学会抄録 - 日本皮膚科学会雑誌 検索データベース

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昭和39年9月20日
531
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学会抄録
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臨時東京地方会
Lobitz教授歓迎講演会
座長 小堀辰治博士(東京逓信)
(昭和39年6月4日,於新宿,安田生命ふール)
シンポジウム
軟膏に対しても,球菌は(冊),梓菌は(併)の感受性を
主題 尋常性痙廬
有していた.そこでわれわれはサルフアモノメトキシン
l.尋常性痙瘤の細菌学的考察,特にダイメトン内服
1日lg投与,維持量として症状がよくなってから,
ならびにパンフラン軟膏外用の効果 小堀辰治,坂東瞰
0.5∼0.3gを投与した.重症例は3ヵ月,中等例は2
葉(東京逓信)
ヵ月,軽症は3週間ないし1ヵ月で症状の改善がみられ・
われわれは尋常性痙癒にっいて,その細菌学的考察
た.又最近,富山化学から発表された,パソフラソア七
を,面庖,丘疹,膿症,チステについて行ない,アクネ
デート親水軟膏で尋常性痙癒の外用療法を行なってみ
梓菌及び白色ブドウ球菌を,多数の症例から培養した.
た.これを局所に塗布し,ポリェチレソをあて周辺を絆
これらの細菌の性状,ならびに菌と発疹との関係を,主
創膏で密封,即ち0.D.T.療法を行なった.その結
として治療の面から検討した.対称は13才から31才まで
果,サルフア剤よりより早く効果がみられた.しかし,
の男女,58人の77のlesionで,発疹をコメド圧出器で
操作上の難かしさ,患者の不愉快,外観を損ずるなどO
圧し出しこれを血液平板培地上において嫌気性下に培養
欠点のため,この方法を3∼7日間位行ない,その後サ
した,この結果,多数の症例にStaphylococcus
ルフア剤を内服させた.このように.アクネ悍菌に感受
midis及びCornebacterium
学的性状検査をBeigey's
epider。
acnesを得た.この細菌
manual
による菌同定を,日
性大で,球菌に感受性の低いサルファモノメトキシソに
より治療しても,両菌の消失がみられ,症状の改善がみ
大細菌学池田助教授の下で行なった,その結果Stap.
られることは両菌のSymbioseの可能性を示唆し興味が
epidermidis, Cornebacterium
ある.今回の実験では,梓菌にのみ高い感受性を有する,
acnes 両菌共,グラム陽
性,非病源性常在細菌で,37°Cで発育する適性嫌気性菌
サルフアモノタトキシソを使用して,発疹の消失をみ√
であった.しかし掃菌の方はより嫌気性にてよく発育す
フクネ梓菌の本症の発生の有意性を強調したが,反対に
る.両菌が同時に発育する例が最も多く,
staphylococcusにのみ感受性かおり,アクネ梓菌に感
done 61%, closed comedone
46%,
come-
50%, papule 53%, pustule
cyste 100%.球菌のみが検出される場合は,
open comedone
25%,
open
39%,
pustule 43%,
closed comedone
cyste
50%,
受性の低い薬物をみっけて,同じように治療効果があが
るかどうか検してみたい,しかし,いずれにしても,尋
papule
O%である.梓菌のみ検出
常性痙癒には細菌関与がその発症に,はなはだ重要な役
割をてこ)とめていることは確かだと考える.
された症例は1例もなかった,次に感受性テストを両菌
II
について行なった.
信)
disk法において,球菌株はcolistin
Adult
Premenstrual
Acne
安田利顕(関東逓
を除く抗性物質に感受性大であるが,サルフア剤には
Newman
全く感受性が低い.ヽ一方梓菌株は,抗性物質,サルフ
臨床型の1つで,1)月経開始直前1週間の間に増悪を
and Feldmanによって提唱された慾雄o
ア剤両薬剤に対し感受性大である.更に,菌株を追加し
み,2)毎性周期それをみる,3)月経開始とともに軽
て, dilution method
快. 4)
にても感受性テストを行なった.・
25才以前後以上の女子に多発する,5)紫紅色
これによっても.球菌はサルフア剤に感受性低く,梓菌
の溶出性の比較的大きな丘疹で,面飽をみることが少な:
は低濃度で発育が阻止される.特にサルフアモノメトキ
く,岸みを伴うものもある,6)あとに鋭利にえぐられ
シンに対し感受性大である.又,パソフラソアセテート
たような癈痕を残す,7)発生部位は1前額側面から側
532
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第9号
頬,耳前部.さらに下って顎骨部,ロ囲に好発する.若
indicationは第1にtraumatic
scar
tattooにあり,それに
年性征旅を認めず,上記年令に発生してくる群とそれを
ついでacne
有し,それにっづいて,あるいは一時軽快したあとに発
ですでにhyperpigmentationのことを恐れて記載し
となってはいるが,私の最初の報告
生してくる群の2つがある.普通の痙癒の治療で軽快し
た.その後,
ている場合でも,月経前になると増悪をみるので,若年
steel
Kurtinのwire
brush
及びSchreusの
性痙癒とは,成因の異なるものと考えられ,また,2つ
この経験中acne scarに対する本法にっいての経験に
burを利用した経験を積む機会を得た.今回は,
の臨床型では月経前症候群をみるものか多い.したがっ
ついて述べる.
て,この期に一致する皮膚水分量増加が,複癒丘疹腫大
症例:全症例数150例が来院したが 私は最初の経験
の成因と考えられる.それはprogestesone筋注によっ
で得たことを患者によく話したし,又,いわゆる肌のあら
て容易に丘疹が縮小することからも推定されるが,この
い例とも考えられる,即ちfollicleが開いたよ5な形の
治療では次の性周期に.みられる増悪を予防することはで
ものもかなりあったので,
きない.しかしpregnandiol
を施行したかった・
6∼10T内服は,それを予
防することができる.また,この臨床型ではZondek
後遺症(side
and Bromberg
a)新生皮膚面の潮紅
のendocrine
allergy に一致する所見
150例中62例にしかabrasion
effect)について
が認められる.したがって,われわれはpremenstrual
必ず発生する.
acne
rsonの原法に近く行なったものは特に著明であるし,
を痙癒の特異な臨床型とすることが妥当であると
考えるとともに,その成因としてアレルギー的因子を推
定し, endocrine allergic acne とすることかできると
111. Acne
Scar
に対するSkin
Abrasion
Techni-
queの経験 大森清一(東京警察)
昭和28年(1953)
てskin
9月のReader's
きは6∼8ヵ月あったものもある.
hyperpigmentation
皮膚の紅潮が去ると共に現われてくる,時にはhyper。
pigmentationを見ないこともあるが,2ヵ年も続いて
digest 誌に.おい
abrasion techniqueが紹介されたのを契機に,
困ったこともある.治療法としてはsun
cream
somaticな面での慰めが大切である.又,ヘパリソを含
まい.昭和27年(1952)から約8ヵ月間7タリカにあっ
んだ軟膏も時によい.
た私は,その12月にあったChicagoでの第11
W.A.
of Dermatology
Rosenberg
inAmerican
and Syphilology り大会で
の発表した症例をみる機会かあった.
この手技に興味をもって帰国した私は,直ちにsandpaper法を実施してみていた.しかしながら,一なかなか
c)
depigmenation
acne
scar
では経験かないか,もしこ5した後遺症に
出会ったならばpsoralenの外用療法かよい.
d)
scar
wound
keloid
or hyp.
healing
scar
の発生
がおくれると,これが発生する.こ
に患者に出会う機会も少なかったが,昭和28年9月の
れは, dermatomeでintermediate
Reader's digest での発表以来,私のところへ,徐々に
graftyのdonor
患者が集まるようになったので,これらの症例を集めて
ではhyp.
昭和29年7月までに,各種のscar.
深さでは,十分にこれが起こるという事実,別言すれば
traumatic
tattoo
split thickness
scarが起こらないのに,
repairのおそくなる
10/1000吋のところはno
誌上に発表することができた,この際にもvolunteer
確実に,その中間のところではscatteredにhyp.
2名に対してsandpaper法を施行し,その部位を組織
がみられることからも推定しうる.従ってabrasion
elevated
scar. 30/1000吋では
学的所見から,われわれの行なった程度では,真皮の中
したときは,術後少なくとも2週から2ヵ月まで十分
層までしかabradeしていないことを知ったが,
follow
のいうように,脂肪組織が少しずつ見える程度までab-
skin
siteにおいてrepairがすぐ出来る深さ
など合計48例の経験を,手術誌8巻7号(昭和29年7.月)
Iverson
とM.
E.H.の適量を使用した.しかし,何といってもpsycho-
日本では,本法に対する大方の目が向けられたといって
Academy
Ive-
長くも存続する.3ヵ月存続するものが普通で,長いと
b)
考えている.
abrasionを深く行たったものや,
upして,このhyp.
scar
が発生したらcorficoid
の局所療法をする.
radeするのは,いろいろの意味で決心がっきかねたも
e)
のである.ところで,上述の経験ではabrasionの
abrasionを施した患者の50%にmilium様皮疹をみる.
milium様の皮疹の発生
scar
533
昭和39年9月20日
術後3ヵ月まで発生している.発生する時期ぼ患者によ
けるぺきであることを強調して話を終りたい.
って多少異なる.治療はもう一度軽くabrade するの
IV. Acne
が最亀よい. ,
ゴソ大学)
4)考按
スライド供覧
acne scarにおいては,なるべく顔全体をabradeする
口角に色素斑のある両側太田母斑十伊藤母斑十異所性
方がよいと思われるが,日本では患者がそれに同意する
蒙古斑 肥田野 信,加島英雄(東京警察)
ことが少ないので,どうしても変化のある部分だけにこ
23才,男子.家族歴に特記すべきことなし.色素斑は
れを限定して行なうようになる.又施術する身になれば,
生来あるとい5が,15才頃外眼角部,鼻翼の色調増強し
hyperpigmentationのことを考えると顔全体abradeす
たという.眼瞼,頬,耳前部,耳輪,耳介後面,耳の後
るのはやはり多少気おくれをするのも止むを得ない.
