噴火湾における無機リンの周年変化とその変化に影響を与える要因

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噴火湾における無機リンの周年変化とその変化に影響を
与える要因
簗田, 満; 米田, 義昭; 深瀬, 茂
北海道大學水産學部研究彙報 = BULLETIN OF THE
FACULTY OF FISHERIES HOKKAIDO UNIVERSITY,
27(3-4): 160-171
1976-12
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http://hdl.handle.net/2115/23595
Right
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bulletin
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27(3_4)_P160-171.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
北大水産業報
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3・4
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噴火湾におけ~無機リンの周年変化とその変化に影響を与える要因
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満*・米国義昭*・深瀬
茂*
ofInorganicPhosphorus inFunka Bay
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MitsuruYANADA*,YoshiakiMAITA* andShigeruFUKASE*
Abstract
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緒 言
一般に沿岸海域は外洋域に比べて基礎生産力が高く, 特1(北方海域の沿岸域はより高い生産力を示
す ζ とが知られている。 ζ の高い生産力を維持する理由として, 植物プランクトンの繁殖と生長に重
t海水中に存在す
要な一因子である栄養塩類が表層に豊富に供給される乙とが第ーに挙げられる。特ζ
る無機リン (P0
植物ブラクトン増殖および成長の制限因子となって
4ー町は重要な栄養塩の一つで,
いる場合が多い。沿岸域における高い生産力を解明するためには, 周年を通じて食物連鎖の基本とな
る POcPおよび他の栄養塩類の挙動とそれらの補給機構を把握する必要がある。
北方沿岸域に位置する噴火湾は面積 2
,
261k
m:ペ最深部 1
0
7m,Si
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5m の小湾であり, 北
海道を代表する栽培漁場である。噴火湾の調査研究に関して,最も古くは日高ら 0 によって行なわれ,
事北海道犬学水産学部海洋イじ学講座
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-160-
集団ら: 噴火溝における無機リンの周年変化とその変イじに影響を与える要因
海況と栄養塩の研究成果が報告されている。さらに,大谷ちのーのは噴火湾の海況変動に関する一連の
研究を行ない,乙の湾のもつ複雑な海洋学的特徴について詳細な報告を行なっている。しかしながら,
乙の海域の生態系の解明のために, 栄養塩類の現存量に関する研究を含めた海洋化学的および海洋生
物学的研究を総合的に行なった研究は見られない。本研究は噴火湾海域の海洋化学的な総合研究の一
環として, 町 )4-Pの現存量との周年変動を把握し,
さらに,
その補給機構を明らか t
とする目的で行
なった。
試料および実験方法
うしお丸 (
9
8トン) I
とより, 1
9
1
4年 2月より 1
9
1
5年 1月まで,毎
海水試料は本学部所属研究船
月一回,噴火湾海域の 3
3地点,各地点において表面から底層までの 6-8層で採取された(図1)。
Pの定量方法は S
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の の mannual11:従った。
試料中の P0
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結果および考察
鉛直分布とその周年変化
噴火湾内の代表的な地点である S
t
a
.2
3および S
t
a
.
3
0と湾外の代表的な地点である S
t
a
.
4の P0
P
4P濃
濃度の鉛直分布とその周年変化を図 2に示す。 2月下旬の湾内 (
S
t
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3,S
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0
)の POr 度は,
- 161-
北大水産業報 2
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3・4
)
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底層を除いて, 0.7-1.Op
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lで
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とほぼ均一な分布を示している。また湾外 (
S
旬.
4
)の
P
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.
