参考:合理化だより128号(pdf - 日本電気協会 北陸支部

合理化だより
第1
28号
20
13.3.
2
6
128
随 想
電力システムのこれから
福井大学大学院工学研究科 電気・電子工学専攻
教授 田 岡 久 雄
電力システム技術は、電気が社会に
てきた。コンピュータが普及すると、電力システムの数式表
普及し始めた明治の頃から発展してき
現による解析が盛んになり、高度なGUI機能を備えた、精
た歴史の長い学問分野の一つである。
度よく高速に解析を実行するためのソフトウェアが開発され
しかしながら、電力の供給体系を担う
てきた。
電力システムの挙動は把握できている
一方で、電力システムに再生可能エネルギーを利用した分
ようでいて、生き物のように成長して
散型電源が普及するにつれ、従来の確定的な技術の開発では
おり、常に進歩している。そのような中で東日本大震災を経
対応できない不確実な部分が多くなっている。そのような電
験し、電力システムのある面の脆弱さに気付かされたことは
力システムは、厳密に制御しようとすると多くの情報を用い
記憶に新しい。言われて久しい低炭素社会の実現、再生可能
た制御が必要になり、不確実性を許容しようとすると設備に
エネルギーの有効利用だけでなく、電力の供給体制そのもの
大きな余裕を持たせなくてはならない。このトレードオフを
を改めて考え直す必要性が生じるなど種々の課題が見え、ま
如何に保つかが大切である。
だまだ電力システムは成長していると実感するこの頃である。
電気の大量生産から少量多品種生産の分散型電源へのシフ
私が長年取り組んできた電力システムのシミュレーション
ト、防災に強い自律的な電力コミュニティ、情報共有により
技術は、電力システムの計画運用業務、電力機器の開発等に
迅速な電力融通のできるICT技術を使ったシステム技術な
欠かせない。電力の流れをシミュレーションし、事故や異常
ど、技術課題も山積している。このような課題に答を出し、
現象を分析し、その対策・制御方式を検討するなどの種々の
これからの社会を託す若者に夢を与えることが、我々研究者
場面で、電力会社・メーカー・大学・研究機関等で行われて
に課せられた使命と考え、日々研究に勤しんでいる次第であ
いる。以前は、実際の機器の特徴を抽出したモデルを、いわ
る。
ば系統のミニチュアを構築し試験を行って解析する交流計算
盤などのアナログ回路による解析が一般的であった。系統が
大規模になるにつれ、大きな系統を小さな系統に縮約して模
擬するだけでは、現象を把握することが難しい例が多くなっ
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合理化だより
第1
2
8号
平成2
4年度
エネルギー管理功績者・優良事業者等決まる
平成24年度のエネルギー管理功績者およびエネルギー管理優良事
業者等が決定し、中部経済産業局長表彰をはじめとする各表彰が省エ
ネルギー月間(平成2
5年2月)に行われました。
■表彰式日程■
表彰区分
月
日
会
場
中部経済産業局長表彰
富山県知事表彰
日本電気協会北陸支部会長表彰(富山)
2月6日水
富山電気ビル(富山市)
日本電気協会北陸支部会長表彰(石川)
2月19日火
金沢都ホテル(金沢市)
福井県知事表彰
日本電気協会北陸支部会長表彰(福井)
2月12日火
福井県中小企業産業大学校(福井市)
エネルギー管理功績者
【中部経済産業局長表彰】
竹
内
【福井県知事表彰】
吉
洋氏
勤務先 協和電線株式会社(福井県)
【社団法人
日本電気協会北陸支部会長表彰】
平
澤 良
男氏
勤務先 国立大学法人 富山大学
大学院(富山県)
― 2 ―
村
勤務先
浩
徳氏
アボットジャパン株式会社
勝山事業所(福井県)
合理化だより
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28号
エネルギー管理優良事業者等
【中部経済産業局長表彰】
森永北陸乳業株式会社
代表者
所在地
【社団法人
【富山県知事表彰】
株式会社
富山工場
取締役工場長
富山県
金
山
哲
志
日立国際電気
代表者
所在地
工場長
富山県
金
井
富山工場
史
幸
日本電気協会北陸支部会長表彰】
コマツNTC株式会社
福野工場
ジェイ・バス株式会社
小松工場
株式会社 PFU
Pr
oDeSセンター
代表者
代表者
代表者
所在地
代表取締役社長
桃 井 克 志
富山県
所在地
代表取締役社長
團 野 達 郎
石川県
清川メッキ工業株式会社
レンゴー株式会社
武生工場
代表者
代表者
所在地
代表取締役社長
清 川
肇
福井県
所在地
工場長
斎 藤
福井県
秀
― 3 ―
直
所在地
代表取締役社長
長谷川
清
石川県
合理化だより
