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平成 22 年度内閣府経済社会総合研究所委託事業
『サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究』
成 果 報 告 書 ①
平成 22 年度 「公的サービス」研究会 報告書
平成 23 年 3 月
本報告書は、内閣府経済社会総合研究所の平成 22 年度委
託事業「サービス・イノベーション政策に関する国際共同
研究」の研究成果として、株式会社日本総合研究所が取り
まとめたものです。
本報告書の複製、転載、引用等には内閣府経済社会総合
研究所の承認手続きが必要です。
目次
序論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i~iv
第 1 章 巻頭言
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
【研究テーマ 1】
第 2 章 医薬品の開発及び承認申請における米国 Investigational New Drug 制度が適用された
開発・承認事例の検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
第 3 章 日本の医薬品・医療機器開発への Investigational New Drug 制度の導入による
経済的影響の検討
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
【研究テーマ 2】
第 4 章 治療費の国際比較-乳癌患者におけるシミュレーション- ・・・・・・・・・・・
39
【研究テーマ 3】
第 5 章 わが国における高脂血症治療薬の適正使用にかかる経済的評価(1)
・・・・・・・・ 48
第 6 章 わが国における高脂血症治療薬の適正使用にかかる経済的評価(2)
・・・・・・・・ 66
【横断的研究】
第 7 章 正味現在価値に基づく新規医薬品データベースを用いた医薬研究開発生産性の評価と
制度論的考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
第 8 章 社会イノベーションの成立条件
・・・・・・・・・・・・・
92
第 1 回研究会議事録(平成 22 年 7 月 20 日)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
98
第 2 回研究会議事録(平成 22 年 10 月 25 日)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
107
第 3 回研究会議事録(平成 23 年 1 月 21 日)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
130
添付資料
内閣府経済社会総合研究所委託事業
「サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究」
成果報告書①
序論
1 「サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究」プロジェクトについて
○創設の背景
現在、わが国経済の構造は、雇用の約2割を占める製造業が、生産性が高く国際競争力がある一方、雇用
の約7割、GDP も約7割を占めるサービス業が、世界に比較して生産性が低いという問題を抱えている。すな
わち、わが国とわが国経済の持続的発展のためには、サービス業の生産性向上(イノベーション)が鍵となる。
一方、世界各国においてもサービスサイエンスに関する様々な方針が策定され、施策が実施されてきてい
る。例えば米国では、2004 年 12 月、通称パルミサーノ・レポートが発表され、サービス産業の振興が謳われ、
2007 年8月の米国競争力法においては、政府による報告書の策定が規定された。また、NSF によって、サ
ービスサイエンスの取組みを支援する Service Enterprise System プログラムが立ち上げられ、2000 年5月
から 2008 年7月の間に 137 件の課題が採択され支援されてきている。また、英国においても、イノベーショ
ン・大学・技能省の提言により「公共サービスイノベーション研究所」が創設される等、各種の施策が講じられ
ている。その他 EU 諸国、アジア等でも、サービスサイエンスに関する様々な取組みが行われている。
○概要
内閣府経済社会総合研究所「科学技術と経済社会」研究チームでは、平成 21 年度より委託研究「サービ
ス・イノベーション政策に関する国際共同研究」を創設した。本研究では、サービス・イノベーションの重要性
を示す昨今の日本及び世界の状況に鑑み、それを正しく理解し適切に推進するため、平成 22 年度は、流通
と理学研究会、製造業研究会、公的サービス研究会、俯瞰工学研究会の4つの研究会を開催し、サービス・
イノベーション政策に関する研究を実施した。
2 「公的サービス」研究会:趣旨と成果の概要