下部は両側とも侵され,その他右側では前頭から側頭に
一方に於て,私はscar
dermisのcoarse
かけての有毛部,額,鼻翼にも色素沈着がある.また右
collogen fibre にまで侵襲が及ぶと.,何人にも,これが
口角の皮膚と唇紅にも同様の着色がある.いずれも青黒
発生しうると考えるようになった.(これはderfflatome
乃至紫褐色で.びまん性着色の上に点状色素斑が重なっ
によるdonor
た状態を示す.鼓膜は両側とも青っぽくみえるが,聴力
keloidは,
site の深さに比例してscar
keloid が起
Vulgaris.
Walter C. Lobitz
Jr- (オレ
る)ので,余計,慎重にabradeするようになった.
異常はない.限は両側とも軽度の乱視と近視があり,輦
このことは pitted
膜に著明な着色を詔める.虹彩は青黒く,かっ紋理不明
scar
の形をしたacne
scarには
abrasion があまりよい結果をもたらさなくなったこと
瞭,乳頭の耳側部に接して,1/4円周の範囲が褐青色に着
と何か関係があるように思える.従ってabrasionを2
色,右眼には眼瞼結膜の着色もある.ロ蓋は正中線の右
回,3回と繰返すことがよくたった.
側に大きい青い色素斑があるが,左側にも小さい色素斑
又, acne
がみられる.咽頭上部,中部.下部とも後壁に青黒い着
scar
は殆どないが,
後に scar keloid の発生をみたこと
scar keloid が出1来ると,その治療は
色あり,下方では食道人口部に及ぶが,喉頭は正常であ
甚だ困難となる.昔はhydrocortisoneなどの局注でよ
る.右側の側頭,肩,鎖骨上高,上胸部には広範囲の色
いと思ったが,これは長く治療せねばならず,患者と共
素斑がある.これはびまん性の青灰斑の上に,灰紫色点
に苦しむことにもなる.最近Decadronが出たので,
状斑が重なったものであり,−応伊藤母斑の範時に入る
これを局注で用いるが,費用も高く,効果はあるとして
べきものと思う.背中央部に示指頭大青灰色斑31,僣
も,出来るだけscar
に2コあり,異所性蒙古斑と考えられる.組織学的に真
keloid にならないようにして
治すべきものと考えるに至っている.
次にacne
vulgar is とacne
scar を共にもつた女性
の例を報告する,これはfeinな肌をした女性で,顔全体
皮上1/3に限局したヒモ状乃至紡錘形色素細胞がみられ
た.褐青色母斑の最も広範囲に生じた,1つの極型と考
えたい.かっ口角,ロ唇部に色素沈着を認めたのは,こ
をabradeし,一時著明なhyperpigmentationを来たし
れが最初と思う.
たが,6ヵ月後にそれがとれた例で,これなど本当の意味
遠山氏連圏状枇糠疹 豊嶋晶子(慶大)
のskin
63才,男.初診:昭和39年3月26日.主訴;腰脊部に
abasion の恩恵によくしたものと考えている.
なお,症例の統計をみると,今年などは殆どabrasion
をacne
scar に行なっていない(これは mildな症例
多発した正円形皮疹.家族歴及び既往歴:特記すべきこ
となし.現病歴及び現症:10年前より腰瞥部に,ほぼ手
もあるか).私ともが,術前,あまいこ神経質にhyper-
掌大の正円形落屑局面を数コ認める.一部では融合傾向
pigmentationのこと,
あり.白覚症なし,検査所見:末梢血,肝機能,血清蛋
scar keloid の話をするもので,
患者の心から希望が消えるものとも思う.しかし,考え
白,血清電解質,尿,屎,血圧,胸部レ線像,甲状腺機
方によれば,これも無手勝沈で,戦わずして,患者の心
能に異常を認めず.血沈中等値23inm,血中ビタミンA60
をacne
1.U・,発汗試験では発汗遅延減少を認めた.糸状菌検
scar から,ときはなしたと考えれば,又よい
方法であっ尭かと考える次第である.
出(一).STS(−).病理組織学的検査で叫 軽度の角
すぺてのplastic
層増殖,マルピギー層の非薄化及び基底層のタラニソの
operation では,そこに起るであろ
う事態と,それによる患者の心理的負担との和が,いつ
増加を詔め赳
も結果を上廻るものでないときは,そのoperationは避
Pachyonychia
Congenita 西田尚史(東大)
534
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第9号
4才,女子.新潟県長岡市在住.両親に血縁関係はな
の高度の角質増生がみられる.角層内には赤血球及びそ
い/生後10日目頃指趾の爪が丸く曲って半球状になって
れの破壊によって生じたヘモヂデリソ沈着,断裂した毛
いるのに気付く.1才頃より左右の肩甲部から側背にか
髪及びゴミ等が認められる.毛嚢孔は侈開し,内に角栓
けて微細な小丘疹が散生し,正常皮膚色で先端か尖って
形成をみる.毛嚢,脂腺は萎縮状,汗腺はほぼ正常,真皮
いた.軽い癈禅を伴うことがあった.同じ頃右肘頭部に
膠原線維及び皮下脂肪組織はほぼ正常.以とepithelial!
叱贅様の小腫瘤を生じ大豆大に及んだ.また膝蓋部にも
nevusのacanthoid
米粒大までの丘疹を生じ,これは癈嫁はなかった.夏期
に肥厚した角質を鈍的に除去,一部にskin
には顔面より多くの発汗を認める.智能はほぼ正常.爪
techniqueを施行して現在治療中である.
は全爪半球状∼ピラミッド状にもり上り褐色を呈し,混
討 論
濁あり,堅い.肩甲部,側背,四肢伸側に蘇状の米粒大
川村太郎(東大)z
までの solid な丘疹が散生,肘,膝部では集銕.右肘
らばacanthoidよりkeratoidの方がよいと思5.
頭部に大豆大皮角様の角質突起.両足酸第1趾の付け根
Dr.
typeに一致する.治療;まず著叫
epidermal
abrasion:
nevus と比軟するた
Lobitz : skin abrasionした部の再発について.
に指頭大の角化局面.鼻尖は軽い潮紅と丘疹状 granu-
どのくらいたっと再発するか.
losis rubra
池田重雄:l)このよ5な症例の経験は始めてなO
nasi 様の変化.舌,不整形地図状のロイ
コプラキー.膝蓋部よりの組織標本の所見z高度のHy-
で,再発の程度にっいては明確な返事はできない.2)
perkeratose.汗孔開口の角栓形成.そのあるものは不
われわれは本疾患を epithelial nevus
全角化.表皮細胞の所による空胞化.所による基底細胞
いる.硬母斑では,一回のskin
様細胞の集り(帥細胞が基底細胞様 Basaloid に見え
見ることが多い.この症例でも skin
るのか).表皮部分での汗管の拡張と壁の肥厚.汗管はや
1ヵ月の所見では,指背の一部に再発をみている.われ
やとぐろを巻いて下に続く.真皮内弾性線維には軽い断
われは数回skin
abrasion
の1型と考えて
abrasion
では再発を
abrasion
を施行することによって,
裂が見られる.
即ち表面に軽度のscarをつくることによって再発を予
豪猪状魚鱗癖の1例 池田重雄,堀 嘉昭,高岩 尭
防できるのではないかと考えている.
(東大`)
Elasteidose
現病歴:生下時顔面,手掌,足鮭を除いた全身が幾分
Comedones
Cutanee
(Favre
施行後
Nodulaire
1 Kyste
et i1
et Racouchot)の1例清野和子,
黒ずんで見えたが,ザラザラしてはいなかった.生後1
池田重雄(東大)
年2ヵ月で歩行開始,その頃より上記部分の皮膚が密に
74才,男.元油塗料販売業.初診: 昭和39年4月1
角質塊で覆われ,黒色調が強くなり,時折物にすれて出
日.現病歴ご約10年前から顔面に面鮑を生じ同時に顔O
血をみるようになった.湯に入ると激しいカユ4を訴え
皮膚が黄臓色となり,しわが深くなって来た.1∼2年
る.既往歴:知能発育正常.学業成績普通.14才で初
前から両上眼瞼が垂れ下ってきた,現病;顔面全体が淡
経.その後やや不順.家族歴:血族結婚なし.同―家系
黄色を呈し,しわが深く両ヱ眼瞼が垂れ下っている.顔
に同病は認められない.現症=頭頂部,顔面,手掌,足
面全体に粟粒大∼帽針頭大の青黒色の面鮑を認め,さら
鍍を除いて,殆ど全身にわたり,対称性に帯緑禍色乃至
に左右頬骨部∼頬部に指頭大までの比較的軟い腫瘤を数
汚楡黒褐色の,表面光沢女有する,種々な太さの輪状の
個ずつ触れる.項部には菱形皮膚が顕著である.顔面,
角質が密生する.概して躯幹では増生した角質のキメは
両手背に老人性色素斑を多数認める.家族歴:8人O
細かく苔状を示すが,四肢七は粗大,モザイク状を呈す
同胞に同症の有無は分らない.既往歴:1∼2年来,
る.殊に乳房部では松カサの殼状を,肘部,手背,足背
心及び肝障碍を指摘され治療を受けている.また両側O
では角質が乾燥し,灰白色を呈し,一見ワニの皮の如ぎ
老人性白内障を指摘されている.一般検査陽性成績ご血
所見を呈する.前頚部,鎖骨部,旅高,外陰部では比較
色素量12.8 g/dl.赤血球数360×104,尿ウロビリノー
的変化が軽く,肢毛,陰毛もほぼ正常.なお手掌,肢
ゲン強陽性.組織所見:表皮は扁平で,所々に.著明な
寓,外陰部では局所性多汗症を示す.衣服をぬがすと,全
角栓形成を認める.主な変化は真皮のと層から中層にわ
身から異様な獣様の悪臭が鼻をらく.内部諸臓器に異常
たり,比較的巣状にHEで淡紫紅色に染まる無定形の塊
なく,眼,耳,鼻,歯,爪等もほぼ正常一組織z穎粒層
状物が認められ,弾力線維と似た染色性を示し,
のわずかな肥厚を伴った表皮の鋸歯状の起伏と表皮上部
陽性である.また真皮の上層から中層にわたり大小種々
PAS
535
昭和39年9月20日
の毛嚢嚢腫がある.毛嚢の周囲に所々小円形細胞浸潤が
小篇辰治(東京逓信)に
あり,脂腺,汗腺はほぼ正常にみられる.
何の目的で染めたか.本腫瘍をpericyte
討 論
たのか.
