乳製品情報2010年7月号 - ラクト・ジャパン

Lacto Japan Co., Ltd.
TEL: 03 6214 3831
株式会社 ラクト・ジャパン
FAX: 03 6214 3721
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町 4-8-15 ネオカワイビル 3F
2010/7/30
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、下記にて乳製品情報 7 月号をお届け致しますので、ご査収の程宜しくお願い申し上げます。
<目次>
脱脂粉乳・全脂粉乳情報
バター情報
ホエイ情報
カゼイン情報
乳糖情報
チーズ情報
国内情報
今月のトピックス
アムステルダム駐在員情報
メルボルン駐在員情報
上海駐在員情報
「相場は横ばいから軟調」
「輸入市場は逼迫感続く」
「国産は横這い、EU 産は弱含みの展開」
「需給は楽観視されるも、相場は引き続き強含みの展開」
「乳糖生産順調推移、相場安定に期待」
「パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノ価格高騰」
「4 月の豪州チーズ生産量 増加」
「EU 対アルゼンチン農産品輸出で苦境」
「米国 CWT 乳牛淘汰プログラム」
「CWT 輸出助成金プログラム」
「CME チェダーチーズ相場」
「宮崎県の口蹄疫、終息の兆し」
「生乳生産量回復傾向、成分調整牛乳は伸び悩み」
・・・2-3頁
・・・3-4頁
・・・5頁
・・・5頁
・・・6頁
・・・7-9頁
・・・9-11頁
「フランス Sodiaal 社と PAI パートナーズ社、Yoplait 社の株式売却の意向」
・・・12頁
「英国、Kerrygold 社と North Downs Dairy 社が合併」
「2010/11 豪州、NZ 生乳生産量見込み」
・・・13-15頁
「中国 Bright Dairy と Synlait の共同出資により Synlait Milk 設立」
「新年度オープニング豪州乳価」
「生乳生産量」
「ビクトリア州の地域別生産量」
「光明牛乳がニュージーランドの乳製品業者の株式購入」
・・・16頁
出典
1
<脱脂粉乳・全脂粉乳情報>
-相場は横ばいから軟調7 月の粉乳国際相場は横ばいもしくは軟調に推移している。5 月以降、全脂粉乳、脱脂粉乳ともに国際相場は
弱含みにて推移している。7 月頭の FONTERRA のオークション結果は、軒並み全月比較値下げとなった。
国際需要は中国、東南アジアを中心に堅調であるが、オセアニアの新シーズンが始まるまで相場動向を静観する
姿勢が強く、必要最低限の数量のみをおさえるなど、大きな引き合いは行われていない。オセアニアは、季節的に
供給量の制限があり、相場は堅調に推移している一方米国、EU 域内の需要は比較的弱い。特に米国は在庫量が
増えており、相場は軟調に推移している。
7 月 6 日の Fonterra のオークションの平均落札価格は、全月の入札結果より、全脂粉乳は約 15%減、脱脂粉乳は
約 12%減となった。全脂粉乳は、37 千トンが落札、脱脂粉乳については 14 千トンが落札された。
前月の落札数量よりも大幅に増量となっている。実質 9 月スタートとなるオセアニア新シーズンの乳量が比較的
良好と予測されており、供給量の不安感が改善された事により、期近の船積みを含め全体的に値下げ基調となって
いる。
オセアニアの生乳生産量は季節的に最も低いレベルとなっている。豪州に関しては、 9 月頃から始まる
新乳シ ー ズン のピ ー クに 向けて 生産量を徐々 に増や して いる。新シ ー ズン の予想は、 NZ、豪州と も に
楽観的な予想となっている。NZ では、生乳生産量前年比 13-14%増、豪州では前年比 1-2%増で推移すると
予想されている。豪州では、2009-2010 シーズンの最終四半期(4-6 月)の生乳生産量は、予想よりも高い水準で
推移している模様。供給の先行き好調な予想が、FONTERRA のオークションの結果に反映されたと思われる。
オークション後の粉乳の値付けは、各サプライヤーで状況が異なっている。入札の結果ほど、実際の取引価格は
下落していない。上値は低下したが、底値は堅調で横ばいで推移していると思われる。特に全脂粉乳については、
底堅く堅調に推移していると思われる。
EU の生乳生産量は、季節的に減少傾向を辿っている。ここ数週間の高い気温と乾燥した気候は、その生産量
減少を加速させる要因となっている。4-6 月の生乳生産量だけを見ると、フランス、ドイツ、オランダでは前年比
1-2%増加、アイルランドでは 7%増加しており、好調な乳生産量となっている。但し、生乳は、チーズ生産に
優先的に割り当てられており、バター/粉乳生産への割り振りは限定的で十分な生乳が回っていない。粉乳の
域内需要は比較的低く、輸出需要の方が高い状況となっている。国際需要は、FONTERRA 入札の結果を受けて
