12 上皮性卵巣癌に対する初回治療におけるカルボプラチン+パクリタキセル 療法のゲムシタビン併用と非併用療法を比較した第 III 相試験 Phase III Trial of Carboplatin Plus Paclitaxel With or Without Gemcitabine in First-Line Treatment of Epithelial Ovarian Cancer Andreas du Bois, Jørn Herrstedt, Anne-Claire Hardy-Bessard, Hans-Helge Müller, Philipp Harter, Gunnar Kristensen, Florence Joly, Jens Huober, Elisabeth Åvall-Lundqvist, Béatrice Weber, Christian Kurzeder, Svetislav Jelic, Eric Pujade-Lauraine, Alexander Burges, Jacobus Pfisterer, Martina Gropp, Anne Staehle, Pauline Wimberger, Christian Jackisch and Jalid Sehouli J Clin Oncol. 2010 Sep 20;28 (27):4162-9. Epub 2010 Aug 23. INTRODUCTION カ ル ボ プ ラ チ ン + パ ク リ タ キ セ ル (TC) 療 法 は 、 上 皮 性 卵 巣 癌 の 標 準 的 な 1st-line chemotherapy として広く受け入れられている。この研究では卵巣癌の長期予後を更に改善さ せることを目的とし、プラチナ製剤、タキサン製剤と交差耐性のない薬剤を追加したレジメンの 有効性を検討する。 追加する薬剤としては、再発卵巣癌に対して単剤または他剤との併用で有効性が確認され ている、ゲムシタビンを採用した。カルボプラチン+パクリタキセル+ゲムシタビン療法 (TCG 療法)はすでに phase II study で有効性、安全性が確認されている。 今回、TC 療法と TCG 療法を比較した phase III study を行った。 PATIENTS AND METHODS Prospective, randomized, phase III study である。 6 週以内に腫瘍減量術を施行され、組織学的に確定診断されており、それ以前に治療歴の ない上皮性卵巣癌患者を対象とした。対象患者は術後の残存病変と進行期により 3 群に分類 され、それぞれの群で TC 療法群と TCG 療法群に無作為に振り分けられた。 TC 療法はカルボプラン AUC 5、パクリタキセル 175mg/m2 を 21 日サイクルの day 1 に投与し、 TCG 療法は TC 療法のレジメンの day 1, 8 にゲムシタビン 800mg/m2 を追加した。両レジメンと も 6 サイクルを標準とした。 化学療法施行中に進行が見られた症例はプロトコールより除外した。6 サイクル後、部分寛 解 (PR)であった症例は主治医の判断により化学療法を継続した。 副作用、有害事象は NIC-CTC 基準に沿って評価した。QOL の評価は EORTC ガイドライン に準じて行った。治療効果の判定は RECIST によって行った。 Primary end point は全生存期間 (OS)とし、secondary end point は無病生存期間 (PFS)、治 療への反応、毒性、QOL とした。 RESULT 適格基準を満たした 1742 例を対象とした。882 症例が TC 療法、860 例が TCG 療法を施行 された。TC 療法群の 87.2%、TCG 療法群の 86.2%が 6 サイクルを完遂できた。TCG 療法群で 有意に治療開始の延期、薬剤の減量が高頻度であった。TCG 療法群で grade 3-4 の血液毒 性、発熱性好中球減少症が有意に高頻度であり、輸血や抗菌薬、エリスロポエチン、G-CSF の使用も有意に多かった。grade 3-4 の倦怠感も TCG 療法群で有意に高頻度であった。それ に伴い、QOL の評価でも TCG 群が劣っていた。 腫瘍の反応は TCG 療法群がわずかに勝っていたが、PFS や OS には反映されなかった。 PFS の中央値は TCG 療法群で 17.8 ヶ月、TC 療法群で 19.3 ヶ月であり、有意に TC 療法群 が勝っていた。OS の中央値は TCG 療法群で 49.5 ヶ月、TC 療法群で 51.5 ヶ月であったが、 有意差を認めなかった。 DISCUSSION 卵巣癌の 1st-line chemotherapy として TC 療法が用いられるようになって予後は改善してき たが、長期的な予後に関してはまだ満足できるものではない。そのため更なる化学療法の改 善が望まれている。 交差耐性のない薬剤を追加する試みは、過去 10 年間に、さまざまな薬剤で試みられてきた が PFS、OS が改善した報告はなく、殆どの場合で有害事象の増加が見られた。 今回の研究でも TC 療法と比較し TCG 療法は患者にとって負担が大きく PFS、OS も改善し ないことがわかった。そのため、現段階では TCG 療法は推奨できないと考えられた。 <松本のコメント> Tri-weekly TC 療法は上皮性卵巣癌の 1st-line chemotherapy として比較的良好な成績をお さめているが、更なる予後改善、QOL の向上のため、日々、世界中の研究機関で新たなレジ メンの検討がなされている。 昨年、国内の研究機関からも、パクリタキセル投与を weekly に変更したレジメンで PFS の改 善をみたというホームラン級の報告が Lancet になされた (Katsumata N et al; Japanese Gynecologic Oncology Group. Dose-dense paclitaxel once a week in combination with carboplatin every 3 weeks for advanced ovarian cancer: a phase 3, open-label, randomised controlled trial. Lancet 2009; 374: 1331-8.)。 われわれ一臨床医も、多施設共同臨床試験への症例登録など、積極的な協力を行っていく 必要があると考える。 (産婦人科 松本 治伸)
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