(2012年)10月号(PDF:1122KB) - 横須賀市

編集発行・横須賀市教育委員会教育政策担当
第19号
平成 24 年(2012 年) 10 月1日
特集 : 健やかな体をつくるために
今こそ健康教育を!
現在、社会状況の変化に伴い、学校保健、食育、学
校安全に様々な課題が生じています。
学校保健では、ストレスによる心身の不調などメン
タルヘルスに関する課題に対応することや、アレルギ
ー疾患を抱える児童・生徒に対して、学校で日々状況
を把握し、的確な対応を図ることが求められています。
また、食育や学校給食では、児童・生徒の食生活に
おいて朝食欠食、偏食、孤食等の課題があり、学校で
の食育を推進することが求められています。
そして学校安全では、学校の内外において、あって
はならない事件や事故、交通事故などに対して、学校
が適切な対応を行っていくことが求められています。
このような様々な課題に対応するために、健康教育
を推進していくための体制作りが必要になってきま
す。校長先生のリーダーシップの下、教職員全員が健
康に関する認識をもち、課題を把握し、組織的に取り
組んでいくことが重要です。
学校内においては、児童・生徒の発達段階に応じて
体育・保健体育を中心とした各教科、道徳、特別活動、
総合的な学習の時間等、教育活動全体を通じて取り組
んでいきます。
その際には、自分の生活習慣や心身の状態に気づい
て健康に関する課題を解決していく力や、もしもの時
に安全に行動できる力を早い段階から育成していくこ
とが必要となるでしょう。
また、学級担任は一人一人の児童・生徒の実態をつ
かみ、必要に応じて個別指導を行います。心や体の健
康に不安をもつ児童・生徒には、他の教職員や学校内
外の専門家と連携を取りながら、適切な指導を図るこ
とが大切です。
【学校保健課 山崎】
近年の健康課題は?
健康を取り巻く社会状況の変化で、健康に関する現代的課題は複雑で深刻化しています。この課題に適
切に対応するためには早期発見、早期治療も重要ですが、それ以前に健康的な生活行動を実践するという
一次予防を重視する必要があり、今後の指導面の充実を図っていく必要があります。
基本的生活習慣の乱れ
食生活の乱れ
心の健康問題
睡眠時間の減少
人間関係の希薄化
運動不足 等
ストレスの増大 等
肥満や生活習慣病
性に関する問題
喫煙・飲酒・薬物乱用
いじめ
不登校
健康教育で身につけさせたい力は?
○運動、栄養、休養、睡眠等の重要性を理解し、基本的生活習慣を見直
すことができる。
○心と体の関連性を理解し、さまざまな欲求やストレスに対して、自分
に合った適切な対処ができる。
○生活習慣病や感染症に関する知識をもち、個人でできる予防手段を講
じることができる。
○人間関係の理解の下に、性感染症の基本的な知識をもち、性的接触を
避ける等の行動選択ができる。
○喫煙・飲酒・薬物乱用の有害性について理解し、避けることができる。
指導のポイント
1.健康の価値を認識
2.自ら課題を発見
3.主体的に考え、判断し、
行動し、課題を解決する
過程
【学校保健課 山崎】
平成 23 年度横須賀市児童生徒体格、体力・運動能力テスト結果
◇全国データーは、平成 22 年度体力・運動能力調査報告書(平成 23 年 10 月文部科学省)横須賀市データーは、平成 23 年度横須賀市児童生徒
体力・運動能力調査結果(県体力・運動能力調査抽出校) ※横須賀市の数値が高い○ 横須賀市の数値が低い▲
本市と全国の平均値を比べると、体格は、多少の数値の差はあるものの、ほぼ変わらない傾向です。
体力、運動能力は、全体的に下回り、体力合計数を見ても全国との差が小学校、中学校とも見られます。特
に、
「ボール投げ」や「反復横とび」については、全国との平均値との差が大きく、本市の課題といえます。各
校においてこの結果を参考に、授業や学校の教育活動全体で、体力向上の取り組みをお願いします。
体力向上には、運動習慣や生活習慣も大きく関わっています。体力・運動能力調査と同時に、運動習慣と生
活習慣についての調査も実施しています。平成 22 年度の本市と全国との比較のうち小学校5年生と中学校2年
生の結果をみると、以下のような傾向でした。
運動習慣生活習慣等調査結果
~平成 22 年度横須賀市と全国の比較~
【小学校5年生】

