Ni₂P及び関連合金表面の原 - 北海道大学 触媒化学研究センター

11B1009
Ni2P 及び関連合金表面の原子構造・電子状態と触媒活性の相関
Correlation of atomic / electronic structures and catalytic properties of
the Ni2P and related alloy surfaces
松井公佑 a,松井文彦 a, 有賀寛子 b,鴻野健太郎 b,朝倉清高 b,大門寛 a
Hirosuke Matsui,a Fumihiko Matsui,a Hiroko Ariga,b Kentaro Kouno,b
Kiyotaka Asakura,b Hiroshi Daimona
a
a
奈良先端科学技術大学院大学, b 触媒化学研究センター
Nara Institute of Science and Technology, bCatalysis Research Center
背景と研究目的:Ni2P は石油精製過程にお
ける新規な水素化脱硫・脱窒素触媒として
期待されている[S. T. Oyama, et al., J.
Catal. 216 (2007) 342.]。原子レベルでの原
子構造・電子状態と触媒活性の相関につい
て解明するために、当センターにて単結晶
Ni2P(10-10)表面の NO の吸着反応につい
て調べる一方、局所構造・電子状態につい
て放射光を用い、元素選択的で表面敏感な
XANES-Auger 電子回折分光法にて解析を
行っている。最表面の Ni 原子の量や化学状
態によって触媒特性が大きく左右される、
と考えられている。実際、表面の再構成構
造や W 原子などの不純物によって NO 分子
に対する反応性が大きく変化することがわ
かってきた。本課題では当センターに導入
されたマルチファンクションチャンバー
(STM, LEED, TPD, XPS)の X 線源の立
ち上げを行った。XPS と電子線回折を用い
て、SPring-8 での光電子回折と当センター
での表面化学反応の実験結果を相互に関係
づけることができるようになった。
実験および結果:Fig.1(a)に(10-10)表面の
原子配列を示す。2 mm3 mm の Ni2P
(10-10) 単結晶試料片にφ0.2 の W ワイヤ
を取付け、超高真空中でイオンスパッタと
加熱を繰り返し清浄化した。温度は試料に
取り付けた K タイプの熱電対で評価した。
これまで加熱温度が 400℃あたりを境目と
して(1×1)と c(2×4)の作り分けができると
されてきた。また、これまで STM で局所
的に c(2×2)の hexagonal 構造が確認されて
いた。今回 385℃の加熱処理で c(2×2)構造
を比較的大面積で作製することができたの
が成果の一つである。
Fig.1(b)は SPring-8 BL25SU にて測定し
た P 2p の光電子回折パターンである。中央
縦の Kikuchi バンド上に表層下の P 原子か
Figure 1. (a) Atomic arrangement of the Ni2P(10-10)
unreconstructed surface. (b) 2-steradian P 2p photoelectron diffraction pattern. (c) Low energy electron
diffraction pattern and (d) STM image from the
Ni2P(10-10) c(22) surface after a dosage of 1000 L NO
gas at 350C.
らの前方収束ピークが現れている。光電子
回折分光法からは表層下の原子の電子状態
の情報が得られる[F. Matsui et al., J. Ele.
Spec. 178-179 (2010) 221.]。
当センターにて同じ手順で c(2×2)構造を
作製し、さらに同表面を NO に曝露した。
Fig.1(c)と(d)はそれぞれ LEED パターンと
STM 像である。XPS からは曝露にともな
い O の吸着量の増加を確認した。現在、反
応前後の局所電子状態の変化について解析
を進めている。
今後の課題: (1×1)、c(2×4)および今回得
られた c(2×2)表面の Ni の組成の深さ分布
の情報と合わせ、吸着反応機構について解
明していく。
論文発表状況:
[1] H. Matsui, F. Matsui, N. Maejima, T.
Matsushita, H. Ariga, K. Asakura, H. Daimon
“Atomic and electronic structures of catalytic
Ni2P surfaces” ISSS-6 (2011.12.12, Tokyo).