平成 24(2012)年 11 月 5 日 BTMU Emerging FX Weekly Global Markets Research a 1.今週のトピックス (1)アセアン:「金融緩和競争」終わる? (2)インド:利下げ期待を残す (3)韓国:今後の利下げの可能性が高まる (4)台湾:政府は 2012 年実質経済成長見通しを下方修正 2.先週の経済指標、イベント 3.先週のレビューと今週の見通し 4.今週の経済指標、イベント 1.今週のトピックス (1) (1)アセアン: アセアン:「金融緩和競争」 金融緩和競争」終わる? わる? フィリピン、タイの利 下げは「予防的」 ペソ高抑止は別の 方法を検討するとい うフィリピン 輸出依存度高く、依 然利下げ期待 が根 強いタイ アセアン地域の「金 融緩和競争」は終息 へ? 10月に政策金利を引き下げ、緩和姿勢を継続したフィリピン、タイは、 どちらも利下げの理由を世界景気減速のための予防的("ward off")なも のと説明した。背景にある外需不振と物価動向の落ち着きという経済状況 も共通している。しかし、先週、両国中銀から発せられたメッセージは、 「次」の方向が異なることを示唆するものであった。 フィリピンでは先週、大手格付会社が格付けを引き上げた。これで「投 資適格級」まであと一歩となった。フィリピンへの投資を後押しするもの であり、利下げによるペソ高抑止を図りたい中銀の思惑とは裏腹なものと なりそうだ。こうしたなか、30日にテタンコ中銀総裁が資本流入増加に利 下げで対処することは難しくなっており、他の手段を検討すると発言した。 対案は示されていないが、流動性が豊富に供給され「資産バブルのリスク」 (ギニグンド副総裁)があるとの認識に立ち返り、利下げは打ち止めとす ることが示唆されたものと言える。 他方、タイ中央銀行は31日、25bpの利下げを決めた金融政策決定会合(17 日)の議事要旨を公表した。利下げを主張した委員は利下げによる資本流 入の抑制効果を主張しており、輸出不振を増幅させるバーツ高を食い止め たい意図があることが改めて確認された。プラサーン総裁は、会合直後に 「利下げトレンド入りではない」と発言しているが、総裁自身が5対2で利 下げを決めた今回の議決における少数派であった可能性は高い。また、利 下げは対外的にバーツの減価を誘導するものだけでなく、調達金利の低下 という経路で、企業収益の下支えとなる。よって、アセアンではシンガポ ール、マレーシアに次いで輸出依存度の高いタイでは、輸出不振は経済構 造上、中銀への金融緩和圧力となりやすいだろう。中銀は先週、2013年の 成長見通しを従来の5.0%から4.6%へ、輸出見通しも+10.8%から+9.0%へそ れぞれ引き下げたことを明らかにした。総裁の発言に反して、次の一手も 利下げになる可能性はそれなりにありそうだ。 アセアン地域では各国の事情により金融政策スタンスはまちまちだ。シ ンガポールでは通貨高誘導による金融引き締めが継続され、インドネシア では8月に翌日物中銀預金金利が引き上げられ、今週もその可能性がある。 また、マレーシアは昨年4月に25bp利上げして以来、政策金利を据え置い ている。金融緩和姿勢が明確だったフィリピン、タイの動向をみるに、こ の先、いわゆる「金融緩和競争」が激化するということにはならないとみ ている。 アナリスト 井野 鉄兵 1.今週のトピックス (2) (2)インド: インド:利下げ 利下げ期待を 期待を残す インド準備銀行(RBI)は30日、金融政策決定会合を開催した。市場予 想の通り、政策金利であるレポレート、リバースレポレートをそれぞれ 8.0%、7.0%に据え置き、預金準備率(CRR)は4.25%に25bp引き下げた(第 1図)。CRRの引き下げで市場におよそ1,750億ルピーの流動性を供給する ことにより景気下支えを図り、政府が続ける経済改革を金融面で支援する 姿勢を強化したと言えよう。 政府は先々週の内閣改造により政権基盤を強化し、会合前日の29日には チダムバラム財務相が2017年3月までに財政赤字を実質GDPの3%へ削減 する方針(今年度は6.1%の見込み)を示すなど、9月以降経済改革を進め ている。こうしたなか、インフレ率は高止まっており、CRR引き下げにと どまったのはやむを得ない決定だったと言えよう(第2図)。RBIは今回、 今後数ヶ月はインフレ率が上昇しやすいものの、年末には上昇が一服する との見通しを示した。声明では、これまでのインフレを最重要指標とみる トーンをやや弱めたうえで、RBIのシナリオ通りにいけば今年度第4四半 期(2013年1-3月)には利下げができるだろうと見方を披露した。こうし た姿勢の変化で、市場の利下げ期待を完全に退けることはしなかった。 9 月以降の経済改革により、インドルピーは一時対ドルで 51 台まで上 昇した。今回、利下げに含みを持たせたこともあり、足もとドルピー相場 の反応は限定的なものにとどまっており、54 前後で推移している。