P濃度も湾内と同様,鉛直的に均一な分布を示しているが, その濃度は 1p
.g
a
t
l以上の値であ
り,湾内の濃度と比較すると,やや高い値を示している。
2月以降,湾内と湾外の上層 (
0
5
0r
n
) で POcP濃度が徐々に減少し
7月 -8月の表層 (
0
1
0
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)
で P0
P濃度が 0.2p
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a
t
/
l以下の低い値を示すようになる。 ζ の低濃度は 1
0月頃まで維持きれ,
41
0月を過ぎると,上層の POcP濃度が増加しはじめる。 1
1月下旬で, POcP濃度は 0.6-0.8
p
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a
t
/
l
となり 2月下旬の上層の濃度とほぼ等しい値となる。
下層 (
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)の POcP濃度は上層と異なり,季節によって著しく変化する。湾内の最深部に沿っ
た地点である S
t
a
.2
3および S
t
a
.3
0の底層をみると
3月
5月-6月および 8月-9月の POcP
濃度に高い値 (
2p
.g
a
t
/
l以上)が認められ 3月 -9月にかけで湾内の底層で POcPが蓄積される
傾向にある。乙れに反して,湾外 (
S
t
a
.4
) において, 表層と比べると底層でわずかに高いP0
P濃
4-
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l)を示すものの,湾内のような高濃度の POcP値は認められない。
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-162-
築田ら: 噴火艇における無機リンの周年変化とその変イじに影響を与える要因
総量とその周年変化
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噴火湾を一つの Boxと考え,湾内の全容積
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国
(133.4km 中に存在する POrPの総量を求
めた。総量の算出法として
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0-10m層での
P0
Pの現存量を次の式で表わす。
41
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現存量=ーー (
C
O+C
l
O
2
COは湾内の 22地点の表面水中の平均濃度,
O
は 10m層の平均濃度 VO-10 は表面から
Cl
10m層までの湾内の容積である。総量は,湾
内を表面から 90m層まで 10m間隔に分けて,
各層で求めた現存量を積算したものである。
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1974
図 3は上層と下層の POrPの現存量および総
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量の周年変化を示している。
2月から 3月までの約 1カ月聞に,上層の
P0
P現存量が減少しているが,下層の現存
49gを示している。 3月以降
量が増加しているため,全体として総量は増加し,最大値 3.8x10
4月
-5
月および 7月 -8月で上層と下層の現存量が増加しているのに伴ない総量も増加しているが,
POrPの総量ぼ経時的 K徐々に減少傾向を示している。そして 10月はじめ,その総量は最小値 2.1x
9
1
0
g を示していて, ζ の総量は 3月の最大値の約 5
5
9
6に相当する o1
1月下旬になると, P0
P総
4量は上層の現存量の急激な増加に伴なって増加し 2月の総量とほぼ一致する。
周年変化に影響を与える要因
沿岸域において, POrP現存量に影響を与える要因として,生物生産過程 K伴なう POrPの消費
と有機物分解 1
1:伴なう P0
Pの再生が考えられている。また, 地域によっては, 異なる水塊の流入
4および河川水の流入による町一P の供給も考えられるし, 堆積物からの供給も重要なー要因として
考えられる。
噴火湾にいて,湾内の海洋環境が春の親潮系水の流入および秋の津軽暖流水の流入によって季節的
に著しく変化する
ζ
とが知られているの→〉。図 4は
, 1
9
7
4年における湾内の代表的な地点 (
S
t
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.3
0
)
での水温と塩分量の周年変化を示している。
3
3
.
0%0以下)が認められ
2月下旬,湾内の表層 (O-20m) に親潮系水(Sal
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:
3月以降,親潮系水の影響が徐々に中層まで達する。一方, 津軽暖流水
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:3
4
.
0%0以上)の影響は 8月頃から認められ,その暖流水は徐々に湾内の中層へ流入し, 1
1
(
S
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月下旬に湾内は津軽暖流水でほぼ占められる。乙のような湾内の著しい海洋環境の変化は, POrP現
存量の変化に重要な影響を与えているものと推測される。
1
. 親潮系水および津軽暖流水流入によ'.)影響
木戸 7) によって,湾内における親潮系水,津軽暖流水および冬期噴火湾固有水の存在割合とその周
P濃度を持っているならば, それらの水塊の
もし,各水塊が固有の POr
P
O
r
P
総量が変化する
ζ
とが考えられる。
存在状態によって、湾内の
年変化が報告されている。
図 5は親潮系水の湾内への流入が認められる 2月下旬の塩分量とP0
-P濃度の鉛直断面図である。
4
湾内の中層に存在する変質した冬期噴火湾固有水(Sal
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.O~旬以上)中の POrP 濃度が 0.6-
P濃度はやや高い値を示し,湾外のその濃度は
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lを示しているのに対して,親潮系水の POr
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Oの状態にある ζ とより,
乙れらの POrP値は
r.近い値である。 A.O.U.=Oの時の POrP濃度
見かけ上生物活動!r.無関係な POrP (保存性リン) I
を保存性リンとすると 2月下旬における A.O.U. と POrP濃度の関係より(図 6),両水塊の保存
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1.
