第25回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会 プログラム・抄録集

第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会
プログラム・抄録集
2012 年 5 月 17 日(木)
シェラトングランデ・オーシャンリゾート
コンベンションセンター 2F「ファウンテン」
ご 挨 拶
学術集会テーマ
「脳死・脳蘇生のサイエンスと
エデュケーションの融合」
皆様こんにちは、第 25 回日本脳死・脳蘇生学会総会・学術集会の会長を
拝命致しました国士舘大学大学院救急システム研究科田中秀治です。この日
本脳死・脳蘇生学会は、救急医療の臨床現場で議論されていた脳死判定や脳
死の病態、脳蘇生などを研究するために 1988 年に設立された由緒ある学会
です。スタッフ一同、身の引き締まる思いでこれまで準備をさせて頂きました。
今回の学術集会の主題は「脳死・脳蘇生のサイエンスとエデュケーション
の融合」です。その理由は、近年の脳死・脳蘇生に関わる社会的な変化・医
学的な変化にあります。
これまで、脳死は医学的な事象でありながら社会的な現象として多くの議
論がされてきましたが、脳死判定と臓器移植はその中心的な議題です。また
2009 年の臓器移植法の改正により、わずか 1 年半でこれまでの 10 年間にあっ
た以上のドナーから提供がありました。臓器提供数の増加の一方で、救急医
療の臨床の現場の悩みの種となっています。すなわち、脳死判定やグリーフ
ケアについては今後より多くの医療従事者が関わらなければなりません。そ
のためには、脳死や蘇生に関するエデュケーションが必要となってきました。
また近年の、病院前救急医療の進歩や心蘇生法の進歩により心蘇生の数は
増加しましたが、脳蘇生まで至っていないのが現状です。心肺蘇生のガイド
ラインや病院前の心肺蘇生法の進歩により、むしろ脳死が増加しているとの
印象さえあります。このために、さらに脳死の病態に対するサイエンスの構
築も必要となってきました。
今回の学術集会ではこれらの問題に焦点をあて、各界のエキスパートの英
知を結集し、さらなる検討をしていきたいと考えています。どうぞご参加頂
く皆様のご協力のもと、日本脳死・脳蘇生学会を実りあるものと致したく存
じます。
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今回は 17 日(木)に学術集会を開催させて頂きますが、前日の 16 日(水)
には院内コーディネーターや臓器・組織移植コーディネーターを対象とした
研修会をフェニックス・シーガイア・リゾートにおいて開催する予定です。
研修の場が少ないコーディネーターの方々にもエデュケーションの場を提
供するとの意味合いから、日本移植コーディネーター協議会(JATCO)と
連携して研修会を開催させて頂くことになりました。また、厚生労働科学研
究の一環として行われている「臓器提供におけるクオリティマネージメント
セミナー」についてのシンポジウムも開催する予定です。
前日は宮崎の海を見ながらリラックスして頂き、翌日の学術集会では真剣
なディスカッションをお願い致します。準備の至らぬところが多くございま
すが、皆様どうぞ宜しくお願い致します。
平成 24 年 5 月吉日
第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会 会長
国士舘大学大学院 救急システム研究科 教授
田中 秀治
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歴代会長・会期・開催地
会長
会期
第1回
杉本 侃(大阪大学救急医学)
1988.9.17
大阪
第2回
大塚敏文(日本医科大学救急医学)
1989.6.16
東京
第3回
魚住 徹(広島大学脳神経外科)
1990.6.2
広島
第4回
桂田菊嗣(大阪府立病院救急診療科)
1991.6.14
大阪
第5回
三井香児(東京大学救急部)
1992.6.19
東京
第6回
坂部武史(山口大学医学部麻酔・蘇生学)
1993.6.12
山口
第7回
大和田隆(北里大学医学部救命救急医学)
1994.6.17-18
横浜
第8回
島崎修次(杏林大学医学部救急医学)
1995.6.30
東京
第9回
小濱啓次(川崎医科大学救急医学)
1996.7.5
岡山
第 10 回
有賀 徹(昭和大学医学部救急医学)
1997.6.27
東京
第 11 回
鈴木 忠(東京女子医科大学救急医学)
1998.6.19
東京
第 12 回
塩貝敏之(京都武田病院脳神経外科診療科)
1999.6.25
京都
第 13 回
宮本誠司(奈良県立医科大学救急医学)
2000.3.24
奈良
第 14 回
加来信雄(久留米大学医学部救急医学)
2001.6.22
久留米
第 15 回
堤 晴彦(埼玉医科大学総合医療センター救命救急センター) 2002.6.22
大宮
第 16 回
林 成之(日本大学医学部救急医学教室)
東京
第 17 回
上田守三(東邦大学医学部附属大橋病院第2脳神経外科学) 2004.6.5
第 18 回
神野哲夫(藤田保健衛生大学脳神経外科)
2005.6.3
第 19 回
奥寺 敬(富山大学医学部救急・災害医学)
2006.6.2-3
富山
第 20 回
木下順弘(熊本大学大学院医学薬学研究部侵襲制御医学) 2007.6.1-2
熊本
第 21 回
杉本 壽(大阪大学大学院医学系研究科救急医学)
2008.5.8-9
大阪
第 22 回
北原孝雄(北里大学医学部救命救急医学)
2009.6.25-26
横浜
第 23 回
行岡哲男(東京医科大学救急医学)
2010.6.18-19
東京
第 24 回
奥地一夫(奈良県立医科大学救急医学)
2011.6.17-18
奈良
第 25 回
田中秀治(国士舘大学大学院救急システム研究科)
2012.5.16-17
宮崎
2003.6.20
開催地
東京
名古屋
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第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会
テーマ:脳死・脳蘇生のサイエンスとエデュケーションの融合
会 長:田中 秀治(国士舘大学大学院 救急システム研究科 教授)
会 期:平成 24 年 5 月 17 日(木)
会 場:シェラトングランデ・オーシャンリゾート
コンベンションセンター 2F「ファウンテン」
〒 880-8545 宮崎県宮崎市山崎町浜山
TEL:0985-21-1133
事務局:第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会事務局
〒 206-8515 東京都多摩市永山 7-3-1
国士舘大学大学院救急システム研究科内 田中研究室
TEL & FAX:042-339-7323
E-mail:[email protected]
学会ホームページ:http://25thbdbr.kenkyuukai.jp