再浮 上には、矢継ぎ早に打ち出した政策実施状況や、その結果である財政・経 常収支の「双子の赤字」解決の進捗などがみられることが必要だろう。 利下げは見送り インフレ圧力が強いな か景気を下支え ルピー相場の反応は限 定的 第2図:卸売物価指数(WPI)推移 第1図:インド政策金利推移 9.0 8.0 25.5 25 25 20 24.5 7.0 24 6.0 15 10 5 23.5 5.0 23 レポレート 4.0 0 ▲5 リバースレポレート 22.5 ▲ 10 預金準備率(CRR) 流動性比率(SLR) 食品価格 燃料価格 卸売物価指数(WPI) ▲ 15 22 09/1 09/7 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 (年/月) (年/月) (出所)インド準備銀行より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (出所)インド報道情報局より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 3.0 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 アナリスト 井野 鉄兵 3 1.今週のトピックス (3) (3)韓国: 韓国:今後の 今後の利下げ 利下げの可能性が 可能性が高まる 9 日開催の金融政 策決定会合 韓国銀行(中銀)は9日に金融政策決定会合を予定している。前回10月 は政策金利を引き下げると同時に、2012年下期のGDP成長率見通しも前年 比+2.2%(変更前+3.2%)に引き下げた(第1表)。だが、26日に発表され た第3四半期GDP成長率は前年比+1.6%となっており、早くも達成が危ぶ まれる状況となっている。過去を振り返ると、中銀による連続利下げは 2008年の金融危機時など非常時に限られている。今回は利下げ効果を見極 めるため政策金利を据え置くとみているが、経済成長の鈍化を背景として、 近いうちに追加利下げを実施する可能性は高いだろう。 第1表:韓国経済成長率見通し 2011年 通年 3.6 2012年 下期 2.2 <3.2> 2 <2.9> 0.8 <3.3> 0.8 <7.8> 3.8 <5.7> 2.7 <5.3> (前年比、%) 2013年 下期 通年 3.7 3.2 <3.8> <3.8> 3.3 3 <3.4> <3.5> 2.3 2.9 <1.0> <2.3> 8.7 5 <7.0> <6.1> 10.2 7.5 <9.8> <9.0> 10 6.9 <9.4> <8.5> 上期 通年 上期 2.5 2.4 2.6 <2.7> <3.0> <3.7> 2.3 1.3 1.7 2.6 個人消費 <1.4> <2.2> <3.5> -5 -0.6 0.2 3.5 建設投資 <-0.4> <1.6> <3.8> 3.7 2.2 1.5 1.4 設備投資 <3.7> <5.8> <5.2> 10.5 3.0 3.4 4.6 輸出 <3.0> <4.4> <8.1> 8.7 2.2 2.4 3.8 輸入 <2.3> <3.8> <7.5> (注)<>内は7月時点の見通し (資料)韓国銀行より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 GDP 足もとの景気動向と 今後の見通し もっとも、足許の経済指標には底打ちの兆しもみえる。第3四半期GDP では、政府が6月、9月の二度に亘って実施してきた景気刺激策が奏功し、 民間消費支出の伸びが前年比+1.5%と第2四半期の+1.1%から上昇した。ま た、1日に発表された10月の輸出暫定値が前年比+1.2%と4ヶ月ぶりに前年 比増加に転じるなど、外需も改善しつつある。9月の鉱工業生産は国内工 場によるストライキの影響で生産が落ち込んでいた自動車の回復(前月比 +12.9%)が牽引役となり、前月比でみて4か月ぶりにプラス成長となった。 だが、政府による見通しの達成基準からは程遠いのが現状だ。また、足 もとで進んでいるウォン高(第2図)も国内企業の輸出競争力を低下させ、 輸出回復の芽を摘みかねない。企画財政部の高官が国内で営業する主要銀 行の外国為替・デリバティ取引に対する検査を計画していると発言する など、ウォン高抑制に向けた動きも出てきている。今後の金融政策の行方 を見極める上で、輸出動向には注視する必要があろう。 ウォン高の背景には世界的に進行している金融緩和や、格付機関による 同国の格上げなど、複数の要因が挙げられる。追加利下げの可能性は高ま っているが、10月11日の利下げ実施以降もウォン相場が上昇していること を鑑みると、利下げがウォン安へ繋がるかは疑問だ。政府によるウォン高 4 1.今週のトピックス 抑制策が導入される可能性も高いことから上昇余地は限られようが、底堅 い推移が続くとみている。 