Dr. Lobitz: この患者の過去7∼8年の職業につい
小林健正z1)血管内被細胞増殖との関係を見るため
てお伺いしたいと思う.ところで1例経験した本症はタ
にアルカリフォスファターゼ染色した.2)用いた染色
ールを使用する職業に過去10数年たずさわっていた由
法はアソ色素法であs.
で,タールのlightとのcombinationによってこのよ
£k)sinophilic FoUiculokentric
うな一種の老人性の皮膚変化がおこるものかと考えてい
性濾胞増殖性症候群の1例 藤田恵一(自衛隊中央)
る.
20才,男子.6才の時,右中耳炎に罹患し,急性腎炎
清野和子(東大):約30年間油,塗料販売業であった
を併発,中耳炎は以後時々再発し,現在も穿孔性化膿性
そうである. ●
中耳炎を認める.12才の頃右大腿・右脊部に反復して痴
亀頭皮角(有輯細胞癌) 西脇宗一(関東中央j
を発生,しばしば右蝋径腺の腫脹を来たした.13才の時
58才,男子,約25年前亀頭背面の一部に紅色調を帯び
両肘部淋巴腺が胡桃大に腫脹,次いで全身の皮下淋巴腺
origin と考え
Syndrome 好酸球
た乾燥性やや軽度の光沢を有する発疹のあることに気づ
が栂指頭大まで多数腫脹しているのを気づく.その翌年
いた.自覚症状は全くないまま放置していたところ徐々
両肘腺をそれぞれ異なった病院で摘出,増殖性淋巴腺炎
に拡大し,約2年前から歩行に際し衣服と摩擦して痛む
あるいは淋巴肉腫といわれた.本年2月全身の淋巴腺腫
ことがあった.約1年前から発疹の表面に角化がはじま
脹を主訴として当院内科(森永医長)に入院.入院時に
り,自分で安全カミソリで削っていたが次第に角化が高
は全身の皮下淋巴腺がいずれも大豆大∼胡桃大に腫脹,
度となって来た.包茎はない.現症:尿道口の周囲に巾
右夙径部はびまん性の色素沈着と扁平な腫脹を認め,皮
5uの正常粘膜が残っており,それをとりまくよいこ淡
下に鴛卵大の腫瘍を触れる.腫瘍は軟い組織の中に不規
紅色,色素脱失のある局面が亀頭の約1/2の面積を占め
則に大小の硬い組織か散在するりを触れることができ
ている.表面は角化傾向が強く,左側では2×1.5cm,
る.左蝋径部および左顎下部にも胡桃大の同様な皮下腫
高さ約8皿の角質塊が固着している.この角質塊の基部
瘍あり.胸腹部内臓に異常を認めず,肝・牌・腎は触れ
では一部に大豆大の皮内硬結を触れる.左右蝋径リソパ
ず,骨レ線像も正常.白血球数6,400,好酸球33%,胸
腺が小指頭大に各1コ宛ふれる.諸検査成績に特記すべ
骨骨髄像に著明な好酸球増殖あり,寄生虫は証明し得
きものなく,組織所見は硬結部,紅色の発疹部共に典型
ず.組織学的に,淋巴腺には不規則な大小多数の淋巴濾
的な有鯨細胞癌(Broder第1度)の像を呈している.
胞様構造およびびまん性の好酸球浸潤あり,洞は拡張し
基礎となった原疾患は陰茎部分切断術後検幇の予定.
て細網細胞の増殖と処々に巨細胞を認める.皮下腫瘍
Neyoxanthoendothelio皿la 小林健正(干天)
は,淋巴腺周囲疎性結合織内の主として血管周囲に,結
3才6ヵ月,少女.5月前から左鼻唇溝に次第に増大
合織増殖と細胞浸潤とからなる大小の病巣を形成し,こ
する腫瘤あり.直径8mlの半球状,檀黄色,表面平滑,
れらの融合から成り立っている.浸潤細胞は多様である
弾力性硬で,基部より頂部に向う毛綱管拡張が透見せら
が,多数の好酸球と淋巴濾胞様構造とを伴い,巨細胞も
れ,基底に一対し可動性で,圧痛はない.自覚症はなく,
一部に認められ,悪性化の像はない.最近時々本例の如
家族に黄色腫,心臓疾患は認められず,血族結婚もな
き好酸球増多症・淋巴腺腫・軟部組織腫瘍を主宦状とす
い.身体他部に類似の腫瘤を認めず,表在リンパ節の腫
る症例の報告をみるが,本症候群に対し表題の如き名称
大もない.レ線学的に骨,肺野の異常を見ず,血清総脂
を提案したい.
質は382!!ig/dl,総=・レステロールは181iiig/dlであった.
討 論
組織学的には扁平,非薄化せる表皮に囲まれた組織球性
小堀辰治(東京逓信)z本当の病名は何か.
浸潤より成り,黄色腫細胞Touton型巨細胞を多数混
藤田恵一:従来本邦において報告された本症類似の症
じている.所々に小血管の増生,内皮細胞増殖も認めら
例は約50例に達し,その診断名として,好酸球増多を体
れ,浸潤中に多数のズダソ好性の脂肪滴,嗜銀線維形成
った巨大なる皮下腫瘍・特異なる皮下腫瘍・好酸球性腫
を証明する.
瘤・好酸球性淋巴肉芽腫症・好酸球性淋巴腺炎・好酸球
討 論
性肉芽腫・好酸球増多を伴った慢性淋巴節腫脹・濾胞性
536
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第9号
淋巴腫などの名称が用いられている.本症は軟部組織に
は20症例における胸部結核所見は治癒,安定したIものが
発生した好酸球性肉芽腫とは別のものである.なお私の
多い.又そ0所見率は一般大衆の結核症所見率より低
提案したfolliculokentricなる用語は,
lymphokentric,
1ヽ.
myelokentricという用語がそれぞれの細胞を刺戟増殖
Dr.
させるという意味で医学用語として用いられているの
コイドージスを診断する際にもっと結核との関係が考慮
Lobitz: : アjリカでは結核が少なく.当然サソレ
で,濾胞を増殖させるという意味でfolliculokentricと
されるべきだと思うがされておらず,
いう語を用いた.
血清globulin値,血清Ca値などの検査成績をより重
Kveim反応と力ヽ
追 加
要視する.したがって皮膚以外のサルコイドの所見を重
川田陽弘(東大分院):最近スライドに供覧された症
要視するが,結核との関係は前にも述べたようにあまり
例と同一と考えられる報告の数が増加してきている.人
考えられてい.ない.
によっで軟部組織の好酸球性肉芽腫”として報告して
アミロイ`ド苔癖 石川謹也(済生会神奈川)
いるが,皮膚科領域では他の疾患が好酸球性肉芽腫と呼
54才,男.初診:昭和38年2月6日.3年前に両上腕
ばれており,本症にこの名前を与えることは混乱を来た
に発生し,2ヵ月前より拡大してきたに既往歴,家族歴
す怖れあり,好ましくない.
に特記すべきことなし,初診時所見z両側上腕より前腕
Gottronのいうeosinophile
Retikuloseとは臨床の病像がやや異っている.本症候
にかけて対称性に,その仲側の外側よりに帯状の境界明
群に対し適当な病名を与えることが必要である。
瞭な浸潤肥厚せる皮疹あり.表面大小の丘疹よりなり疵
Sarcoidosis 園田節也(東医大)
贅様で凹凸不平である.左肩にも小丘疹の集銕せるを見
65才,家婦.初診:昭和39年3月16日.既往歴:55才
る.強度の掻体を訴える.下肢には発疹なし.検査事項
で肺結核,現在治癒.昨年10月前頭部に小豆大の丘疹発
として血液,尿,肝機能に異常所見なし.組織学的に不
生,自覚症状なし.漸次その周辺に増加.同じ頃より右
全角化を伴う角質増殖著明.表皮は不規則に乳嘴状に増
肘頭.左大腿,左右腰部にも各1個ずつ褐色小結節.本
殖している.真皮細胞浸潤は軽度.表皮乳頭部に淡赤色
年に入り,左頚部リンパ腺腫脹に気づく.左前頭部の皮
に染まる非線維性硝子様断裂性の物質が多量に認めら
疹は7∼8個,孤立性に或いは融合した褐赤色,やや硬
れ,該物質はワソ・ギーソソ染色で黄色,マロリー染色
い小結節で,他の部のものはこれよりやや軟かい.ツベ
で淡青赤色,jチール紫でメタクロマジー著明.トルイ
ノ゛クリソ反応 陽性.梅毒血清反応 陽性Kveim反
ジソ青で軽度に赤色,メチ一ル緑・ピロニソ染色でピロ
応 陽性.胸部レ線像 BHL(−).肺野に結核治癒病
ニソのjタクロマジーが認められた.治療としてグリテ
巣ありと.眼科的にサルコイドーシス性の所見なし.組
ール,タンク油,ゼム等の外用,雪状炭酸圧抵法を行な
織学的所見:前頭部皮疹及び左頚部リンパ腺,共にラン
い軽快してきた.
グハンス氏型巨細胞をまじえる,類上皮細胞結節を示
剖検上アスペルギールスを認めたSLE 高瀬吉雄,
す.
中山創生,池上寿彦(信太)
討 論
38才,男.初診:昭和38年11月16日.既往に結核を否
福代良一(金大):1)梅毒反応陽性は,たまたま古
定す.7ヵ月前より,発熱と共に顔面より始まり,漸次
い潜伏梅毒,でもあるかと思われる.駆梅療法に皮疹が反
全身に拡大する皮疹の発生あり.デキサメサソソ,パラ
応するかどうかをみるとよい.2)ヽン反応強陽性は本例
メサソン,塩酸キェーネ,クロラムフェニコールなどの
にとって少々都合が悪いが,臨床像,
投与を受けた,その後一進一退,11月始め,全身症状犀
Kveim
(十),組織
学的に類上皮細胞肉芽腫(十)の3者から,本例はサル
化し,当科に入院した.初診時所見:顔面,四肢,背部
コイドーシスとしてよいと思われる.