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参加者の皆様へ
宮崎は気温が高くなることが予想されます。
節電も含め軽装またはクールビズにてご参加ください。
会場スタッフもクールビズにて対応させて頂きます。予めご了承下さい。
1.参加受付
(1)参加受付は、シェラトングランデ・オーシャンリゾートコンベンションセンター 2 階「ファウン
テン」前で当日 8:00 より行います。
受付において、氏名と所属をお伝えの上、参加費をお支払い下さい。
引き換えに、ネームカードとストラップをお渡し致します。
(2)参加費は、次の通りです。
会員:10,000 円
コーディネーター、その他医療関係者:5,000 円
学生:無料(学会員は除きます。学生の方は学生証をご提示下さい。)
(3)会期中は必ずネームカードを着用して下さい。
(4)抄録集は必ずご持参下さい。当日御希望の方には実費で販売致しますが、部数に限りがございます
のでご了承下さい。
2.各種会議のご案内
・コーディネーター研修会:5 月 16 日(水) 11:00 ~ 18:00
コンベンションセンター 2 階「オーチャード北」、「ファウンテン」
・理 事 会:5 月 16 日(水) 15:00 ~ 16:00
コンベンションセンター 2 階「オーチャード北」
・編集委員会:5 月 16 日(水) 14:00 ~ 15:00
コンベンションセンター 2 階「オーチャード北」
・厚生科研「クオリティ・マネジメントセミナー」会議:
5 月 16 日(水) 12:00 ~ 14:00
コンベンションセンター 2 階「オーチャード南」
3.その他のご案内
・理事・会員懇親会:5 月 16 日(水) 18:00 ~
「松泉宮グリーンガーデン」
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4.交通のご案内
シェラトン グランデ オーシャン リゾート
〒 880-8545 宮崎県宮崎市山崎町浜山
TEL 0985-21-1133
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■各主要都市から宮崎へ(東京)
東 京
羽田空港
飛行機 1 時間 30 分
宮崎空港
車 20 分
シーガイア
東京駅
電車 10 時間
宮崎駅
車 15 分
シーガイア
■各主要都市から宮崎へ(大阪)
大 阪
大阪伊丹空港
飛行機 1 時間 5 分
宮崎空港
車 20 分
シーガイア
新大阪駅
電車 7 時間 20 分
宮崎駅
車 15 分
シーガイア
南港
船 16 時間 30 分
宮崎港
車 10 分
シーガイア
■各主要都市から宮崎へ(福岡)
大 阪
福岡
福岡空港 40 分
飛行機
車 20 分
シーガイア
博多駅
電車 6 時間
宮崎駅
車 15 分
シーガイア
博多バスセンター
バス 4 時間 10 分
宮崎駅
車 15 分
シーガイア
■宮崎空港−シーガイア
宮崎空港−シーガイア
時間(片道)
料金(片道)
車
32 分
−
タクシー
20 分
約¥4,500(中型の場合)
バス
32 分
※¥830
時間(片道)
料金(片道)
■宮崎駅−シーガイア
宮崎駅−シーガイア
バス
25 分
¥500
タクシー
15 分
約¥2,500(中型の場合)
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5.会場のご案内
2F
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発表者の皆様へ
1.発表者皆様へのご案内
(1)発表形式は、パソコンによるプレゼンテーションとします。
当日パソコンをお持ちで無い発表者の方は、予備のパソコンをご用意しています。
発表データを USB メモリー、CD-R 等でお持ち下さい。
(2)パソコン受付は、発表予定時刻の 30 分前までに発表データの確認を行って下さい。
(3)発表データのファイル名は「演題番号 _ 氏名」として下さい。
(4)次演者は次演者席で待機して下さい。
(5)発表時間終了に合わせてベルが鳴ります。発表時間の厳守をお願いします。
2.司会・座長
(1)司会及び座長の先生並びに教育講演演者、シンポジストの先生は、受付でご来場の旨お伝え下さい。
(2)次座長は次座長席に担当セッション 15 分前にお着き下さい。
3.パソコン発表に関して
(1)発表形式:すべて、PC による発表のみ(1 面)となります。その他スライド・ビデオなどは使用で
きませんのでご注意下さい。
(2)データ作成:Windows のみデータ持ち込みが可能です。Macintosh の場合はご自身の PC 本体及び
プロジェクター接続用のコネクターをお持ち込み下さい。
(3)発表データは USB メモリーまたは CD-R でお持ち下さい。
(4)アプリケーションは、PowerPoint2003・2007・2010 で作成したものに限ります。
(5)動画使用の方は Windows であっても PC 本体の持ち込みを推奨します。
(6)動画や音声をご使用になる場合は、データ登録の際に必ずスタッフへお知らせ下さい。
(7)メディアを介したウイルスの感染事例がありますので、最新の駆除ソフトでチェックをお願いしま
す。
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コーディネーター研修会 日程表
5 月 16 日
11:00 〜 11:05 開会の挨拶 第 25 回日本脳死・脳蘇生学会総会・学術集会 会長 田中 秀治
11:05 〜 12:00 Session 1「法的脳死判定シミュレーションとコーディネーターの役割」
座長 財団法人 宮崎県腎臓バンク 福島さゆり
1.コーディネーターのための法的脳死判定シミュレーション
財団法人 宮崎県腎臓バンク 福島さゆり
熊本赤十字病院医療社会事業部社会課 西村真理子
後援:日本移植コーディネーター協議会(JATCO)
12:00 〜 13:20 昼食・休憩
13:20 〜 14:00 Session 2「臓器・組織移植のコーディネーションと問題 1」
座長 公益財団法人 兵庫アイバンク 渡邉 和誉
福岡大学医学部再生・移植医学 金城 亜哉
1.臨床膵島移植の現況と今後の展望
福岡大学医学部再生・移植医学 金城 亜哉
2.臓器移植法改正後のスキンバンクの現状と問題点
一般社団法人 日本スキンバンクネットワーク 今野 絵美
3.脳死判定施行について検討を要した心停止腎・組織提供症例の紹介
国立循環器病研究センター 組織保存バンク 小川真由子
14:00 〜 15:00 Session 3「臓器・組織移植のコーディネーションと問題 2」
座長 財団法人 福岡県メディカルセンター 岩田 誠司
熊本赤十字病院医療社会事業部社会課 西村真理子
1.東京歯科大学市川総合病院救急外来における全死亡例臓器提供意思確認システム
(RRS)
の分析
東京歯科大学市川総合病院角膜センター 松本 由夏
2.コーディネーター教育の現状と今後の課題
東京歯科大学市川総合病院角膜センター 青木 大
