第5分科会 「平和の定義って何?」

第5分科会 「平和の定義って何?」
担当実行委員:佐藤悠介(東京都)/岸本平太(東京都)
アドバイザー:阿出川尚(ボーイスカウト東京連盟杉並地区副コミッショナー)
参加者:(21名)
百井夢子(北海道)/氣仙真奈美(青森県)/ 沢紗亜耶(青森県)/伊澤里美(栃木県)/塩野真悠(群馬県)/
中井恵美(東京都)/柳和男(東京都)/杉崎直哉(新潟県)/文珠川巧(山梨県)/忠地満里奈(長野県)/大見
健人(静岡県)/内藤由貴(愛知県)/加森誠(和歌山県)/山根あゆり(岡山県)/高田麻美(愛媛県)/野間翔(愛
媛県)/荒上佳織(福岡県)/秀島槙悟(佐賀県)/岩野栞(長崎県)/図師卓磨(宮崎県)/川畑日史(鹿児島県)
分科会の趣旨および目的
「平和」って何なのでしょうか。辞典には、
「戦争などがなく、おだやかにおさまっていること」とあります。しかし
本当にそうなのでしょうか。普段何気なく使っている「平和」という言葉の意味を考え、平和実現のために、自分たち
は何ができるかということを見つけることを、目的としました。
分科会内容
話し合い方法
第5分科会では21人の参加者がランダムに7人1組の
3グループに分かれ、その時間の小テーマに沿って、グルー
プ内で話し合い、それぞれ意見をまとめました。その後、
全体でグループでまとめたことをもとに話し合いました。
身近な平和って何だろう?
今日本では「いじめ」が大きな問題となっていて、今ま
でいじめに関わった事のある人が多数いることも事実で
す。その他にも、身近なところに問題を抱えている人もい
ます。そんな身近なところでの「平和」について、みんな
の意見を聞いてみました。
・(ペットなどの)癒しがあること
・ 近所付き合いが良いこと。
・ 上下関係がしっかりしていること→正しいことを教え
ること。
・ 幸せなときの笑顔
・ イジメがないこと→周りからの偏見がないこと。
・ ケンカ→本気で(本音で)ぶつかり合うこと。
・ そして仲直りすること→人間関係のバランスを保つ。
・ 一人一人が平和について考えること。
などの意見が出ました。
身近な平和について聞いてみると、多数の意見が人間関
係に関わることでした。身近な平和の基盤を築くためには、
よい人間関係は不可欠だ!と感じました。
今、日本って平和なの?
今、日本国民は一日三回食事を得ることができ、さまざ
まな娯楽を楽しめ、戦争に参加させられる事もなく、豊か
な暮らしをすることができています。しかし最近、憲法第
9条の改正や凶悪犯罪、自殺などが問題となり、日本の情
勢は不安定になりつつあります。そんな日本が、今この瞬
間平和かどうかということについて、みんなの意見を聞い
てみました。
平和だと思う
・ 衣食住が整っているから
・ 今現在戦争がないから。
・ アフガニスタンから見れば平和。
・ 一人で歩けるから。
平和でないと思う
・ 精神的に安心できないから。
・ 環境破壊が進んでいるから。
・ 毎日のように事件が起きているから。
・ 戦争に向かっているから。
・ 人と人との心のつながりがなくなってきているから。
・ モノが溢れすぎて心が貧しいから。
・ 格差がひらいているから。
・ メディアを信用できないから。
・ 悪いところを隠して認めていないから。
・ 今は愛国心がないから。
どちらともいえないと思う
・ 平和を考える規模が人によって違うから。
・ 平和は循環しているから。 などの意見が出ました。
平和だと思うという理由は、環境面で恵まれているとい
うものが多数だったのに対し、平和でないと思う理由は、
人間の精神的な部分が堕落しているというものが多数を占
めていました。また、価値観の違いから、
「平和である」「平
和でない」とは断言できないのではないか、という意見も
出ました。
世界の現状について考えてみよう!
今世界では、戦争や飢餓、内紛などさまざまな問題で、
たくさんの命が奪われています。貧困は無くならず、核兵
器は世界中にあふれ、今世界は、とても平和と言える状況
ではありません。そんな世界の平和を奪っている原因って
何だろう?ということについて、みんなの意見を聞いてみ
ました。
・ 便利なものを作りすぎること。
・(貧富などの)差が激しすぎること。
・ 実際の体験や経験が少なすぎること。
・ 思いやりがなさすぎること。
・ 社会システム…格差、欲、偏見・差別
・ 価値観の違い→宗教などの違い
・ 戦争がなくならないこと。
・ 環境問題
・ メディアが小さいことを大げさに伝え、それが事件に
つながる。
・ 上辺だけで、実際の行動がついてこない。
などの意見が出ました。
多くの意見が出ましたが、そのほとんどに共通している
ことに、人間のエゴイズムが関わっているというものが挙
げられると思います。個人的な欲が今の世界の状況をつく
り出している一因ではないか、と考えました。
平和の対義語って何?
「平和」の対義語を考えてみてください。きっと、最初
に「戦争」という単語が思い浮かんだ人は多いと思います。
しかし「戦争」がないことが「平和」なことでしょうか?
