<大学>コピペ、盗用…論文倫理を強化 自覚促す必修授業も 毎日新聞 4 月 10 日(木)15 時 1 分配信 「STAP(スタップ)細胞」を巡る論文不正疑惑を受け、国内の各大学では論文やリ ポート作成について学生への倫理教育を強化する動きが広がっている。他の論文などから パソコンを使って内容を無断引用する「コピペ」(コピー・アンド・ペースト、複写と張り 付け)防止対策のソフトを導入する大学も。識者は「不正は自らの力にならないと教える 教育が一番大事」と指摘する。 STAP細胞の研究を主導した理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーが在 籍していた早稲田大(東京都)。1997年から全学部・大学院の新入生を対象にコピペの 問題も含めた情報倫理についての授業を必修とし、2008年からは全学生を対象に研究 倫理についての講座も開設している。さらに12年からは国内の大学に先駆け、論文盗用 を検知するシステム「iThenticate」 (アイセンティケイト)を導入していたが、 小保方氏の博士論文について盗用の疑いが発覚。同大は調査委員会の結論を待って、新た な再発防止策について検討する意向だ。 名古屋大(名古屋市)では、浜口道成学長が5日にあった大学院の入学式の式辞で「コ ピペは、科学者としての誇りと自尊を捨てるものです。データの改ざんは、多くの人々を 欺く行為」などとあいさつ。現在は試用期間としているアイセンティケイトの制度化も検 討している。近畿大(大阪府)では1日付で研究者向けに論文や研究費の不正に関する注 意喚起の文書を配布した。以前から、教員向けの研究倫理教育の導入は検討していたが「文 系理系問わず、学生向けにコピペ防止対策をしなければならない。内容を検討する」(同大 広報部)という。 同志社大(京都府)は05年に教員を対象とした研究倫理基準を制定し、不正防止の研 修も実施してきた。だが今回の騒動を受け、学生も対象に論文の「捏造(ねつぞう)・改ざ ん・盗用の禁止」を呼びかける内容に見直すことを検討している。 成蹊大(東京都)も、近く研究倫理について理工系の大学院生を集めて注意喚起する予 定。理工学部では研究倫理を学ぶ科目がすでにあるが「今後はさらに学部生にも注意を促 していく」(同大企画室)という。 多くの大学は、学生の不正防止対策として「出典を明記する」「盗用は不正とする」な ど論文作成時の注意事項を指導しているが、パソコンの普及で容易にコピペできるのが現 状だ。 このため、ウェブサイト上で検索できる文書と学生のリポートの類似性を判別しコピペ を見抜くソフトも人気だ。昨年から全教員がこのソフトを導入する立教大(東京都)は「学 生のリポートは膨大な数になるため素早いチェックが必要」と強調。類似のソフトを開発・ 販売する会社は「従来は1日2~3件ほどだった大学からの問い合わせが、騒動以降、3 倍以上に増えている」という。 大学教育に詳しい舘昭・桜美林大教授(教育学)は「安易にコピペすることで不正が起 きやすくなり、大学には多様な防止策が求められる。だが『不正は自らの力にならない』 と学生を教育することがなによりの防止策だ」と話している。【藤沢美由紀、花岡洋二】
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