3.移植医療の普及啓発における生活習慣病及び CKD 対策部門との連携の必要性
熊本赤十字病院医療社会事業部社会課 西村真理子
4.新潟県におけ Donor Action Program の進捗報告
(財)
新潟県臓器移植推進財団 秋山 政人
5.移植コーディネーターの活動と臓器提供の関連
富山大学医学部 救急・災害医学講座 高橋 絹代
15:00 〜 16:00 Session 4「教育講演」
座長 一般社団法人 日本スキンバンクネットワーク 明石 優美
院内コーディネーターが知るべき「院内のグリーフケア」
演者 東京医科大学病院 救命救急センター 渡辺 淑子
16:00 〜 18:00 Session 5「シンポジウム:臓器移植におけるクオリティーマネジメントセミナーに関するシンポジウム」
座長 東邦大学医学部 社会学/公衆衛生学 長谷川友紀
公益財団法人 富山県移植推進財団 高橋 絹代
1.クオリティーマネジメントセミナーの目的と今後
東京歯科大学市川総合病院角膜センター長 篠崎 尚史
2.臓器提供施設におけるチーム医療の実践
日本医科大学大学院 救急医学 横田 裕行
3.臓器提供施設における看護師の役割と院内コーディネーター
済生会八幡総合病院看護部クリティカルケア部門 山本小奈実
4.臓器提供病院における院内コーディネーターの役割
総合太田病院臨床工学課 稲葉 伸之
5.院内コーディネーターの現状と必要性
福井県済生会病院看護部 / 福井県アイバンク 米満ゆみ子
共催:平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)
「移植医療の社会的基盤に関する研究」
18:00 〜
14
理事・会員懇親会
第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会 日程表
5 月 17 日
8:55 〜 9:00
開会挨拶 第 25 回日本脳死・脳蘇生学会総会・学術集会 会長 田中 秀治
9:00 〜 9:20
Session 1「一般演題 1 脳蘇生・蘇生教育・その他」
座長 北里大学医学部 救命救急医学 北原 孝雄
1.急速に脳死状態となった急速進行性全脳虚血症例
埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 熊井戸邦佳
2.心肺停止蘇生後の全脳虚血再灌流障害における酸化ストレスと抗酸化能の変化
順天堂大学医学部附属浦安病院 救急災害医学講座救急診療科 石川 浩平
9:20 〜 10:00
Session 2「教育講演 2」
座長 帝京大学医学部附属病院救急科 坂本 哲也
プレホスピタルからの脳蘇生の取り組み
10:00 〜 10:40 「Pros and Cons 脳蘇生から見た心肺蘇生の現況」
1.脳蘇生からみた心肺蘇生の現況
2.自動体外式除細動器(AED)導入の費用推計
市立札幌病院 救命救急センター 鹿野 恒
座長 奈良県立医科大学救急医学 奥地 一夫
京都大学健康科学センター 石見 拓
奈良県立医科大学健康政策医学講座 小川 俊夫
10:40 〜 10:50
休 憩
10:50 〜 11:50
Session 3「教育講演 3:脳死補助診断の精度向上について」
座長 藤田保健衛生大学医学部脳神経外科 稲桝 丈司
中枢神経の画像診断:最近の進歩
京都府立医科大学放射線科 山田 恵
11:50 〜 12:10
総 会
12:10 〜 13:10
教育ランチョンセミナー「脳死判定の経験からみたピットフォール」
座長 国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
1.脳死判定 102 例の経験からみた脳死判定のピットフォール
国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
2.法的脳死判定 ~臨床医のための脳死判定技術の取得~
日本医科大学大学院 救急医学 横田 裕行
13:10 〜 13:20
休 憩
13:20 〜 14:00
Session 4「教育講演 4:脳蘇生の Pros and Cons」
座長 富山大学医学部救急・災害医学 奥寺 敦
我が国の脳低温療法の成績
日本大学医学部、駿河台日本大学病院循環器科・心肺蘇生・救急心血管治療 長尾 建
14:00 〜 14:40
Session 5「一般演題 2 脳死判定・その他」
座長 日本大学医学部救急医学講座 木下 浩作
1.救命救急士に対する脳死・救急終末期医療教育の必要性の検討
−蘇生中止の判断のために必要な教育−
国士舘大学大学院救急システム研究科 高山 祐輔
2.Lance-Adams 症候群 11 症例に対する治療経験
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 恩田 秀賢
3.外傷に起因する児童入院患者 713 名における虐待関与の検討
船橋市立医療センター 脳神経外科 鈴木 孝典
14:50 〜 16:20
Session 6「シンポジウム:脳死判定基準の新たなるエビデンスの構築に向けて」
座長 埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター 堤 晴彦
1.これまでの 102 例の法的脳死判定事例よりみた脳死判定エビデンスの集積
国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
2.エビデンスに基づく不可逆的な昏睡の診断
熊本大学 侵襲制御医学 木下 順弘
3.小児脳死下臓器提供体制の構築について
日本医科大学救急医学 荒木 尚
16:30
閉会挨拶
15
コーディネーター研修会 プログラム
平成 24 年 5 月 16 日(水)
10:00 受付開始
会場:コンベンションセンター 2 階 「オーチャード北」
11:00
開会挨拶
11:05 〜 12:00
Session 1 「法的脳死判定シミュレーションとコーディネーターの役割」
座長 財団法人 宮崎県腎臓バンク 福島さゆり
後援:日本移植コーディネーター協議会(JATCO)
1. コーディネーターのための法的脳死判定シミュレーション
財団法人 宮崎県腎臓バンク 福島さゆり
熊本赤十字病院 医療社会事業部社会課 西村真理子
会場:コンベンションセンター 2 階 「ファウンテン」
13:20 〜 14:00
Session 2 「臓器・組織移植のコーディネーションと問題 1」
座長 公益財団法人 兵庫アイバンク 渡邉 和誉
福岡大学医学部 再生・移植医学 金城 亜哉
1. 臨床膵島移植の現況と今後の展望
福岡大学医学部 再生・移植医学 金城 亜哉
2. 臓器移植法改正後のスキンバンクの現状と問題点
一般社団法人 日本スキンバンクネットワーク 今野 絵美
3. 脳死判定施行について検討を要した心停止下腎・組織提供症例の紹介
国立循環器病研究センター 組織保存バンク 小川真由子
14:00 〜 15:00
Session 3 「臓器・組織移植のコーディネーションと問題 2」
座長 財団法人 福岡県メディカルセンター 岩田 誠司
