埋立地再生に伴うダイオキシン類無害化実験 - cis.fukuoka-u.ac.jp

第16 回廃棄物学会研究発表会講演論文集 2005
ポスター1 C 3-4
埋立地再生に伴うダイオキシン類無害化実験
ミヨシ油脂株式会社 (正)○小川隆、 川島正毅、 細田和夫、藤本秀夫
福岡大学大学院 (正)樋口 壮太郎、 (正)為田一雄
1. はじめに
最終処分場の確保は、 循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものであるが、 新たな建設は、
用地の確保や住民との合意形成が難しく、 困難な状況にある。 このため、 既存処分場の再生による延命化の試
みがなされている。 再生方法は、 掘り起こし、 再処理、 資源化が一般的であるが、 一部の古い処分場において
は高濃度のダイオキシン類や重金属類が含まれており、 資源化を行う場合の阻害要因となっている。 このよう
な背景下、 掘り起こしごみを洗浄、 分級後、 細粒分について薬剤添加併用加熱還元処理による無害化実験を行
ったので紹介する。
2. 実験方法
2-1 実験試料
流動床飛灰、不燃ごみが埋立処分されていたA 市最終処分場掘り起こしごみを2 5 mm トロンメルで選別し、
洗浄、 分親し、 回収した細粒分 ( 65μm 以下汚泥状) を用いた。 (図-1参照)
2-2 前処理
実験試料を乾燥機にて乾燥し、 2. 8 mm 以下に粉砕し、 試験試料として用いた。 (図-2参照) 表-1、 表2 に試験試料の含有量、 溶出試験結果を示した。 表-1 よりダイオキシン類含有量を分級により1 5ng-TEQ/g(6
5 μm) まで濃縮することができた。 因みに掘り起こしごみのダイオキシン類含有量は 3. 3ng-TEQ/g であり、
μ掘り起こしごみ中に占める細粒分 (65〃m以下) の割合は 10.6% であった。
図-1 掘削選別等フロー
[連絡先] 〒124-8510 東京都葛飾区堀切4丁目6 6番1号 ミヨシ油脂株式会社 油化事業本部
環境材料研究所 小川隆 TEL 03-3602-8791
FAX 03-3690-3542
E-mail ogawat@so. miyoshi-yushi. co. jp
キーワード: 埋立地再生、 薬剤、 ダイオキシン、 無害化、 資源化
表- 1 含有量
表- 2 溶出量
2-3 処理方法
処理方法は、 薬剤 (ダイオカット A - 1 0 ) を対象物と均一となるよう混合し、 1 時間加熱を行う。 分解
のメカニズムは、 薬剤が加熱により分解し、 水素等の還元性ガスを発生する。 このガスがダイオキシン等の有
機塩素化合物の塩素を脱離し、 無害化する。 薬剤の主成分は、 リン酸系無機薬剤である。
2-4 事前試験
連続キルンによる大量処理を想定し、 少量試料においてその処理温度の検討を行った。
1 ) 試験炉
処理温度検討には、 レトルト約 3 L のバッチ式ロータリーキルンを用い行った。
2 ) 試験方法
試験対象物は、 含水試料 ( 8 7 %) であったため、 乾燥、 粉砕したものを使用した。 その試料 2 0 0 g に、
薬剤 (ダイオカット A - 1 0) を 5 % ( 1 0 g ) 添加し、 均一となるよう十分混合後、 所定温度にて 1 時間処
理し、 急冷後、 公定法にて測定分析を行った。
3 ) 試験結果
事前試験の結果、 図- 3 の通りとなった。
4 0 0 、 4 5 0 、 5 0 0 ℃の 3 点について処理を行い、 すべて 3
ng-TEQ/g(ばいじん等の含有量基準)をクリアした。 また、 土壌基準の調査指
標である 2 5 0 pg-TEQ/g 以下であり、 この結果より、 3 点の温度での顕著
な差はないことから、 連続キルンでの実証実験は、 4 0 0 ℃にて行うことと
した。
図 - 3 バッチキルン処理結果
図 - 2 処理フロー
また、 ブランク試験として 4 0 0 ℃において、 薬剤無添加での処理を行った結果、 1 . 4 ng-TEQ/g となり、
基準値は、 クリアしているものの薬剤添加した場合と比較して、 約 1 0 倍高い値となった。 (図- 3 参照)
2-5 実証試験
1 ) 試験炉
試験炉は処理能力 5 kg/hr のキルンを用いたその概要を表- 3に示した。
表 -3 ダイオキシン類分解装置
2 ) 試験方法
試料約 15kg に、 薬剤 (ダイオカット A-10)
を 5% 添加し、 均一となるように混合を行い、 連続式キ
ルンに投入し、 事前試験にて決定した温度 400℃ にて、 滞留時間1 時間を保持し処理を行った。 無害化装置
から排出された試料を採取し、 公定法にてダイオキシン類の分析を行った。
3 ) 試験結果
連続式のダイオキシン類分解装置を用いた処理温度 400℃ での試験を行った。 その結果を表-4 に示す。 薬
剤 (ダイオカット A-10)
を添加し、 処理することにより、 原灰濃度 15ng-TEQ/gを、 0.13 ng-TEQ/g、
除去率 99% まで処理することができた。
表-4 実証実験結果
3. まとめ
今回、 掘り起こしごみを洗浄、 分親し、 細粒分について加熱還元処理を行い、 薬剤 (ダイオカット A-1 0)
を添加することにより、 処理対象物のダイオキシン類含有量1 5ng-TEQ/g を0. 1 3ng-TEQ/g と高度に処理す
ることができた。 この結果、 ダイオキシン規制前の古い最終処分場再生時に高濃度のダイオキシン類が検出さ
れた場合において溶融等施設がなくとも経済的かつ効率的にダイオキシン類分解を行うことが可能であること
が分かった。 また分級によりダイオキシン類を細粒分に濃縮し、 処理量を低減化することができ、 経済的処理
および現位置での処理が可能であることが示唆された。 今後、 さらに掘り起こしごみ、 汚染土壌等による実証
を行い、 現位置処理システムの開発等を実施する予定である。 なお本研究は平成16 年度環境科学研究費(代表
研究者: 樋口壮太郎) を用いて実施した。
参考文献
代表研究者、 樋口壮太郎・ 共同研究者、 藤吉秀昭: 埋立再生総合技術の開発、 平成16年度環境科学研究報告
書 (2005)