにしなければならない、これまでの改革は、国庫補助金改革、地方
出先機関改革などがあり、その上、住民自治の充実が課題であるとのことでした。また、
地域主権改革の実践と議会の役割は、改革の成果を具現化することが求められているので
各議会で推進してほしいとの要望を述べられていました。その実践は、現行制度の中でも
独自にやれることは多いとのことでした。
続いて、首長のパフォーマンスと議会の役割という知事経験者である片山氏の独自の見
識によるテーマで講演がなされました。その内容は、首長は、当然自治体に1人しかいな
いので、ややもすれば個人的な政治パフォーマンスが多く見受けられる。これが住民にと
って良い方向であればいいのだが、間違った方向に向かっているものであれば、それは問
題である。そこで二元代表制の一翼を担う議会は、それなりの人数を擁し多様的な意見を
持っているので、意見を集約し、客観的に政策の点検をするのが議会の本質である。従っ
て執行部に頼らない議会運営を心がけ議会情報を市民に的確に提供し議会主導の自治体運
営をしていかなければならないと述べられていました。まさに、的確な指摘であると思い
ました。
最後に、まとめとして、市民に開かれ、市民に信頼される議会を目指して、次の提言が
ありました。議会は市民の代表であるので首長へのすり寄り・与党化は市民から遠ざかる
のでしない。議場でのやり取りは市民にわかりやすくする。議会の議決事項は市民に理解
できるか説明の場を設ける(条例の整除・改良が必要)
。市民のニーズを政策に具現化する
(政策条例の提案、首長提案の議案修正など)。政策法務機能の充実活用。行政の監視機能
(財政の持続の可能性、無駄の排除、透明性の確保、お手盛りや不公正を摘出)等々を目
標にこれからの議会活動を遂行されたいとの講演でありました。まさにこれらのことを踏
まえ、我々議員として肝に銘じ活動して行きたいと考えます。
第2部
パネルディスカッション
「地方議会における政策形成の在り方について」
コーディネーター 佐々木信夫氏 中央大学経済学部教授
パネリスト
江藤 俊昭氏 山梨学院大学法学部教授
金井 利之氏 東京大学公共政策大学院教授
坪井ゆづる氏 朝日新聞論説副主幹
寺井 克之氏 松山市議会議長
冒頭、コーディネーターである佐々木信夫氏から、地方議会の創設以来からの議会の役
割の歴史が説明されました。その内容は、第 1 期(明治憲法下)では首長の諮問機関の役割
であったのが、第 2 期(戦後、機関委任事務下)では形式的な議事機関の移り、第3期(2
000年改革後、地方分権下)になって実質的な立法機関になり、従来の「霞が関に責任
をとる政治」から「住民に責任をとる政治」に変わらざるを得ないものになってきた。地
方議会は決定者、監視者、提案者、集約者の 4 つの役割を果たすべき立法機関で、地方政
治における主役の位置に立つものであると提言されました。これについては、我々も研鑽
を重ね市民の期待に応えなければならないと感じました。続いて、4 名のパネラーから各々
発言がありました。最初に山梨学院大学法学部教授の江藤俊昭氏の発言は、議会には大き
な権限が与えられている。様々なレベルの討議を重視し議会(議事機関)と行政(執行機関)
が切磋琢磨し地域民主主義の確立を目指すというような内容でした。次に、東京大学公共
政策大学院教授の金井利之氏は、議会は立法(条例制定)における拒否権プレーヤーでは
あるが、中心主導機関ではない。というような発言が印象に残りました。朝日新聞論説副
主幹である坪井ゆづる氏は、ジャーナリストとして我々地方議会に対して批判的であると
感じました。それは朝日新聞の全国 1797 議会に対し自治体議会アンケート(行政監視・政
策立案・情報公開の 3 つ)を実施し、この 3 つをやっていない議会が 653 議会あり、称し
てダメ議会・三冠王「3 ない議会」と酷評されました。この意見に対し各議会の手法は様々
なものがあり事前に全員協議会(本市における議員総会)等において充分審議・修正がな
され本会議においては必然的に原案どおり可決される議会は数多くあるのは議会の性格上
仕方がないものと思います。坪井氏はこのような実態を承知の上、このような否定的な発
言が行われたのは流石朝日新聞であると思いました。次に、地元開催地の松山市議会議長
寺井克之氏から発言がありました、地方分権の進展に伴い、自治体の自己決定事項が増大
し、地域社会の民意を的確に把握することがより一層重要となるので、議会は議会改革を
推進し市民の信頼を得るよう努力しなければならないと述べられました。まさにそのとお
りであると感じました。その後いろいろな視点から討論がなされ、最後に会場からの質疑
応答がありました。その中で、議会報告会を実施しているが回を重ねるごとに毎回同じ出
席者がありその方たちがクレーマーと化しその対応に苦慮しているので何か良い方法はな
いものかと質問があり、応えられるパネリストはなく、コーディネーターの佐々木氏から
坪井氏が指名されその答えは「自分の支持者や賛同者をその会場に連れて来れば?」とい
うようなふざけた回答があり問題の解決に至るものではなかったのが残念でした。
第2日 平成 24 年 10 月 11日(木)9:00 開会
課題討議
「大震災における議会の役割」
コーディネーター 牛山 久仁彦氏 明治大学政治経済学部教授
報告者 平田
武氏
南相馬市議会議長
渡邊
武氏
名取市議会前議長
伊藤 明彦氏
コメンテーター 中邨
章氏
陸前高田市議会議長
明治大学名誉教授
日本自治体危機管理学会会長
2 日目の課題討議に入り、先ず大震災を経験した 3 つの議会から当日の体験やその後の議
会活動について報告がありました。3市とも時節柄予算審議の本会議開催中に大震災と大
津波が発生し、本会議の延会を決め、一時避難をしその後被災した各地区に駆けつけ地元
の市民のリーダーとなり対応されました。その時に3市議会とも有能な議員の命をなくさ
れたとありました。正に痛恨の極みであります。特に南相馬市においては放射能汚染とい
う震災被害に加えて大きな問題があり復旧復興にはまだまだ時間がかかるという切実な問
題が報告されました。3氏の報告の後、コメンテーターである明治大学名誉教授・日本自
治体危機管理学会会長の中邨章氏コメントがありました。その内容は、地方における危機
管理は行政中心であり議会としてはジレンマに陥っている、議会としての活動や議員とし
ての役割は、なかなか見えてこない、そこでそんな時どうすればいいのかという問題が提
議されました。中邨章氏の提案は、例えば避難所では被災者とボランティアとの仲人役に
なればよい、その時一目で市会議員とわかる着衣を揃えその場のコーディネートをすれば
どうかと述べられていました。それは、一考に値するものであると思いました。その後質
疑応答を行い有意義な内に討議は終了しました。
最後に、この第 7 回全国市議会議長会研究フォーラムに参加して2日間にわたり研修し
たことは、我々にとってこれからの議員活動の参考にしていかなければならないと感じま
した。以上報告といたします。