相場下落の期待感が強く、またオセアニアの新シーズンへの期待感も大きく、買い控えをする需要者が多く、大きな
引き合いはない。
EU 産の粉乳相場は、5 月のピーク時比較、約 10%程度減少しているが、米国産比較、割高な相場推移となっている。
EU 介入在庫への持ち込み価格と比較すると 30%程度上値で推移している。引き続き EU 介入在庫からの放出は
行われていない。応札に対し EU 委員会が価格を受けずに全量不落となっている。安い価格で放出しない事で、
現在の堅調な相場推移を引き続き維持しようという意図があると思われる。現在 EU 産粉乳相場は、ユーロ安の
影響で、USD 建ての輸出価格に競争力がでているものの、そこまで国際的に価格競争力があるとは感じない。
特に全脂粉乳については、割高感があり、現在オセアニア産よりも高値にて推移している。
米国では生乳生産量が好調であり、6 月の生産量は前年比 2.4%増加している。バター及びチーズの在庫量は逼迫
しているが、脱脂粉乳の在庫量は徐々に積み上がっている。サプライヤーによっては、非常に競争力のある
ディスカウント価格を提示してきており、現在国際市場で最も安い脱脂粉乳供給国となっている。
脱脂粉乳に関しては、米国、EU ともに十分な供給量がある。EU 介入在庫量は潤沢にあり、相場維持の為に現在
放出価格を下げていないが、今後市場に放出された場合、相場は軟調に推移すると予想される。
また期待されるオセアニアの新乳シーズン開始も迫ってきている事から、当面、軟調な相場推移が予想される。
一方、全脂粉乳の相場は、乳脂肪製品が国際的に逼迫しており、今後も堅調に推移すると予想される。良くも悪くも
現在の国際相場の指標となる FONTERRA のオークションが 8 月 3 日に予定されている。
引き続きオークション落札価格が注視される。
2
(現在の粉乳取引価格)
EU 産脱脂粉乳価格(ADPI EXTRA GRADE)
EU 産全脂粉乳粉乳価格(ADPI EXTRA GRADE)
:
:
USD3,100 – 3,400 /MT CFR ASIAN PORTS
USD 3,700 – 3,900 /MT CFR ASIAN PORTS
オセアニア産脱脂粉乳価格(ADPI EXTRA GRADE):
オセアニア産全脂粉乳価格(ADPI EXTRA GRADE):
USD 3,000 – 3,400 /MT CFR ASIAN PORTS
USD 3,500 – 3,800 /MT CFR ASIAN PORTS
米国産脱脂粉乳価格(ADPI EXTRA GRADE)
USD 2,900 – 3,200 /MT CFR ASIAN PORTS
:
オランダ公定価格(脱脂粉乳)EURO/KG工場前価格
2006
2007
2008
2009
オランダ公定価格(全粉乳)EURO/KG工場前価格
2010
2006
4.20
2007
2008
2009
2010
4.00
3.75
3.50
3.25
3.00
2.75
2.50
2.25
2.00
1.75
1.50
3.70
3.20
2.70
2.20
1.70
1.20
< 松本 >
<バター情報>
-輸出市場は逼迫感続く乳脂肪は世界的に供給の厳しい状況が続いている。
オランダ公定価格(バター)EURO/KG工場前価格
6 月終わりより既に夏休みシーズンの EU は、天候に
2006
2007
2008
2009
2010
恵まれ夏のアイス用クリーム需要が強いと見込まれる。
季節的に乳生産が落ち込むこの時期、特に北ヨーロッパ
4.50
4.25
で気温の高い日が続き、クリーム価格がジリジリと上昇、
4.00
3.75
乳脂肪の 供給は引き続き厳しい。介入在庫は殆ど
3.50
残っていないが放出落札(販売)価格は僅かながら
3.25
3.00
上昇し、E URO 3 ,61 0/トン (≒ USD 4 ,69 5) レ ベル。
2.75
2.50
期近製造のバター価格は EURO3,850/トン(≒USD5,000)
2.25
前後での域内取引で、買入価格の 7 割高前後での取引。
2.00
唯一の朗報となりそうなのが 4~6 月の生乳生産は
予想されていたのより多かった事である。
フランス、ドイツ、オランダでは昨年同時期比 3%増、
アイルランドでは同 7%増となり、バター・脱脂粉乳の製造量増加に寄与した。引き続き供給の厳しい状況は
変わらないが、バター価格上昇の勢いはようやく止まったようである。
オセアニアでは、フォンテラオークションの AMF 価格が平均約 14%下落。スポット買いの多い中国・アジア勢の
参加が少なかったと噂されている。それでも期近(9 月)AMF は USD5,000/トンの大台に乗ったままであった。
また、オークション価格を基準に市中から手当てしようとしても季節柄非常に難しい。
3
米国では指標となる CME 価格が一月で約 USD300/トン上昇、これを受けて CWT(*)がバター・AMF を