熊本赤十字病院 医療社会事業部社会課 西村真理子
1. 東京歯科大学市川総合病院救急外来における全死亡症例臓器提供意思確認システム(RRS)の分析
東京歯科大学市川総合病院角膜センター 松本 由夏
16
2. コーディネーター教育の現状と今後の課題
東京歯科大学市川総合病院角膜センター 青木 大
3. 移植医療の普及啓発における生活習慣病及び CKD 対策部門との連携の必要性
熊本赤十字病院 医療社会事業部社会課 西村真理子
4. 新潟県における Donor Action Program の進捗報告
(財)新潟県臓器移植推進財団 秋山 政人
5. 移植コーディネーターの活動と臓器提供の関連
富山大学医学部 救急・災害医学講座 高橋 絹代
15:00 〜 16:00
Session 4 教育講演「院内コーディネーターが知るべき臓器・組織移植時の『グリーフケア』
」
座長 一般社団法人 日本スキンバンクネットワーク 明石 優美
1. 院内コーディネーターが知るべき「院内のグリーフケア」
東京医科大学病院 救命救急センター 渡辺 淑子
16:00 〜 18:00
Session 5 シンポジウム「臓器移植におけるクオリティーマネジメントセミナーに関するシンポジウム」
座長 東邦大学医学部 社会医学/公衆衛生学 長谷川友紀
公益財団法人 富山県移植推進財団 高橋 絹代
共催:平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)
「移植医療の社会的基盤に関する研究」
1. クオリティーマネジメントセミナーの目的と今後
東京歯科大学市川総合病院角膜センター長 篠崎 尚史
2. 臓器提供施設におけるチーム医療の実践
日本医科大学大学院 救急医学 横田 裕行
3. 臓器提供施設における看護師の役割と院内コーディネーター
済生会八幡総合病院看護部クリティカルケア部門 山本小奈実
4. 臓器提供病院における院内コーディネーターの役割
総合太田病院臨床工学課 稲葉 伸之
5. 院内コーディネーターの現状と必要性
福井県済生会病院看護部/福井県アイバンク 米満ゆみ子
18:00 〜
理事・会員懇親会(松泉宮グリーンガーデン)
17
第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会 プログラム
平成 24 年 5 月 17 日(木)
会場:コンベンションセンター 2 階 「ファウンテン」
8:30
受付開始
8:55
開会挨拶
9:00 〜 9:20
Session 1 一般演題 1「脳蘇生・蘇生教育・その他」
座長 北里大学医学部 救命救急医学 北原 孝雄
1. 急速に脳死状態となった急速進行性全脳虚血症例
埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 熊井戸邦佳
2. 心肺停止蘇生後の全脳虚血再灌流障害における酸化ストレスと抗酸化能の変化
順天堂大学医学部附属浦安病院 救急災害医学講座救急診療科 石川 浩平
9:20 〜 10:00
Session 2 教育講演 2「プレホスピタルからの脳蘇生の取り組み」
座長 帝京大学医学部附属病院救急科 坂本 哲也
1. プレホスピタルからの脳蘇生の取り組み
市立札幌病院 救命救急センター 鹿野 恒
10:00 〜 10:40
「Pros and Cons 脳蘇生から見た心肺蘇生の現況」
座長 奈良県立医科大学救急医学 奥地 一夫
1. 脳蘇生からみた心蘇生の現況
京都大学健康科学センター 石見 拓
2. 自動体外式除細動器(AED)導入の費用推計
奈良県立医科大学健康政策医学講座 小川 俊夫
10:50 〜 11:50
Session 3 教育講演 3「脳死補助診断の精度向上について」
座長 藤田保健衛生大学医学部脳神経外科 稲桝 丈司
1. 中枢神経の画像診断 : 最近の進歩
京都府立医科大学放射線科 山田 恵
18
11:50 〜 12:10
総 会
司会 第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会 大会長 田中 秀治
議事予定
1.平成 23 年度事業報告
2.編集委員会報告
3.平成 23 年度決算報告
4.平成 24 年度事業(案)報告
5.その他
12:10 〜 13:10
教育ランチョンセミナー「脳死判定の経験からみたピットフォール」
座長 国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
1. 脳死判定 102 例の経験からみた脳死判定のピットフォール
国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
2. 法的脳死判定~臨床医のための脳死判定技術の取得~
日本医科大学大学院 救急医学 横田 裕行
13:20 〜 14:00
Session 4 教育講演 4「脳蘇生の Pros and Cons」
座長 富山大学医学部救急・災害医学 奥寺 敦
1. 我が国の脳低温療法の成績
日本大学医学部、駿河台日本大学病院循環器科・心肺蘇生・救急心血管治療 長尾 建
14:00 〜 14:40
Session 5 一般演題 2「脳死判定・その他」
座長 日本大学医学部救急医学講座 木下 浩作
1. 救急救命士に対する脳死・救急終末期医療教育の必要性の検討
−蘇生中止の判断のために必要な教育−
国士舘大学大学院救急システム研究科 高山 祐輔
2. Lance-Adams 症候群 11 症例に対する治療経験
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 恩田 秀賢
3. 外傷に起因する児童入院患者 713 名における虐待関与の検討
船橋市立医療センター 脳神経外科 鈴木 孝典
19
14:50 〜 16:20
Session 6 シンポジウム「脳死判定基準の新たなるエビデンスの構築に向けて」
座長 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 堤 晴彦
1. これまでの 102 例の法的脳死判定事例よりみた脳死判定エビデンスの集積
国士舘大学大学院救急システム研究科 島崎 修次
2. エビデンスに基づく不可逆的な昏睡の診断
熊本大学 侵襲制御医学 木下 順弘
3. 小児脳死下臓器提供体制の構築について
日本医科大学救急医学 荒木 尚
16:30
閉会挨拶
20
抄 録
5 月 16 日(水)
教育講演 ………………………………………………… 22
シンポジウム …………………………………………… 23
セッション ……………………………………………… 28
5 月 17 日(木)
教育講演 …………………………………………………
Pros and Cons … ………………………………………
教育ランチョンセミナー ………………………………
シンポジウム ……………………………………………
一般演題 …………………………………………………
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教育講演 1