1180 第2図:韓国ウォン(対ドル)推移 単位:ウォン 1170 1160 1150 1140 1130 1120 1110 1100 1090 1080 1/6 2/3 3/2 3/30 4/27 5/25 6/22 7/20 8/17 9/14 10/12 11/9 (資料:Bloombergより三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成) アナリスト 関谷 菜摘 5 1.今週のトピックス (4) (4)台湾: 台湾:政府は 政府は 2012 年実質経済成長 実質経済成長見通 経済成長見通し 見通しを下方修正 第 3 四半期実質成 長率は予想を下回 る 台湾の行政院主計処(主計処)は2012年実質経済成長率の見通しを8月 時点の1.66%から1.05%に下方修正した。同時に発表された第3四半期実質 GDP成長率は前年比+1.02%と2四半期ぶりにプラス成長となったものの、 8月時点に主計処が発表した見通し(+1.99%)は下回っている。支出別に みると設備投資などを表す総固定資本形成の伸び率が+1.24%とプラス転 換しているほか、輸出もプラス転換に寄与した。一方、民間消費が前年比 +0.37%(前回実績:+0.76%)へ鈍化するなど内需は弱含み、成長率を押し 下げた。 主計処は見通しの引き下げに際し、理由として世界景気の鈍化に加えて 国内消費の不振を挙げている。個人消費については厳しい状況が続きそう だ。足もとの物価動向は落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、なお上昇 基調にある。インフレ率の上昇が家計を圧迫するとみられるほか、製造業 の平均月収は前年比でみて二か月連続で減少するなど所得の増加も頭打 ちとなっている。行政院労働者委員会は13年1月から、最低賃金や最低賃 金の時間額の段階的な引き上げを計画しているが、失業率上昇などの影響 が懸念されており、素直に消費動向の改善に繋がるかは不透明だ。もっと も、主要貿易相手国である中国の景況感が改善しているほか、米国に景気 底打ち感も出てきていることから、台湾経済は輸出の回復を支えに底堅い 推移が予想される。主計処は2012年で景気が底を打ち、2013年には成長率 が3.05%になると見込んでいるが、達成できるかどうかは今後の消費動向 が鍵を握りそうだ。 個人消費が今後の 景気動向の鍵 100 (%) 第1図:製造業平均月収(前年比) 第2図:台湾輸出受注推移(前年比) 80 80 60 60 40 輸出受注 電子類 40 20 20 0 ▲ 20 0 ▲ 40 ▲ 60 (%) 09/1 09/7 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 (年/月) (出所)台湾主計局より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 ▲ 20 (年/月) 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 (出所)台湾経済部より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 アナリスト 関谷 菜摘 6 2.先週の経済指標、イベント 日付 10月29日 (月) 10月30日 (火) 時間 8:00 14:30 10月31日 (水) 5:30 8:00 9:30 11:00 16:30 16:30 16:30 16:30 11月1日 (木) 8:00 9:00 9:00 10:00 10:45 13:00 13:00 13:00 13:00 17:30 20:00 21:00 11月2日 (金) 2:00 11月5日 (月) 6:00 9:30 13:00 国 指標 KR IN MX KR TW SG TH TH TH TH KR KR KR CN CN TH ID ID ID HK BR BR BR KR TW ID 経常収支(百万ドル) 中銀政策金利発表 財政収支(年初来、十億ペソ) 鉱工業生産(前年比) 実質GDP(前年比) 失業率(季節調整済み) 輸出(前年比) 輸入(前年比) 貿易収支(百万ドル) 経常収支(百万ドル) 消費者物価指数(前年比) 輸出(前年比) 輸入(前年比) 製造業PMI HSBC製造業PMI 消費者物価指数(前年比) 消費者物価指数(前年比) 輸出(前年比) 貿易収支(百万ドル) 小売売上高(前年比) 鉱工業生産(季調前、前年比) 製造業PMI 貿易収支(百万ドル) 外貨準備高(十億ドル) 消費者物価指数(前年比) 実質GDP(前年比) 対象 9月 9月 9月 3Q 3Q 9月 9月 9月 9月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 9月 9月 9月 9月 10月 10月 10月 10月 3Q 結果 予想 6066.2 8.00% 8.00% ▲175.91 0.7% 1.0% 