「画像診断機器の安全点検」 の推進について (医療機関等関係各位へのご協力依頼) 421 JIRAトピックス 「画像診断機器の安全点検」の推進について (医療機関等関係各位へのご協力依頼) (社)日本画像医療システム工業会 企画調査部会 はじめに れがあり,その警鐘は平成11年度の日本放射線技術学 (社) 日本画像医療システム工業会,企画調査部会・ 会第27回秋季学術大会で報告致しました.また平成12 統計調査委員会において平成10年秋に 「第 3 回医用放 年 6 月の 「日本放射線技術学会雑誌」 56巻第 6 号にも 射線機器等の導入状況に関する調査」 が実施され,平 掲載しております. 成11年 2 月に調査結果が報告されました.その結果, 今回は,その後の画像診断機器における安全対策の 大蔵省令による法定耐用年数を超え,10年以上に渡り 一環として,従来保守点検を実施したことのない機器 長期間使用されている医療機器が増加し,5 年前の調 を中心に,実際に 「安全点検」 を行い重要部分の点検, 査と比較しますと,その使用期間がはるかに延長され 補修箇所の有無等の点検により,事故の予防に勤めた ている実態が明らかになりました. いと考えております. 医療機器の安全への配慮は,従来から薬事法の承認要 当工業会と致しましては,リスクマネージメントが 件に定義されていることを遵守することで安全が確保さ 叫ばれる環境のなかでの画像診断機器の安全対策活動 れております.また各メーカは長年にわたる研究・開発 として推進したいと考えています.各企業も安全点検 で随所に安全への配慮を盛り込んでまいりました. 実施について種々準備をしております.何分にも厳し しかしながら,10年前後の長期にわたり医療機器を い環境ではありますが,医療機器の安全対策にもご配 使用しますと,使用期間や使用頻度に対応して繰り返 慮頂き, [安全点検] について各企業より申入れがあり し摩擦する機械的部分の磨耗や開閉動作を伴う電気部 ました場合には,是非実現できますよう,医療機関各 品等に劣化が起こります.機器性能を維持するために 位のご協力を賜りますようお願い申し上げます. は使用者による日常点検および保守点検により安全性 や診断に影響を及ぼす機能の確認が必要となります. 安全点検の概要 平成 7 年度の改正薬事法の施行により,機器納入後 1.安全点検とは の使用時における性能維持と安全性確保のために,保 「安全点検」 とは,あまり使用されていない言葉です 守点検が必要な医療機器の指定,ならびに点検に関す ので,その概要を紹介いたします. る事項を 「医療機器の取り扱い説明書等添付文書」 に記 「安全点検は保守点検の一部」 であり,保守点検を大 載すること,およびこれらの 「情報の医療機関への提 きく分類しますと 「機能面での点検」 , 「安全面での点 供」 が義務付けられました.さらに医療法等により点 検」 の 2 種に分類できます. 検の実施主体が医療機関にあること,また医療機関が また,点検を担当する人の立場からみた場合には使 点検できない機器 (特定修理医療用具) の修理や保守点 用者が行う 「日常点検」 と専門的な知識を必要とする機 検は, 「医療用具修理業」 等の有資格者にその業務が委 器内部の点検を含む 「定期点検」 とがあります. 託できるように法的環境が整備されました.ご承知の 「取り扱い説明書」 または 「保守点検マニュアル」 等に ように人体と直接または間接的に接触する医療機器に は 「日常点検」 , 「定期点検」 等の必要な事項が記載され とって安全確保のためには,使用初期から定期的に保 ています.安全点検では点検項目のうち,安全に係わ 守点検を行い機器を維持管理することが大切です. る項目を抽出して 「日常点検」 では見ていない部分の点 大型画像診断機器の多くは,各医療機関のご理解と 検を行います. 各企業の協力により保守契約による定期点検が実施さ したがいまして,医療機関側が行う点検では実施困 れております.