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lであり,冬期噴火湾
性リン濃度が計算される。その結果,親潮系水の保存性リン濃度は 1
.
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1である。一方,浄軽暖流水の保存性リンを A.O.U.ξPOj-P
固有水の保存性リン濃度は O
濃度の関係から求めると, その濃度は 0
.
2
4p
.g
a
t
/
lである(図 7
)。 図 8は各水塊の占める容積!r.各
保存性ワンを乗じて求めた保存性リンの総量の周年変化と現存量の周年変化を示している。
2月から 6月までの親潮系水流入期において,保存性リンの総量にそれほどの変化が認められない。
ζ のζ
とは親潮系水と冬期噴火湾固有水の保存性リン濃度に大きな相違がないととによるものである。
Pの現存量に著しい変化が認められる。
しかし. P0
4-
ζ の現存量の増減は保存性リン以外の要因によ
るものと考えられる。一方,夏季より,津軽暖流水の流入によって,保存性リンの総量が徐々に減少す
- 164-
築田ら: 噴火湾』ζ おける無機リンの周年変イじとその変イじに影響を与える粟因
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,1974.
P濃度はその固有の保存性リンに有機物分解で生産
る。しかし湾内へ流入する津軽暖流水中の POr
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.
8
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/
l
)であり(図的, 8月-10月の POrP総量の減少
された非保存性リンが加わった値
は津軽暖流水の流入による影響だけで説明つかない。ただ 1
0月 -ll月の POrP総量の増加は闘有
のリン濃度をもった津軽暖流水で湾内全体が占められる ζ とによるものと考えられる。 II月下旬にお
いて,津軽暖流水の PO.-P濃度を上限値 0.8阿 a
t
/
lとすると, 湾内の POrP総量(1l9X 106g
a
t
)
ga
のうち,津軽暖流水が運んできた PO.-P量は約 102x1
0
6
tであり,津軽暖流水の流入が湾内の
PO.-P総量ζ
I重要な要因となっている。
-165-
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. 生物生産過程による影響
回 m の層内で起り,特に 0-30mの深さで顕著である乙とが報告きれて
生物による基礎生産は 0-
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:伴なう POrPの消費が考えられ
いる 8h上層の POrP現存量を減少させる要因として,基礎生産 1
P が消費されると同時に海水中 1
<
:酸素が溶け込むので,
る。生物生産過程において,海水中の POr
0は湾内全域における 0-30m層のA.O.P.
溶存酸素量の変化から POrPの消費量が推定できる。図 1
(見かけ上の酸素生産量却の積算量の周年変化と PO.-P現存量の周年変化を示している。 2月から 5月
4P現存量の
にかけて,見かけ上の酸素の生産が認められ, その増加傾向は湾内の 0-30m層の P0
の現存量が減少しているにもかかわらず,
P
減少傾向と一致する。しかし 5月-6月にかけて, POr
A.O.P.量が減少している。乙の乙とは溶存酸素の一部が大気へ放出された結果によるものと考えら
.