輸出補助対象としたが、価格上昇スピードの方が大きく米国産は輸出競争力を急速に失いつつある。
6 月末在庫水準が昨年同月比 25%減、今後、9 月の新学期、年末の需要期を控え需要増が見込まれ価格上昇に
拍車をかけている。
(*)CWT=Cooperate Working Together
米国の酪農協及び生産者によって組織されている非政府組織。酪農家の収入向上を目的とし、その手段として
乳牛の屠殺による生乳生産調整と輸出補助金付与による製品販売奨励を行う。
CME(シカゴ)バター相場(トン当たり換算)
US$4,250
$3,948
US$4,000
US$3,750
$3,832
$3,505
US$3,500
$3,263
US$3,250
$3,084
$3,423
US$3,000
US$2,750
$2,927
$2,934
需要家として動向注目されるインドは、昨年と一転、生乳生産が好調と報じられており、一説には昨年比一日当たり
5 千トン多く集乳しているとも言われる。インドの年間生産量は 95,000 千トン(水牛含む)ゆえ、この数字が正しいと
して単純計算で年間 1,825 千トンの集乳増となる。加えて、NDDB(国家酪農開発委員会)が既に 15 千トンの
バターオイルについてゼロ関税輸入を決定、既に約 6,500 トンが USD4,150~4,250/トンレベルで輸入されたと
見 ら れ る 。 こ れ ら 影 響で 国 内需 給 が 緩 み 、 ギ ー 相 場 が こ の 2 ヶ 月で 約 2 割下 落、 ゼ ロ 関 税輸入 に
対する生産者の不満が出ている。
2010 年 7 月
現在のバター取引価格
EU 産バター価格
オセアニア産バター価格
米国産バター価格
(換算レート EUR/USD1.30)
USD5,000~USD5,400/MT CFR ASIAN PORTS
USD4,400~USD4,700/MT CFR ASIAN PORTS
USD4,550~USD4,850/MT CFR ASIAN PORTS
< 山渕 >
4
<ホエイ情報>
-国産は横這い、EU 産は弱含みの展開7 月に入り EU 産ホエイパウダーは弱含みの展開となった。
7 月の 1 ヶ月間の下落幅は 1 割強であり、
2009 年 10 月頃の相場と同じレベル。EU 域内のチーズ
生 産 も 好 調で 、 ホ エ イ の 主 要 生産 国で あ る ド イ ツ と
フランスの生産量も以下の通り伸びている模様。どうやら
昨年 6 月から上昇の一途だったホエイ相場も、今年 4 月~
5 月が相場のピークであったと言えるだろう。しばらくは
横這い、ないし弱含みの展開が続きそうだが、
域内域外ともに需要も堅調である事から、過去 2 年間で
相場の底であった EURO350/トン(工場前渡し価格)の
水準まで下落する展開は考えにくい。
ドイツ
フランス
2010 年 1 月~5 月の生産量
124.3 千トン
257.9 千トン
オランダ公定価格(ホエイ)EURO/KG工場前価格
2006
2007
2008
2009
2010
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
昨年同時期比
4.4%増
2.4%増
一方米国産ホエイパウダー相場はこの 1 ヶ月横這いで推移している。需要面は安定している一方、生乳生産量の
ピークシーズンは過ぎており、既契約の履行は概ね順調に行われているものの、その結果先月までと比較して
スポット対応力が弱くなってきていると伝えられる。
WPC については米国産脱脂粉乳の相場が弱含みで推移している中であるが、横這いないし強含みで引き続き
推移している。飼料用途の使用量が特に堅調であることが背景にある模様。
< 池田 >
<カゼイン情報>
-需給は楽観視されるも、相場は引き続き強含みの展開カゼイン相場は強含みの展開となっている。EU 域内におけるカゼイン生産が昨年比較低調に推移しており
昨年比較同時期の在庫水準を下回っていること、オセアニア地域においても今年初頭に NZ で発生した干ばつの
影響で生産量が当初の計画を下回った結果、 EU と同じく在庫水準が前年を下回って いる 事、
以上が主因と思われる。しかしながら、EU もオセアニアも今後の既契約の履行及び既存の需要を満たすだけの
供給については楽観視している。特にオセアニア地域においては新シーズンスタート後の生乳生産が好調に
推移する ので はとの見方がされて いる事が楽観視の根拠とな って いる よう だ。但し、 EU 及び
オセアニア双方の製造者とも既存の需要に見合った量のみ計画的に生産する方針であると思われる為、
オセアニア地域の新シーズンスタート後もカゼイン相場は値崩れしないのではないかと見る。
< 池田 >
5
<乳糖情報>
-乳糖生産順調推移、相場安定に期待 国別乳糖輸入量:5 月時点での累計(単位:トン)
< 欧州 >