しかしながら納入以来,長期間にわた 難な安全性に関する点検を行うことを 「安全点検」 とし り内部を点検していない機器があります.これらの機 ています. 器をそのまま使用致しますと万一の事故が起こるおそ 機械的安全,電気的安全,放射線安全,システム制 2001 年 4 月 422 日本放射線技術学会雑誌 263号第3・1 平成 8 年 3 月) 安全点検といった用語で の法的規制はありません.医療機器の性質上,被検者 に接触するものが多く,重大な事故防止のために予防 措置が必要です.医療法上,保守点検を行うことが法 的に定められた機器が対象になります. 2) 保守点検が必要な医療機器と保守点検に関する情報 の提供 保守点検が必要な医療機器は, 「医療法施行令第 4 条の 7 第 5 号別表第 1」 で定められています.別表に 定められた医療機器は 「薬事法施行規則61条の 2 別表 第 1 の 2」 で保守点検に関する事項の文書の添付が義 Fig. 安全点検の位置付け. 務付けられています.それらの情報は 「薬事法施行規 則77条の 3」 において適正使用のための必要な情報と して医療機関に提供することが義務付けられておりま 御機構の安全,使用環境に係わる安全等の点検項目の す.また医療機関はその情報を活用することをもとめ なかから,ご使用していただいている機器の安全に係 られています (健政発263号第3.2.6 (2) ) . る大切な部分を抽出して点検いたします. 3) 医療機器への保守点検に関する情報の添付 ・定期健康診断と同様に危険個所のスクリーニングを 各装置の 「取り扱い説明書」 または 「定期点検マニュ 目的とした点検です. ・保守契約に含まれる定期点検には,安全面での点検 アル」 等に 「安全に関する注意事項」 や 「保守点検に関す ること」 が記載されています.また装置引渡し時に安 も入っております. 全に関する取り扱い説明をしております. これらの点検は年間数回実施されており,毎年継続 装置の性能維持と安全性確保は,お客様が主体とな することによりその効果が発揮できます. って行っていただくものですが,お客様で点検ができ ・安全点検を実施し,危険な部分が発見された場合に は修理が必要となります. 故障は発生してから対応できますが,安全問題は発生 ない場合はメーカまたは許可のある医療用具修理業者 に委託することができます (平成 8 年 3 月26日健政発 263号第3.2.6 (1) ) してからでは遅すぎ未然防止が必要です. 4.安全点検の実施者 2.安全点検の実施時期,実施頻度 (1) 安全点検はだれが実施するものですか? 各メーカ指定の保守点検期間に対応した点検が必要 (2) 安全点検はユーザーでも実施できますか? です.使用状況・使用環境にも左右されますが,保守 (3) 安全点検の実施者には特別な資格が必要ですか? 点検時期や点検項目は装置の 「取り扱い説明書」 または 「取扱い説明書」 に 「医療機関において実施するよう 「定期点検マニュアル」 等に記載されています.平成 7 に記載されている場合」 は,それに従ってください. 年以前に製造された機器のなかには記載のないものが ただし,緊急停止スイッチ等日頃操作しない重要部 ありますが,一般的には 1 年に 1 回以上の安全点検 分を操作する時には 「取扱い説明書の注意事項」 をお読 をお奨めします.機器には,使用すると消耗,磨耗, みのうえ,操作してください.不明な点はメーカにお 劣化などが起こりますので万一の事故を予防するため 問い合わせください. にも是非安全点検を実施してください.点検内容など 「取り扱い説明書」 において 「指定者以外の作業を禁 詳細については各メーカにお問い合わせください.保 止」 している場合にはメーカまたは,資格のある修理 証期間終了後から毎年継続的に,点検を実施すること 業者等に依頼してください. が大切です. 