p
. と POrP現存量の増減傾向が一致しないよ
れる。 5月-6月および 6月 -10月においてもA.O
-166ー
築田ち: 噴火湾における無機リンの周年変化とその変化に影響を与える要因
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うに,溶存酸素の変化より POrPの消費量を求める方法は,溶存酸素の大気への放出などによって溶
存酸素の変化と POrPの変化が一致しないため,信頼しうる値が得られない。
生物生産に伴なう POrPの消費量を推定する方法として,基礎生産力より求める方法がある。
14C
法による基礎生産力より, C
:Pの生産速度を 1
0
6
:1と仮定して求めた P0
Pの消費量は 2月 -4
46g
月の 5
1日間で 3
1x1
06g
a
tである。乙の値は,上層の P0
P現存量の減少量 (
3
3X 1
0
a
t
) とほぼ
4-
6月 -8月の 55日間で消費される POrP量は 54x1
06g
a
tであるのに対して,上層
ζ の時期,著しい生物生産による
POrPの消費があるにもかかわらず, P0
-P現存量が増加する傾向は生産と同時に行なわれる有機物
4
分解による POcPの再生および下層からの POrPの供給が考えられる。懸濁性リンの上層での分解
9g
a
tであり,基
速度より, POrPの再生量を求めると(築田ら,投稿準備中),その再生量は 57x10
礎生産で消費される POrP量より上回っている。従って 6月-8月における上層の POcP現存量
0
の増加は,下層かちの POcP供給と有機物分解による POrPの再生によるものである。 2月から 1
等しい。また
06g
a
tである。
の POrP現存量は逆に増加し,その増加量は 9x1
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6
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北大水産象報 2
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.
月において,上層で行なわれる生物生産過程が上層での POrP現存量の変化に重要な要因となり,特
に夏季の上層で行なわれる有機物分解過程も POrP現存量の変化に重要な要因となる。
3
. 下層における有機物分解過程による影響
1は S回 . 2
3における底層 (70m
,30mおよび 90m) での酸素飽和量と POrP濃度の周年変
図1
化を示している。春季 夏季にかけて,酸素飽和量の減少に伴なって POrP濃度が増加する傾向に
-Pの再生が認められる。下層における有機物分
ある。乙の傾向より, 下層で有機物分解による P0
4
Pの再生量を計算するために
解によるP0
4-
2月-6月までのお !
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: 33.4-33.5%0の同一海水を
.
u
. との関係を図 12K示す。 2月 -6月までの 110
追跡し, その海水中での POcPの濃度とA.O
日聞に再生される POcP値は 1
.
9.
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/
lである。 ζ の値より 2月 -3月の 21日間で下層で再生さ
れる POrP量を求めると,その量は 13x1
06g
a
tであり,下層の現存量の増加量 (
1
7X 1
06g
a
t
) とほ
ぼ等しい値を示している。下層で行なわれる有機物分解による POcPの再生が下層での現存量の増
加に影響を与えているが 3月以降に,下層の現存量にそれほどの増加が認められない。 3月以降,
親潮系水および津軽暖流水の流入によって,高い POrP濃度をもっ底層水の一部が湾外へ流出する
現象が認められ,
ζ の現象が下層の現存量の変化に反映しているものと考えられる。
噴火湾の下層における POcP濃度とA.O
.
u
.の関係より, POcPの再生量と酸素の消費量の原子
),その比は,約 1:160-200である。 R
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dらりによって報告され
比の季節的変化を見ると(表 1
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た外洋域における P:O比 (
1
:2
1
6
) に比ぺると,噴火湾でのその比はかなり低い値を示し,酸素消費
量に対して POcP量が過剰に存在する。また,春季 夏季の 50-90m層の同一塩分の海水を追跡し
た結果. PO.-pの再生量と酸素消費量との原子比は 1
:1
8
7である。さらに 7月 .
.
.
.
.
.
9月において, 3
3
.
4
-33.5
%0の塩分量をもっ底層水中での POcP濃度と A.O.U. との関係より(図 1
3
),夏期の底層に
おける POcPの再生量と酸素消費量との原子比は 1
:1
7
2であり,春季 夏季における5O.
.
.
.
.
.