等ほとんど全身に急性LEの典型的発疹を認めた.検査
北村包彦(東京逓信);サル=lイドージスは全身病で
所見では,LE現象陽性,白血球数2400∼6400,
ASLO
はあるが,なおかっ臨床的には皮膚類肉腫の所見のみあ
は333Todd単位.マントー 陰性.生検で表皮基底層
って,全身,特に胸部レ線所見に特異変化のないものも
の強い液様変性を認めた.各種抗生物質並びに副腎皮質
ある,かかるものをlocal
ホルモソをエネルギッシュに投与したが40日即ち12月24
sarcoidosis と呼んでいる
が,この例はKveimは陽性だし,サルコイドーシスと
日に死亡した.急性SLEの特有の変化としては心臓に
してよいと思う.なおわれわれの属する・研究班の調査で
りープマソーザックス型の変化あり.牌臓にはオエオ
537
昭和39年9月20日
ソスキソ様の変化を認めた.以上本症特有の変化の外に
面全体から頚部,躯幹に波及し,ロ唇炎,口内炎,咽頭
広く内部臓器にあたかも,結核を思わせる,径1∼2cm前
炎,強度り舌炎を併発した.9月27日,入院.現症z初
後の帯黄灰白色の限局性変化を多数認めた.肺にはかか
診時,両内皆部に赤い小結節が対側性に配列.入院時.
る肉芽様構造が多数認められ,その顕微鏡学所見で,分
両頬部,頭部より頚部にかけ,鱗屑を頂く紅斑が多発し
生子ならびに菌糸成分が肉芽構造中に集ぽとなって存在,
躯幹にも同様紅斑が散発.唇紅部は乾燥,舌は豚脂様苔
するのが発見された.腎臓にも伺様の変化あり.脳膜で
状物を有する潰瘍が多発し,舌尖部乳頭は増殖.臨床検
は肉眼的に著しい肉芽や腫瘍はなかったが,顕微鏡的に
査:血沈62iim (1時間値).尿蛋白陰性.LE細胞証明出
は同一の変化がやはり認められた.これら菌の形態は分
来ず.ワ氏反応陽性.白血球数4,600.腎機能正常.肝
生子か集団をなして散在し,菌糸は束状をなしている.
機能軽度の不全を認める.組織:,有鯨細胞内浮腫,基底
形態学的にアスペルギルスを思わせる.生前に,分泌
層液状変性.浮腫状真皮上層中に血管周囲性細胞浸潤と
物,排泄物よりの培養は行なわなかったし,剖検時の培
少数の担色細胞.真皮中層にはリン球,組織球性細胞
養も不成功だったので,同定をなし得なかった.文献上
よりなる浸潤を認める.治療こ点滴静注,抗生物質,副
は, Year
腎皮質ホルモソ投与,歯科治療等により急速に軽快を示
Book,
Zentralblatt の最近10年間,LEに
合併せるアスペルギルスの報告はない.
し,約1ヵ月にて退院した.その後も微熱は時々ある
討 論
が,血沈はほぼ安定し,蛋白尿も認めない.なお,退院
野口義圀(横市大):副腎皮質ホルモソ,抗生物質を
後,約1ヵ月して歯科治療中止直後の家庭内トラブルの
投与してあるが,このアスペルギルス症との関係は?又
心因性負荷,およびフォーカスと思われる歯牙抜去時
アスペルギルスの場合,感染か寄生かの問題はどうか?
に,各々一過性の発熱と皮疹の再燃をみたが,現在はク
高瀬吉雄こわれわれに収容される以前に副腎皮質ステ
ロロキソ剤,サリチル酸剤で落着いている.
ロイドを長期大量使用しているので,そのことがアスペ
討 論
ルギルス感染と何らかの関係あると想像されるが,確証
・石原勝一(東京逓信):エリテマトーデスと診断され
はない. SLEと密接な関係があるとは思えない.
た根拠を問5.たとえばFuchs或いはStevens-Johnson
福代良一(金大):1)種々の全身性疾息の終末感染
症候群等との鑑別はいかが.
としてのアスベルギロージスは最近問題になりつつあ
北川 健:本例をStevens-Johnson症候群とせず紅
る.その場合,原疾患としては血液病が最も多いといわ
斑性狼癒とした根拠は,1)増悪時皮疹の臨床像,2)
れるが, SLEであってもおかしくない.この際,原疾患
白血球減少症,3)組織学的急性炎症像が少ない点であ
に対してステロイド,抗生物質等を使用しているのが大
る.
多数で,アスペルギロージスの発症には原疾患と上記の
三浦 修(日大):病理組織標本をもう少し詳しく見
治療剤の2つとも関係ありと思われるレ2)組織内の菌
ないとStevens-Johnson症候群かどうか意見をいえな
の状態は菌糸の放射状発育の様子かおり,寄生形態のそ
い.本症では血管周囲性細胞浸潤が著明だが,そこが出
れと思われる.
ていない.
亜急性紅斑性狼庸 北川 健(印刷局東京)
胃癌を併有した皮膚筋炎の2例 長谷川一雄,戸田
33才,女性,家族歴:特記すべきことなし.既往歴:
浄(東京逓信)
昭和30年虫垂切除.昭和35年自然流産.昭和38年春頃
Stertzによって皮膚筋炎と癌腫の合併が記載されて
から歯槽膿漏あり(昭和31年第1子妊娠時ワ氏反応陽
以来,皮膚筋炎報告例中約10%にこれを認めるという.
性, BFPといわれた).現病歴: 昭和38年7月下旬,
炎天下に砂運びをやったが,約2週間後に両内皆部に軽
度の浮腫状紅斑に気づいた.8月19,
20日に海水浴.そ
われわれも最近経験した皮膚筋炎2例にこれを認め,い
ずれも試験開腹,剖検により胃癌と確認した.症例1:
55才,男.家族歴,既往歴に特記事項なし.昭和37年4
月,額,頬,鼻,耳前,項部に発赤出現,座嫁なし.
の後皮疹は徐々に腫脹してきた.9月7日,初診.9月
背,上胸部,腹部に漸時拡大.節肉痛なし.リンパ腺腫
12日ッ反応(14皿×14n),翌13日生検を施行.同夜から
張なし.同年7月入院.臨床検査所見異常なし.組織学
38.5°Cの発熱と頭痛,関節痛,咽頭痛を生じた.皮疹は
的に,表皮の軽い液状変性,真皮上層主として血管周囲
一たん,疑色の傾向を示したが,同月24,
性に,やや密な非特異性細胞浸潤を認める.デキサjサ
25日頃より顔
538
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第9争
ソソ無効.I1月6日再入院.胃部膨満感,上肢挙上に
生じ,某医師より治療受けたるも変化なし.発疹は左煩
際し脱力感あり.触診,レ線所見,細胞診にて胃癌を
にーあり,碗豆大,ほぼ円形,境界明瞭にして辺縁隆起し
疑い,12月,試験開腹.
た潰瘍あり,黄色の濃汁に覆われ,白覚症なし.菌培養
Adenocarcinoma
scirrhosum
で,胃後壁,大綱,小網,横行結腸に浸潤,手術不能の
でSporotrichum
schenkii と思われるもの(同定はし
ため, Nitromin療法を行ない昭和38年2月死亡した.
ていない)を分離し,ヨードカリ内服により症状軽快し
症例2 :40才,男子.既往歴,家族歴に特別なことか
た. 支
く,昨年7月に強い日光にあたってから,顔面,頚部に
梅毒性脱驚症 新妻 寛(慶大)
腫脹,軽い浸潤を伴う紅斑局面形成.日光照射により増
27才,男子,自衛官.昭和38年10月下旬,福岡市内某
悪す.加療に抗し難治.丘疹消退後も紅斑,色素沈着
所にて梅毒感染の機会を得てより,4ヵ月後に,禰漫性
を残す.次第に全身倦怠感,体重減少を認め11月末入院
及び小斑状梅毒性脱毛症の定型的症状を呈するにいたっ
す.筋肉痛なし.胃腸レ線検査にては癌腫を考える陰影
た.梅毒血清反応:1)・補体結合反応(緒方法) 強陽
なく,胃カタラ,細胞診で異常を認めた.本年2月,試
性,2)VDRL法(硝子板上凝集法) 陽性,緒方定.
験開腹にて,胃癌を確認.更に肝及び後腹膜への転移を
量法 320倍(抗体価).両肘部,両側頚部に碗豆大無痛
認め,根治手術不能.臨床検査所見においてク・レアチ
性の淋巴腺を触知する外,理学的に著変は認められなか
ソ,クレアチニン価の上昇の他異常所見なく,皮膚病巣
った.駆梅療法施行中.
の生検では表皮の萎縮,一部液状変性を認め,真皮上層
討 論
は浮腫状,血管拡張を示し,真皮中層の膠原線維巾に
藤田恵一(自衛隊中央):昭和35∼36年頃より一般国
serOse Insudation
民の間に顕症梅毒の増加しつつあることが注目され,自
を認める.又,血管周囲性に小円形
細胞を主とせる細胞浸潤をみとめる.以上2例は,いず
衛官にも増加するのでないかと注意していたが,37年度
れも皮膚筋炎の疑をもっと同時に入院,諸検査を行なっ
までは顕症梅毒は殆ど認められず,入院治療を行なった
たが,著変なく,極めて臨床的に発見しにくい癌腫を併
約50例の梅毒患者も2例を除いて総て暦伏梅毒であっ
有していた例として供覧した.
た.これらの詳細は一昨年の東部連合地方会で報告した.
口囲に見られた湿疹状白癖 石橋 明(日大)
12才,女子.本年4月,ロ囲の軽度癈岸を伴5皮疹を
主訴として来院した.現病歴:本年2月末に感冒に罹
患,右下口唇に水庖性皮疹が発来,その治癒後に,多少
の蜃嫁と発赤を伴った皮疹を続発,レスタミソコーチソ
ソ軟膏等を塗布したが却って拡大した.既往歴,家族歴
に著患をみない.現症:ロ囲全体にわたり,著明な枇糠
様鱗屑を附着する禰漫性軽度潮紅局面か存在.境界は明
確で,下は碩部に達し,上は鼻孔部に多少入りこんでい
るが粘膜移行部にとどまる.多少の癈律を訴え,リンパ
ところが昭和37年末より38年前半にかけて,われわれの
病院では10例あまりの顕症梅毒患者を治療したが,これ
らはいずれも一般社会の女性から感染している.その後
各駐とん地医官の協力により顕症梅毒患者は著しく減少
し,われわれの外来を訪れる者は再び稀となっている.
しかしながら,一般女性から感染した顕症梅毒の自衛官
が各地の大病院を訪れることは少なくないと思うので,
その折には諸先生方によろしくお願い致したいと思う.