院内コーディネーターが知るべき「院内のグリーフケア」
渡辺 淑子
東京医科大学病院 救命救急センター
脳死下による臓器提供は,1997年に臓器の移植に関する法律が制定され今年で16年目を迎え,
多くの尊い提供者の方から命のリレーが行われてきた。しかし 2010 年臓器移植法が改正され
るまでの 13 年間に 83 件と提供者数が少なかったが,法改正後は 2 年間で 76 件と急激に増加し
てきた。この背景には,意思表示カードによる意思表示だけでなく保険証や免許証などによる
意思表示の普及に加え,本人の意思表示が無くても家族の承諾があれば臓器提供が可能となっ
たこと等が挙げられる。しかし一方で,突然の出来事に戸惑い,悲嘆のどん底に突き落とされ
た家族に対するグリーフケアは十分とは言えないのが現状である。
脳死を受け入れ臓器提供を決断していく家族は,突然の入院,そして脳死の告知と共にオプ
ション提示がされなど短期間に沢山の体験をすることになる。このような複雑な体験に直面し
ている家族には,臓器提供に関わらず家族の心理的変化を察知し複雑な気持ちを表出できる医
療者の関わりが重要不可欠である。脳死状態にある患者の家族への対応に関わる看護師には,
①家族の心理状態を理解する,②家族との信頼関係を構築する,③家族の精神的支えとなる,
④家族がケアに参加できる環境を作る,⑤臓器提供に関与する関係者と家族の調整役となる,
⑥家族の持つ疑問や質問に対して情報提供をするなどの役割が求められている。臓器提供に関
わる看護師は,脳死状態にある患者の家族の支援を行いながら心理状態を評価し,その時期に
応じたグリーフケアが行えるスキルを修得しておく必要がある。しかしこれらのスキルは一朝
一夕に修得できるものではない。臓器提供時には,グリーフケアのスキルを修得し,専門に介
入する院内コーディネーターの存在が重要である。本講演では,臓器提供時の家族の心理的変
化と家族介入のポイントについて述べ,今後院内コーディネーターとして修得しておくべき臓
器提供時の家族へのグリーフケアにつて皆様と共に考えたい。
22
シンポジウム
S16-1 クオリティーマネジメントセミナーの目的と今後
篠崎 尚史
平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
「移植医療の社会的基盤に関する研究(H23- 免疫 - 指定 -018)」研究代表者
東京歯科大学市川総合病院 角膜センター長
改正臓器移植法の施行に伴い,脳死下臓器提供数は明らかに増加した。改正法施行後に発生
した事例のほとんどが家族承諾により提供に至っていることから,法改正の一つの効果の表れ
と言える。しかし,改正点は他にもあり,運転免許証・健康保険証に意思表示できるような施
策も進んでいる。こちらの効果が表れるにはある程度の時間を要するが,こうした状況を鑑み
ると,今後我が国での臓器提供数は,徐々に増加することが予想される。同時にこのことは,
移植コーディネーター不足という状況になることを示唆するものであり,移植コーディネー
ター,特に院内コーディネーターの教育機関の設立は急務と言える。そこで,本研究では,コー
ディネーター教育機関の設立に向けた基盤整備として,教育プログラムの設計,教育ツールの
開発,指導指針の作成,実践的教育プログラムとなる日本版 TPM の作成を行っており,将来
的な事業化に向けての運用制度設計を実施する計画である。
現状として,提供施設内で臓器提供が行われるが,臓器提供に至る場合には現存の移植コー
ディネーターが介在するが,提供に至らなかった場合やコーディネーターが介入する前の段階
は,提供施設内での医療従事者(おもに院内コーディネーター)が行うこととなる。臓器提供
施設における院内コーディネーターは,単に院内での死亡例の臓器提供に係るのみでなく,重
症患者をケアする上で,適時に医学的な評価が行われ,家族などに適切に情報提供がなされ,
また家族のケアも併せて行われているかを確認する,あるいは,そのための院内体制立ち上げ
に係わる重症患者のケアにおける質管理者(クオリティー・マネジャー)の役割を担うもので
ある。チーム医療として動く際に,院内でのコーディネーションを行う役割は大きく,院内
コーディネーターの教育機関の設立は急務と言える。
昨年度から行っている研究の概要,ならびにクオリティーマネジメントセミナーについて示
す。
23
シンポジウム
S16-2 臓器提供施設におけるチーム医療の実践
横田 裕行
日本医科大学大学院 救急医学
臓器提供,特に脳死下臓器提供の際には医師,看護師だけではなく様々な職種の医療スタッ
フが連携し医療チームとして機能することが重要である。すなわち,法的脳死判定や臓器提供
者の全身管理を行う医師,看護や患者家族のケアーを行う看護師,脳死判定の際に活躍する臨
床検査技師,院内や日本臓器移植ネットワーク(JOT)との連絡,家族対応を行う院内コーディ
ネーター,及び院内の様々な調整を行う事務職員などがそれぞれの分担を正確に遂行し,かつ
それぞれが密接に連携しつつ行うことが求められている。したがって,それぞれの職種が臓器
提供,特に脳死下臓器提供の手順を共有していることが前提となる。そのためには臓器提供へ
のシミュレーションや関連学会が行っている脳死判定セミナーなどをうまく活用することも効
果的である。ちなみに,厚生労働省研究補助金(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)
研究「救急医療におけるコーディネーター体制に関する研究」班と日本臓器移植ネットワーク
が共催し,毎年秋に行われる「救急医療における脳死患者対応セミナー」では救急医療現場で
活躍する医師,看護師,臨床検査技師のほか,JOT コーディネーター,都道府県コーディネー
ターが参加している。本セミナーの特徴は多職種で構成される複数のグループを作成し,各グ
ループが法的脳死判定や臓器提供に関する基本的な知識を実体験するブースをローテーション
する方法がとられている。また,知識を深めるためにそれぞれの職種別に独自のプログラムも
用意されている。このような試みによって各職種がそれぞれの役割を認識し,臓器提供時に
チーム医療の一員として活躍できるものと考えている。患者本人や家族における臓器提供への
意思を実現するために,医療スタッフは臓器提供にかかわる医療チームとしての役割認識と知
識が必要と考える。
24
シンポジウム
S16-3 臓器提供施設における看護師の役割と院内コーディネーター
山本小奈実
社会福祉法人恩賜財団福岡県済生会八幡総合病院 看護部クリティカルケア部門
突然の疾病や事故で重篤な状態にある患者は,救命救急センターや集中治療室で最善の治療
が行われる。しかし,治療の途中で臨床的に脳死となる場合がある。臨床的に脳死と診断され
た後,家族にはいくつかの治療方法の選択肢と説明が行われる。その一つに臓器提供がある。
また,このような臓器提供施設には,委任をうけている院内コーディネーターが存在し臓器提
供を円滑にする役割を担っている。
院内コーディネーターは,臓器提供の意思を示した家族や医師からの臓器提供に関する意志
