「病院におけるボランティア活動の教育 的効果とその評価」 - 愛媛大学

平成 20 年度 愛媛大学
学生による調査・研究プロジェクト成果報告書
「病院におけるボランティア活動の教育
的効果とその評価」
愛媛大学医学部医学科 4 年
西村真唯
1
<目次>
はじめに・・・・・・・・・・・3
活動報告・・・・・・・・・・・4
考察・今後の課題・・・・・・・17
参考文献・引用文献・・・・・・18
謝辞・・・・・・・・・・・・・18
2
<はじめに>
近年、医師・患者間のコミュニケーションの重要性がますます認識されている。その背
景として、大きく分けて以下の「医師・患者関係の変化」と「疾病構造の変化」が挙げら
れる。
・医師・患者関係の変化
インターネットの普及や健康をテーマにしたテレビ番組の増加は患者意識の高まりを生
み出した。その結果、良くも悪くも「パターナリズム」と評されるような、医師の言葉そ
のままを信じきる患者は減り、その反対に、医師・患者が情報を共有し病気の治療にあた
っていく「インフォームド・コンセント」がコミュニケーションの主体となってきた。さ
らには、医師・患者の単なる情報共有にとどまらず、患者の主体的な治療への探求行動を
医師が支持する「ヘルスサポートモデル」へと変化している。
図1
主な死因別にみた死亡率の年次推移(平成 19 年厚生労働省人口動態統計より)
3
・疾病構造の変化
次に、医療の高度化・国民の高齢化に伴う癌・生活習慣病などの慢性疾患の増加(図1)
により、これまでのような病気と闘っていくという概念だけではなく、病気と向き合って
いくという概念が必要となってきた。慢性疾患は根治することができないため、病気の悪
化を防ぎ、合併症を予防することが大切であるが、そのために患者に日々の生活習慣に留
意してもらうのは、非常に高いコミュニケーションスキルが要求される。
以上のようなコミュニケーションの重要性は多くの学生・医学部教員に認識されている
ものの、それを現在の医学教育において学ぶ機会は、時間的・経済的制約から非常に少な
いと言わざるを得ない。本研究においては、将来の医師である医学生が、どのようにして
適切なコミュニケーションスキルを身につけていけるかを以下に紹介する3つの側面から
検証した。
4
<活動報告>
①医学祭での糖尿病セミナーの開催と八幡浜市大島における健康教室の開催
2008 年 5 月 24 日(土)、25 日(日)、愛媛大学医学部において開催された医学祭に
て、愛媛大学医学部学生サークル・医療を考える会 MSG 主催で糖尿病セミナーを開い
た。これは、医学祭を訪れた人を対象に、医学生で構成される MSG の学生が企画した
セミナーである。
このセミナーでは、糖尿病という身近で広く一般的に知られている病気を考えること
から、日々の生活習慣を見直してもらうことを目標とした。国民病ともいえる糖尿病は、
個人個人関心の高さは異なり、セミナーへの参加者に画一的に糖尿病に関する情報提供
を行うだけでは、生活習慣の改善には結びつかない。そこで今回のセミナーでは、実証
的研究に基づいて理論化された Transtheoretical model に基づき、各々の糖尿病への関
心度別に心理的介入を行うことにした。
Transtheoretical model とは、James O. Prochaska らによって確立された心理療法
で、運動習慣や食事習慣の改善、性感染症の予防対策、禁煙支援などに今日まで広く用
いられている。Transtheoretical model の特徴は、生活習慣改善への関心を全く持たな
い人であっても、その原因をその人ではなく、時間の問題に落とし込んだところにある。
すなわち、
「生活習慣を改善できない人」ではなく、
「生活習慣を改善できない時期にあ
る」というように考える。「患者は自分で決定し、問題を解決する能力を持っている」
という前提のもとに Transtheoretical model は成り立っている。その上で、行動変容を
助ける人(医療者など)は、その人が「なぜそのような行動をとるのか(考えるのか)」
というように相手の考えを受け止める。そして、
「こうするべきだ」ではなく、
「こうい
う方法があるが、『あなたにとって』どうでしょうか(役立つでしょうか)?」という
ように、外からの強制ではなく、患者自身の選択により目標を達成できるように援助す
る。以上が Transtheoretical model を用いた行動変容の援助者が持つべき心得である。
また、それぞれの関心度の高さ(ステージ)別に適切な支援を行う。セミナーでは、
上記のような心得を学生に話した上で、参加者のステージ別に、学生と話しながら自分
にとって最適な対応策を考えてもらうようにした(別紙「糖尿病セミナースライド」
「糖
尿病セミナーワークシート」参照)。生活習慣改善のきっかけとしてもらうため、参加
者には糖尿病に関する知識や松山市・東温市のウオーキングコースをまとめた冊子を配
布した。
2008 年 8 月 23 日(土)には、八幡浜市大島にて、糖尿病セミナーと同様の内容で健
康教室を開催した。健康教室開催後、約 2 ヶ月後の事後アンケートに答えていただける
方には歩数計を配布し、運動習慣改善のきっかけとしてもらった。
5
図2
糖尿病に関する講義と、学生が各ステージ別に参加者の生活習慣の改善方法を引
き出す様子(医学祭での糖尿病セミナーより)
以下にセミナー後参加者に配布したアンケートの集計結果を掲載する。
① あなたは生活習慣改善のどの時期に当てはまりましたか?