2009
2010
増減率(%)
欧州産乳糖の需要は依然高い状態が続いている。
オランダ
3,566
4,080
14
欧州域内に加え、蛋白値調整用途、育児粉乳関連の需要
フランス
164
398
143
が強く、域外ではアジア諸国への輸出が増えている。
ドイツ
3,401
4,268
26
(日本の欧州産乳糖の輸入量:1~5 月累計前年比 20%増)
イタリア
96
0
こ の 要因と し て 、こ れ ま で 米国産よ り高め に推移
リトアニア
0
0
していた欧州産乳糖価格が、2010 年になってからの
カナダ
1,088
1,540
42
ユーロ安の影響により、割安感が出たことも一つの要因と
米国
13,840 17,304
25
思われる。
アルゼンチン
0
74
高い需要の影響から、サプライヤーの在庫ポジションは
豪州
83
52
-62
タイトな状態が続いている。これにコンテナ不足の状況が
ニュージーランド
1,553
1,604
3
加わ り、 第 3 四半期の船積み に遅れ が出ている
イスラエル
132
352
67
サプライヤーも見受けられる。乳糖生産が順調に推移して
その他
88
61
44
い る こ と か ら 需給 の バ ラ ン ス は 保 たれ て は いる が 、
合計
24,011
29,733
24
(年末に向けて解消すると思われるも)当面はこのような
タイトな状況は続くと思われる。
一方、これまではユーロ安の為替の影響で割安感がでていた価格は、第 3 四半期のメーカー価格が一段の値上り
となったことから、現在では米国産とほぼ同値のレベルとなった。価格メリットの享受が薄らいだことにより需要も
落ちついてくると思われること、またサプライヤーも採算レベルまで価格を回復できたことから、これまでのメーカー
価格の右肩上がりの値上が続くことは考えにくく、次第に安定方向に向かうとの見方が多い。
< 米国 >
米国産乳糖相場は落ち着きの様相を見せてきている。現状では引き続き NZ からの蛋白調整用途など、引き合いが
強く、アジア・豪州・NZ を中心とした輸出が好調に推移している。特に 5 月単月では 13,653 トンと今年最も多い数量
を記録し、日本も米国産乳糖を 17,304 トンと前年比 125%の輸入を行なった。その結果、米国の同時期までの
乳糖輸出量は約 56,4734 トン(前年比 22%増)と順調に推移している。その中で最も数量が多かった輸出先は
日本の 7,348 トン(前年比 10%増)、次いでメキシコの 6,985 トン(前年比 52%増)で、中国の 5,806 トン(前年比 58%減)
と続いており上記 3 カ国向け輸出量は全体の 36%を占めている。日本の 5 月までの累計輸入量も前年比 24%と
増えてきており、日本においても乳糖回帰の動きがあり、乳糖の使用量が増えていることが推察できる。
一方、乳糖生産も順調に推移している。米国の生乳生産が好調でありチーズも増産されていることから、
乳糖の生産量も下記の通り堅調に推移している。このような状況から、強い需要、工場メンテナンスにより直近では
在庫ポジションがタイトなサプライヤーも見受けられるが、それに対応できる乳糖生産が下支えしており、
需給バランスも徐々に適正化してくるものとの思われる。このままの状態で推移すれば、値上の動きも治まり
次第に相場も安定してくることが期待される。
米国における 2010 年 5 月の乳糖生産量・在庫量は下記の通り。
乳糖生産量
月末在庫
34,065 トン
34,564 トン
前年比 25.9%増
前年比 6.3% 増
前月比 4.9%増
前月比 3.6%増
< 渡辺 >
6
<チーズ情報>
-パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノ価格高騰イ タ リア の DO P チー ズであ るパルミ ジ ャーノ ・レ ジ ャーノ (以下 PR) と グラ ナ・ パダーノ( 以下 G P )の
イタリア国内での取引価格が高騰しており、2009 年 9 月比較、7 月現在で 30%弱の上昇となっている。
2009 年は世界的不況により需要が減少し、価格は 2005 年からの 5 年間の中でも非常に低いレベルであった。
生産量に関しても同様に需要減から過去 5 年間で最も低いレベルとなり(2005 年の年間生産量は約 116 千トンで
2 0 09 年の年間生産量は 10 9 千トンで、 6%強の 減少)、国内在庫量は 減少して いた。 しか しなが ら、
2009 年末頃からバター・全脂粉乳の価格高騰により PR、GP ともに価格が上昇し始め、在庫薄感から一気に
高騰したものと思われる。2010 年、年明け以降徐々に推移したユーロ安を受けて、日本国内での取引価格は大きく
上下せず推移していたが、ユーロ安も一服感があり、今後 PR、GP の相場がまだ上昇するようであれば、
日本国内の取引価格も大きく上昇してゆくことになる。