1.02% 1.50% 1.9% 2.0% ▲0.1% ▲7.2% 2982 1769 1525 2.1% 2.1% 1.2% ▲0.7% 1.5% 0.7% 50.2 50.2 49.5 49.1 3.32% 3.40% 4.61% 4.59% ▲9.4% ▲14.1% 553 394 9.4% 7.6% ▲3.8% ▲3.3% 50.2 49.9 1662 2000 323.46 2.36% 2.50% 6.17% 6.14% 前回 2504.3 8.00% ▲167.09 0.3% ▲0.18% 2.0% ▲5.1% ▲11.0% 1541 858 2.0% ▲2.0% ▲6.1% 49.8 47.9 3.38% 4.31% ▲24.7% 233 4.6% ▲2.0% 49.8 2557 322.01 2.96% 6.37% SG:シンガポール、TH:タイ、MY:マレーシア、ID:インドネシア、PH:フィリピン、IN:インド、VN:ベトナム CN:中国、KR:韓国、TW:台湾、HK:香港、BR:ブラジル、MX:メキシコ ※市場予想はBloomberg調査中央値 ※※時刻は日本時間 (1)香港:香港ドル売り介入続ける 香港金融管理局(HKMA)が断続的に香港ドル売りドル買い介入を実 施している。 10 月 20 日に始めて以来、 2 日までに合計 10 回に及んでいる。 (2)タイ:中銀公表の貿易統計 中銀が公表した9月の貿易統計によると、輸出は前年比▲0.1%、輸入は ▲7.2%、収支は298.2百万ドルの黒字となった(8月はそれぞれ▲5.1%、 ▲11.0%、154.1百万ドルの黒字)。輸出は全般に弱いものの自動車や貴金 属関連が堅調で前年比のマイナス幅を縮小。輸入では自動車関連に加え資 本財が底堅いものの原材料輸入が大きく減少している。 2.先週の経済指標、イベント (3)シンガポール:労働市場は引き続きタイト 9月の失業率(速報値、外国人含む)は1.9%となった(6月は2.0%)。 製造業やサービス業では雇用の伸びは鈍化したものの、公共事業増加を背 景に建設業の伸びが堅調だった。人材開発庁(MOM)は、失業率が低位 で推移しているのは、政府が外国人労働者の流入制限を強化する中で労働 力需要が旺盛なことを反映していると説明した。 (4)ブラジル:成長率は3年ぶりの低水準 9月の基礎的財政収支の黒字幅は16億レアルとなり、市場予想、前回実 績比大幅に縮小した。年初来累計黒字幅も748億レアルと、前年同期(1,046 億レアル)から大幅に縮小している。政府が景気下支え策の一環として減 税などの措置をとったためとみられる。中銀はこれに対して第4四半期は 景気回復の兆しが現れ、税収が増加するとみており、黒字目標額(前年比 +8.6%、1,398億レアル)は達成可能との見方を示している。 (5)インドネシア:貿易収支は 2 ヶ月連続の黒字も、内容は脆弱 9月の貿易統計は、輸出は前年比▲9.4%、輸入は+1.2%、収支は553百万 ドル黒字となった(8月はそれぞれ▲24.7%、▲8.4%、233百万ドルの黒字)。 輸出は動植物油脂など一部持ち直しがみられるものの、全般的に不振が続 いた。輸入は前月に急減した自動車や機械などで持ち直しており、貿易収 支の黒字が定着するかは微妙な状況。 (6)インドネシア:コアCPIは高止まり、総合CPIは小幅上昇 10月の消費者物価指数(CPI)は、総合CPIが前年同月比+4.61%(9月は +4.31%)、食料と統制価格の影響を除いたコアCPIが+4.59%(9月は+4.12%) となった。品目別では食料価格(除く加工食品)が低下したが衣料品等が 上昇。政府高官からは高水準のコアCPIを懸念する声が出てきている。 (7)タイ:コアCPIは安定も、総合CPIは高止まり 10月の消費者物価指数(CPI)は、総合CPIが前年同月比+3.32%(9月は +3.38%)、食料とエネルギー価格を除いたコアCPIが+1.83%(9月は+1.89%) となった。コアCPIが中銀のインフレ目標(+0.5~3.0%)内で安定して推 移する一方、総合CPIは電気料金の引き上げ等を背景にしたエネルギー価 格の上昇により高止まりしている。ただし、商業省は価格管理や軽油小売 価格の抑制政策によって、インフレ圧力が弱まっているとし、2012年通年 の総合CPI予想を2ヶ月連続で引き下げている(前年比+3.1%)。 8 3.先週のレビューと今週の見通し 米大統領選にらみの 米大統領選にらみの一週間 にらみの一週間 方向感乏しい 韓国ウォンが続伸 利下げ打ち止めのフ ィ リ ピ ン 、 継続 が 予 想されるインド、タイ 米大統領選待ちと気 になる米経済指標 中銀の利下げブー ムどうなる 先週のエマージング通貨は、通貨ごとにまちまちの動きをみせ、全体的 な方向感は乏しかった。 個別には韓国ウォンが続伸した。先々週には通貨当局のウォン高牽制発 言も報じられたがウォンの上昇基調は続いている。