第1回インバウンドビジネスフォーラム 「巨大市場中国とインバウンドの

第1回インバウンドビジネスフォーラム
「巨大市場中国とインバウンドの可能性」
主催:ポータル・ジャパン株式会社
日時:7 月 8 日(木):14:00~18:00
場所:新宿区立四谷区民ホール
主催:ポータル・ジャパン株式会社
7 月 8 日、新宿区立四谷区民ホールにて、弊社主催の第1回インバウンドビジネスフォーラムが開
かれました。
中国市場が著しい変化を続けるなか、本フォーラムでは様々な業種でインバウンドビジネスの最
前線に立っておられる方々から最新の情報をお話しいただきました。
今後、この取り組みを推進していくため、様々な業種の方への情報発信、ビジネスネットワーク構
築の場として、年に 2 回開催(1 月、7 月)し、半年間のインバウンドにおける総括、及び、インバウ
ンド成功事例などの発信を行っていきます。
主賓挨拶に観光庁から国際交流推進課長の瓦林康人氏を向かえ、JNTO による上半期の総括、
基調講演、パネルディスカッションと多彩な内容でした。協賛企業には、ぴあ香港株式会社から中
村亞人社長がかけつけてくださり、現地の情報を披露していただきました。4 時間に渡るフォーラ
ムには 400 名を超える参加者が集まり、好評のうちに終わりました。
目次:
◆「Visit Japan Year2010 上半期総括及び中国市場の現状と展望」
長谷川保宏氏 (日本政府観光局海外プロモーション本部アジアグループ次長)
◆基調講演 「巨大市場中国とインバウンドの可能性」
徐向東氏 (株式会社中国市場戦略研究所 代表取締役)
◆パネルディスカッション
司会
:
パネリスト:
小林裕和氏(JTB GMT ツーリズム総合研究所 所長)
中村好明氏(株式会社ドン・キホーテ 社長室 ゼネラルマネージャー)
青木志郎氏(株式会社日本旅行 国際旅行事業部 アジア担当部長)
吉田真由美氏(株式会社ぐるなび 取締役)
◆「Visit Japan Year2010
上半期総括及び中国市場の現状と展望」
長谷川保宏氏
(日本政府観光局海外プロモーション本部アジア
グループ次長)
2010 年 5 月訪日外客数、対前年同月比 48.6%増加
今年 5 月の訪日外客数は 72 万 2 千人で、対前年同月比 48.6%の伸びを示しました。5 月時点の
累計では 352 万 4900 人で、推計値で前年比 32.0%の増加です。
昨年の新型インフルエンザの影響の反動もあり、今年の上半期は前年と比べて顕著に伸びてい
ます。5 月には中国、香港、カナダ、フランス、ドイツ、インドの 6 市場で同月の過去最高数値を記
録しています。
累計では中国からの訪日客が 60 万人と台湾より 9 万人強多く、このまま推移すれば、今年は中
国からの訪日外客が台湾を追い越して 2 位になる可能性が出てきました。
中国人訪日旅行客の特徴
中国のマーケットリーダーとなっているのは 20~30 代の女性で、この層が中国人訪日客の 3 割を
占めています。
中国人の訪問先は関東、中部、関西に集中しているので、今後はこうした大都市集中を分散させ
ていくことが課題です。
訪問スポットのランキングでは、中国人訪日客の訪問先は 1 位秋葉原、2 位浅草で、台湾、韓国、
香港からの訪日客の訪問スポット 1 位が新宿であるのと大きく異なっています。これは、中国人の
行動パターンが団体で移動して買物をすることが原因と考えられます。
今年訪日した中国人の 75%が日本に初めて来た人たちでした。リピーター率は上昇しているもの
の、今後さらにリピーターを増やすことが重要です。
成長著しい銀聯カード
中国人の通貨持ち出し額は上限 2 万元(約 26 万円)に制限されているため、多くの人が買物には
クレジットカードやデビットカードを使います。2005 年に導入された銀聯カードは 2007 年から昨年