「取り扱い説明書」 に保守点検が指示され 対象医療機器が 「医療法施行令第 4 条の 7 第 5 号別 ており,納入以来点検せずに長期間使用している場合 表第1」 および薬事法にて 「特定修理医療用具に指定さ は,速やかに安全点検を実施してください. れている機器の保守点検業務を委託する」 場合には, 機器の種類に対応した 「特定修理業者の許可を各都道 3.点検に関する法的根拠 府県より取得していること」 が必要です. (薬事法施行 1) 安全点検の実施は法律で定められていますか? 規則第26条の 2 の 2 同施行規則別表 1 の4) 医療法では,保守点検により装置の性能を維持し, 保守点検の受託責任者には,機種に対応した 「修理 安全性を確保するように定めらておりますが (健政発 業の責任技術者の資格」 が必要です.X線撮影装置, 第 57 卷 第 4 号 「画像診断機器の安全点検」 の推進について (医療機関等関係各位へのご協力依頼) CT,MRや放射線治療機器などの画像診断機器のほと 423 (2) 放射線治療装置等も,安全点検が必要ですか? んどは薬事法において 「特定修理医療用具」 に指定され 放射線治療装置等も画像診断機器と同様の扱い ています. となっております. また, 「 (社) 画像医療システム工業会安全管理セン ター (JIRA/MRC) 」 では, 「平成 3 年以来,毎年 「点検 7.お願い 技術者の教育と資格認定を行い」 技術者の質の向上を 安全点検に関して医療機関の機器管理責任者の方々 図っております.現在,各機種を合わせた資格認定者 には以下の事項に関して,ご協力賜りますようお願い は全国で約2,485人 (平成13年 1 月現在) おります.資 申し上げます. 格はCT,X線など各機種に別れており,これら資格の ある点検技術者が中心となって点検を行います. ① 点検のスケジュール作成と点検実施時の確認,そ の後の継続的な点検計画の作成. ②「日常点検」 の徹底や 「正しい使用方法」 , 「取り扱 5.安全点検に関する費用 い上の注意事項」 等の使用者全員への徹底. 安全点検に要する費用はどの程度になりますか? ③ 取り扱い説明書などの 「資料の保管管理」 費用は,装置,使用年月,使用頻度,点検項目など ④ 装置の修理,点検履歴などの把握と記録の保管管 によって異なりますので詳細は各メーカにお問い合わ 理,メーカ等と保守関連事項の連絡. ⑤ 修理や点検に必要な費用の予算化等. せください. また 「保証期間経過後」 の 「保守点検・修理等」 につき まして,当業界は独占禁止法に基づく自主規制ルール 8・医療機器の保守点検制度 の 「医療用具公正取引競争規約」 があり,無償での提供 医療機器の高度化に対して,安全性,有効性を維持 は景品類の提供として禁止されており有償となります するために,保守点検が必要な医療機器が定められて がご了承ください. います.保守点検が必要な医療機器は,厚生省令 (医 療法施行令第 4 条の 7 第 5 号) で定める別表第 1 に掲 6.その他 げる医療機器です. (1) 安全点検の実施は,全医療機関一斉に開始する考 えですか? 医療用具の修理や保守点検業務を受託するときに必 平成13年度を安全点検開始の目標として,各メ 要な医療用具修理業の修理区分は薬事法施行規則別表 ーカごとに準備ができ次第実施の予定です. 1の4 (施行規則第26条の 2 の 2) によります. 保守点検が必要な医療機器 (医療法施行令第 4 条の 7 第 5 号) (薬事法施行規則第61の 2 別表 1 の 2) (医療法施行規則第 9 条の 7 別表第1) ) 一 二 三 四 五 手術台及び治療台のうち,放射 線治療台 麻酔器並びに麻酔器用呼吸嚢及 びガス呼吸かんのうち,麻酔器 呼吸補助器のうち,次に掲げる もの 1 人工呼吸器 2 酸素治療機器 3 酸素供給装置 内臓機能代用器のうち,次に掲 げるもの 1 心臓ペースメーカ 2 人工腎臓装置 3 人工心肺装置 4 血液浄化用装置 5 補助循環装置 6 人工膵臓 7 腹水ろ過濃縮器 8 自家輸血システム 保育器のうち,次に掲げるもの 1 閉鎖循環式保育器 2001 年 4 月 六 七 八 2 開放式保育器 3 