先週は 30 日に 9 月の 経常収支が公表され、6,066.2 百万ドルと過去二番目の黒字幅を記録した。 これがウォン買い材料となり、昨年 9 月以来のウォン高水準を更新してい る。 このほか、トピックスで採り上げた通り、利下げ打ち止めを示唆したフ ィリピンペソがやや強く、利下げ期待のあるタイバーツがやや弱く推移し た。また、月末にかけて、実需筋のドル買いが優勢となりやすいインドネ シアルピアは、海外投資家による資金流入が支えとなり、下げ幅は大きく ならなかった。 今週は 6 日に米大統領選挙、8 日からの中国共産党大会を控えている。 本質的に、為替相場への直接的かつ即効性高いものとはなりづらく動意は 付きづらいだろう。ただ、週末の雇用統計を含め米景気は底堅さが目立ち 始めている。これは、対先進国通貨では相対的なドルの優位性に繋がるも のだが、対エマージング通貨では、米金融政策の方向感に著変がないとい う前提のうえは、「世界景気減速」に一石を投じるものとなり、今後、リ スク許容度回復によるドル売り要因として作用する可能性がある。 エマージング通貨個別には、マレーシア(8 日)、インドネシア(8 日)、 韓国(9 日)で金融政策決定会合が予定されている。インドネシアでは 2 ヶ月連続の貿易収支黒字や、第 3 四半期 GDP の高い伸び率維持が確認さ れたことなど、中銀による、「緩和しすぎ」の改善を進めやすい環境がで きてきており、8 月以来の中銀預金金利引き上げの可能性が俄かに高まっ ているとみている。このほか、台湾(8 日)、マレーシア(9 日)で貿易 統計、台湾(5 日)、フィリピン(6 日)、ブラジル(7 日)、メキシコ (8 日)で消費者物価指数が公表される。 9 3.先週のレビューと今週の見通し 予想レンジ 予想レンジ シンガポールドル 1.2200 ~ 1.2300 中国人民元 6.2300 ~ 6.2550 30.55 ~ 30.95 韓国ウォン 1085.00 ~ 1105.00 タイバーツ マレーシアリンギット 3.0400 ~ 3.0800 台湾ドル 29.100 ~ 29.400 インドネシアルピア 9580 ~ 9700 香港ドル 7.7500 ~ 7.7530 ブラジルレアル 2.0100 ~ 2.0500 フィリピンペソ 41.100 ~ 41.400 インドルピー 53.2500 ~ 54.2500 ベトナムドン 20800 ~ 21000 ポーランドズロチ** 4.0000 ~ 4.2000 南アフリカランド* 8.3000 ~ 9.1000 ハンガリーフォリント** 275.00 ~ 295.00 トルコリラ* 1.7700 ~ 1.8300 チェココルナ** 24.500 ~ 25.500 ロシアルーブル* 30.750 ~ 32.250 12.8000 ~ 13.1000 メキシコペソ ①*と**はGMRロンドン発行の月刊レポート「Foreign Exchange Outlook」より、月間予想レンジを転載 ②**は対ユーロでの見通し 先週の 先週の対ドル変化幅 ドル変化幅 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 -0.4 -0.6 (% ) SGD T HB MY R ID R PHP INR V ND C NY KRW T WD HKD BRL MXN IN R V ND CNY KRW TWD HKD BR L M XN 直近 3 ヶ月間のレンジと レンジと今週の 今週の予想レンジ 予想レンジ 5 .0 4 .0 3 .0 2 .0 1 .0 0 .0 -1 .0 -2 .0 -3 .0 -4 .0 各通貨 高 各通貨 安 直 近 3 ヶ月 の レン ジ -5 .0 (%) SGD THB M YR ID R PHP * 本 稿 執 筆 時 点 の ス ポ ット レ ー ト を基 準 にし た もの 10 4.今週の経済指標、イベント 日付 11月5日 (月) 11月6日 (火) 11月7日 (水) 11月8日 (木) 11月9日 (金) 11月10日 (土) 時間 17:00 22:30 10:00 20:00 13:01 17:00 17:00 17:00 19:00 23:00 6:00 10:00 10:30 10:30 13:01 13:01 13:01 14:30 14:30 国 TW SG PH BR MY TW TW TW MY MX ID KR KR CN CN MY MY MY CN CN PH PH CN CN CN 指標 外貨準備高(十億ドル) 製造業PMI 消費者物価指数(前年比) 消費者物価指数(前年比) 鉱工業生産(前年比) 貿易収支(十億ドル) 輸出(前年比) 輸入(前年比) 中銀政策金利発表 消費者物価指数(前年比) 中銀政策金利発表 生産者物価指数(前年比) 中銀政策金利発表 消費者物価指数(前年比) 生産者物価指数(前年比) 貿易収支(十億リンギット) 輸出総額(前年比) 輸入総額(前年比) 鉱工業生産(前年比) 