までの 2 年間で取り扱い額が 6 倍に伸びています。
◆基調講演
「巨大市場中国とインバウンドの可能性」
徐向東氏
(株式会社中国市場戦略研究所 代表取締役)
中国の 20~30 代がターゲット
現在上海万博が開催されている中国は、まるで 1970 年代の日本のような活気に溢れています。
こうした中国市場へアプローチするにあたり、主要なターゲットとなるのは中国の 20~30 代の女
性です。日本の団塊世代に相当する彼らは、所得水準が高く、海外への強い関心を持っています。
ネット人口が 4 億人いるといわれている中国で、この世代の女性はインターネットに親しみ、化粧
品に高い関心を示しています。
そこで、例えばネット上でクーポンを発行し、それをプリントアウトして持参すれば割引すると、来
店効果が期待できるでしょう。今後インバウンドビジネスにはインターネットからの情報発信がます
ます重要になります。
ビザの簡略化推進を
近年日本では中国人向けビザの発給条件が緩和されてきましたが、ビザの規制を緩めて多くの
中国人を誘致している香港や韓国に比べると日本の現状はまだ充分ではありません。
中国は富裕層、中間層、大衆から成る階層社会であり、階層の違いが比較的小さい日本とは異
なります。この点を認識してビザの簡略化を進め、日本に来る経済力のある中国人を呼び込み、
日本観光の持つ希少価値を生かすことが重要です。
企業努力による情報発信を
現状では日本からの中国への情報発信が十分に行なわれていないために、中国人の間では箱
根の認識度がまだ低く、中国語での日本のバーゲン情報も届いていません。
地図や割引クーポン付きの情報をネットや携帯電話で発信し、銀聯カードが使えるようにするなど、
中国人向けにいろいろなサービスを供給することが大切です。
コンテンツ、文化、デザイン、サービスといった日本の持つ強みを生かし、個々の企業が情報発信
してゆくことが求められています。
中国人に合ったサービスを
日本の宿泊施設では中国人宿泊者の決済方法に不安を抱いておられる方がいらっしゃるようで
すが、チェックイン時にカードか現金を預かればこうした不安は解消されます。この方法は中国の
ホテルでは実際に行なわれています。
またホテルのサービスとして化粧品などのプレゼントを用意すれば喜ばれるでしょう。
中国の携帯電話は日本で使えないので、中国語で使える携帯電話を空港で入手できるサービス
を提供すれば、中国人に好評でしょう。携帯電話に情報を出すことも効果が期待できます。
中国では会社の慰安旅行が盛んなので、慰安旅行客を日本に連れてきてもらうことも考えられま
す。このように、中国人に合わせたサービスを考えてゆくことが大切です。
中国人の知恵を使って中国人に売り込め
中国人に対して商品やサービスを売るには、日本人のネットワークではなく、中国人のネットワー
クを使って変化の激しい中国市場に対応してゆくことが効率的です。
バナー広告を出すほか、中国の大学や銀行に情報を発信し、そこでの中国人の人脈を使って富
裕層にアプローチする方法もあります。中国人は日本を評価し、健康、安全、安心、エコにお金を
使いたいと思っています。
やり方さえ工夫すればチャンスは豊富にあるのです。
◆パネルディスカッション
「中国個人観光ビザ緩和スタート!中国イ
ンバウンドに向けた様々な取り組み」
司会
:
パネリスト:
小林裕和氏(JTB GMT ツーリズム総合研究所 所長)
中村好明氏(株式会社ドン・キホーテ 社長室 ゼネラルマネージャー)
青木志郎氏(株式会社日本旅行 国際旅行事業部 アジア担当部長)
吉田真由美氏(株式会社ぐるなび 取締役)
小林氏
各社のインバウンドへの取り組みについてお話しください。
中村氏
ドン・キホーテでは、1998 年 6 月から新宿店を皮切りにインバウンドの取り組みを始めました。