温度制御式運搬用保育器 医療用エックス線装置及び医 療用エックス線装置用エックス 線管のうち,次に掲げるもの 1 診療用エックス線装置 (主 要構成ユニットを含む) 2 歯科用エックス線装置 3 医用エックス線CT装置 4 診断用エックス線画像処理 装置 5 治療用粒子加速装置 6 放射線治療計画エックス線 装置 7 放射線治療計画用エックス 線CT 8 エックス線被曝低減装置 9 エックス線自動露出制御器 医療用エックス線装置用透視台 放射線物質診療用器具のうち, 次に掲げるもの 九 1 診断用核医学装置 2 放射性同位元素治療装置 理学診療用器具のうち,次に掲 げるもの 1 超音波画像診断装置 2 除細動器 3 心マッサージ器 4 機能的電気刺激装置 5 脳・脊髄電気刺激装置 6 光線治療器 7 低周波治療器 8 高周波治療器 9 超音波治療器 10 熱療法用装置 11 針電極低周波治療器 12 電位治療器 13 骨電気刺激癒合促進装置 14 卵管疎通診断装置 15 ヘリウム・ネオンレーザ治 療器 16 半導体レーザ治療器 日本放射線技術学会雑誌 424 19 一人用患者監視装置 20 医用テレメータ 21 尿量モニタ 22 呼吸流量計 23 呼吸抵抗計 24 電子スパイロメータ 25 基礎代謝測定装置 26 呼気ガス分析装置 27 呼吸機能検査装置 28 鼻腔通気度計 29 健康検診システム 十三 知覚検査又は運動機能検査用器 具のうち,次に掲げるもの 1 筋電計 2 電気刺激装置 3 治療点検索測定器 4 歯科用電気診断用機器 十四 医療用鏡のうち,次に掲げるも の 1 軟性ファイバースコープ 2 電子内視鏡 3 超音波内視鏡 4 内視鏡用医用電気機器 十五 電気手術器 十六 医療用焼灼器 十七 整形用器具器械のうち,次に掲 げるもの 1 展伸・屈伸回転運動装置 2 自動間欠牽引装置 3 簡易型牽引装置 17 18 19 20 21 十 十一 十二 超音波手術器 ハイパーサーミァ装置 結石破砕装置 歯科用イオン導入装置 歯科用両側性筋電気刺激装 置 血液検査用器具のうち,オキシ メータ 血圧検査又は脈波検査用器具の うち,脈波計 内臓機能検査用器具のうち,次 に掲げるもの 1 磁気共鳴画像診断装置 2 生体磁気計測装置 3 心拍出量計 4 他用途測定記録装置 5 心臓カテーテル検査装置 6 アンギオ検査装置 7 血流計 8 内圧計 9 心音計 10 心拍数計 11 脈拍数計 12 心電計 13 脳波計 14 生体現象データ処理装置 15 誘発反応測定装置 16 眼振計 17 網膜電位計 18 集中患者監視装置 4 他動運動訓練装置 歯科用ユニット 歯科用エンジンのうち,次に掲 げるもの 1 歯科用空気回転駆動装置 2 歯科用電気回転駆動装置 二十 歯科用ハンドピースのうち,次 に掲げるもの 1 高速エアタービンハンドピ ース 2 ストレート又はギアードア ングルハンドピース 二十一 歯科用切削器のうち,歯石・歯 垢除去器 二十二 歯科用蒸和器及び重合器のう ち,次に掲げるもの 1 紫外線照射器 2 可視光線照射器 二十三 医薬品注入器のうち,次に掲げ るもの 1 輸液ポンプ 2 自動点滴装置 3 造影剤注入器 十八 十九 修理業の修理区分 薬事法施行規則別表 1 の 4 (施行規則第26条の 2 の 2) 修理区分 第 第 第 第 第 第 第 第 第 1 2 3 4 5 6 7 8 9 区分(G1) 区分(G2) 区分(G3) 区分(G4) 区分(G5) 区分(G6) 区分(G7) 区分(G8) 区分(G9) グループ名 画像診断システム関連 生体現象計測・監視システム関連 治療用・施設用機器関連 人工臓器関連 光学機器関連 理学療法用器械器具関連 歯科用機器関連 検体検査用機器関連 鋼製器具・家庭用医療機器関連 第 1 区分∼第 7 区分までは特定修理医療用具(別表第 1 の 医療用具)が含まれます. 第 57 卷 第 4 号
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