確認で,提供を決断された家族に対し,意思確認から臓器提供までの一連の流れが,円滑に進
むように院内システムを構築することが大切な役割であると日本臓器移植ネットワークは示唆
している。院内コーディネーターの主な役割としては,①システムの構築,②ポテンシャルド
ナーの把握,③意思確認,④他部門との連携,⑤院内教育・啓発・普及活動,⑥マニュアルの
作成,⑦学会・研修会への参加,⑧日本臓器移植ネットワーク・都道府県コーディネーターと
の連携等があげられる。
脳死と診断された患者の家族に残された時間はわずかである。臓器提供を決意した家族は,
残された時間の中で死の受容だけでなく,臓器提供を決めたことが本当によかったのかと葛藤
することもある。また,臓器提供に関わったスタッフの中にも,臓器提供がストレスと感じて
いることもある。臓器提供時におこるコンフリクトや提供後のスタッフケアについて,看護師
として,また院内コーディネーターとして関わったことについて考察した。
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シンポジウム
S16-4 臓器提供病院における院内コーディネーターの役割
稲葉 伸之
富士重工業健康保険組合総合太田病院 臨床工学課
臓器移植法が改正され,2010 年 7 月 17 日からは本人の臓器提供に関する生前意思が存在し
なくても,家族の承諾があれば脳死下臓器提供が可能になり,15 歳未満の小児からの脳死下
臓器提供も可能となった。また現在,臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドラ
イン)の一部改正(案)が検討されており,2012 年 5 月 1 日からは,日本脳神経外科学会の専
門医認定制度の基幹施設又は研修施設が従来の専門医訓練施設 A 項に代わり脳死下臓器提供
施設となる予定であり,脳死下臓器提供数の大幅な増加が予想される。しかし,日本臓器移植
ネットワークや都道府県臓器移植コーディネーターも増えつつあるものの,経験の浅い移植
コーディネーターが多い現状である。そこで,多くの県で設置が行われている院内コーディ
ネーターの活躍が期待される。院内コーディネーターは,中立的な立場で,提供者やその家族
の意思を尊重し家族に寄り添い,臓器提供事例発生の際には,主治医,看護師,コメディカル,
事務,ネットワークコーディネーター,都道府県コーディネーター,摘出チーム,警察等々の
院内外のスタッフと一緒に対応する。また日頃は,臓器提供が円滑に実施されるように院内外
の関係者と協力し,院内体制の整備として臓器提供マニュアルの作成,説明会の開催,シミュ
レーションの実施などを行い,院内で臓器提供・移植に関する情報提供を行っている。院内コー
ディネーターは,ネットワークコーディネーターや都道府県コーディネーターと同じく,院内
の臓器提供に関わるマネージメントを行い,臓器提供に関する院内システムの構築が行える能
力が必要である。また,院内コーディネーターは,チーム医療の一員として臓器提供に関する
院内のクオリティーマネージャーとして活躍することが望ましいいとも考える。今回,県臓器
移植コーディネーターの立場から,院内コーディネーターの今後の役割について検討する。
26
シンポジウム
S16-5 院内コーディネーターの現状と必要性
米満ゆみ子
社会福祉法人恩賜財団済生会支部福井県済生会病院 看護部,福井県アイバンク
【はじめに】臓器提供候補者の多くは急性の病態により死に至る。家族の多くは,急変し意識
を失った患者と初めて面会するとき動揺し,呆然と立ち尽くす。急性期の家族介入の必要性を
理解していても専属スタッフの配置等の院内体制整備は未だ困難な状況にあり,総体として,
急性期病院における死についての家族の満足度は低いと推測される。狭義の院内移植コーディ
ネーター(以下,院内 Co)は,院内で発生した臓器提供希望者に対し“終末期ケア”の視点
から家族支援を行うことが期待されている。しかし,必ずしも対象を臓器提供候補者に限定せ
ず,むしろ急性期病院における終末期ケアに焦点をあて,家族に対する適時の病状説明,患者・
家族の希望の確認など,質の高いケアが行われることが期待される。このような考え方に基づ
き,急性期病院における終末期ケアの質管理を担う 院内 Co の必要性を現状と共に紹介する。
【院内 Co の現状とクオリティーマネージャーとしての必要性】元来,院内 Co の役割は「臓器
提供時の院内調整役」と言う意味に捕らわれがちであるが,生命の危機状態にある患者家族の
情緒的危機に対し,現状認識と病状理解を支援していく中で,「終末期医療の一選択肢」とし
て臓器提供は総合的に判断されていく事だと考える。救命救急の現場で活躍するスタッフの多
くは,
「家族看護」の必要性を現場で多く認知されていても,時間的制約,短い時間でのコミュ
ニケーションへの不安などのジレンマを感じているという。また保険点数換算がなく,本腰を
入れて取り組み得ない現場の苦しさもあるのではないか。
「患者搬入」での「衝撃の緩和・現
状認識の促進」の関わりから,予後不良と診断された家族に,「お別れの医療と心のケア」の
なかで「臓器提供」を含めた選択肢をご家族の心情に配慮し提示すること。そして「Quality
of die」について家族と医療者の間で終末期ケアの質管理を担う役割として院内 Co の活躍が必
要となってくるのではないかと考える。
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セッション 1
Co1-1 コーディネーターのための法的脳死判定シミュレーション
座 長 福島さゆり(宮崎県臓器移植コーディネーター)
ファシリテーター 西村真理子(熊本県臓器移植コーディネーター,JATCO 役員)
この度,第 25 回日本脳死・脳蘇生学術集会の田中秀治大会長のご厚意により移植コーディ
ネーターのための研修会を開催する運びとなりました。
JATCO もお手伝いして行われるこの研修会も会を重ねてまいりましたが,法改正以来,脳
死下の臓器提供が増加傾向にあります。全国どこでもいつ発生してもおかしくない状況だと言
われています。
そして,一番注目されている法的脳死判定は,手技自体は,難しくないけれどミスが許され
ない重要な場面であります。
日本の脳死・脳蘇生の事例に日々最前線で対応しているプロフェッショナルな先生方を交え
ての研修会です。コーディネーターとして知っておくべき知識を習得するいい機会だと思いま
す。ぜひ一緒に勉強しましょう。
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セッション 2
Co2-1 臨床膵島移植の現況と今後の展望
金城 亜哉 1)4),安波 洋一 1),穴澤 貴行 2),後藤 満一 2),島崎 修次 3),
北村惣一郎 4)
福岡大学医学部再生・移植医学,2)日本膵・膵島移植研究会,
3)
東日本組織移植ネットワーク,4)西日本組織移植ネットワーク
1)
膵島移植とは,血糖調節に重要な役割を果たしている膵島組織を膵臓から分離し,重症 I 型
