2012 年千葉県高校入試資料(2)

2012 年千葉県高校入試資料(2)
私立高校入試の状況
(1) 全体状況
グラフ 3 は、アンケートによる過去 5 年間の県内私立高校
出願総数の前年対比の伸び率を、県内国公立中 3 生徒数の増
加率とともに示したものです。アンケートについては一部未
公表校があること、二次募集結果が反映されていないケース
もあることから最終結果ではありません。グラフでは昨年を
除いて私立高校の出願数は常に前年対比マイナスで推移して
います。昨年は人口増加の年でしたが、出願総数は中 3 生の
伸び率を上回る増加でした。今年は生徒数とほぼ同じ減少で
す。
一昨年までは中 3 生徒数がマイナスでも横ばいでも私立高
校の出願総数は減少していました。根強い公立志向や私立高
校同士の併願校数の減少が原因です。昨年の増加は中 3 生徒
数の増加が大きな理由ですが、出願総数がそれを上回ったの
は、都内私立高校で 1 月の他校併願前提の入試が中止された
ため、1 月中にどこかの私立を決めておきたい受験生が県内
私立高校に流れ込んだためです。今年は、都内からの受験生
流入が落ち着いたことで生徒数減少にほぼ見合う出願数の減
少で、総数は約 57,200 件でした。
前述のように中 3 生の進路希望調査では私立進学希望は
13.7%と、昨年の 11.6%から上昇し、この 10 年で最高にな
りましたが、出願総数は増えるどころかマイナスになってい
ます。これは難関校・上位校を中心として、私立高校同士を
併願し、挑戦しようと考える受験生が増えたのではなく、早
めに単願・専願や第一志望入試で合格を決めようとする受験
生、つまり「難関校・上位校でなくても、公立よりも面倒見が
良い私立に」と考えた受験生が増加した結果です。
したがって、
私立高校の出願総数は減っていますが、質的にはやや変化し
た入試でした。
表 7 は出願の内訳です。前後期別では前期が増加、後期は
減少しているため、私立高校受験の 9 割近くは前期の受験に
なりました。また、女子校の人気はパッとせず、今年も出願
が減少し、出願総数に占める割合は 4.2%でした。
(2) 募集関係の主な変更
二松学舎大附属沼南は、校名を「二松学舎大学附属柏」に
変更しました。開校当時は東葛飾郡沼南町に開校したため、
「沼南」を名乗っていましたが、2005 年に沼南町が柏市に編
入され、実態と合わなくなっていました。今春から中学を併
設することになり、この機会に校名を変更となりました。
学科・コースの改編では、敬愛八日市場が進学と普通情報
の 2 コースを一括募集とするほか、拓大紅陵が人間科学の、
東京学館船橋がファッションデザインの募集を停止していま
す。千葉聖心は特進を新設しました。千葉国際は特進をビジ
ョナリー特進に、一般進学をビジョナリー進学に改称、麗澤
は国際をILCに改称しています。
また、公立高校の入試改革と曜日配列の関係で、全県で前
期入試の開始日が 1 月 16 日から 17 日に 1 日遅くなり、後期
入試の開始日が1月27日から2月5日と9日遅くなりました。
単純に前期を1日、
後期を9日遅らせた学校が多数派ですが、
他校との併願関係を検討して微妙に遅れの幅を変えたり、日
程を追加、廃止している学校もありました。芝浦工大柏や八
千代松陰などは前期入試の回数を増やしています。他校併願
受験生の増加を図ったものでしょう。特に八千代松陰は 1 月
18 日と 20 日という、千葉では珍しい「中 1 日空き」になり
ました。19 日のままで動かなかった日大習志野との併願受験
生の便を図ったものでしょう。
前期で併願推薦を新たに実施したのは千葉敬愛、東海大浦
安、日出学園などで、受験生が前期入試へシフトしているた
めの対応策です。県内全域で前期主体、後期は追加募集的な
色合いが濃くなってきています。
グラフ 3
国公立中3生徒数と私立出願総数の伸び率対比
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
0.0%
-2.0%
-4.0%
07年
08年
09年
中3生徒数伸び率
表7
出願の内訳
前期(推薦)の割合
女子校の割合
10年
11年
出願数伸び率
07 年
08 年
09 年
10 年
11 年
71.1%
5.2%
78.6%
4.9%
80.9%
4.9%
84.6%
4.5%
89.0%
4.2%
私立各校の概況