なお一般国民の顕症梅毒は開業医等で適当に治療されて
しまうが,自衛官は真面目に大学病院あるいは大病院を
訪れるために,諸先生方の目に触れる機会が多いのでは
腺は左顎下腺が1コ大豆大に腫脹している程度である.
検査成績z培養上検出されたものは,
pedis Ota
Trichophyton
と思われ,目下検索中である.
討 論
が増加しているとは考えていない.
Dr.
Lobit! : アメリカでも梅毒は最近増加を示して
いて,われわれの注目を’ひいているが,特にこういう初
石橋 明.:はじめTrichophyton
れたが,同定により,
ないかと思う.従ってわれわれは自衛官にのみ顕症梅毒
Trichophyton
pedis Otaかと思わ
期の梅毒が10代の人達と同性愛の人達の間に多い.そし
mentagrophytes
てこういう人達がなかなか医者を訪れないこととと,こ
と決定された.
れから10年もした後娯晩期梅毒がこの世代の人達の間に
スポロトリコーシスの1例 溝口周策,堀 敬吾(専
出ることを考えると困ったことと思う.
売病院)
植皮片にみられた異型巨大メラノサイト 高瀬吉雄,
16才,男子,千葉県在住.約1年前から左頬に発疹を
渡辺規矩夫(信大)
昭和39年9月20日
表皮内jラノサイトが各種条件下においていかなる形
539
サイトヘの“分泌”を行なわず,ドーパは正常か弱い反
ミ態学的,組織学的変化をたどるかはメラユン学の最近の
応であり,4)その周辺に健常タラノサイトを認めず,
重要問題の1つとなっている.もちろんyラノサイトは
5)樹枝状突起は往々遊離し,6)逆には胞体自体が破
薦外線,レ線照射によりドーパ反応かより強度になり,
壊し,jラノサイト数が減少する.光線エネルギー,創
・樹枝状突起がより延長し,その近接ケラチノサイトはか
傷治癒過程にみる一時的肥大したもーのとは異なる.
くして生成されたyラニソ穎粒をより多く含有するよう
池田重雄(東大):私が警察病院にいた時skin
・になる.このような変化の多くは可逆性の,いわば生理
pairとmelanisationについて少し仕事をしたことがあ
齢動揺範囲内にとどまる変化である.しかし特殊条件下
る. その際早期ではregenerated
では,たとえば長期日光照射は非可逆性の,生理的動揺
の2倍大の巨大jラノfイト(ドーパ強陽性)が毛嚢性
:範囲を越えた,殆ど永久的な形態学的,組織学的変化を
に多数認められ,マルビギー細胞内タラニソは認められ
メラノサイトに生ぜしめるとの二,三の報告がある.い
ない.晩期では巨大jラノサイトは正常大となり,周囲
epidermis
re-
内に,正常
ずれにせよかかる永久的なjラノサイトの変化は紫外線
のマルピギー綱胞内にjラエソがみられるようになる.
やレ線照射によってのみ生ずると報告されており,その
従って巨大メラノサイトが破壊されていく過程のものと
ー他の条件下での発生報告に未だ接しない.今回われわれ
いいきるのはいささか無理があるようである.
は21才女子の左膝腫瘍の蛮縮性痘痕部に中間層自家皮膚
吉田良夫(東北大)zこのような異型巨大jラノサイ
丿移植を行ない,一部植皮部に壊死性変化を生じたため46
トは種々の条件下で観察される.その意義にっいては今
日後に再移植を行なう際切除せる旧植皮片内に異型巨大
後の検索を要しよう.
ノラノサイトを相当数認めえたのでここに供覧する.在
皮膚の酸化酵素に関する組織化学的並びに電顕組織化
:来皮膚と移植皮膚との接合部の組織所見で,在来皮膚で
学的研究 野口義圀(横市大)
,は明澄細胞がよく認められ,その大きさもほぼ正常であ
皮膚におけるrespiratory
る.しかるに移植皮膚では明澄細胞は殆ど見えず樹枝状
する若干のoxidative
突起は延長した多極性構造を示した.メチレン青染色で
びに電顕組織化学的に研究したよ材料として人並びに
4よ,在来皮膚はケラチノサイトがよくメラこyを含んで
いるカ;,移植皮膚では大型樹枝状細胞以外の細胞にはj
chain乃至電子伝達系に関
enzymes
につき,組織化学的並
マウス皮膚を用い,約14μの criostat
cytochrome
oxidase (Burstone
section として
method, couplerとし
ラユソは認められない.ドーパ反応では在来皮膚は基底
て8amino
=部にほぼ正常間隔を保っドーパ陽性細胞を認める.移植
nate dehydrogenase (以下dehydrogenaseをDHと略),
1・ 2 べ
片では前記樹枝状細胞はドーパ陰性である.移植部のz
DPN又はTPN
−ラノサイトはドーパ陰性,しかも樹枝状突起が著しく延
DPN又はTPN
linked isocitrate DH(Nitro-BT法),
長し,或いは樹枝状突起末端が著明に球状に膨隆して,
DPN又はTPN
いわゆるエンドボタンを形成し,或しは双極型であり,
法)の各活性を検索した.一般に汗腺(人の場合のみ),
linked ma late DH
(Nitro-BT法),
diaphorase (Nitro-BT法並びにMTT
或いは樹枝状突起が細胞体より遊離し,更にはマルピギ
腺脂,毛嚢,表皮の順に活性を認めたが,それぞれの分
ー層商位に位置する等の種々の変形を認めた/かかる異
化過程のみならず同一標木内においても可成りの差が認
型タラノサイトを認めたすぐ近接の化膿性,壊死性変化
められた.これらを更にくわしく検討すると阪大橋本の
部のドーパ標本では,正常及び異型jラノサイトは共に
い5基底層型と表層型に大別出来るように思われた.即
認められないし,ケラチノサイト内にもjラこソを認め
‥えなかった.紫外線,レ線照射以外にも本例の如き特殊
な条件下ではやはり異型タラノサイトが出現することは
ちcytochrome
oxidase. succinate DH,
isocitrate DH, DPN
linked malate
diaphoraseは前者に,
TPN。linked
DH
DPN
linked
並びにDPN。
isocitrate DH, T
・興味が深い.
討 論
高瀬吉雄(信太):異型巨大タラノサイトとは次の条
一件のものを指す.1)表皮内で基底層のみならず,より
PN
linked malate
DH
並びにTPN
diaphorase
は後
者におおむね一致す乙活性を示した.ただし人の場合に
はDPN
linked malate
DH
は表層型であった.これ
高位にもみられ,2)延長した樹枝状突起を多数有し,
らを細胞レベルで観察すると,いずれの活性もcytopla-
iプ3)モの終端はエソドボタソ状で,jラニンのケラチノ
smaに限局して認められた.そこで更に電顕組織化学
540
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第9号
的に追求したところ,−マウス表皮細胞の cytochrome
を示しているが,マウスは成熟したものか,また人体皮
oxidase (Burstone
膚は成人皮膚か.われわれは人胎児について3ヵ月から
method, uranylacetat post-chilat-
ion併用),succinate DH (Nitro-BT法)並びに DPN
7ヵ月のものをみているが,諸種酵素活性は7ヵ月にな
diaphorase (Nitro-BT法)各活性は電子濃度の密な顕
ると成人皮膚のそれに近くなる.しかし胎児の時にみら
粒又は結晶としてmitochondria中,特にmembrane
れて成人ではみられぬ酵素活性もあり,このあたりが皮
又はcristaに限局して認められた.
膚発育過程の代謝の相違をさぐる手がかりになろうかと
討 論
恩う.
三浦祐晶(北大):‘・ウスと人体皮膚で活性の所在
東北地方会第157回例会
座長 高橋吉定教授(東北大)
(昭和37年2月18日 於東北大)
一般演題
対する有効率63%であった,いわゆる神経皮膚症に属す
皮膚疾患における尿中17・KSについて(第一報) 橋
る疾患18症例に対する有効率が78%であったことは,こ
本 功(弘大)
れらの病因的観点から見て注目された.副作用は1例に
健康人529例,皮膚疾患149例の尿中17-KS値を
のみ軽度のねむ気がみられ,他のトラソキライザーの副
Drekter一岸本変法により測定し,健康人平均値として男
作用発現率に比して著しく低率であった.癈禅に対し
8.07±4. 68mg/day,女5.82±2.
て,その精神的素因を解消すると共に止岸効果を生むこ
87mg/day.を得,年令
的に,男は30才台,女は20才台でピークを示し,季節的変 ・
とが期待される.
動は著明でない.皮膚疾患では患者は健康人よりも男
シーズン錠による尋常性痙庸の治験 黒沢誠一郎,村
は女よりも高値を示し,年令的変動が激しく,季節的に
上隆一(岩医大)
春から夏に高値をとる.疾患群別で高値を示したものは
尋常性痘癒患者25例(17才∼33才,男性2例,女性23
毛髪疾患,膿皮症,皮膚腺分泌異常症であった.各種検
例)に対するシーズン錠による治療を試みた結果につい
査成績との関係では尿量,好酸球数,リンパ球数,血清
て報告する.投与方法は1日2錠,2回分服とし,これ
総脂質とは順相関の傾向,赤沈,血清蛋白,好中球数と
を1乃至7ヵ月にわたって連用せしめた.本剤による治
は逆相関の傾向にあり,体重,ゾーン試験,血糖.血圧
療成績は著効8例(32%),有効11例(44%),やや有効3
とは相関が認められず,各種肝腎機能障碍例,血清梅毒
例(12%),無効3例(12%)にして25例中22例(88%)
反応陽性例では低値をとる傾向が窺われた.各種薬剤投
に効果が認められた.本剤による所期の効果を達成する
与前後の変動では,増加傾向を示したものはSH製剤,
ためには1ヵ月以上の長期連用を必要とするもののごと
ピタミソ剤,男性ホルモソ,低値傾向を示したものはサ
くである.副作用は1例も゛認めなかった.
リチル酸剤,抗生物質,利尿剤であった.
膿皮症の治療について 中山靖佐,小松昭文(仙台鉄
Contol
(Chlordiazepoxide)による皮膚疾患の治験
鳥羽 靖(福医大)
神経皮膚炎9例,皮膚癈禅症7例,べこエー禅疹6
例,急性湿疹4例,慢性湿疹4例,慢性募麻疹2例,急
性尊麻疹,急性腺疹,結節性禅疹,ジベル氏薔薇色枇糠
道)
膿皮症(≪39例,癩2例,毛包炎9例,尋常性痙癒2
例)52例に5%シノミソ親水軟膏とシノミソ内服とを併
用し87.3%の有効な結果を得た.