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8号
事
事 例
例 紹 介
C
穿孔ドリルの開発
CF
FR
RP穿孔ドリルの開
福井県工業技術センター
機械・金属部
金属加工研究グループ
嶋
主任研究員
田
浩
文
1.はじめに
近年金属より軽量で強度が高いCFRP(炭素繊維強化プラスチック)複合材料が、航空機をはじめ自動車や機械部品などの
軽量化材料として金属部品に代わって多く用いられるようになり、省エネルギー、二酸化炭素排出量の削減に大きな効果が出
ています。CFRPは炭素繊維に樹脂(プラスチック)を含浸させたシート状の繊維を交互に積層した構造で、炭素繊維の配向
方向の影響を受けるため、機械的性質は不均質で異方性を示す難削材です。特に穿孔加工においては、含浸された高硬度の炭
素繊維が刃先を磨耗させるため、貫通面(裏面)にバリやケバ立ち、繊維の抜けが発生し、穿孔断面には層間に剥離が生じる
等、高品位の加工面が得られず、工業部材として機能できなくなる問題があります。現状40穴程度の穿孔加工で刃先が磨耗し
工具寿命となるため、長寿命のドリル開発が期待されています。
本研究を行った結果、市販ドリルの数十倍の寿命を有し、穿孔品質の高いドリルを開発しました(特許取得済み)。穿孔試験
結果から新開発ドリルの性能を国内外で市販されているCFRP加工専用ドリルと比較し、その優位性を紹介します。
2.研究開発の概要
表1
2-1 CFRP複合材料について
実験に使用したCFRP複合材料(板厚5 ㎜)の機械的物性値を
表1に示します。
CFRP材料が持つ主な特長として、
・軽量・高強度・高剛性
・高い寸法安定性(低熱膨張率)
・高振動減衰性(鉄の約5倍)
・高熱伝導率(2~30
0W・m/
℃)
・高耐食性(耐候性、耐アルカリ、耐酸)
・高X線透過特性(アルミの約8倍)
があり、金属材料に代わる材料として、期待されています。
CFRP板の構成および機械的物性値
表層
内
東レ製3K 平織クロス
層 東レT
7
0
0 0°/
9
0°交互積層
引 張 強 度( M Pa) 1
20
0
引張弾性率(GPa) 6
5
曲 げ 強 度( M Pa) 8
00
曲げ弾性率(GPa) 5
7
(㈱ACM提供)
2-2 穿孔試験について
CFRP板は樹脂を含浸させたシート状の繊維を交互に接合させた積層構造であり、穿孔加工時に発生するドリル軸方向
(CFRP板厚方向)に働くスラスト力が、刃先の磨耗に伴い増大し、接合されたシート間の接合力を上回ると、接合界面が剥
がれシート積層間に剥離を生じます。このため、耐摩耗性の向上を狙いドリル母材にはPCD(焼結ダイヤモンド)や超硬合金
といった高硬度材料を用い、さらに切刃刃先の耐摩耗性を向上させるためのコーティングを施すなど、各ドリルメーカーは工
夫を凝らした工具設計を行っています。
表2に記述した加工条件により工作機械(㈱松浦機械製作所製 MC-510VF-Gr
)にて、表1記載のCFRP板を用いた穿孔
試験を行い、切粉形状観察、スラスト抵抗測定、10
00穴穿孔試験、穿孔断面の観察および粗さ測定、超音波探傷検査を行いま
した。
2-3 工具寿命について
某航空機メーカーでは、穿孔径の
20%を超える切残し、バリ、層間剥
離および、表層剥離を認めておらず、
また加工面表面粗度を3.
2μm以下
に規定しています。本実験において、
当該基準(1㎜)を超えた時点の穿
孔数を持って、工具寿命としました。
表2
実験に使用したドリルおよび加工条件
ドリル種類
(超硬製2枚刃ダイヤモンドコーティング)
A社(国内)
CFRP用
B社(海外)
CFRP用
新開発ドリル
工具径(㎜)
5
5
5
回転数(r
pm)
3
18
5
7
64
3
3
800
送り速度(㎜/
mi
n)
1
59
3
82
1
00
切削液
なし
なし
なし
※加工条件は、ドリルメーカー推奨値に設定
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合理化だより
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28号
3.実験結果
図1 ドリル形状、切粉
図2 スラスト抵抗値
図3 1穴目
図7
図4 1
0
00穴目
図5 超音波探傷試験(1000穴)図6
A社
ドリル形状、切粉
図9
穿孔断面観察
(×50)
図8 スラスト抵抗値
1穴目
図10 1000穴目
図11 超音波探傷試験(1000穴)図12 穿孔断面観察(×50)
CFRP用ドリル
B社
表3
CFRP用ドリル
穿孔断面の表面粗さ測定結果(1
000穴目)
ドリル
A社
B社
新開発
穿孔断面粗さ(μm)
0.