おそらく、それだけではないと思います。そこで、みんな
に自分の思う「平和」の対義語を挙げてもらいました。
・ 格差があること
・ 生活に困ること
・ こじつけの平和を作り上げること
・ 必ずしも戦争というわけではない
・ 無知、無関心
・ 余分な欲
・ 大量消費
・ 東京
・ 飢餓
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・ コミュニケーション不足
などの意見が出ました。
ひとつ個性的だった意見として、「東京」というものが
出ました。これは、街に人があふれ、肩がぶつかっても一
言で終わりにしてしまうような都会の現状が、平和でない
というものです。人と人とのコミュニケーションが薄れて
きているのを一言で表現している意見だったと思います。
本当の平和って何だろう?
前の「平和の対義語って何?」という平和でない状態を
考えた議題をうけて、私たちは本当の平和について話し合
いました。
・ 人によって本当の平和はそれぞれ違う。
・ お互いに理解しあうこと。
・ 正しいことを学び、それを子孫へ伝えていくこと。
・ 過去を認め、許しあうこと。
・ Smile 笑えることが幸せ
・ 自然、景色、青空などどうってないこと。
・ 心の豊かさ
などの意見が出ました。
「平和」という言葉を聞くと、「戦争がないこと」と解釈
しがちですが、私たちはそれ以外のことを見出すことが出
来ました。それは、相手を理解することです。そして、そ
のためにはコミュニケーションをとることが大切というこ
とに気づきました。
平和の定義って何?
「本当の平和って何だろう?」という議題をうけて、こ
の分科会のタイトルにもなっている、
「平和の定義」につ
いて、話し合いました。皆の本音が出てきて多少ぶつかっ
たところもありましたが、いい討論が出来ました。
・ 人と人とのコミュニケーションがあること。
・ だれもが笑顔でいられること。
・ 地球と共存していくこと。
・ 戦争がないこと。
・ 周りが見えていること。
・ 他人のことを考えていること。
・ 信じあうこと
・ 自分から信じ始めること。
・ 知ること。
・ 教育がしっかりしていること。
・ 自分から行動すること。
などの意見が出ました。
話し合った結果、2007年全国ユースフォーラム版平和の
定義は、
「自分の平和のイメージを持ち行動し、それが他
人のイメージを壊すものでないこと」となりました。これ
はつまり、自分の平和のために、他の人の平和を奪っては
いけないということです。本音で話すうちにいろいろな意
見が出ましたが、この答えにたどり着くことができました。
最後に
話し合いの中で何度か、「笑顔」という言葉が出ました。
いい「笑顔」は、いい人間関係を築く土台です。みなさん、
笑顔は忘れずに!そして、このフォーラムで学んだことを、
普段の生活でも活かしてほしいと思います。
最後に、阿出川さん、そして第5分科会のみなさん、貴
重な体験を本当にありがとうございました。
アドバイザーコメント
当分科会のテーマである「平和の定義」については、対
象範囲が広く、ややもすると議論が拡散したり、かみ合わ
なかったりする可能性が極めて高いことから、この難しい
テーマにいったいどのように進めていったらよいか当初迷
いました。まず実行委員に、いかに具体的なテーマに絞り
込んで身近なテーマから地に足の着いた議論に持っていけ
るかが、一つのポイントであることをアドバイスしました。
それを受けて、身近の家庭 ・ 学校 ・ 地域等での平和が何
であるかから始まって、日本での今が平和かどうか議論し、
そして世界へと目を向けていきました。そして、最終的に
本当の平和が何であるか突き詰めていきました。
2名の実行委員と21名の参加者が、一体となって議論
を進めて、最後は何が本当の平和かという問いに真剣に向
き合ったときに、一瞬矛盾だらけの現実に引き戻されて、
ある意味で本質的な議論で立ち行かなくなってしまった時
点も途中にありました。但し、ここへ来て本音の議論をぶ
つけ合って参加者も真剣に平和の定義に向き合ったとき
に、更に一段高い議論に進みだしたことを痛感し、実行委
員を中心とした進行に委ねてみました。平和の定義につい
て結果的には、身近の問題意識へ原点回帰し、人とのコミュ
ニケーションが大事であり、まずは自分を信じ、相手を信
じることからスタートすることで参加者の議論も一致をみ
たと思います。
今回の分科会では、特に2つのことを感じ取ることがで
きました。1つは、
「平和」という幅広いテーマに対して、
参加者の年代が既にその親の世代も戦争を知らない世代で
あることから、家庭でも完全なバーチャルな世界であるは
ずが、平和に対して真正面から向かい合い、平和とは何か
を真剣に議論して考えた結果、大きな成果を導き出せたこ
とは特筆すべきことでした。そして、第2に初日のアイス
ブレーキングゲームで最初に顔合わせをし、すぐに打ち解
けて仲間意識が芽生え、二日目の休憩時間に参加者相互で
車座となってゲームを始めて盛り上がるという平和の実体
験をそのままに実行しているさまを目の当たりにしました。
こうして今回も参加者メンバーから、新しいことを教え
られ大きな感動を得ることができたことが最大の喜びで
す。本ユースフォーラムによる若者たちの議論をより多く
の同じユース年代へ伝播してほしいと念願すると共に、そ
の有力なツールとなりうる本ユースフォーラムの今後の更
なる発展を、期待せずにはいられません。
阿出川 尚
平和実現のための ACTION PLAN
壱、 自分の本音で積極的にコミュニケーションをとること。
弐、 相手の意見をよく聞くこと。
参、 相手を理解すること。
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