光線過敏性皮膚疾患について(第1報) 菅原光雄,
疹,尋常性痙癒,枇糠性脱毛症,汗庖状白痴,知覚異常
太斎公男,土井三乙,山田 匡(弘大)
性皮膚疼痛症各1例の14病類,40症例に使用し.癈標に
最近3年間に当科を訪れた光線過敏性皮膚疾患(日光
昭和39年9月20日
541
性湿疹,酒鼓,アリボフラピノージス,ペラグラ,種痘
様水庖症,エリテマトーデス,色素性乾皮症)は計134
例で同年間の新来患者総数の2.66%に当たる.個々の疾
患毎に症例数をみても,この年間でぼぽ立った変動を認
めないが,昭和25年の場合に比較すると日光性湿疹の増
加が目立っている.これら疾患では血中こコチソ酸,ピ
タミソB2の共に低値を示すものが高率にみられたが,日
光性湿疹,色素性乾皮症では両者の関係は必ずしも並行
せず,又酒鼓で血中ATP,無機燐がといこ著明な低値
を示すのに対して,エリテマトーデスではむしろ高値の
ものが多い.人工水銀石英燈(2536Å∼4358Å)照射試
験を行ないエリテマトーデス,アリボフラビノージス,
酒雖なとでは健康人対照に比し感受性が充進しており,
皮膚の変化は照射後24時間が48時間後より明らかに大で
幼少時より躯幹.四肢に色素斑あり,10才頃から躯幹に
腫瘤の発生を認め次第に数を増してきた.なお幼少時よ
り変視の訴えあり,網膜剥離の診断で手術をくり返して
いる.殆ど全身に米粒大から小豆大の褐色斑が播種状に
無数に存在し,大なる色素斑は鶏卵大卒達し,いわゆる
caf6 au lait spotである.米粒天から指頭大の腫瘤が全
身にみられ大部分社軟かい.組織学的に腫瘤はneurofibromaの像を呈していた.
レックリングハウゼン病 高橋吉定(東北大)
14才,男.血族結婚なく,家族内に同症を認めない.
生来腰部に色素斑あり,次第に躯幹,大腿にも色素斑発
生.7才頃から左上下肢の運動障碍あり,同じ頃左上眼
瞼に腫瘤発生した.昭和35年頃から左腰部にも腫瘤発
生.昭和35年3月頚椎部脊髄より生じたNeurofibrom
を脊椎弓切除術を行ない摘除した,顔面左上眼瞼に栂指
あった.
皮膚のカテコールアミンの組織化学 黒崎嘉文(福医
頭大,左腰部に鳩卵大,臍上方に栂指頭大の半球状乃至
わずかに盛り上つだ柔軟な腫瘤がある.頚部,躯幹,大
大)
腿に点状乃至小豆大,大なるものは手挙大の円形,卵
Weber-Christian病 高橋伸也,福士 尭,相良純
正(東北大)
けて軽度の脊椎側弩を認める,腫瘤の組織所見は定型的
日皮会誌,
72, 597,1962参照.
患者供覧
Alopecia
形,不正形の褐色調斑を多数認める.頚椎より胸椎にか
Diffusa
愛川篤信(東北大長町分院)
26才,女,既婚.挙子1,流早産なし.昭和22年12月
(14才時)角膜実質炎,ワッセルマソ反応陽性で約1年
にわたり駆梅療法をうけた.昭和24年眼科所見良好とな
ったが,ワッセルフソ反応なお強陽性のためにNNA,
bismuth,ベニシリソにより治療した.昭和36年1月初
めに前頭部より始まる脱毛を認めた.現在ワッセルマソ
反応(+).
討 論
なNeurofibromり像を示した.
レツクリングハウゼン病 高橋吉定(東北大)
32才,女.父に同症あり.幼少の頃より主として躯幹
に散在性小色素斑あり思春期頃より同部に小腫瘤を生じ
次第に顔面,四肢に及んだ.手,足及び頭部を除く全身
に半米粒天から鶏卵大迄の弾性軟な腫瘤あり,特に背腰
部に密に分布している.腫瘤は皮下に存するもの,懸垂
状のもの,半球状にもり上るもの等多様である.躯幹,
頚部,上肢の一部に雀卵斑様小褐色斑が密に分布する
他,躯幹にいわゆるcaf6
au lait spotを見る.先天性
左股関節脱臼および脊柱側弩あおり,眼科的検査により
高橋吉定(東北大):梅毒とは無関係のようだ. コノレ
虹彩に数=・の小結節,脱色素斑,萎縮を認めた.食道内
チコステロイドによる治療はど5だろう.
腔にも数コの腫瘤が確認された.
診断例 宮沢慎二(仙台逓信)
汎発性疵贅症 高橋吉定(東北大)
32才,女.2ヵ月前より右足内縁に癈捺性小水庖性局
約10年前,手背,足背に疵贅様腫瘍発生し,以後次第
面発生,漸次角化,皺裂をみる.抗白癖剤を外用するも
に数を増し前腕,下腿.大腿,項部にも及んできた.自I
無効であったとい5.2週間前より両前鱒屈側に丘疹性
覚症状は全くない.発疹は殆ど全身に及ぶが,特に手
水庖性皮疹か発生した.白癖菌検鏡陰性,境界線無効.
背,前腕,項に著明.個疹は半米粒大乃至碗豆大り丘疹
討 論
で,散在又は融合して局面を形成する.大部分のものは
高橋吉定(東北大):水庖性,角化性病巣は白癖を考
淡紅色であるが項部のものは褐色調が強い.表面は概ね
えねばならないだろう.
平滑あるいはやや乳嘴状であるが,手背のものは粗錨で
レックリングハウゼン病 大沼秀雄(仙台市立)
ある.組織学的に角質増殖,穎粒層および有韓層上層細
23才,男.祖父,母,叔母2人,兄に同症を認める.
胞の空泡変性が主で,細胞の大小不同,巨細胞,異常亀
542
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第9号
化等はみられない.
よび頬部に小紅斑発生し,次第に大いさを増し更に融合
血管性多彩皮膚萎縮症 高橋吉定(東北大)
して3つの局面を形成し,黒褐色の色調が次第に強くた
37才,男.満1才時種痘後消化不良症に罹患したがそ
った.両上顎部,左頬部に境界鮮明な3つの局面がある
の頃より腰部に大豆大黒色痴皮様のものを生じ,次第に
. 大いさは鳩卵大乃至栂指頭大で辺縁は連圏状をなし
この部より色素沈着,脱色素斑の混在した変化が腰背部
中心部は黒褐色の色素沈着が強くやや陥凹して萎縮をみ
に拡大した.6才頃一部に潰瘍発生し12才頃まで続い
とめ鱗屑を固着す.辺縁部には軽度の発赤を認める.一
た.昭和36年11月に再び腰部に潰瘍が発生し来院した,
般検査成績に異常なく,光線過敏性も認められない.組
背腰部の主として右側の皮膚は一体にやや非薄となり,
織学的に定型的レ
ここに細血管拡張,網状をなす褐色色素斑および脱色素
スライド供覧
斑乃至萎縮斑が混在している.腰部やや右寄りに鳩卵大
膠状稗粒腫の1例 帷子康雄(弘大)
円形の潰瘍あり,辺縁は硬くやや隆起し,中央部は黄白
42才,農婦,6∼7年前から両側観骨部,内皆部に粟
色膿苔に被われている.胸廓の発育は右側やや劣り,左
粒大,黄色の小結節が多発集銕した.自覚症状はない.
方尖の脊椎側弩をみとめる.筋の変化なし.組織学的に
穿刺により該結節よりゼリー状物質が排出される.組織
表皮の萎縮著明で,色素の部分的増加及び減少がみら
学的にはHE染色で真皮上層に淡紅色均質の物質が集塊
れ,真皮上層の血管拡張をみるが,潰瘍部に悪性化像は
状にみられ,トルイジン青でタタクロフジーを示さず,
みられない.
ムチカルミン染色も陰性であり,周辺の結合織は一部ネ
Nodular
Vasculitis ? 高橋吉定(東北大)
クロビオーゼに陥っている. ゛
33才,男.昭和36年6月頃,両大腿内側に鈍痛あり,
毛孔性紅色枇糠疹の1例 帷子康雄(弘大)
線状の発赤を認め,圧痛,歩行時痛あり.同年11月頃よ
24才,男.5年前から左警部から大腿内側,足関節部
り両下腿に結節状の発赤腫脹を生じ疼痛を訴えた.かか
に米粒大,表面扁平の赤色丘疹生じ,白色鱗屑を被る.
る発疹は一進一退のまま現在にいたっている.両側大腿
一見lichen
下部から下腿,足背にかけて碗豆大から扁豆大の発赤と
に著明な角質増殖の間に不全角化か部分的にみられ,軽
皮下結節が多数認められ,大腿においては,索状,念珠
度のアカソトーゼ,乳頭延長があり,乳頭層では周囲性
状に認められる.圧痛強く,いずれも皮膚面よりやや隆起
小円形細胞浸潤が認められ,
している,−マントウ反応強陽性,赤沈1時間値2皿,血
に一致する所見がえられた.
清梅毒反応陰性,ASLO反応80単位以下.組織学的所
汎発性鷺皮症 帷子康雄(弘大)
見:初期においては真皮下層から皮下脂肪上層にわたり
36才,女.3年前から右第2指次いで肩の皮膚が浮腫
多数の小血管が見られる.その管腔拡大して赤血球を充
状に硬くなって来た.1年前からは顔面,頚部,上賢,
満し,その壁は概ね1層,少数においてはやや厚い.血
背部に.も拡がり,色素沈着と色素脱失のために網一目状と
管周囲には極めて軽度の浸潤あり,このものは組織球と
なっている.組織学的には表皮萎縮,乳頭体扁平化,乳
リンパ球から成る.真皮皮下層境界部には大きな血管が
頭層に軽度の周囲性細胞浸潤あり,膠原線維の膨化,均
見られ,その全壁にわたりやや均質化を生じ,処々に空
質化が認められる.トルコ鞍レ線像は狭少となっている
ruber
のような外観であったが.組織学的
pityriasis rubra
pilaris
泡形成あり,主に組織球軽度に浸潤,管腔狭小となるも
が,1131摂取試験,脳波などは正常であった.