7
1
8
0.
4
3
8
2.
56
大手航空機メーカー基準:3.
2μm以下
図1
3 ドリル形状、切粉
図14 スラスト抵抗値
図15 1穴目
図16 10
0
0穴目
図19 新開発ドリルによる2000穴穿孔試験結果
4.まとめ
図17 超音波探傷試験(1000穴)図1
8 穿孔断面観察
(×50)
新開発ドリル
新開発ドリルでは2000穴以上の寿命が確認されました。ま
たバリ取りなどの2次加工を必要としないため、加工工程短
縮による加工コストの低減が図られます。さらにスラスト力
が低いことから、消費電力低減に貢献するドリルとして期待
されます。新開発ドリルが省エネルギーに貢献し、CFRP材
料の需要促進の一助となれば幸いです。
なお新開発ドリルは、㈱ギケン(TEL:0776-6
6-2280)
で製品化され、販売されています。
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ちょっと一
ちょっと一言
省エネと節電
省エネと節電
北陸電力株式会社
いろいろな方とお話をする中で、なにかと節電が話題に上
ることがあります。会社をあげて、従業員が一丸となって取
り組んでいるお話や、少しでも小さな負担で大きな効果が得
られるような工夫のお話など、苦労話をうかがって頭が下が
るばかりです。そんな話の中で、省エネと節電の違いを意識
する場合があります。
省エネとは、電気をはじめとするエネルギー全般について、
ムダを省いて効率的に使用することにより、全体の消費量を
抑制すること。
節電とは、エネルギーの中でも電力だけについて、その使
用のピーク時間帯で、電力の消費を抑制すること。
中には、これまでの省エネの取り組みに加えて、さらに何
富山支店
守
城
淳 一
をすればいいのかわからないとおっしゃる場合があります。
また、ピーク時間帯はもちろん、それ以外の時間帯もがんば
って節電に取り組んでおられる場合があります。どの場合も、
高い意識をお持ちになっていると思います。このような時は、
その違いや具体的な取り組み事例をお話させていただいて、
理解を深めていただくようにしています。
あまり無理をなさらずに、これまでよりちょっとだけピー
ク時間帯の電気の使用を抑えていただけたらと思います。そ
して、息切れすることなく節電を続けていただきたいと思い
ます。
今、エネルギーへの関心がこれまでになく高まっています。
省エネと節電のどこがどう違うのか知っていることに越した
ことはありませんが、とにかく、節電の取り組みを契機に、
まずはムダに使わないという心がけが大切だと思います。
お
せ
らせ
知ら
お知
平成
平
成25年度
年度
エ
ネルギー管理優良事業者等・功
エネルギー管理優良事業者等
功績者を募
績者を募集
北陸電気使用合理化委員会では、 エネルギー使用合理化の成果が特に顕著な事業者等や個人の表彰を行なっており、平
成25年度の候補者を次のとおりに募集します。
【候補の対象】
焔エネルギー管理優良事業者等
電気使用の高度化ならびに合理化等を図り、エネルギー使用合理化の成果が特に顕著な事業者および工場・事業場
焔エネルギー管理功績者(個人)
電気使用の高度化ならびに合理化等の研究もしくは実施を積極的に推進し、またその普及指導に努めた方で、エネル
ギー使用合理化の功績が特に顕著な方
【表彰の種類】
焔中部経済産業局長表彰
焔各県(富山、 石川、 福井)知事表彰
焔社団法人 日本電気協会北陸支部会長表彰
【公 募 期 間】
優良事業者等表彰 平成2
5年9月末まで
功績者表彰
平成2
5年1
0月末まで
【応 募 先】
北陸電気使用合理化委員会(北陸電力㈱ 営業本部 営 業 推 進 部 内) TEL:076-441-2511
富山県電気使用合理化委員会(北陸電力㈱ 富山支店 営業部営業担当内) TEL:076-441-3511
石川県電気使用合理化委員会(北陸電力㈱ 石川支店 営業部営業担当内) TEL:076-233-8880
福井県電気使用合理化委員会(北陸電力㈱ 福井支店 営業部営業担当内) TEL:0776-29-6982
(応募様式等については、北陸電気使用合理化委員会または各県電気使用合理化委員会にお問い合わせください。)
【選
考】
北陸電気使用合理化委員会または各県電気使用合理化委
合理化だより No.
128 平成25年3月26日発行
員会において、 1
0月~1
1月に調査・選考をいたします。
【表
彰】
発行所 〒9
3
008
58 富山市牛島町13-15(百川ビル内)
各表彰は、 省エネルギー月間(2月)に行われる予定で
花日本電気協会北陸支部内 北陸電気使用合理化委員会
す。
代表者
― 6 ―
上
野
秀
郎
合理化だよりは再生紙を利用しています