-4 月の豪州チーズ生産量 増加デーリーオーストラリアの発表によると豪州の 4 月のチーズ生産量は 21,588 トンで昨年同月の 18,814 トンと
比較し 14.7%の増加であった。主な内訳はチェダーが 8,246 トン増(8.4%増)、フレッシュチーズ(主に
クリームチーズ)が 5,639 トン増(17.5%増)であった。セミハードチーズ(モザレラを除くゴーダタイプ・
スイスタイプ等のチーズ)は増加率が最も高く 546 トン増で 129.6%増と 2 倍以上の増加であった。しかしながら、
2009 年 7 月~2010 年 4 月までの累計生産量は前年度同時期(2008 年 7 月~2009 年 4 月)と比較して 1.2%減の
281,967 トンとなっている。
-EU 対アルゼンチン農産品輸出で苦境EU 当局は、5 月から EU の対アルゼンチン向け輸出(チーズやフルーツ、他農産品)において、アルゼンチン
現地の通関等の事務処理において、故意の遅延が為されていると公表した。EU 産乳製品の対アルゼンチン向け
輸出取引は、2009 年は輸出額で約 1 億 5 千万円足らず(EU からの輸出先としては 127 番目の規模)で大きな
市場ではないが、フルーツや他農産品においては非常に重要な国と位置付けられている。EU 委員会は WTO
(世界貿易機構)に同問題に関して正式に申し立てることを検討しているとのこと。デンマークやフランスが
こ の“ 遅延”に より 、最も 影響を受けて おり、 E U と メ ルコス ール ( アル ゼンチ ン・ブ ラ ジル ・ ウル グア イ ・
パラグアイ)間の FTA 交渉にも影響が出る可能性も示唆されている。
EU の対アルゼンチン乳製品輸出額(単位:EURO)
全乳製品
うちチーズ
2009 年
EURO1,343,220
EURO781,990
2008 年
EURO1,802,570
EURO875,270
2007 年
EURO1,689,200
EURO1,154,890
-米国 CWT 乳牛淘汰プログラム前号の記事の通り、CWT(酪農協同組合)による 10 回目の乳牛淘汰プログラムが実施された。今回は 192 農家
から合計 34,442 頭(全米の乳牛頭数の 0.4%)の乳牛淘汰が受け付けられ、約 30 万トンの乳量が減少する計算とな
る。未だリットル当たりの保証単価は発表されていない。
同国の乳牛頭数は、2009 年の 4 度の淘汰により、約 25 万頭減少した。しかしながら、2010 年 1 月~5 月の間で
21,000 頭既に増加しており、直近である 2010 年 5 月、6 月と生乳生産量はそれぞれ 1.3%、2.7%増加している。
7
-CWT 輸出助成金プログラム7 月 14 日までに合計 18 回の CWT(酪農協同組合)輸出助成金プログラムが実施され、合計約 18,460 トンの
成約が行われている。
回数
第 1 回目(3 月 24 日)
第 2 回目(3 月 31 日)
第 3 回目(4 月 7 日)
第 4 回目(4 月 14 日)
第 5 回目(4 月 21 日)
第 6 回目(4 月 28 日)
第 7 回目(5 月 5 日)
第 8 回目(5 月 12 日)
第 9 回目(5 月 19 日)
第 10 回目(5 月 26 日)
第 11 回目(6 月 2 日)
第 12 回目(6 月 9 日)
第 13 回目(6 月 16 日)
第 14 回目(6 月 23 日)
第 15 回目(6 月 30 日)
第 16 回目(7 月 7 日)
第 17 回目(7 月 14 日)
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
:
向け先
中東向け
中東・豪州・ヨーロッパ向け
中東・アジア・アフリカ向け
中東・アジア・アフリカ・中米向け
中東・アジア向け
中東・アジア向け
中東・アジア向け
中東・アジア向け
中東・アジア向け
中東・アジア向け
中東向け
中東・アジア向け
中東向け
中東・アジア向け
中東向け
アフリカ向け
アジア・アフリカ向け
累計
数量
約 959 トン
約 1,571 トン
約 1,572 トン
約 2,046 トン
約 2,452 トン
約 1,219 トン
約 1,409 トン
約 4,316 トン
約 108.4 トン
約 191.2 トン
約 750 トン
約 911 トン
約 225 トン
約 405 トン
約 50 トン
約 100 トン
約 176 トン
約 18,460 トン
7 月 26 日付け NMPF(生乳生産者連盟)は CWT による輸出助成プログラムはバターおよび AMF も対象品と
することを発表した。背景としては CME(シカゴ 商品相場)のバター価格が高騰し、国際相場よりも高く
取引されており、その影響でバターおよび AMF の輸出量が減少し国内乳価に悪影響を及ぼすことを避けるための