血管周囲の浸潤は僅少.進展した時期においては真皮下
討 論
層から脂肪織上層にわたり禰漫性のかなり賀密な浸潤が
秋元典昭(東北大):食道に変化はなかったか?
主要所見を示す.浸潤は組織球,リンパ球,線維芽細胞
帷子康雄:あった.食道狭窄で目下内科にて検査中で
を主とし,少数の好中球,形質細胞を混じ,小出血あ
ある.
り,処々に類上皮細胞の小集団あり,異物型巨細胞之散
飯島 進(福医大)z血清ATPの意義はどうか.
点する.かかる浸潤内に初期におけるよりは少数である
帷子康雄1今のところ特に認められない.
が,なお多くの同様の小血管が存する.皮下組織におい
種痘様水庖症 黒沢誠一郎(岩医大)
てはI中隔に上記の変化を見,その結合織は増大する.
12才,女.顔面に多発する紅斑,小水庖,及び黒色の
慢性円板状エリテマトーデス 高橋吉定(東北大)
痴皮を主訴として昭和34年4月9日来院.家族に同病な
34才,女子.昭和30年夏,妊娠5ヵ月頃に両上顎部・お
く,血族結婚も否定している.発病時期は詳らかではな
昭和39年9月20日
543
いが,幼少の頃から春秋の候に顔面に紅斑が多発し.次
昭和31年生れの女児.昭和34年右上肢に径約2cmの円
いで小水庖と黒色の痴皮を形成した.自覚的にはそのっ
形の境界不鮮明な皮表に光沢を有する病巣2コを生じ
と,軽度の灼熱感を認めたという.診するに顔面特に上
た.硬度の異常はない.昭和37年再診時には,右肩甲部
眼瞼,頬部,鼻唇溝部に,ほぼ左右対称性に米粒大乃至
から前腕仲側にかけ,境界不鮮明な褐色色素沈着,路屑
小豆大の褐紅色斑と黒色の痴皮とが多数散在性に認めら
を呈し,恵肢径は健側より小で,皮膚は薄く軟らかであ
れた.黒色を呈する痴皮の一部には,その中央が陥凹
る.知覚,運動は正常.膠原線維,弾力線維の異常を見
して臍寓形成を示すものもある.又これらの皮疹と同時
ず,脂肪織の減少がある.皮膚萎縮症及び脂肪織病変で
に,円形或いは,不整形の癈痕性小萎縮斑も多数混在し
該当するものなく,極めて軽度の蒙皮症を考慮した.
ていた.尿中ポルンイリソと梅毒血清反応はともに陰性
皮膚筋炎 飯島 進(福医大)
であった.
28才,男子.5年前から顔面の浮腫性腫脹と顔面,頭
慢性遊走性紅斑 黒沢誠一郎(岩医大)
部,躯幹上部の多発性の膿庖を訴える.その他不規則な
58才,男.躯幹と上勝における環状紅斑を主訴として
発熱,重視,厦声があるが全身症状はよい.血液像,赤
昭和36年11月7日に来院した.患者の皮疹は16年前,汲
沈値,血清蛋白に異常はない.血清及び尿クレアチン増
刺整に苦しんだ頃,始め爪甲大の紅斑として発現し徐々
加がある.筋症状は自他覚的に殆どないが,三角筋のバ
娯遠心性に拡大したが,4∼5年の経過のうちに自然に
イオプシーで筋炎が認められた.
硝槌したものもある.自覚的には稀に軽度の癈嫁があ
色素性乾皮症 飯島 進(福医大)
る.診するに,右側胸部,脊柱左側,腹部,左蝋径部,
8才,男児.両親はまたいとこ結婚.同胞4人中姉1
左上荷において5コの環状紅斑を認めた.最も顕著な紅
人に同病あり,2才の頃から顔面に色素斑多発し,一部
:斑は臍を中心として腹部にあり,これは7年前に初発し
は沈状の小腫瘍となる.現在,小鶏卵大の腫瘤1コを呈
現在巾3∼4皿の軽度堤防状に隆起した褐紅色斑が環状
する.この組織像は色素沈着をともなう扁平表皮癌か,
・に存在する.その直径は82χ52皿に達し,紅斑部には軽
黒色腫かの判定困難であった.尿中ウロポルフイリソ1
度の枇糠様鱗屑を認めるが中心部り皮膚は正常である.
回陽性,短波長紫外線に過敏性が謬められた.
なお,8∼9年前に生じた左上興部の環状紅斑は3∼4
女子頑癖の2例 宮沢慎二(仙台逓信)
牟前から,すでに極色の傾向を示しつつある,
診断例 宮沢偵二(仙台逓信)
討 論
いわゆるHair
高橋吉定(東北大):項部に発生し,一年程で手掌大
Keratoacanthoma 田中 正(山形市立)
Jこなった例を見たが,この例は1年ではどの程度に大き
河水浴後白斑 田中 正(山形市立)
くなったか.
Casts症例 田中 正(山形市立)
毛孔性紅色枇糠疹 谷田津奈男(青森県立中央)
黒沢誠一郎z大体鶏卵大までであった.
汎発性庖疹 谷田津奈男(青森県立中央)
皮膚萎縮 飯島 進(福医大)
東北地方会第158回例会
座長 佐藤三郎教授(東北大抗酸菌研究所)
(昭和37年5月13 H,於東北新生園)
一般演題
79例の熱傷について,年令別,原因別,受傷程度,受傷
゛本年冬に経験した熱傷について 中山靖佐,小松昭文
部位について考察し,併せて熱傷の治療について論じ
く仙台鉄道)
た.なおこの冬り熱傷患者72例中約半数の32例(43.8
。昭和36年12月より昭和37年3月までの期間に経験・した
%)が豆炭アソカに起因しでいる点に興味があった.
544
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第9号
キャベジン軟膏の使用経験 土井三乙,針生敬三,石
宮沢質二り
戸谷哲一(弘大)
最近の梅毒について 帷子康雄,山田 進(弘大)
キャペジン・コーワ軟膏を各種疾患及び各種原因によ
過去15年間に約10万人について行なった当院中央臨床
るびらん,潰瘍,びらん十潰瘍,皺裂の81例に使用し次
宜における血清梅毒反応の陽性率は,
の結果を得た.1)全体として著効32例,有効33例,や
間では13.1%,
や有効7例,無効6例,悪化3例であった.2)対象病
のそれは6.0%であった.最近3年間におけるそれを各
巣別にはびらん39例中32例,潰瘍22例中21例,びらん十
科別にみると,皮膚科の13.9%,眼科の10%,放射線科
潰瘍10例中全例,皺裂10例中9例に有効であった.3)
の9%等が上位を占め,産婦人科,小児科のそれは極め
治癒した55例の平均治療日数はびらん6.2±4.4日,潰
て低率であった.当科におけるこの3年間の梅毒患者
瘍6.2±8.7H.,
tt裂5.8±6.813,びらん十潰瘍10.・8
1947∼1951の5年
1952∼1956のそれは5.7%,
1957∼1962
は,男女各々23名で,初期及び2期顕症梅毒はなく,大
±5.2Hであった.又部位別の治療日数には差は見られ
一部分は後期潜伏梅毒であった.職業別では家庭の主婦が
なかった,
30%を占めていた.これら患者についてペニシリy,マ
当教室における皮膚癌症例 渡辺利夫,柿沼 豊(福
医大)
1951年4月より,
フフルソール或いはエリスロマイシン療法後の抗体価り
変動について述ぺた.なお定性的血清梅毒反応の陽性の
1962年3月までの11年間における当
強度と抗体価の関係にっいても検討を行なった.
教室皮膚科における皮膚癌症例は,原発性22例(男17,
老人に見られた黒色上皮腫の2例 伊崎正勝,村上隆
女5),転移性4例(男3,女1)で皮膚科新患者に対す
一(岩医大)
る頻度は,前者が0. 06%,後者が0.01で全体として0.07
Leukaemische
%であった.組織学的に原発性癌中,鯨細胞癌19例,基
橋伸也,福士尭,相良純正(東北大)
Reticuloendotheliose
l 剖検例 高
底細胞癌3例で,後者のうち,2例は色素性基底細胞癌
47才,男.初診:昭和36年9月7日.昭和36年6月4
であった.原因別にみて,原発性癌中火傷巌痕3,色素
日より38°C∼40°Cの発熱あり,同月20日に左腰部に鶏卵
性乾皮症2,レソトゲソ皮膚炎2,尋常性狼癒1,その
大腫瘤に気づく.同月30日下熱.同年7月下旬以降漸次
他4,不明11例であり,転移性癌の原発巣は,胃癌2,
胸部,背部,乳房,`腹部,耳下腺部において鶏卵大まで
前立腺癌1,乳癌1であった.平均発癌年令は,原発性
の腫`瘤の新生をみた.同年8月下旬に大小の紅斑が,全
のもの51才,全体として52才であった(2才より78才ま・
身性に現われた.現症s両耳下腺,両乳房,胸部,腹部,
で).初発部位は顔面H,頭部l,躯幹3,上肢1,下肢
背部,腰部において,指頭大から鶏卵大までの半球状
3,外陰部3であった.原発性の予後ぽ,健在10,死亡
に隆起し,弾性硬.皮膚と癒着した大小の腫瘤数十コを
3,不明9であった.
みた.又全身性に不規則な紅斑がみられた.検査成績;
凍癒における二,三の問題 宮沢偵二(仙台逓信)
赤血球数230∼394万,白血球数1,100∼5,000.末梢
凍療とエリテマトーデスの組織学的鑑別点は.パラケ
血液像で網内系細胞54%,骨髄像で網内系細胞65∼91
トラーゼ,表皮突起延長,乳頭層浮腫,乳頭層の梶棒形
%.皮膚組織所見:真皮中層から皮下脂肪組織に及ぶ広
拡張,結蹄組織及び血管壁変性等の有無におかれるぺぎ
汎且つ禰漫性の網内系細胞の浸潤像をみた.細胞は大小
である.又燐酸タロロキソは凍雍特に結節型,多形浸出
2種あり,又核の有糸分裂を示すものもあった.鍍銀
性紅斑型に対して極めて良く奏効し,この点もエリテマ
染色で,銀線維の増殖をみた.経過:
トーデスとめ鑑別に役立つものと考える.エリテマトー
注,デキサjサソy投与,輸血等を行なったが効なく,
デスが凍癒に続発するという考えには賛成できない.