A
現在生活習慣(食事や運動など)に気をつけていないし、これから気をつけ
るつもりもない。
B
現在は生活習慣(食事や運動など)に気をつけていないが、この半年以内に
は気をつけ始めようと思っている。
C
生活習慣(食事や運動など)にすぐに(この1カ月くらいの間に)気をつけ
ようと思っている。
D 生活習慣(食事や運動など)に気をつけている(半年以内)。
E 生活習慣(食事や運動など)に気をつけ始めて半年以上である。
A 無関心期・・・2
B 関心期・・・・2
C 準備期・・・・12
D 行動期・・・・1
E 維持期・・・・12
その他・・・高脂質血症、高尿酸血症の薬を飲んでいて、特に何もしていない。
②このセミナーは、生活習慣を見直してみるきっかけになりましたか?
(はい
はい・・・29、いいえ・・・0
6
いいえ)
③(②で「はい」とお答えいただいた方へ)どのような目標を立てましたか?差し
支えなければお答えください。
・毎日ウォーキングを心がける。
・負担を感じない程度のことから「できることからできる範囲」で気軽な継続を心がけ
たいと思います。
・間食に気をつける。
・運動をしなければならないな。
・食事、運動を継続することが大事であることがわかりました。
・足が悪くて激しい運動は無理なので、少しずつ腹筋を始めます。
・食事量(カロリー量)の低減(目標数値=1800kcal、現在 2100-2300kcal)、体重低
減(目標-2.0kg/月)
・ウォーキング
・1週間に1日甘いものをやめる、5分から運動を始める
・適度な運動を生活の中に取り入れる(徒歩 20-30 分程度)
、夕食後は間食(甘いもの)
は控える、寝る前にコップ1杯の水を摂取する、早寝・早起きを心がける
・週に 3-4 日くらいは 30 分くらいを目標に歩きたいと思います、食事の偏りを直すよ
うに心掛けたい、間食を控えたい
・生活習慣でいろいろ気をつけて運動をしていきたいと思いました。
・食生活(好き嫌いをあらため、偏食に気をつける)、できるだけ運動する、煙草を減
らす(1 日 5 本)
・食事方面には気をつけているのですが、運動面がなかなか実行できない状態です。犬
の散歩はほとんど毎日していますが、それとは別に何か運動をしたいと思います。
・間食をしない。もったいない仏の供え物、体重を夕方一度はかる、歩行の変わり、入
浴中の足体操
・砂糖を控える、油を控えるが、使うときはオリーブオイルにしてみる
・時間や休みは少ないけれどまずは意識(体を動かす)運動をすること!会社ではエス
カレーター、エレベーターを利用せず歩くこと
・飲食をカロリーの低いものにする、運動を何か始めたい
・体を動かす機会を持とうと思いました→体が硬いので、柔軟体操から始めてみます。
冷え症なので、体を温める食べ物を調べてみようと思います
・1 週間に 1 日 2 時間くらい散歩をしていますが、時間を短くして日数を増やすこと
早寝早起きを徹底する、夜 9 時以降の食事を控える、出来れば自分で何か運動する。
・時々やっている散歩や体操は忙しかったり、体調が良くないとすぐに中断してしまい
ます。体重を記録するよりも、やった内容を記録すればいいということなのでそうし
てみます。
7
・お菓子を食べない日を作る。ご飯を一口減らす。
・夜遅くに食事は取らないようにしている。
・週 2 以上、1 日 30 分以上のウォーキングを続ける。
図3
寸劇を交えて糖尿病に関する知識を解説した(大島での健康教室より)
以下に、健康教室を開催してから約 2 ヶ月後に実施したアンケートの集計結果を掲載す
る。
集計数
23 人
Ⅰ.