《総武線・京葉線・東葉高速線方面》
まず女子校から。女子校は全体的に人気がいま一つです。
トップ校の国府台女子学院は昨年志願者増だった英語科の志
願者減が目立ちます。合格ラインも少し下がっているようで
す。昨年選抜コースを新設した普通科は、選抜コースの浸透
が進んだようで、やや志願者が増加しました。合格ラインは
昨年並みでしょう。
植草学園大学附属と和洋国府台は昨年並みの志願者数でし
た。落ち着いた人気ではありますが、長期的には志願者が減
少傾向です。不二女子は珍しく後期主体の入試です。そのた
め、併願受験生の多くは他校に流れているようです。昨年に
続き、今年も志願者減でした。特進コースを新設した千葉聖
心も、浸透が不十分だったようで、やはり特進志願者も少数
に留まり、合計で昨年並みの志願者数でした。各校とも難度
に変化はなさそうです。
男女校では、今年から後期入試の日程が県内全校で後送り
になったため、その影響が出ている学校があります。その代
表例がトップ校の渋谷幕張です。前期と、女子の後期の志願
者数は昨年並みですが、後期の男子は減少しました。後期日
程の変更で慶應志木と重なったからでしょう。合格ラインは
前後期とも例年並みです。東邦大東邦は前後期ともやや志願
者が減っています。特に前期は昨年増えた男子が減少してい
ます。昨年の反動かもしれません。後期の合格ラインが少し
緩和しているようです。市川は男女とも志願者減になりまし
た。やはり昨年増加した反動でしょう。ただ、前期は若干合
格ラインがあがっているようです。後期は逆に少し緩和して
います。昭和学院秀英も市川同様志願者が減少しました。た
だ、後期は昨年よりも合格ラインが上がっているようです。
受験生が絞られたのでしょう。前期は昨年並みでした。
日大習志野は昨年並みの志願者数ですが第一志望が増えて
います。建設中の新校舎への期待もあるのでしょう。後期は
やや合格ラインが上がったようです。
前期は昨年並みでした。
附属カラーが強い千葉日大第一は昨年、前期で併願扱いを開
始したことから志願者が激増しましたが、今年はその反動で
前期が減少しています。
特に併願受験生が大きく減りました。
合格ラインには大きな影響はなさそうです。
同じく附属カラーが強い東海大浦安は昨年の千葉日大第一同
様、前期で併願扱いを始めたため、前期の志願者が大幅に増
加、後期は大きく減少、合計ではやや増加となっています。
やはり併願受験生中心の動きなので合格ラインに影響はあり
ません。
日出学園は前期のみの入試で、昨年並みの志願者数でした
が、併願受験生の合格ラインが上がっているようです。受験
生の学力層が変化しているのかもしれません。千葉商科大は
商業の志願者が増えていますが、特進と普通はやや減少して
います。併願受験生が他校に流れたのでしょう。後期の進学
は合格ラインが少し下がったかもしれませんが、他は昨年並
みです。千葉経済大も志願者が減少していて、特に普通の前
期と各科の後期の併願受験生が減少しています。やはり他校
に流れたのでしょう。敬愛学園も志願者が減少しています。
難度はあまり変化がなさそうです。桜林は昨年と大差ない入
試でした。
昭和学院は前後期とも昨年に続いて志願者が増えました。
新校舎効果が継続しているようですが、難化はしていないよ
うです。東京学館浦安は特待の併願を中心に志願者が増えて
います。前期の一般合格ではやや合格ラインが下がったコー
スもありますが、後期は合格ラインが上がったようで、厳し
い入試だったようです。姉妹校の東京学館船橋も志願者が増
加していて、増加の中心は全コースとも推薦単願と推薦併願
です。ファッション科を募集停止とし、だんだん専門学科イ
メージから脱却しつつあるところが評価されたのでしょう。
東葉も志願者が増えています。併願が多いことから、難化は
していないようです。千葉明徳は昨年に続く志願者増です。
特進や総進Sでは専願受験生が増加しました。中学を開校し
ますので、好感度が上がったのかもしれません。合格ライン
は昨年と大きな違いはなさそうです。
《常磐線・北総線方面》
唯一の女子校、聖徳大附属女子は志願者がやや減っていま
す。女子校人気がいまひとつなことが理由でしょう。一般入
試は若干合格ラインがあがっているようです。男女校では二
松学舎大沼南が校名を「二松学舎大柏」に変更しましたが、
中学を開校することもあり、好感度が上がっているようで志