“ほとんど毎日(週3日以上体育の授業以外)運動
【中学校2年生】
する”児童の割合について、男子は全国をより上回

“ほとんど毎日(週3日以上体育の授業以外)
り、女子は下回っている。
運動する”生徒の割合について、男女とも全国

“1日に2時間以上運動する”児童の割合は、男女
を下回っている。
とも全国平均を上回っている。

“1日に2時間以上運動する”生徒の割合は、

“朝食を毎日食べる”児童の割合は、男女とも全国
男女とも全国平均を下回っている。
を下回っている。

“朝食を毎日食べる”生徒の割合は、男女とも

“8時間以上睡眠している(体力合計得点が高い
全国を下回っている。
群)
”児童の割合は、男子は全国を上回り、女子は

6~8時間未満の睡眠である(体力合計得点が
下回っている。
高い群)
”生徒の割合は、男女とも全国を下回っ

“テレビを1日に3時間以上視聴している(体力合
ている。
計得点が低い群)
”児童の割合は、男女とも全国平

“テレビを1日に3時間以上視聴している(体
均を上回っている。
力合計得点が低い群)
”生徒の割合は、男女とも
全国平均を上回っている。
児童生徒の活躍をご覧ください
10 月 13 日(土) 第 44 回 横須賀市小学校児童陸上記録大会 開会式9時 10 分 競技開始9時 35 分
10 月 20 日(土) 第 63 回 横須賀市中学校男子駅伝競走大会 開会式8時 50 分 スタート 10 時 50 分
第 29 回 横須賀市中学校女子駅伝競走大会
スタート9時 30 分
【スポーツ課 前島】
「横須賀市体力つくり研究校」を平作小学校、浦賀中学校に、
「横須賀市運動部活動モデル校」を
神明中学校に委託し、平成 23、24 年度の2年間、体力向上と推進を目的とした取り組みを実践しています。
~いつでも、どこでもできる体力つくり~
平作小学校 伊東 誠司
市からの体力つくりの研究委託を受け、1年目の研究として平作小学校では、
「いつでも、どこでもできる体力
つくり」というテーマのもと、児童の体力向上に取り組んできました。普段の授業の中での取り組み・休み時間
の取り組み・食生活改善の取り組みの三つの柱を立て、具体的な方法を模索してきました。特に、体力面だけで
はなく学習面でも生活面でも基盤となる教育、給食に対する取り組みに力を入れました。たとえば、給食の配膳
では、
「給食を残さない」という指導ではなく、自分がどれだけの量を食べなければいけないのか適正の量を知る
ということに注目して配膳をするよう心がけてきました。
今年度は、児童の実態をより把握するために、毎朝児童に朝食はどんな食事をしてきたか、主食・主菜・副菜・
乳製品・その他という項目を作り、アンケートをとっています。私たち大人が予想していた以上に、子どもたち
は朝食をしっかりとってきているということが把握できました。今後は、食事のバランスに対する指導や、とっ
た食事が自分たちの体にどんな影響を与えるのかをさらに理解させていく必要があると考えています。また、栄
養士さんに協力していただき、給食の適正量を意識したご飯の量の掲示物を作っていただきました。
1.2 年 140g
自分たちが 1 回の食事で、どれだけのご飯の量をとらなければいけないのかも理解を深める
ことができます。新体力テストも前年度までと同様に行いましたが、今年度は学校の平均
を出して自分の記録が平均より上・下ということを見極めるのではなく、各学年の実態
3.4 年 175g
として、どんな能力が長けていて、どんな能力をこれから伸ばしていかなければ
いけないのかということが分かるようにまとめました。各学年で、苦手な項目に
対して、授業や日常生活の中で継続した取り組みを続けていく予定です。
5.6 年 195g
~体力、知識、意識の二極化の改善を目指して~
浦賀中学校保健体育科 落合 洋俊
体力の二極化を目の当たりにする場面は多々あります。行動体力と防衛体力という専門的な言葉がありますが、
この両方の体力について、極端に弱い児童生徒が一定数存在します。本校においては、9月 15 日に体育祭を無事
終えましたが、取り組み期間はつねに体調不良を訴える生徒が保健室のお世話になりました。その理由として、
起伏の激しい本校の敷地を机椅子をもって移動することによる体力の消耗が考えられます。応援合戦などの取り
組みでは、厳しい練習のなか水分補強の時間などこまめにとっても、疲れからくる体調不良者がでてしまいます。