1.健康教室の内容で印象に残っていることは何ですか?
模造紙での説明が分かりやすかった
食事の内容、献立について
晩飯に少なくすること
糖尿病にかからないように運動、食事に気をつけること
合併症が怖いということ(糖尿病の“し”“め”“じ”)
劇や図式、パネルなどが分かりやすかった
資料などが分かりやすかった
毎日の運動
ストレスをためない
2.糖尿病について関心を持つようになりましたか?
・はい
21
・いいえ
1
8
Ⅱ.~食事~
1.生活習慣で気をつけていることは何ですか?(複数回答可)
・一日三食取ること
17
・カロリー
12
・6分類からまんべんなく取ること
12
・料理の中の野菜の量
10
・主食、副菜を考えること
9
・間食の回数
8
・一日に取る品目数
6
・その他
水分を取ること
塩分を控え、薄味にする
間食をしない
油ものを控える
甘いものは取らない
2.それは健康教室の前からもともと気をつけていましたか?
・はい
・いいえ
22
1
3.それに気をつけることで体調に変化はありましたか?
・はい
・いいえ
15
6
※「はい」の人はどのような変化がありましたか?
体重が減った
毎日が楽しい
よく眠れる
食事が美味しく感じる
血圧が安定している
体の調子がいい
健康で、元気でいられること
善玉コレステロールが増えた
血糖値が落ち着いてきた
9
4.それは今後とも続けられそうですか?
・はい
22
・いいえ
0
Ⅲ.~運動~
1.万歩計を使っていますか?
・はい
・いいえ
13
9
2.使われている場合は一日に何歩くらい歩いていますか?
【先月】
1000 歩
1
2000 歩
1
3000 歩
2
5000 歩
7
8000 歩
1
10000 歩以上
1
【今月】
1000 歩
1
2000 歩
2
3000 歩
1
5000 歩
6
8000 歩
2
10000 歩以上
1
3.一日の中でだらだらする時間はどうなりましたか?
長くなった
0
変わらない
9
短くなった
13
10
② 医療面接ワークショップの開催
前年度に引き続き、医療面接ワークショップを開催した。岡山 SP 研究会から模擬患
者 3 名をお招きし、愛媛大学医学部生 13 名が参加した。
<開催日>
2008 年 11 月 2 日(日)
<場所>
愛媛大学医学部キャンパス 基礎第3講義室
<タイムスケジュール>
11:15~12:30 昼食会(模擬患者(SP)さんと参加者で)
13:00~13:15 挨拶、自己紹介(各自の目標)
13:15~13:20 SP とは(前田純子)
13:20~13:30 デモ①
13:30~14:20 ロールプレイ①(7 分+8 分)×3(※学生のみ)
14:20~14:35 全体分かち合い
14:35~14:40 休憩
14:40~15:30 ロールプレイ②(7 分+8 分)×3(※SP 参加)
15:30~15:35 休憩
15:35~16:20 ロールプレイ③(7 分+8 分)×3(※SP 参加)悪い知らせ Bad News の伝え方
16:20~16:30 デモ②
16:30~17:00 全体分かち合い
医療面接の重要性は大きく分けて 2 つに分類される。
1 つ目としては、適切なコミュニケーションが医師・患者に与える影響の大きさであ
る。医師の患者に対する適切なコミュニケーションにより、患者の満足度、治療の順守、
伝えられる情報の理解の促進、心理的ストレスの軽減に関与する。また、それと同時に、
コミュニケーションのトレーニングをきちんと受けていないと感じている医療者は仕
事への満足度が低く、燃え尽き感や抑うつ・不安が高いことが示唆されている。このよ
うに、効果的なコミュニケーションを行うことは、医師・患者双方にとってよい影響を
与えるといえる。
2 つ目としては、コミュニケーションが診断に与える影響である。Sandler の報告に
よれば、適切な医療面接によって予測できる診断の正解率(正診率)は 56%とされてい
る。これに身体診察まで加えると正診率は 73%となり、いかに医療面接と身体診察が
重要であるかがわかる。
本ワークショップでは、参加学生に医療面接の重要性を事前勉強会によって理解して
もらった上で、がんの告知など Bad News の伝え方も含めたコミュニケーションを実践
練習した。
11
図4
模擬患者の診察と、その後のフィードバック
以下にワークショップ後に参加学生に配布したアンケートの集計結果を掲載する。
模擬患者とのロールプレイによってコミュニケーションについて学ぶことは、あな
たにとってどのくらいためになりましたか?5段階評価で示してください。
(とてもためになった←5・4・3・2・1→ためにならなかった)
5・・・6人
4・・・2人
あなたは今回の勉強会で、どのようなことを学びましたか?当てはまるものを全て
選んでください。