糖尿病患者に移植する細胞組織移植療法である。本邦における膵島移植は,心停止ドナー膵か
らの膵島を移植に供する特色を有し実績を重ねてきた。しかし,2007 年 3 月膵島分離用酵素製
剤の安全性の問題を機にその実施は一時停止した。安全性が担保された Mammalian Tissue
Free 酵素製剤の開発に合わせ,高度医療評価制度のもと多施設共同臨床試験としての膵島移
植実施体制も整備され,近く再開予定である。
また近い将来には,脳死下臓器提供時に医学的理由により臓器として膵臓提供が断念された
症例における膵島提供としての可能性も検討されており,今後の発展が期待されている。
臨床膵島移植の現況と今後の展望について過去の実績を踏まえ発表する。
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セッション 2
Co2-2 臓器移植法改正後のスキンバンクの現状と問題点
今野 絵美,明石 優美,岡野 友貴,田中 秀治,島崎 修次
一般社団法人日本スキンバンクネットワーク
【背景】2010 年 7 月より「改正臓器移植法」が施行され,1 年 9 ヶ月が経過した。法改正後マス
コミにも大きく取り上げられ,臓器提供・移植に関する国民の関心も高まり,年間10件程度だっ
た脳死下臓器提供が,2011 年には 44 件と飛躍的に増加した。
【方法】臓器移植法改正を受け,日本スキンバンクネットワーク(JSBN)のドナー情報数,提
供者数,移植者数にどのような変化があったのかを調査し,新たな普及啓発活動の検討を行っ
た。
【結果】2006 年から 2010 年までの過去 5 年間に,平均 117.2 件だったドナー情報数が 2011 年は
84 件に,平均 32.2 件だった提供者数は 17 件にまで減少し, ドナー情報数・提供者数ともに過
去最低となった。
【考察】この法改正後の皮膚提供に至らなかった理由を調査したところ,ご家族が臓器提供の
承諾はされるものの,皮膚などの組織提供を辞退されるケースが多く見受けられた。これまで,
意思表示カード不所持により脳死下臓器提供が叶わなかったケースでも,ご家族の承諾のみで
臓器提供が可能になった事で,ご家族の提供に関する希望に変化が出てきたと考える。組織バ
ンクとしての機能を果たすためにも,提供者の確保は必須であり,皮膚提供に関する一層の普
及啓発を行い,認知度を上げていく必要がある。しかし日本臓器移植ネットワークに比べ,人
員面・財政面での規模が小さい JSBN において,臓器と同等の認知度を得るためには,既存の
普及啓発活動以外の検討と実行が,今後の課題であると考える。
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セッション 2
Co2-3 脳死判定施行について検討を要した心停止下腎・
組織提供症例の紹介
小川真由子 1)2),増谷 友紀 1)2),苅山 有香 2)3),森田 健一 2)4),豊田 一則 2)5),
中谷 武嗣 1)
国立循環器病研究センター組織保存バンク,
国立循環器病研究センター臓器・組織提供対策室,
3)
国立循環器病研究センター看護部・院内コーディネーター,
4)
国立循環器病研究センター脳神経外科,
5)
国立循環器病研究センター脳血管内科
1)
2)
国立循環器病研究センターにおいては,臓器・組織提供対策室と 1 名の院内コーディネーター
(以下 Co.)を設置し,日本臓器移植ネットワーク,西日本組織移植ネットワーク他と連携して
臓器・組織の提供に対する啓発,マニュアル整備,提供時のシミュレーション等を行っている。
現場においても意思表示カードやパンフレットの設置,ポテンシャルドナーご家族へのオプ
ション提示を積極的に行い,院内コーディネーターへのポテンシャルドナーの情報数も増加し
ている。今回,当院における,意思表示カードにより臓器提供の意思を示していた症例にて,
西日本組織移植ネットワークの組織移植 Co. として,また,当院の臓器・組織提供対策室員と
して関与した。当症例においては,右視床出血後の血腫除去術施行後,脳死ではない状態で情
報を受信した。情報受信時既に血圧低下傾向にあり,状態急変の可能性も高く,カニュレー
ションなしの心停止後腎提供と心臓弁・血管の提供を承諾された。その後状態安定され,脳死
判定施行の是非,また,脳死判定の方法やご家族への対応等について,御本人,ご家族にとっ
て最良の選択をとることが出来るよう,主治医団,臓器・組織提供対策室等様々な立場から対
応の検討を行った。同様の症例はどの施設においても発生する可能性は十分あるが,画一的に
対応を統一することの困難さや,ご家族によって,最良の選択肢が異なるという難しさを包容
する。今回,異なる立場にて関与し,考察したことを紹介する。
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セッション 3
Co3-1 東京歯科大学市川総合病院救急外来における
全死亡症例臓器提供意思確認システム(RRS)の分析
松本 由夏,青木 大,村上 達也,篠崎 尚史
東京歯科大学市川総合病院 角膜センター
【背景】当院では,2004 年 10 月より全死亡症例に対し,臓器提供意思確認(RRS)を開始した。
一般病棟での導入は,早期に定着し,2012 年 3 月末までの 7 年半の期間に 227 人からの角膜提
供があり,意思確認することで潜在的なニーズに応えることができ,献眼数の増加に結び付け
ることができた。一方,救急外来での RRS に関する分析は,これまで実施されておらず,今
回 RRS 導入時からの結果を分析したので報告する。
【方法】当院で死亡例が発生すると,主治医または看護師より,当アイバンクコーディネーター
に連絡が入る。この際に,年齢,性別,死亡原因,死亡確認時間,感染症の検査結果などの死
亡患者に関する情報と,入電から意思確認までの時間,意思確認の対象者,キーパーソンに関
する情報,意思確認の状況について記録する。この内容をデータベース化し,統計をまとめた。
【結果】
2004年10月から2012年3月まで,当院 救急外来において519例の死亡確認例があった。
当アイバンクへの連絡が 322 例(62.0%)あり,医療スタッフへの問診,および医療情報によ
るスクリーニングを行い,禁忌に該当する症例を除く 246 例(87.2%)においてアイバンクコー
ディネーターが,意思確認を実施した。意思確認を実施した246例中26例
(10.6%)
が提供に至っ
た。連絡率の推移は導入時の21.9%から年度ごとに上昇し,
2011年度では,
90%となった。また,
2011 年度単年では,15.2%が提供に至った。
【考察】救急外来においては,搬入患者の病態の特性により医療従事者が繁忙な上,家族が混
乱した状況では,意思確認をすることが難しいととらえがちだが,RRS を実施することにより,
どのような状況にあっても一定の割合で,提供を希望する家族がいるということが明らかに
なった。システムの導入から定着までに時間を要するものではあるが,医療を受ける患者や家