また、水筒の中身がお茶で、水分補強しても、摂取する水分の質が伴っていないことによる体調不良も多く見ら
れました。
この2点を考えると、行動体力、防衛体力ともに育っていない生徒に加えて、健康体力に対する意識と知識の
低い生徒も体調を崩していることが推測できます。
このような現状をうけて、本校では、駅伝の取り組みや体育祭の取り組み、日常の部活動や授業で行動体力を
鍛えるだけではなく、生活習慣アンケートを行うなどして、健康体力に関する意識と知識の向上も図っていこう
としています。体調が悪くなることをしょうがないととらえるのではなく、どうしたら体調が悪くならないかを
考えること。体力のない自分をあきらめないで、自分自身の体を鍛えてコーディネートするということ。この二
つを行えるよう、中学生の発達段階にあわせた調査と実践を行っていきたいと考えています。
「食事とトレーニングでスポーツ選手としての体を作る。
」
~栄養指導アドバイザー・フィジカルトレーナーの指導を生かして~
神明中学校 下城 塁
運動部活動モデル校研究委託を引き受け2年目に入りました。神明中学校は 14 クラス 495 名の中規模校です。
運動部活動の入部率は 87%で多くの生徒が部活動に所属しています。
今回の研究委託では、4月に行われる新体力テストの結果から敏捷性と筋力などのフィジカル要素が低いこと
と、スポーツにおいて重要な要素の一つである食事に対して選手・顧問・保護者の意識が低いことから研究の重点
として外部から講師を呼んで月1回のフィジカルトレーニング、栄養セミナーの開催、年3回のフィールドテスト
を実施していく予定です。現在はサッカー部を中心に月1回のフィジカルトレーニングを行っています。フィジカ
ルトレーニングでは、スキップやステップワークなど敏捷性の向上やボールを使った有酸素運動などで呼吸・循環
機能の向上を中心に行っています。毎月のトレーニングで子どもたちの動きの質は尐しずつ高まってきています。
6月に行った栄養セミナーには、各部の生徒・保護者・顧問 100 名以上が参加しました。栄養セミナーでは事前
に3日間の食事のアンケートを行い、それぞれ個人の評価を見ながら講演に参加しました。この取り組みを通して
スポーツ選手としての体作りはトレーニングと食事の両方からサポートすることが大切なことだという意識を選
手・保護者・顧問に持ってもらいたいと思います。
食育の推進を!
「なぜ、今、食育なのか」
・・・食育という言葉が注目されている背景には、食生活を取り巻く社会環境
の変化に伴い、子どもの食生活の乱れ、肥満や生活習慣病の増加等の健康問題が見られます。
児童・生徒の健康問題の解決のために、学習指導要領においては、それぞれの教科等の目標を達成する
観点から、健康教育の一環として、食に関する領域や内容が取り扱われています。
児童・生徒の発達段階に応じて、食に関する知識や能力等を総合的に身に付けることができるよう、学
校では各教科等における個々の食に関する指導を、継続的に教科横断的な指導として学校教育全体で食に
関する指導を進めていくことが必要です。
食育推進組織
食育担当
養護教諭
教科担当
栄養教諭
学校栄養職員
学 年
学校における
○児童や家庭の実態把握、食に関する課題の設定
○計画の立案(全体計画、年間指導計画)
○教材の資料収集
○評価及び見直し・改善
食育の推進体制
のイメージ
(小学校の例)
連携・調整
学級担任・教科担任
指導場面
養護教諭
栄養教諭
学校栄養職員
○T.T、教材、資料の提供、指導案検討 等
給食の時間
学級活動
・給食当番の役割分担や給
食のルールやマナーの指導
といったまとまった時間が
必要な内容等
総合的な学習の時間
・身近な生活の中で課題
を見つけていく学習等
学級担任・教
各教科・道徳
・給食の時間における食指導
配膳指導、片付け指導等
科担任
・教科等のねらいと関連
付けて(体育科、家庭科、
社会科、理科、生活科等)
保健指導
学校行事
・全体、個別の健康問題
・健康診断や給食に関
に対して、食生活のあり
係する行事、運動会等
方を指導
の体育的行事
○給食だより、保健だより
○給食試食会、交流給食等
○学校保健委員会への参画
○地域主催の食に関する行事等
家 庭・地 域
学校の教育活動全体による食に関する指導を進めていくことが大切です!
【学校保健課 山崎】