A 患者から病気を診断するための情報を聞きだすこと
B 患者の病気に対する思い、悩みを聞きだすこと
C 患者の病気に対する悩みを解決すること
D 患者から病気を診断するために関係する情報だけを効率よく聞きだすこと
E 患者から病気を診断するために関係するものから無関係な情報まで、患者が
自分のところに来るまでのすべての情報を聞きだすこと
F 患者にとってショッキングな情報であっても伝えること(伝えられるように
なったこと)
G 患者にとってショッキングな情報を伝えた後の患者の気持ちに寄り添うこ
と
H その他
12
A・・・・・8人
B・・・・・8人
C・・・・・2人
D・・・・・3人
E・・・・・2人
F・・・・・6人
G・・・・・6人
H
・患者さんとコミュニケーションをとることの難しさ
・患者さんが医師や病院側の治療法や処置に対してどう感じているかを聞き出すこと
・医療面接は情報を聞き出すためだけのものではないということ
・勉強会・・・というか SP さんとロールプレイを行うことによって、実際の空気の重
さ、その雰囲気の中での医師という責任ある立場などを体験できた。
・患者さんの悩みを聞いた上で、その病気を伝えどのような治療があるのかをわかりや
すく伝えること。そして患者さんがそれを受け入れがたい時、医療者としてその病気
のことをどれくらい伝えられるかということ。
・他の参加者に対して自分も参加者の一人という立場からフィードバックするというこ
と。
13
上で選んでいただいた項目についてお聞きします。選んだ項目について、
(ポリクリ、
病院実習などで)実際に患者と話すときに、学んだことを実践できると思いますか?選
んだ項目一つ一つについて、どのくらい実践できると思うかを5段階で評価してくださ
い。
[項目のアルファベット
](実践できる←5・4・3・2・1→実践できない)
今回の勉強会で学んだようなことを本などを通して「知識として」知ることは、学んだ
ことを(実際の患者に対して)実践できることに結びつくと思いますか?5段階評価で
お答えください。
(結びつく←5・4・3・2・1→結びつかない)
5・・・・・・1人
4・・・・・・2人
3・・・・・・4人
2・・・・・・1人
1・・・・・・1人
14
今回の勉強会で学んだようなことをロールプレイを通じて「実体験として」知ることは、
学んだことを(実際の患者に対して)実践できることに結びつくと思いますか?5段階
評価でお答えください。
(結びつく←5・4・3・2・1→結びつかない)
5・・・・・・8人
4・・・・・・1人
3・・・・・・0人
2・・・・・・0人
1・・・・・・0人
③PBL(Problem-based learning)の導入
医師が患者を診察する際、まず患者の訴える症状(主訴)を聞き出し、疑われる疾患
(鑑別疾患)をリストアップしていく。このように、実際の診療においては症状から病
気を想起していくが、その思考方法は、従来から行われている臓器別の医学教育の中だ
けでは身に付けにくい。また、病態が時間によって変化していくことや、危険な状態に
ある患者では診断を考えると同時に、容態を安定させるための治療を行うことなどは、
PBL のほうが学習しやすいと考えられる。
愛媛大学医学部学生サークル Life Support Workshop in Ehime では、学生同士で自
主的に PBL を行っていくため、2009 年 4 月 25 日(土)
・26 日(日)、岡山大学医学部
で開催された、Hawaii 大学主催の Hawaii-Style Problem-based learning Workshop
に参加した。
15
Saturday, April 25, 2009
11:00 AM
Student arrival and check-in (lunch provided)
12:00 NOON
Introductions and welcome
1:00 PM
"Hawaii Style PBL"
Reviewing the “Hawaii Style” PBL process
PBL case #1
2:30 PM
Lecture/Discussion
3:30 PM
Small-Group PBL, Case #2
5:00 PM
Discussion/debriefing (dinner provided)
6:00 PM
Small-Group PBL, Case #3
7:30 PM
Closing
Sunday, April 26, 2009
8:45 AM
Warmup
9:00 AM
Lecture/Discussion
10:30 PM
Small-Group PBL, Case #4
12:30 PM
Lunch Break (lunch provided)
1:30 PM
Tips for Student PBL Tutors
