RCC文化センターの氷蓄熱空調システム - エネルギー有効利用のご提案

―― 実 施 例 ――
RCC 文化センターの氷蓄熱空調システム
旭調温工業!
第一営業部 折 田 康 裕
■キーワード/氷蓄熱式ビル用マルチ・リニューアル
<建物概要>
1.はじめに
名 称
1 アール・シー・シー文化センター
本稿では,当社が設計・施工した 1 中国放送の関連会
所 在 地
広島市中区橋本町5−11
社である RCC 文化センターの空調設備改修工事の概要を
用 途
貸会議室,貸事務所,有料駐車場
紹介する。
規 模
地上7階,塔屋1階
本事例は,既存建物のリニューアル物件であり,蓄熱
敷地面積
1,240.922g
槽の設置スペースや建物構造上の重量制限,あるいは工
建築面積
1,116.740g
事施工時間の制約など解決すべき課題の多かった事例で
延床面積
7,649.854g
ある。
事業内容
・業務部:貸会議室(13室)
,貸事務所
(3社)
,
有料駐車場
(160台)
の運営
こうしたリニューアルに伴うさまざまな制約は,氷蓄
・営業部:テレビ,ラジオ,新聞,その他の
熱式ビル用マルチエアコンの採用によってクリアするこ
広告一般取扱代理店
とができた。以下に,施主に対する氷蓄熱式ビル用マル
・開発事業部:RCC教育センター,RCC話し
チエアコン勧奨の経緯などを中心に報告する。
方教室,RCCアナウンス教室,RCCルーデ
2.建物概要
ンステニスクラブの運営
・保険事業部:生命保険,損害保険代理店
RCC 文化センターは,広島市の中心部を流れる京橋川
・貸 会 議 室
9:00∼21:00 年中無休
園に隣接して建てられているビルである。
(写真−1)竣
・有 料 駐 車 場
7:00∼23:00 年中無休
工したのは昭和47年で,築後20年以上が経過した。
・会 議 室 以 外
9:00∼17:30 月∼金曜日
沿いの都市景観保全地区に指定された地域に位置し,公
営業日時
・テニスクラブ 10:00∼20:00 火曜日定休
写真−1 建物外観
― 17 ―
ヒートポンプとその応用 1997.3.
No.42
―― 実 施 例 ――
エアコンによる空調設備の改修を提案することになった
3.空調改修計画
わけだが,同時に,昨今の電力消費量の著しい増加,と
りわけ夏季昼間の電力需要のピークを少しでも緩和でき
RCC 文化センターの改修前の空調システムは,熱源に
水冷式チラーユニットとA重油焚きボイラを使用し,空調
るよう,氷蓄熱式ビル用マルチエアコンの導入を勧奨し,
二次側はエアハンドリングユニット+ファンコイルユニ
採用された。
(表−2)
ットを組み合わせた当時では最も一般的なセントラル式
4.システム概要
が導入されていた。
(表−1)
しかし,竣工後 20 年以上を経過し,冷温水配管の腐食
前述したように,ビルの空調システム改修計画に際し
や,チラーユニットの圧縮不良などのトラブルに悩まさ
ては,さまざまな制約を伴うが,当ビルにおける工事上
れる状況にあった。また,昨今の業務内容の多様化に伴
の制約条件としては,
い,当ビルにおいてもテナントや部屋によって空調の使
① 建築構造上,屋上荷重は東西側それぞれ 6,000kg 以下
とすること
用時間帯が異なることから,個別分散方式の空調システ
② ビルの営業時間を避け,深夜作業によって,しかも
ムに対するニーズが高まっていた。
短期間に改修を完了すること
こうした事態を踏まえて,当ビルでは,ビル用マルチ
表−2 改修後の主要空調設備機器一覧
表−1 改修前の主要空調設備機器一覧
品 名
数 量
チリングユニット
1 台
120Rt
90.0 kW
クーリングタワー
1 台
125Rt
3.75 kW
冷 却水ポンプ
1 台
温 水 ボ イ ラ
1 台
冷 温水ポンプ
1 台
品 名
能力および電気容量
35.5
9
7.05 × 9 =
空冷ヒートポンプ式パッケージ 〃 16.0
18.0
1
4.575
〃
14.0
16.0
2
3.89 × 2 =
〃
11.2
12.5
1
3.12
〃
9.0
10.0
2
2.28 × 2 =
〃
5.6
6.3
1
1.56
〃
5.0
5.6
1
1.56
〃
4.0
4.8
1
1.16
2.5 kW
11.0 kW
空
調
機
2 台
1.5 kW
空
調
機
1 台
3.75 kW
品 名
有 効 蓄 熱 量
台数
118.0 kW
氷 蓄 熱 ユ ニ ッ ト
280 MJ
9
合
計
電 気 容 量(kW)
35.5
5.5 kW
360,000kcal/h
冷房能力 暖房能力 台 数
氷蓄熱ビル用マルチ室外機
合 計
18
87.765
(注)室内機は,
天カセ,合計51台
蓄熱ユニット(RT-J75)
・屋外ユニット(RAS-J280FST)
北
南
I
8
7
貸会議室
700
貸会議室
601
G
F
H
701
702
703
610
602
A
廊下
603
B
704
604
C
E
706
廊下
609
605
6
5
4
駐車場
3
2
1F
事務室
図−1 蓄熱空調系統図
ヒートポンプとその応用 1997.3.No.42
― 18 ―
蓄熱ユニット(RT-J75)