措置との見方をされている。既に 1,714 トンのバターと AMF がヨーロッパ、カリブ諸国、南米、中東向けで
成約された。詳細な助成金額等に関しては、現状明らかになっていない。
-CME チェダーチーズ相場-
米国産チェダー価格推移(2009年4月~2010年7月)
US$/MT
4,000
3,750
3,500
3,250
3,000
2,750
2,500
2,250
2,000
(工場前渡し価格)
8
今月の CME 相場の推移は、USD3,153/トンから堅調に推移し、7 月 27 日時点の USD3,534/トンまで上昇している。
7 月は例年に比べ非常に高い気温のようで、生乳生産量減少の懸念ならびに夏季休暇需要増を見越した値動きと
思われる。気候が安定し、夏季休暇シーズンが終われば、国内在庫自体は 40 万トン相当の水準であり、相場に
落ち着きが出てくるものと思われる。
< 斎藤 >
<国内情報>
-宮崎県の口蹄疫、終息の兆し7 月4 日に宮崎市で292 例目の口蹄疫疑似患畜が確認された。6月18 日以来、約2 週間ぶりの発生となった。以来、
疑似患畜は確認されておらず、292 例目までのすべての発生農場において、殺処分と消毒が完了している。また、
7 月 30 日現在、発生農場周辺の家畜の移動制限・搬出制限区域は設定されていない。
-生乳生産量回復傾向、成分調整牛乳は伸び悩み=生乳・牛乳=
6 月の全国生乳生産量は 663,350 トン(前年比 0.8%減)と、9 ヶ月連続で前年割れながら微減に留まった。北海道の
生乳生産量は 339,260 トン(前年比 0.6%増)で 3 ヶ月ぶりに前年を上回った。全体の数字を見ても、先々月、先月に
続き減少幅は狭まっており、回復の兆しを見せ始めている。
牛乳生産量は 270,148 トン(前年比 1.8%減)、加工乳・成分調整牛乳の生産量は 58,518 トン(前年比 3.9%増)と
なった。(内成分調整牛乳 37,637 トン/前年比 7.1%減)
先月に引き続き前年実績割れと、ここにきて成分調整牛乳の伸び悩みが顕著となっている。但しここ数年の生産量
推移の中では依然高水準にあり、成分調整牛乳離れと判断するにはまだ早く、今後の推移に注目したい。
牛乳生産量
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
成分調整牛乳
(単位:キロリットル)
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
=バター=
6 月のバター生産量は 6,051 トン(前年比 10.7%減)、6 月末在庫は 34,215 トンで、前月比 115 トン増となった。
主産地である北海道でチーズやクリーム等向け処理量が増加していることから前年を下回る生産量となったようだ。
依然として需要はバラ物に集中しているようで、ポンド物は不振が続いている。一方、7 月 15 日に行われたバターの
売渡し入札においても入札数量を上回る応札がありながら、約 35%が不落となったように、低価格の輸入バター
に対する需要は強いようだ。
9
=脱脂粉乳=
6 月の脱脂粉乳生産量は 12,091 トン(前年比 8.2%減)となった。6 月末在庫は 74,032 トンで、前月末比 743 トン減と
5 ヶ月ぶりに在庫減に転じたが、未だ期待したほどの需要はないようだ。バター同様、国内で重たい在庫を抱える中で、
輸入脱脂粉乳においては入札数量を上回る応札があり全量落札となったように、ユーザーの低価格指向が強まって
いる。
バター、脱脂粉乳共に在庫水準は非常に高く、メーカーとしては年末にかけて新規需要拡大対策およびクリスマス向け
需要による在庫減を期待している。
(単位:千㌧)
バター在庫
脱脂粉乳在庫
(単位:千㌧)
40.0
100.0
35.0
80.0
30.0
25.0
60.0
20.0
40.0
15.0
10.0
20.0
5.0
0.0
0.0
生乳生産量(22 年度 6 月)(単位:千トン)
平成 21 年度
前年比
生乳生産量
牛乳等向け
663
99.2%
365
97.7%
内業務用
24
96.8%
平成 22 年度、バター需給予想(単位:トン)
生産量
前年比
消費量
第 1 四半期
21,209
96.4%
19,769
第 2 四半期
17,000
92.6%
18,000
第 3 四半期
17,600
97.4%
22,600
第 4 四半期
23,300
99.6%
19,300
合計
79,109
96.7%
79,669
在庫量はカレントアクセスによる輸入バター(民間)を含む
10
乳製品向け
その他
293
101.2%
5.8
94.0%
前年比
119.8%
102.0%
99.3%
94.4%
103.0%
在庫量
前年比
34,000
101.2%
33,000
96.2%
28,000
94.6%
32,000
98.3%
32,000
98.3%
月数
4.8