2:15 PM
Small-Group PBL, Case #5
3:15 PM
Closing Discussion
4:00 PM
Adjourn
16
<考察・今後の課題>
以上のように 2008 年度は、①「糖尿病セミナー」「健康教室」生活習慣改善のための行
動変容の方法、②「医療面接ワークショップ」がんの告知など患者に精神的に衝撃を与え
るような状況下でのコミュニケーション法、③「PBL」患者の病態を時間軸で捉えていく
方法という、3 つの方法を学ぶことを中心とした活動を行ってきた。
①「糖尿病セミナー」においては、セミナー参加者と学生は当然初対面であったにも関
わらず、小さい目標の達成を積み重ねる方法をセミナー参加者から引き出せていることが
アンケートの結果からもうかがえ、一定の成果はあったものと言える。学生側も理論だっ
た行動変容の手法を実践する機会を得られたことは非常によかった。ただし、セミナー参
加者が、今後実際に、生活習慣を改善できたかどうかまでのフォローアップはできていな
いため、セミナーそのものが生活習慣改善のきっかけとなったかどうかはわからない。ま
た、学生側も個々人によって行動変容の手法が統一されていたとは限らないため、セミナ
ーの効果を高めるためにも、よりよい手法の探究や経験の共有が求められると思う。「健康
教室」では、糖尿病セミナーの反省を踏まえ、約 2 ヶ月後に事後アンケートを実施した。
健康教室への参加をきっかけに生活習慣の改善に取り組んでいることを示唆する結果は出
たが、今後は検診の結果などのより客観的なデータの収集を目指していきたい。
②「医療面接ワークショップ」では、他の参加者の学生や模擬患者からのフィードバッ
クをもらえる時間を十分にとったため、参加者に自分のコミュニケーションの良い点に気
づいてもらえたようであった。自分のコミュニケーションに関してフィードバックをしっ
かり受けるという機会は、医学部の教育の中でも非常に少なく、その意味で貴重な経験が
できたのではないかと考えている。また、ワークショップ後のアンケート結果でも、患者
の悩みを解決するところまでは至らないものの、悩みを引き出すまでは、病棟実習棟でも
実践できるだろうという参加者が多くおり、このワークショップが机上の理論ではなく実
体験として学べるものだからこそ、ここまでの結果が出せたものと思われる。今後は、こ
のワークショップを継続し、下級生にも学習の機会を設けることを第 1 目標に活動してい
く予定である。
③「PBL」は、糖尿病セミナーや医療面接ワークショップにおいて要求されるような行
動変容の手法、コミュニケーション技術、そして医学的知識を統合した上で、行っていく
予定である。知識の習得に一辺倒にならないよう、シミュレーションであっても、一人の
患者を診察し治療していることを心に留め、今後も活動していきたい。
17
<参考文献・引用文献>
石井均編集:「糖尿病ケアの知恵袋
看護学雑誌 2005 年 2 月号
佐伯晴子
保坂隆
よき『治療同盟』をめざして」
特集「糖尿病エンパワーメント実践講座」
「あなたの患者になりたい」
2003 年
「ナースのためのサイコオンコロジー」
内富庸介・藤森麻衣子
2004 年
医学書院
医学書院
医学書院
2001 年
南山堂
「がん医療におけるコミュニケーション・スキル」
2007 年
医学書院
Team SPIKES-BC 編
「SPIKES-BC Communication with Breast Cancer Patients」
2007 年
じほう
Prochaska JO, DiClemmente CC, Norcross JC : In search of how people change ---Applications to addictive behaviors, American Psychologist, 47, 1102-1114, 1992
財団法人医療研修推進財団 「コミュニケーション技術研修会テキスト
2008 年
SHARE1.2 版」
http://pmet.or.jp
<謝辞>
本活動を遂行するにあたり、ご理解とご協力をいただき種々の便宜を図っていただきま
した、愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野教授・谷川武先生、櫻井進先
生に厚く御礼申し上げます。
また本活動に際し、終始ご指導およびご支援下さいました愛媛大学医学部総合医学教育
センター長・小林直人先生に謹んで感謝の意を表します。
数々のご助言、ご協力いただきました愛媛大学医学部の諸先輩方ならびに同輩、後輩の
皆様に深く感謝の意を表します。
尚、本プロジェクトは、平成 20 年度愛媛大学「学生による調査・研究プロジェクト」の
支援を受けて遂行されたことを報告します。
18