屋外ユニット
(RAS-J280FST)
D
63.45
7.78
4.56
―― 実 施 例 ――
③ 景観保全地区であるため,機器の露出は極力避ける
[×1,000円]
こと
平成6年度
1,400
④ 運転時の騒音値が小さいこと
電気料金
1,200
などがあった。
電気使用量
こうした制約条件に対して,当ビルで導入した氷蓄熱
1,000
式ビル用マルチエアコンは,
800
① 小規模な蓄熱槽と室外ユニットの組み合わせで,設
600
置スペースが小さい
[kWh]
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
400
② 個別分散制御と一括集中制御の選択が可能
③ 直膨式蓄熱システムであるため,配管工事が短期間
200
0
に施工可能である
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月
④ 業務用蓄熱調整契約を利用し,昼間の消費電力を約
[×1,000円]
25%低減できる
平成7年度
1,400
⑤ 運転騒音値が 50dB(ナイトシフトモード選択時)と低
1,200
電気料金
1,000
電気使用量
い
⑥ 室外ユニットの運転重量は1,300kgと軽量である
[kWh]
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
800
などの特徴を持っている。
こうした氷蓄熱式ビル用マルチエアコンの特徴を生か
600
しながら,前述した工事上の制約条件,とくに屋上荷重
400
の問題をクリアするために,室外ユニットと蓄熱槽は全
200
9系統のうち,東側4系統と西側4系統は屋上に設置,
残りの1系統を地上に設置して,屋上荷重の分散化を図
った。
(写真−2,図−3)
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月
図−2 電力消費実績
また,6階事務室(管理部門)と1階テナントについて
は,夜間電力による蓄熱運転時間帯に入る 22:00 以降も
運転することがあるため,一般の個別分散形ヒートポン
プパッケージエアコンを採用した。
換気設備については,既存のダクトを利用し,機械室
内に全熱交換式換気ユニットを設置したが,これより外
部のベントキャップなどの換気口が露出しないように配
慮した。
なお,本改修工事の工期は平成7年4月末から同5月
末までの1カ月間で,同年の夏季には新設備で営業を開
始,現在に至っている。
5.運転実績
改修前の平成6年度の夏季電気料金実績と,改修後の
平成7年度夏季のそれを比較すると,冷房運転最盛期の
6∼8月には約 17 %相当の電気料金が低減されていると
いう成果が見られた。電気使用量の低減率は約 11 %であ
るが,電気料金は約 17 %減となっている。これは,業務
用蓄熱調整契約による夜間電力の利用によって,電力消
費の平準化が図れた結果といえよう。
(図−2)
写真−2 氷蓄熱ユニット
(屋上)
また,年間を通してのランニングコスト比較を行うと,
電気料金は約 30 万円増加している。しかしながら,従来
システムでは冬季に約 150 万円の A 重油代が掛かってお
り,実質的にはその差額分約 120 万円の省コストが図れ
た。
― 19 ―
―― 実 施 例 ――
TU−1
TU−1
MAC−7
MAC−9
MAC−6
MAC−5
TU−1
TU−1
TU−1
A
TU−1
A
MAC−2
MAC−4
MAC−3
MAC−8
TU−1
TU−1
PAC−2
機械室
機
械
室
蓄熱ユニット用給水管(HIVP40A)
TU−1
TU−2
屋上平面図
既設クーリングタワー(撤去)
在来高架水槽
A屋上室外機据付断面図
図−3 空調設備配置図
(屋上平面図)
PAC-4
PAC-1
PAC-7
TU1-1
PAC-1
MAC-1
A
A
MAC-1-1
MAC-1-1
RAC-1
機械室
ポンプ室
MAC-1-2
HEAR-1
MAC-1-2
事務室
事務室
MAC-1-3
会議室
PAC-2
便所
防災
センター
料
金
所
MAC-1-4
会議室
便所
商談室
MAC-1-5
応接室
玄 関
PAC-4
機械室平面図
1階平面図
PAC-1
PAC-7
A断面図
図−4 空調設備配置図
(1階)
6.おわりに
今回の空調設備の改修工事を経験して,氷蓄熱式ビル
用マルチエアコンの省ランニングコスト性,省工事性と
いう大きなメリットを実証できた。
今後もこのような改修ニーズは後を絶たないと思われ
る。今回の経験を機会に一層の技術革新を図り,製品自
体の商品性向上も相まって,蓄熱空調設備市場の拡大に
貢献したい。
最後に,今回の計画に際し,多大なご指導とご協力を
いただいた 1 アール・シー・シー文化センター,日立冷
写真−3 空調室内ユニット
(会議室)
熱 1,1 日立製作所・清水工場をはじめ,関係各位に誌
上を借りて厚くお礼申し上げる次第である。
ヒートポンプとその応用 1997.3.No.42
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