願者が増えました。合格ラインは昨年と大差ないと思われま
す。芝浦工大柏が入試の新設で志願者増、合格ラインも少し
上がっているようです。専修大松戸も志願者が増えました。
A類型の増加が中心です。合格ラインはE・A類型とも少し
下がっているかもしれません。我孫子二階堂も志願者が増え
ています。総合だけでなく進学も増えていますので、大学進
学への期待感かもしれません。合格ラインは昨年並みのよう
です。
流通経済大柏と中央学院は昨年並みの志願者数でした。難
度も昨年並みでしょう。麗澤は志願者が減っていますが、1
回は各コースとも合格ラインが少し上がっているかもしれま
せん。2 回は昨年並みでしょう。柏日体は専願の志願者は増
えましたが、併願がかなり減りました。併願受験生が他校に
流れているようです。西武台千葉も減っています。地域的に
埼玉からの受験生も多い学校ですが、埼玉の就学支援金が県
内高校のみ対象なので、千葉県内の高校を選ぶ受験生が減っ
ているのかもしれません。各校とも難度に変化はなさそうで
す。
《京成・東葉線~県中央部》
八千代松陰は前期入試を 2 回としたため、合計するとやや
志願者が増えています。ただ、後期は大きく減少していて、
受験生の前期へのシフトが続いています。秀明八千代はやや
志願者が減っています。両校とも難度に大きな変化はなさそ
うです。千葉県では珍しいプロテスタント校の千葉英和はや
や志願者が減っています。もともと隔年現象的な増減を示し
ている学校ですが、特進や英語といった、上位コースの併願
受験生が他校に流れたようです。第一志望の人気に変化はあ
りません。東京学館は昨年並みの志願者数で、各コースの合
格ラインも昨年並みでした。
成田は昨年並みの志願者数ですが、やや女子の人気に陰り
が出ているようです。合格ラインは前後期とも若干上がって
いるようです。受験生が絞られたのでしょう。千葉敬愛は今
年から前期で併願を開始したため、前期の志願者は大幅増、
後期は大幅減となりましたが、トータルでは昨年並みです。
時期が違うため単純比較はできませんが、前期一般の合格ラ
インは昨年の後期よりもやや上がっているようです。
千葉黎明は志願者数が増えました。特進よりも普通一般や
生産ビジネスの増加が目立ちますが、特進希望でも実力がな
いと普通一般にスライド合格となるので、特進の合格ライン
は昨年並みでしょう。この地域唯一の女子校、愛国四街道は
併願受験生が増加しています。昨年の志願者がやや減ったこ
との反動かもしれません。合格ラインに目立った変化はあり
ませんでした。
《県東部・県南部》
東海大望洋は附属カラーの強い学校ですが、昨年東海大学
の難関学部と難関他大学進学を目標とするスーパー特進コー
スを新設して注目されました。昨年の志願者増はこのコース
よりも学費やスクールバスによるものが中心でしたが、今年
はスーパー特進も浸透が進んできたようです。トータルの志
願者数は昨年並みでした。市原中央は昨年に続き、今年も志
願者がやや減っています。JR 線からはあまり便が良くない
こともあって、広域からスクールバスを走らせていますが、
だからこそ房総地区の人口減の影響を受けやすいのかもしれ
ません。
木更津付近では、拓大紅陵は人間科学コースの募集を停止
しましたが、その分普通コースの受験生が増加、合計では昨
年並みの志願者数でした。姉妹校の志学館も昨年並みの志願
者数で、両校で木更津を中心とする地域の受験生を一手に引
き受けているようです。木更津総合もほぼ昨年並みの志願者
数でした。寮制の暁星国際は昨年まで入試結果非公表で、今
年は一部公表しましたが、小規模な入試でした。志願者数で
は、木更津付近は昨年とほとんど変わらない入試状況です。
南部では千葉国際がビジョナリー特進・ビジョナリー進学の
2 コース制としましたが、浸透が不十分のようで志願者が減
少しています。進学色が強くなってきた安房西は、昨年志願
者が増えた反動からか今年はやや減少しています。進学校を
目指して大改革を行った文理開成は、人口が少ない地域事情
もあって、なかなか改革が浸透しにくい面がありましたが、
だんだんと評価が上がっているようです。今年は公立入試改
革も追い風になったようで、大学進学・普通コースを中心に
志願者が増えました。
この他、茂原北陵、千葉学芸、敬愛八日市場はそれぞれ昨
年並みの志願者数、横芝敬愛と女子校の千葉萌陽はやや志願
者減でした。各校とも合格ラインは昨年と大差なかったよう
です。