インフラの整備を進め、店内放送、HP、ポップ、店内表示を 4 ヶ国語化(日本語、英語、韓国語、
中国語繁体字、簡体字)するとともに、銀聯カード
の端末の全国配備、免税サービスの導入を進め
た結果、現在では免税の売り上げの 50%以上を中
国のお客様にお買い上げいただいています。
深夜まで営業しているドン・キホーテは、自由時間
の少ない団体旅行のお客様や夜のバザールで買
物をする習慣のあるお客様にも喜んでいただいています。
また、今年 4 月にはシンガポールからの教育旅行を受け入れました。学生さんに将来リーダーに
なってもらいドン・キホーテへの理解を深めていただきたいと考えています。
青木氏
2009 年 7 月から中国人富裕層向けの個人観光
ビザが発給されるようになりましたが、この措置
によって当社をご利用いただいたお客様の数
は予想より若干少ないと感じました。
しかし、今年 7 月 1 日の中間所得層への個人ビ
ザ緩和以降は非常に多くの問い合わせがあり、
好調なスタートを切っています。
また、昨年 4 月から医療ツーリズムを始め、超富裕層のマーケットが存在することを感じています。
こうした健診ツアーは直前になって発生するという特徴があるので、今後外客数を伸ばすうえでビ
ザの手続きなどが課題になりそうです。
今年は学生の団体も好調です。中国マーケットは、従来の募集型の観光から目的を持った旅行
へと多様化が進んでいます。
吉田氏
ぐるなびでは、1996 年からインターネット上で飲食店の紹介を始めました。国内に約 50 万件ある
飲食店のうち 6 万 7 千件の HP を制作しています。
2004 年から約 100 の飲食店の情報を 4 ヶ国語
でサービスし始め、現在では 2400 店舗につい
ての外国語版があります。2007 年にはモバイル
版も立ち上げました。
最近では、旅行会社さんと協力して中国から訪
日なさるお客様向けに 3 千円分の食事券(レス
トランカード)を入れたパッケージを始めたほか、
メトロやエアポートリムジンを使ってレストランに行かれるようなパッケージ、外国語で音声を発す
る翻訳サービス用ペン(音声ペン)の導入のほか、宿泊施設を兼ねたレストラン(オーベルジュ)の
外国語対応と決済の支援を予定しています。
小林氏 マーケティングやマネージメント面での工夫についてお聞かせください。
青木氏
ブランドを確立するために、日本旅行の国内ブランド「赤い風船」の中国版を「紅気球」と名づけた
結果、中国での知名度が上がってきました。また、中国人は出身地による人脈が強いことから、営
業スタッフを出身地別に分けてターゲット地を分担させています。
中村氏
ドン・キホーテでは扱っている商品全体をインテリア、ドラッグ、電器など 7 つのカテゴリーに分け、
各カテゴリー責任者と協議してどこから来られたお客様が何を買われているかなどを分析し、ニー
ズに合わせた品揃えを心がけています。
また、免税での売り上げが 2009 年秋から劇的に伸びてきたことを受け、免税に関する法律や制
度についてきちんと説明できるよう、消費税法について勉強しマニュアルを作り、全店舗に配布し
ました。中国語の音声で法令を説明できる接客シートも主要店舗に導入しています。
吉田氏
飲食店さんの中には外国人客を増やす国の取り組みを知らない方も多いので、これに関する啓
蒙活動を行なうとともに、それぞれが集めたお客様を誘導し合えるよう各社とタイアップしてゆきた
いと考えています。
<編集後記>
今回のビジネスフォーラムの開催が中国人向け個人観光ビザ発給緩和直後というタイミングもあ
り、会場には多くの方々にお越しいただきました。
インバウンドビジネスの成功のためには、成長を続ける中国市場の変化を素早く読み取り、業界
各社が協力し合うことが大切です。今後半年ごとに開催されるインバウンドフォーラムの場を有効
に活用していただけると幸いです。