4.7
4.0
4.6
4.6
平成 22 年度、脱脂粉乳の需給予想(単位:トン)
生産量
前年比
消費量
第 1 四半期
43,130
98.7%
41,830
第 2 四半期
33,000
88.9%
40,000
第 3 四半期
38,000
92.1%
36,000
第 4 四半期
48,000
99.8%
37,000
合計
162,130
95.3%
154,830
在庫量はカレントアクセスによる輸入脱脂粉乳(民間)を含む
前年比
133.2%
102.8%
98.5%
80.4%
101.3%
在庫量
前年比
71,000
128.2%
64,000
119.4%
66,000
113.2%
77,000
110.5%
77,000
110.5%
月数
5.5
5.0
5.1
6.0
6.0
< 柿島 >
11
-フランス Sodiaal 社と PAI パートナーズ社、Yoplait 社の株式売却の意向フランスの大手乳業会社である Sodiaal 社がエメンタールチーズ製造会社の Entremont 社買収の最終覚書にサイン
した。Sodiaal 社はこの買収を 9 月末までに完了させる予定である。
一方、Sodiaal 社はこの買収に伴い同社が保有するフランスのヨーグルトメーカー、Yoplait 社の株式を売却する
方針の模様である。Yoplait 社はヨーグルト等のフレッシュ製品においてフランスで 2 番目に大きなブランドであり、
世界的にもその存在は広く認知されているところである。同社の株式はプライベート系ファンドの PAI パートナーズと
Sodiaal 社が 50%ずつ保有しているが、Sodiaal 社はこの株式の一部を売却する意向である。
また、PAI 社は 2002 年に Sodiaal 社から Yoplait の株式 50%を取得し、当時 20 億ユーロの売り上げを 2009 年には
35 億ユーロにまで成長させた。同社はまた、クリスチャンハンセンやユナイテッドビスケット社の株式も有している。
PAI パートナーズは全株式を、Sodiaal 社はその一部を売却するものと見られる。
この売却に対し、Nestle 社、Arla Foods 社、米国の大手食品会社である General Mills 社等が 12 億ユーロ相当で
買い取る意向を示していると伝えられている。
-英国、Kerrygold 社とNorth Downs Dairy 社が合併Irish Dairy Board(IDB)は英国の子会社である Kerrygold 社と North Downs Dairy 社を合併させ、新らたな会社名を
Adams Foods 社とする。
Kerrygold 社はハードチーズの英国小売市場において 25%のシェアを有し、Pilgrims Choice は North Downs Dairy が
持つ同国で 2 番目に大きなチェダーチーズのブランドである。
IDB はこの合併によりマーケティングの統合やその他の相乗効果により、それぞれのブランド力を強める効果を期待し、
また、英国で最も進取性があり、チーズ、バター、他乳製品において小売部門やフードサービス部門でのリーディング
カンパニーを目指すことになる。
英国内での売上げは 335 百万ポンド(410 百万ユーロ)になる見込みである。
< 松永 >
12
-2010/11 豪州、NZ生乳生産量見込み豪州農業資源経済局(ABARE)によると、2009/10 年の豪州の生乳生産量は前年比 5%減の 896 万キロリットルと
見込まれ、それに対し 2010/11 年度の生乳生産量は前年比 2%程度増加と予測している。
NZについては、現地報道によると、NZの 2009/10 年度の生乳生産量は前年同水準の 1600 万キロリットルと
見込まれ、今年度 2010/11 は 3~5%程度増加とも予測されている。しかし、2010 年 6 月のNZ全体の生乳生産量は
前年比 8%減とも推定されており、今後の状況を注視する必要があるものとなっている。
-中国 Bright Dairy のと Synlait の共同出資により Synlait Milk 設立中国の Bright Dairy & Food 社が NZ82 百万ドルを出資し、Synlait 社 と共同で新会社”Synlait Milk”を設立すること
に合意したと 7 月 19 日付 Synlait プレスリリースが発表した。
Bright Dairy と Synlait は共同出資者となり、出資率は Bright Dairy が 51%、Synlait が 49%となる。
新会社は付加価値のついた輸出戦略をキーポイントとし、主に中国向け顧客へ高品質の育児用粉乳と全粉を
供給する見込み。Synlait Milk の CEO である Joph Penno 氏は、クライストチャーチ近辺にある既に保有している
工場の隣に、2 番目に大きい粉乳工場を建設中であると述べた。 2011/12 年度のシーズンの稼働を目指しており、