本研究会では、少子高齢社会において国民の生活に密接に関わる医療分野を取り上げた。社会保障とし
ての医療という観点から、大学における基礎研究から医薬品・医療機器につなげるまでの諸問題や、保険制
度のあり方における諸問題を研究対象とした。
医療分野では「日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進」が重要なテーマであるが、そ
の中でも、「技術革新の成果は生まれてきているのに、それを医薬品・医療機器として実用化して国民の送り
届ける過程でまだまだ隘路が存在する」という点を問題として取り上げ、そこにどのようなイノベーションが求め
られるかを研究した。特に、技術革新の成果を実用化するまでに時間がかかる問題や、個々の技術革新の有
用性を経済的に的確に評価する方法論がなかなか確立されない問題、およびその評価を保険制度に反映さ
せるのが難しいという問題、等に焦点を当てている。また、本テーマについては、世界各国が様々な取組みを
推進しており、その最新状況の把握も本研究会の重要な活動と位置づけた。
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内閣府経済社会総合研究所委託事業
「サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究」
成果報告書①
この研究会の研究活動および成果によって、医療分野でサービス・イノベーションを推進していくことの重
要性を広く関係者に周知するとともに、イノベーションを阻害する要因としてどこにどのようなものがあり、誰が
どのように動くことが現状に変化をもたらす推進力となるのかについて考察する第一歩が踏み出せるようにし
たい。
以下に、具体的研究テーマの概略を説明する。
まず、臨床試験制度の改革がどれだけ医薬品開発を迅速化できるか、および、どれだけの経済効果を生
むかを定量的に研究した。具体的薬剤をとりあげ、米国 IND 制度下での薬剤開発プロセスをレビューし、示
唆を得た上で、日本において IND 制度が導入され、研究機関が非営利目的で実施する臨床研究の結果を
薬事承認申請のための評価資料として用いることが可能になった場合の、開発期間短縮(~2年)、発売時期
が早まったことに起因する総売上増大(~100 億)を推算した。同様の推算を、具体的な医療機器に対しても
行った。これまでは概念的に IND 制度導入の必要性を論じるほかなかったが、この研究は、定量的な経済効
果を拠りどころとした議論を可能にした点に意義があると考えられる。(第2章、第3章)
次に、医療保険制度の違いによって治療費負担が国ごとにどのように異なってくるかを研究した。具体的
疾病(乳癌)を対象とし、日/米/英/独において、同一の医療が提供された場合の治療費を算定し、患者
1 人当たりの総治療費や患者自己負担を比較した。各国の医療保険制度はマクロ的観点で比較されることが
ほとんどであり、ある特定の疾病に対する治療費を定量的に比較した点が本研究の特色である。日本での医
療保険制度の今後のあり方を検討する上での基礎的な定量数値を示したのみならず、ベース数値の取得方
法など研究の手続きに関しても知見を得ることができた。(第4章)
3つめの研究は、経済効果に基づいて医薬品の有効性を評価することの重要性を示している。この研究に
おいても、具体的薬剤(高脂血症薬であるプラバスタチン)を対象としてとりあげた。高脂血症薬は、冠動脈系
心疾患の発症を予防する目的で、脂質異常症の患者へ広く投与されているが、コレステロール値以外にも、
年齢、性別、高血圧、喫煙など様々な危険因子があり、心疾患発症防止に対して高脂血症薬による薬剤治
療を行うことが経済的にみて効果的かどうかは疑問がある。本研究の試算に基づけば、プラバスタチン治療
による心血管疾患発症の一次予防は、危険因子別集団ごとに費用効果が著しく異なり、また、全般的に見て
費用効果がかなり低い可能性があることが見えてきた。(第5章、第6章)
4つめに、医薬研究開発生産性の評価方法を検討するとともに、生産性に制度がどのように影響を与える
かを研究した。生産性を評価するには、現時点では、ディシジョン・ツリー・アナリシス/シナリオ・アナリシスに
立脚した DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法が最も妥当な手法であるとされている。ただ、今後の指針
を得るためには、生産性を薬効領域間或いは対象地域間で比較することが必要であるが、そのための基盤と
なるデータ入手が非常に難しい。本研究では PharmaPipelines
TM
が、学術研究の要請に耐えうる精度と網羅
性を有していることが確認され、日米欧の比較分析の結果、日本における医薬 R&D の付加価値形成が過少
であることが示唆された。(第7章)
また、実際にイノベーションを実現させるには、世の中~社会に動きを起こすことが死活的に重要であり、
そのために何が必要となるかについて経営管理の側面から考察した。(第8章)
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内閣府経済社会総合研究所委託事業
「サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究」
成果報告書①
3 「公的サービス」研究会:構成メンバー
本研究の推進にあたっては、国民、アカデミア、医師、行政、産業の観点が織り込まれるよう、かつ、海外の
先進事例を反映できるよう、研究委員および協力者を選定した。
■委員(座長以外 50 音順)
座長
川上浩司
京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野
教授
小野俊介
東京大学大学院薬学系研究科
黒川達夫
千葉大学薬学研究院国際臨床開発・規制科学
末松千尋
京都大学経営管理大学院
仙石慎太郎
京都大学
物質‐細胞統合システム拠点
准教授
樋之津史郎
京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野
准教授
福元健太郎
学習院大学法学部
准教授
客員教授
教授
教授
■研究会招待講演者(50 音順)
尾形裕也
九州大学大学院医学研究院
教授
津谷喜一郎
東京大学大学院薬学系研究科
特任教授
■国際シンポジウム講演者・登壇者(50 音順)
井村裕夫
財団法人先端医療振興財団
理事長
大西昭郎
日本メドトロニック株式会社
加藤益弘
アストラゼネカ株式会社
八山幸司
内閣官房医療イノベーション推進室
福原俊一
京都大学大学院医学研究科医療疫学分野
吉田易範
厚生労働省保険局医療課
取締役副社長
代表取締役会長兼社長
企画官
教授
薬剤管理官
Lawrence Liberti Centre for Innovation in Regulatory Science, Ltd. 理事長
Scott R. Smith
The Agency for Healthcare Research and Quality シニアフェロー
■研究協力者
漆原尚巳
京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野
助教
大西佳恵
京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野
博士後期課程
浜田将太
京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野
博士後期課程
■主催者
内閣府経済社会総合研究所(ESRI)
川原田信市
前総括政策研究官
青山
現総括政策研究官
伸
西山裕子
■事務局
研究官
株式会社日本総合研究所
加藤
彰
総合研究部門
マネージャー
奥田宗臣
総合研究部門
コンサルタント
大谷倫恵
総合研究部門
コンサルタント
田川絢子
総合研究部門
コンサルタント
横内友美
総合研究部門
コンサルタント
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内閣府経済社会総合研究所委託事業
「サービス・イノベーション政策に関する国際共同研究」
成果報告書①
4 「公的サービス」研究会:今年度の活動
■研究会 (本報告書の 97 頁~149 頁に議事録を掲載)
第 1 回 平成 22 年 7 月 20 日(火) 10 時 00 分~12 時 30 分
第 2 回 平成 22 年 10 月 25 日(月) 9 時 30 分~11 時 50 分
第 3 回 平成 23 年 1 月 21 日(金) 9 時 30 分~12 時 00 分
■海外調査 (別冊の「海外調査報告書」として編集)
平成 22 年 9 月 19 日~9 月 23 日
米国
・大塚製薬アメリカ
・The Agency for Healthcare Research and Quality (AHRQ)
・FDA - Center for Biologics Evaluation and Research
■国際シンポジウム (別冊の「国際シンポジウム報告書」として編集)
平成 23 年 2 月 23 日 10 時 00 分~17 時 00 分
※研究会詳細は本報告書添付の議事録、海外調査および国際シンポジウム詳細は別途報告書を参照
5 「公的サービス」研究会:今年度の成果
■研究報告 (本報告書の以下の各章に、研究成果を取り纏めている)
・第2章:医薬品の開発及び承認申請における米国IND(*)制度が適用された開発・承認事例の検討
・第3章:日本の医薬品・医療機器開発へのIND制度の導入による経済的影響の検討
・第4章:治療費の国際比較-乳癌患者におけるシミュレーション-
・第5章:わが国における高脂血症治療薬の適正使用にかかる経済的評価(1)
・第6章:わが国における高脂血症治療薬の適正使用にかかる経済的評価(2)
・第7章:正味現在価値に基づく新規医薬品データベースを用いた医薬研究開発生産性の評価と制度論
的考察
・第8章:社会イノベーションの成立条件
*)Investigational New Drug
■その他
・海外調査報告書
・国際シンポジウム報告書
以上
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