一般入学試験(国公立前期日程) 小論文 試験問題 - 奈良県立大学

平成 22 年度 奈良県立大学地域創造学部 一般入学試験(中期日程) 小論文 問題(その 1)
第1問
次の英文を読み、以下の問に答えなさい。
Women in two̶earner couples are contributing more to family income, but it's the
men who are feeling more conflicted over the work-life balance,according to a survey of
3,500 workers released recently.
この部分の文章については、
in dual̶income families reported conflict in 2008,while just 35 percent did in 1977. For
mothers,
reported conflict increased from 40 percent to 45 percent.
著作権法上の問題から公開すること
Findings from the telephone survey for the nonprofit Families and Work Institute
suggest
what some experts say is a tipping point in attitudes about gender roles, work
ができません。御了承下さい。
Asked how much jobs and family life interfere with each other,59 percent of fathers
1)
and family.
It does signal more equality of expectations—that men are no longer let off the
hook2), says Scott Coltrane, a sociologist3)at the University of Oregon.
出典本
Up until
the See
pasta decade,
weren't
doing enough
add
stressJayson,
to theirTHE
lives,
he TIMES,
(Gender
Roles
Conflict men
Shift
in Work̶Life
Balance,toBy
Sharon
KOREA
says. 2009, p.14)
Mar.31,
Since
then,289
men have been spending more time with their children and more time
単語数
care̶taking, which the survey finds has elevated the inner strife.
(A) What we see here is that the conflict for women hasn't increased as fast because
it was already so high, says sociologist3) Kathleen Gerson of New York University.
Other findings show:
Annual income contributed by women in dual̶income couples rose to 44 percent in
2008; 26 percent of such women earned at least 10 percent more than their partners.
(B) Traditional gender roles have lost favor among both sexes. About 60 percent of
men and women say they disagree with the idea that men should earn the money and
women should take care of the children.
Women under age 29 are just as likely as men to want greater work responsibility,
regardless of whether they have children.
(Gender Roles See a Conflict Shift in Work̶Life Balance, By Sharon Jayson, THE KOREA
TIMES, Mar.31, 2009, p.14)
注
1) nonprofit : 非営利の
2) off the hook : 義務を逃れて
問 1 下線部(A)を日本語に訳しなさい。
問 2 下線部(B)を日本語に訳しなさい。
3) sociologist : 社会学者
平成 22 年度 奈良県立大学地域創造学部 一般入学試験(中期日程) 小論文 問題(その 2)
第 2 問 次の文章を読み、以下の問に答えなさい。
快適で安心して住める住居は、生きるために必要というだけではない。人として生まれ
てきて、ゆたかな感性をもち、個性をのばし、充実した人生を送るには、快適な生活環境
が必要である。
この部分の文章については、
らぐ部屋、気分が晴れ晴れし壮快になる居住地、子どもが思い切り遊びまわれる自然など、
著作権法上の問題から公開すること