9
0
m層
での原子比より低い値を示している。
ζ れらの現象は噴火湾特有の有機物分解過程によるものか,
あ
るいは,酸素消費に関係しない PO.-pが下層に供給されることを意味するものと推測される。夏季
噴火湾の堆積物の表層は還元状態を示し,その表層で著しい有機物分解が行なわれている乙とが明ら
かにされている 10)。下層への POrPの供給源として, 堆積物中で有機物分解によって再生される
- 169-
北大水産業報 2
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3
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Pが考えられる。
4
結 論
POrP濃度が O
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.9.
pg
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lであり,鉛直的 l
とほぼ均一であったのに対し, 夏季
POrP濃度は, 0.2p
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/
l以下の値を示し,底層で POrPの蓄積 (
2
.
0.
pg
/
l以上)が認め
冬季の湾内の
の表層で
られた。また湾内に現存するP0
4-P総量を求めた結果
3月 I
C最大値を, 1
0月I
C最小値を示し,
季
節的 1
1:著しい POcP総量の変化が認められた。
湾内における POcP現存量の周年変化に影響を与える要因として,親潮系水および津軽暖流水の
流入,上層で行なわれる生物生産および下層で行なわれる有機物分解が考えられた。 さらに,夏季の
上層で著しい有機物分解が行なわれている ζ とが推測され, ζ の有機物分解に伴なって再生会れた
P0
-Pが現存量の変化に影響を与えたととが考えられた。また,下層における有機物分解時の POrP
4
の再生量と酸素の消費量との関係より,堆積物からの POcPの供給が重要な要因となりうる ζ とが推
測された。
謝 辞
ζ の研究を行なうにあたり,水温 1
1:塩分量t
と関する資料の引用ならびに有益な助言をいた
t
:いた大
1
:
深
く
谷清隆助教授に謝意を表します。また,試料採取に御協力を賜わりましたうしお丸乗船員一同 1
感謝の意を表します。本研究の一部は文部省特定研究「北方海域の生態系と化学物質の挙動との相互
作用に関する研究 J研究代表者,川村輝良教授によった。
文 献
1
) 日高考次外 (
1
9
3
4
)
. 噴火湾海洋観測報告.海洋時報 6,2
0
9
2
3
9
.海洋気象台.
2
) 大谷清隆・秋葉芳雄 (
1
9
7
0
)
. 噴火湾の海況変動の研究I.湾水の周年変佑.北大水産業報 20,
30
33
1
2
.
3
) 大谷清隆 (
1
9
7
1
a
)
. 同上 1
1
. 噴火湾に流入・滞留する水の特性.同誌 22,5
8
6
6
.
4
) 大谷清隆・秋葉芳雄・吉田賢二・大槻知覚 (
1
9
7
1
b
)
. 同上 1
1
1
. 親潮系水の流入・滞留期の海
況.同誌 22
,1
29-1
4
2
.
1
9
7
1
0
)
. 向上 I
V
. 海軽暖流水の流入・滞留期の
5
) 大谷清隆・秋葉芳雄・伊藤悦郎・小野田勝 (
流入・滞留期の海況同誌 22
,2
2
1
2
3
0
.
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d,J.D.H. 岨 d P
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6
) S佐 i
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.
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1
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晶r
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fCa
nada,
0抗品,wa.
7
) 木戸和男 (
1
9
7
6
)
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修士論文, p
.81
.
-1
7
0ー
築田ら: 噴火湾における無機リンの周年変化とその変{I::.
ζ
I影響を与える要因
8
) 米国義昭・築田 満・内田正文 (
1
9
7
5
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. 噴水智障の海況 V
I
. 基礎生産量と有機物の挙動,昭和
5
0年度日本海洋学会春季大会講演要旨集, p
.1
3
9
.
9
) R
e
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f
i
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l
d,A
.
C
.,Ketchum,B.H.andR
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.
A
.(
1
9
6
3
)
. Th
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7
7
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M.N.(
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),
The飽 晶 . 2ndE
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.
田, NewY
o
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.
5
5
4p
.JohnWiley& 80
1
0
) 築田 満・米図書量昭・松永勝彦・門谷茂 (
1
9
7
6
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. 噴火湾の堆積物 K関する研究 1
. 間際水の
栄養塩濃度と有機物含量について.昭和 4
9年度目:本海洋学会秋季大会講演要旨集, p
.1
6
2
.
-171ー