この工場設立により現在の 2 倍以上の製造能力が可能となる。
-新年度オープニング豪州乳価 7 月から新年度となり各社がオープニング価格を発表した。DAによると今年度のビクトリア州のオープニング価格
の平均は AUD4.55/kg乳固形(およそA$0.343/リットル)となり、昨年比較 27%の上昇となった。
主要各社の価格は、MGC:AUD4.75/kg乳固形(前年比 30%Up)、タツーラ:AUD4.70/kg、WCBF:AUD4.72/kgと
なっている。
6 月のビクトリア州の主な町の降雤量
6 月降雤量
Tatura (北部)
Warrnambool (西部)
Bairnsdale (東部)
Albury (北東部)
Melbourne
45.0
69.4
42.0
29.0
63.4
(mm) –
昨年同月降雤量
44.0
65.2
18.0
71.2
25.8
平年
平年比
44.3
76.9
58.4
79.2
49.4
+1.6%
-9.8%
-28.1%
-63.4%
+28.3%
7 月に入ってからのビクトリア州の降雤量は、27 日の時点で以下の通り
7 月降雤量
昨年同月降雤量 平年
Tatura (北部)
Warrnambool (西部)
Bairnsdale (東部)
Albury (北東部)
Melbourne
21.6
60.2
10.8
56.0
26.0
36.2
121.0
22.4
54.6
45.2
51.0
95.7
36.6
83.1
47.8
13
平年比
------
※グラフは 7 月 27 日までの降雤量
ニュージーランドの主な町の降雤量 6 月 と 累計 (mm) –
6 月降雤量
昨年同月降雤量
South Auckland (北島)
Taranaki (北島)
North Canterbury (南島)
Southland (南島)
179.1
264.0
93.1
78.1
168.5
76.8
19.2
46.6
14
平年
平年比
95.2
140.8
60.6
115.1
+88.1%
+87.5%
+53.6%
-32.1%
-生乳生産量ビクトリア州を中心に生乳生産量が伸びている。
NSW
Victoria
Queensland
South Australia
Western Australia
Tasmania
Australia
5 月の生乳生産量(前年同月比)
単位:百万リットル
‘08 7 月~累計(前年同時期比)
84.7 (+0.1%)
394.9 (+7.3%)
40.7 (+0.7%)
48.2 (-3.5%)
28.1 (+5.3%)
47.4 (+6.7%)
644.0 (+4.9%)
992.6 (+1.1%)
5,397.3 (-6.5%)
488.8 (+3.5%)
559.9 (-3.4%)
321.6 (+1.9%)
640.9 (-5.6%)
8,401.0 (-4.5%)
-ビクトリア州の地域別生産量-
東 部
北 部
西 部
ビクトリア州全体
5 月の生乳生産量(前年同月比)
単位:千リットル
‘08 7 月~累計(前年同時期比)
136,292 (+13.1%)
135,453 (-2.4%)
123,160 (+13.1%)
394,904 (+7.3%)
1,922,589 (-4.7%)
1,554,400 (-12.7%)
1,920,291 (-2.6%)
5,397,280 (-6.5%)
< 渡瀬 >
15
7 月 23 日付 乳製品新聞網
-光明牛乳がニュージーランドの乳製品業者の株式購入光明牛乳は、4億元近い投資を行い、ニュージーランドSynlait Milkの株式を購入したと発表した。
これによりSynlait発行株式の51%を取得することとなる。Synlait Milkは、5年以内に香港あるいは、
ニュージーランドでの上場を目指すことを目標としている。ある記者の調査では香港に上場しているカイマン島の
「天然乳品」社は、ニュージーランドの最大私営農場であるCrafar Dairyの20%の株式を購入しているとのことで
ある。
同社の背景は、何人かの福建系の富豪の影が見えるが、たった11名の従業員で、何ら製品生産の実績が
ないのが現実で、明らかに世界的乳業の高騰を背景にマネーゲームが起こりつつある予感がする。
< 西村 >
作成・問合せ先:株式会社 ラクト・ジャパン
営業第一本部
乳原料第一チーム
[email protected]
乳原料第二チーム
[email protected]
乳原料第三チーム
[email protected]
営業第二本部
加工食材チーム
[email protected]
営業第三本部
チーズチーム
[email protected]
出典:AGRA EUROPE 各誌、
Dairy Industry Newsletter
農畜産業振興事業団“畜産の情報”
AMS Dairy Market News
日刊酪農乳業速報
16