住環境のもつ役割と人間形成にあたえる影響はきわめて大きい。人の心に感動をあたえる
芸術家などが、幼いころの故郷の自然が自分を育てたと述懐するのも、不思議ではない。
ができません。御了承下さい。
また社会は市民で構成されている。一人ひとりの市民の人間性がゆたかで、人権感覚に
わたしたちが日々の暮らしのなかで充足感を感じるのは、自己の才能の発揮、芸術との
接触、心のかよう人との交流、美味しい食事やお酒など、人さまざまであろうが、心の安
満ちていなければ、よい社会はできない。そのような人間性は、時間、空間にゆとりがな
いとつくれない。
出典本
かつて中国の孟子は「居は気を移し、養は体を移す、大なるかな居や(住居の状態は精
(神を左右する、食物はからだを左右する、住居の力は偉大だ)
早川和男『居住福祉』岩波書店、1997、10∼15 頁)
」と言った。また、論語の「仁
者は山を楽しみ、智者は水を楽しむ」を座右の銘とした日本の封建領主は、山紫水明の地
を写した庭園を城中につくった。その背後には、環境が美しくなければ智も仁も養われな
い、という思想があるという。
現代の日本人は、
「居」の貧困によって、ゆとりのある人間性が養われていないのではな
いか。貧しい居住環境、追われる時間のなかでは、生きるだけで精一杯の人間になってし
まう。
住宅構造が劣悪で、過密・非衛生で、町が汚なく騒音や排気ガスなどの危険に満ち、自
然もないといった居住条件のもとでは、生まれ出てきた子どもは健康で心ゆたかな人間に
育つことが妨げられる。おとなも子どもも、いつもイライラして心の安らぎがえられない。
高齢者は静かでゆったりした老後を送ることはできない。個人、家族、社会の健康と調和
を得られる居住環境こそは、市民社会の基礎である。
「国民精神の荒廃は住まいの貧しさに起因する」と言ったのはアデナウアー旧西ドイツ
首相(一九四九−六三年在任)であるが、日本社会で引き起こされているさまざまな社会
状況と人心の荒廃といってよいような一連の事件の背後には、人びとの劣悪な居住状態と
居住不安が存在するように筆者には思えてならない。
また、子どもの心の発達阻害にも居住環境の影響を見ないわけにはいかない。映画『男
はつらいよ』シリーズでおなじみの寅さんの住む葛飾柴又には、だんご屋など店がたくさ
んあり、お寺があり、さまざまな年齢層と職業の人たちが住んでいる。こういう居住環境
が、子どもの心を育てるのだと思う。
次の引用は、山田洋次監督との対談である。
早川
「親はなくとも子は育つ」といいますが、親がいなくてもまわりにいろんな人
がいて、その中で人間は育っていくのですね。魚屋のお兄さんとか、隣のおばあさん
がいつも道を掃除しているとか。
山田
柴又もそういうところだと設定しているんです。タコ社長とかお寺の御前様と
か向かいのせんべい屋のおばあちゃんとか、いろいろな人たちが寄ってたかって叱っ
たりほめたりなんかして育てたのだろうと。それが今はないんでしょうね、地域とい
うのが。
この部分の文章については、
失われているということもあるし、また、いま東京郊外を歩いてみると、この
間まで畑だったところが住宅地になって、それから埋め立て地にはすさまじいマンシ
著作権法上の問題から公開すること
ョンが建ってますでしょ。いかにも人間が住みついたというところに長い歴史がある
わけないし、古くからのお店もないし、人間同士のつきあいもまだ全くないし、まだ
ができません。御了承下さい。
地域が誕生していないといいますか。ただ人間が生きているだけで生活がないという
早川 街がだんだんこわされてそういう人間環境が失われていってますね。
山田
か、そういう場所が都市周辺には非常に増えているんだなぁと思いますね。
(
「寅さんの住居論」
『住宅会議』二三号、一九九一年一〇月)
出典本
戦後は、多様な人びとが寄り集まって住む居住地が次々と消えていった。人が住むこと
(早川和男『居住福祉』岩波書店、1997、10∼15
頁)
でつくられた町から人を立ち退かせ、高齢者を疎外し、子どもの心を養えないでいる。い
わば、居住地のもつ教育力・福祉力がなくなった。それが日本人の心をすさませ、市民社
会をゆるがせているように思える。
日本では、高度成長期以後、人は生涯をつうじて、学校でも社会でも競争原理の渦の中
に投げ込まれ、自己の人生の主体として生きるということなどは、意識にのぼらなくなっ
た。世の中にはいろいろな生き方があり生きる喜びがあるということが、個人にも社会に
も学校教育にも見えにくくなっている。子どもは管理教育で本来ゆたかなはずの人間性を
摩滅させられ、勤労者はワーカホリックの企業戦士に追い込まれ、退職後は産業廃棄物と
して使い捨てられているかのようである。
これは、もちろん基本的には戦後の日本の政治、経済、社会全般に起因するのであろう
が、まちと居住地の状態も大きな影響を与えている。
現代日本の人心の荒廃を住環境だけのせいにするつもりは毛頭ない。だが、日本人の心
や身体が良質に育つ環境でなくなっているのは確かであろう。日本人が人間らしい心を回
復するには、居住環境の改善が中心課題のひとつになるべきだと思う。居住のありかの根
本的な見直しが求められている。それは、一口でいえば「居住福祉」の実現である。
「居住福祉社会」とでもいうべき社会を、新しい時代の文化としてつくりあげていかね
ばならないと思う。
(早川和男『居住福祉』岩波書店、1997、10∼15 頁)
問1
下線部で、筆者はなぜ「居住環境の改善が中心課題となるべきだ」と主張しているの
か。その理由を 50 字以上 70 字以内で答えなさい。
問2
本文の内容を踏まえて、これからの日本の居住環境のありかたについて、あなたの
考えを 400 字以上 600 字以内で述べなさい。