同年10月7日死亡.病理解剖所見:各所の淋巴腺が鶏卵
討 論
大までに無数に腫脹し,それは網内系細胞の浸潤による
Chromomycin-A
吉田良夫(東北大):臨床的にエリテマトーデスか凍
ものであった.その他各臓器において屯,著明な網内系
癒か鑑別に苦しむことが度々ある.臨床的に鑑別の困難
細胞の浸潤がみられた.
な時には組織学的にも鑑別が難かしいと思う.
患者供覧
宮沢質二:組織所見は診断の有力な参考となる.
癩性禿頭 上川 豊(東北新生園)
菅原光雄(弘大)ご燐酸クロロキンの奏効機序に,つtヽ
本症はわが国では癩腫癩の大多数例に発来し,男性
てはとうぉ考えか.
(80%)では女性(70%)よりも多発し,眉毛が早期に脱
545
昭和39年9月20日
落し次で鹿毛,頭髪に及ぷ.供覧の症例は殆と・全頭部の
れても組織学的に悪性像を示すこともあるから切除後必
禿頭であるが,その両側頭から頭頂部に樹枝状に毛髪か
ず精査を必要とする.本症例の標本を1枚みせて戴いた
遺残し,該部を触診すると側頭動脈の傅動を感ずる.即
が,それはボーエソ氏病ないし練細胞癌の像.を示し,少
ち脈管の走行に一致して毛髪の遺残を見る.なお本症は
なくとも悪性黒色腫の所見は認められなかった.
南洋,印度など諸外国では発生率が非常に低く2∼3%
プリングル氏母斑症 菅原光雄(弘大)
と報告されている.
16才,女.約3年前,頬部に米粒大の赤い丘疹が孤立
癩性結節性紅斑 馬鴫四郎(東北新生園)
性に数個発生し.次第に増加して現在では額を除く殆ど
癩性結節性紅斑は結節癩患者が治療を始めて0.5∼1
顔面全般に点状集銕し油ぎつてきた.碩部皮疹よりの組
年位すぎる頃に顔面,四肢などに発生する硬結性の紅斑
織標本では隆起部の表皮は周辺に比し非薄となり,著明
で時には丹毒様を呈し,有痛有熱性の一種のアレルギー
に増殖せる毛包及び皮脂腺を認める.真皮の結合織は疎
反応であろうといわれている.予後は必ずしも悪くはな
で,血管周囲性円形細胞浸潤が相当度にみられる.な
いが,時には1ヵ月間に数回発生し,又数年にわたって
お,高速度グラインダーにより研磨し頬部は皮疹を相当
くり返し発生する場合もある.普通は数日から10数日で
度減少せしめ得た.また,本例では血清コレステロール
軽快する.供覧の3名中1名は治療4ヵ月目,1名は1
が異常高値を示した.
年目,1名は2年目に発生した.
皮膚腫瘍の2例 菅原光雄(弘大)
足穿孔症のレ線血管撮影 河内捨次郎(東北新生園)
1)
癩性足穿孔症のレ線血管像を分類すると l)蛇行
大の腫瘤が発生したが自覚症状なきまま放置した.初診
像,2)閉塞像,3)狭窄像,4)痙李像.5)浸出
の2,3日前より急に大きくなり,右乳嘴下縁に超栂指
像.組織学的には血管壁の肥厚変性,弾力線維の不正形
頭大の表面嚢腫様の腫瘤が有茎性にぶら下ってきた.切
消失,内皮細胞中に癩菌陽性等を認める.よって足穿孔
除,根茎部の電気凝固を行なったが,組織学的には線維
症は 1)知覚麻庫部における血管運動神経作用の不均
腫の像で,一部に硝子様変性あり,また諸所に出血巣が
衡,すなわち収縮作用の拡張作用より優位,2)癩性血
見られた. 2)
20才,女.約5年前,誘因なく右乳嘴下縁に碗豆
23才,男.約5年前,左側腰部に小指頭
管炎,3)起立時の体重負荷.以上3因子により難治性
大の固い腫瘤があるのに気づき放置していたが,3年程
を示すものと思われる.
前より徐々に増大し,現在では鳩卵大の固い有茎状の腫
スライド供覧
瘤となった.局麻の下に摘出したが,組織学的にMyxo-
一部に悪性化の見られた老人性色素斑および疵贅 菅
fibromの像を呈した.重量50g,
原光雄(弘大)
セロハンテープによる皮膚炎 中山靖佐,小松昭文
59才,男.10年程前より躯幹,四肢などに小色素斑及
(仙台鉄道)
び疵贅様丘疹が増加してきたが,4∼5年前より右大腿
22才,男.右手背に傷を生じたので,5日前にガーゼ
に貨幣大の黒い潰瘍が出来,烈しい疼痛がある.潰瘍端
.を固定するためにセロハソテープで固定し,2日開放置
の組織標本では著明な腫瘤状増殖があり,腫瘍細胞は異
しておいたところ,1日目より癈嫁を訴え発赤水庖を生
形性強く,
じた.ノタソロソ軟膏1日2回塗布せしめたところ3日
Mitoseもみられ,色素をもったものが多
6χ4χ3.5cm.
い.他臓器の転移は目下のところみられない.病巣切除
にして発赤消槌し丘疹も非常に?`した. 7§
器丿
後放射性●バルト照射を行なった.腫瘍細胞はドーパ反
第2期梅毒疹 宮沢
応陽性のものが多数みら和るが,組織所見を綜合すれ
初診は昭和37年3月13日.36年7月感染機会あり,約
ば,悪性黒色腫とは断言し得ず,有籾細胞癌の極く初期
1ヵ月後冠状溝に無痛性潰瘍発生,当時ペニシリソ60万
像とするのが妥当と思われる.
4回注射.本年1月顔面にバラ疹様発疹あらわれる.初
討 論
診時所見は大丘疹形梅毒疹が頚部,大腿内側にあらわ
嶋 多門(弘大)=老人性色素斑,その他の前癌性と
れ,ロ唇にはplaques
,
muqueuses
として,亀頭,冠状
考えられない老人性皮膚病変の切除または外力を加える
こと等によって悪性黒色腫や癌性変化を生ずる危険性は
には扁平コンジロームとしてあらわれた.ワ氏反応強陽
ないか.
性(冊),緒方法640.プロピオン酸エリスローイシソ内
吉田良夫(東北大)z良性のものを切除して悪性化ず
服により1ヵ月後ワ氏反応(併),緒方法320.目下経過
ることはまずないと考える.しかし臨床的に良性と思わ
観察中.
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第9号
固定疹2例 吉田良夫(東北大)
前には陥凹して乳房の変形を来たした.3年前に左胸部
1)
に指頭大程度の硬い腫瘤を数=・生じ次第に数を増してき
21才,女,昭和36年5月スルピリソ注,グレナイト
内服により全身に指頭大までの紅斑発生,同年11月不明
た.本年2月右側下顎部の発赤腫脹発熱を来たし来院.
の注射をうけたところ全身に鶏卵大までの紅斑発生し,
所見は,下口唇から下顎右側にわたり手挙大暗紅色の腫
掻禅を訴え,色素沈着を残して治癒した.本年2月まで
脹あり膿汁排出あり.左乳房は全く形を止めず,左前胸
さらに2回感冒薬内服後同部に発赤,座禅がおこった.
部,背部に拘指頭大から鶏卵大の暗紅色の硬い結節を10
初診時胸部,肩甲部,大腿前面上方,及び喬部に貨幣大
数コ散在する.下顎部の腫脹はエリスロマイシン投与に
から鶏卵大に至る大小種々のほぼ円形の.中心部暗紫色
より急速に軽快した.胸腔穿刺により左肋膜腔より500
を呈する紅斑を多数認めた.スルピリソ,アミノピリ
ccの血性浸出液を排除したが,同液の検査にては癌細胞
ン,ブロバリン貼布試験は陰性,アミノピリン, スル
は検出し得なかった.
ピリソ内服試験陽性,との紅斑消槌後直ちに貼布試験を
水痘の成人例 吉田良夫(東北大`〉
行なったところ上記2剤で陽性.
16才,男子,高校生,患者の接する者に水痘や帯状庖
2)
29才,女.本年3
月ダイアジゾ錠内服,翌日全身に癈禅感あり,大小の円
疹のものはない.本年3月3日軽度の頭重感あり同月6
形紅斑を生じた.これと同時に口唇,舌の廉爛,排尿時
日腹部に紅斑及び小丘疹を生じ,軽度の雁雄感あり.発
痛あり.初診時躯幹,四肢の各所に貨幣大までの円形或
疹は躯幹,四肢に拡大し38°Cの発熱あり.入院時体温38
いは楕円形暗紫褐色の色素沈着を認めた.内服試験で
°C,掌勝を除く全身に紅彙を有する半米粒大から小豆大
は,ダイアジソ(Sulfadiazine),レダキソ(Sulfame-
の丘疹,小水庖,膿庖が混在し水庖の一部は中央に臍瘍
thoxypyridazine)で陽性,ド1アソ(Sulfisomidine),
を有し,又一部に痴皮形成をみとめた.入院第4病日
Irgafen, Sulfamine, *トファジソ(Sulfametnomizine),
7-グ・プリン6cc注射し翌日より下熱,発疹軽快した.
アプシード( Sulfadimethoxine)などは陰性であった.
Acanthosis
討 論
央)
Nigricans 谷田津奈男(青森県立中
宮沢偵ニ(仙台逓信):前後2回の貼布試験に差のあ
廠風 黒沢誠一郎(岩医大)
るのはいかに説明するか.
顔面播種状粟粒性狼庸 黒沢誠一郎(岩医大)
吉田良夫:種々のことか考えられるが,確定的なこと
ジユーリング庖疹状皮膚炎 黒沢誠一郎(岩医大)
は不明である.
良性黒色林細胞増殖症 黒崎嘉文(福医大)
転移性皮膚癌 吉田良夫(東北大)
スルピリン疹 黒崎嘉文(福医大)
76才,女.17∼8年前左乳房部にしこりを生じ7ぺ・8年
色素性薔薇疹 黒崎嘉文(福医大)