小売売上高(前年比) マネーサプライM3(前年比) 貸出動向(前年比) 貿易収支(十億ドル) 輸出総額(前年比) 輸入総額(前年比) 対象 10月 10月 10月 10月 9月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 10月 9月 9月 9月 10月 10月 9月 9月 10月 10月 10月 予想 49.5 3.5% 5.44% 0.0% 3.33 2.0% 2.0% 3.00% 4.64% 5.75% 2.75% 1.9% ▲2.8% 8.01 ▲3.0% 2.1% 14.4% 27.30 10.0% 3.3% SG:シンガポール、TH:タイ、MY:マレーシア、ID:インドネシア、PH:フィリピン、IN:インド、VN:ベトナム CN:中国、KR:韓国、TW:台湾、HK:香港、BR:ブラジル、MX:メキシコ ※市場予想はBloomberg調査中央値 ※※時刻は日本時間 前回 397.95 48.7 3.6% 5.28% ▲0.7% 4.08 10.4% 1.3% 3.00% 4.77% 5.75% 1.0% 2.75% 1.9% ▲3.6% 7.09 ▲4.5% 2.8% 9.2% 14.2% 6.2% 12.4% 27.67 9.9% 2.4% 三菱東京UFJ 三菱東京UFJ銀行 UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ 東京 / Tokyo ロンドン / London チーフアナリスト / Tokyo Head of Global Markets Research 内田 稔 / Minori Uchida European Head of Global Markets Research Derek Halpenny [email protected] [email protected] シニアアナリスト / Senior Analyst 亀井 純野 / Sumino Kamei シニアアナリスト / Senior Analyst 武田 紀久子 / Kikuko Takeda [email protected] [email protected] アナリスト / Analyst 井野 鉄兵 / Teppei Ino Currency Analyst Lee Hardman [email protected] [email protected] アナリスト / Analyst 関谷 菜摘 / Natsumi Sekiya 香港 / Hong Kong シニアマーケットエコノミスト / Senior Market Economist 鈴木 敏之 / Toshiyuki Suzuki [email protected] [email protected] East Asian Head of Global Markets Research Cliff Tan [email protected] シンガポール / Singapore ジャパンストラテジスト / Japan Strategist 関戸 孝洋 / Takahiro Sekido ASEAN Head of Global Markets Research Leong Sook Mei [email protected] [email protected] シニアアナリスト / Senior Analyst 小田 尚志 / Hisashi Oda [email protected] Ho Lee Peng [email protected] 石濱 嘉夫 / Yoshio Ishihama アナリスト / Analyst 石丸 伸二 / Shinji Ishimaru [email protected] [email protected] 照会先:三菱東京 UFJ 銀行 市場企画部 市場ソリューション室 グローバルマーケットリサーチ チーフアナリスト 内田 稔 TEL: 03-6268-1424 E-mail: [email protected] 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、金融商品の売買や投資など何らかの行動を勧誘す るものではありません。ご利用に関しては、すべてお客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し 上げます。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当室はその正確性を保証する ものではありません。内容は予告なしに変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著 作物であり、著作権法により保護されております。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。 12
© Copyright 2024 ExpyDoc