族にとって,最大限の治療や処置を提供された上で,その後の選択肢として,臓器提供意思の
確認を行うことは,提供数の増加につながるものと考える。
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セッション 3
Co3-2 コーディネーター教育の現状と今後の課題
青木 大,松本 由夏,村上 達也,篠崎 尚史
東京歯科大学市川総合病院 角膜センター
【背景】臓器移植法が改正され,今後提供数の増加が望まれるが,現在活動している組織移植
コーディネーターは少ないにもかかわらず,社会から求められるコーディネーターに対する
ニーズも増すものと考えられる。この状況の中,コーディネーターの質の向上は重要である。
当センターでは 2009 年 4 月より研修事業を行っている。今回,現在までの当センター研修結果
を報告するとともに,今後のコーディネーター教育について言及する。
【方法】2009 年 4 月から 2012 年 3 月までに,当センターにてコーディネーター研修コースを受
け入れた 9 名の研修内容をまとめた。その結果から,現場活動の現状と必要とされている教育
内容について検討した。
【結果】研修生 9 名すべてが,コーディネーター 2 週間コースであった。全死亡例臓器提供意
思確認システム(RRS)に同行し遺族との面会を得た回数は,平均で 11 回,そのうち眼球提
供に至った症例が平均 1.3 回となった。また,皮膚などの他組織提供に至った症例は 2 回であっ
た。
【考察】現在のドナー数においては現場経験が多く積めないことから,当センターの研修にお
ける,遺族との面会は OJT として有用であると言える。また,インフォームドコンセントな
どのロールプレイも効果的であった。新人だけではなく,継続した教育プログラムの開発が
コーディネーターの質の向上を担保し,統一した教育を行う上でも重要と考えられた。
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セッション 3
Co3-3 移植医療の普及啓発における生活習慣病及び
CKD 対策部門との連携の必要性
西村真理子
熊本赤十字病院 医療社会事業部社会課,熊本県臓器移植コーディネーター
【目的】都道府県臓器移植コーディネーターは,臓器提供時のあっせん業務及び移植医療の普
及啓発業務を主に担っており,熊本県では様々な戦略で医療機関や一般への普及啓発を行って
きた。あっせん時は中立の立場で,普及啓発時は推進する立場に近いということは,各都道府
県に一人ずつの配置であることが多いので,非常にやりにくい場合もある。
また,提供施設において医療従事者が,臓器提供の体制整備は自分たちの仕事だという手ごた
えを感じられてないことが多く,それは移植医療がまだ特殊なもので身近な一般的医療として
認識されていないことが原因と思われる。
そこで,移植医療の推進,体制整備を医療従事者として責任を持って関わるべきことという自
覚を持ってもらうために,移植が必要となる原因にさかのぼって移植医療の必要性を理解して
いただくことで,医療従事者はもとより行政の担当者にも理解が広がったので,発表したい。
【方法】熊本市が力を入れている CKD 対策や,生活習慣病対策,透析医学会の HP や内閣府系
の統計資料,その他学術的データ等信頼のおけるものをもとに構築した説明を対象に応じて展
開する。
【結論】移植医療は,特殊なもので一般の医療機関では関係がないと思い込んでいた医療従事
者や行政関係者が,実は,身近な医療であったのだと気付いたとか,まず自らの生活習慣病に
気をつけたいなどというコメントを多く残し,積極的に関わるべきものだと気づいてくれた。
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セッション 3
Co3-4 新潟県における Donor Action Program の進捗報告
秋山 政人 1),中川 由紀 2),齋藤 和英 2),高橋 公太 2),山崎 理 3),荒川 正昭 1)
(財)新潟県臓器移植推進財団,2)新潟大学大学院 腎泌尿器病態学分野,
3)
新潟県福祉保健部副部長
1)
1995 年,新潟県の献腎は極めて少なく,関東からのシッピングに頼っており,いわゆる移
入超過状態であった。2000 年よりこれを好転すべく県内の基幹病院・新潟県行政と共に臓器
提供意思を無理なく拾い上げるシステムを構築すべく活動を開始し 12 年を迎える。新潟県に
おける Donor Action Program(以下 DAP)である。
活動の特徴は,臓器提供者増に焦点を当てることではなく,提供しやすい環境づくりを県内
に展開することである。すなわち移植医・県行政と共に,救急施設には“救急における終末期
医療”の構築,県民へは“臓器提供意思の表示”を広く呼びかけることであった。さらに改正
臓器移植法に対応すべく,特に児童相談所と医療機関の連携,すなわち小児臓器提供者発生時
に正式に医療機関と児童相談所が当該児童について情報交換できるよう行政施策を変更した
り,また院内マニュアルの改変等を取り組んでいる。
さらに院内整備に欠かせない院内 Co の活動にも県行政施策として取り組んだ。特に院内 Co
の活動視点として,その介入ポイントに着目した。一般的に院内 Co の活動は,患者の予後不
良診断後からの動きにフォーカスされていた。しかし救急搬入患者家族の多くは突然の発症,
すなわち非日常の出来事を受け止めなくてはならず,また医療機関からすれば治療の限界点で
移植医療が介在してくるのに違和感を感じるのは当然である。したがって院内システム構築の
際には,患者搬入時からの取り組みが必要で,そのプロセスからポテンシャルドナーを見出し,
患者・家族への治療とケア,臓器提供へとつながる流れを構築してゆくように活動してきた。
結果,平成 23 年度の臓器提供数は 7 例(脳死下 1 例含む)と過去最高の提供者数であった。
人口 100 万人換算で 2.96/pmp と我が国の平均の約 3 倍となった。本発表では,新潟県のこれま
での取り組みを報告する。
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セッション 3
Co3-5 移植コーディネーターの活動と臓器提供の関連
高橋 絹代,若杉 雅浩,奥寺 敬
富山大学医学部 救急・災害医学講座
【背景】現在,国内には「院内」「都道府県」
「日本臓器移植ネットワーク(JOT)
」の 3 種類の
ドナーコーディネーター(Co)が存在する。このうち臓器提供の承諾を取る事ができるのは,
JOT Co と都道府県 Co であり,院内 Co が承諾を得ることは許されていない。しかし,最初に
臓器提供希望の連絡受けるのは院内 Co である事が多く,今後の移植医療の推進のためには院
内外の Co の連携強化が重要な課題であると考えられる。そこで臓器提供施設を対象に調査を
行い,院内外の Co 連携の実態と臓器提供の関連について報告する。
【方法】JOT のホームページ上で公開されている臓器提供施設 303 病院を対象とし,臓器提供
体制整備状況と問題点について調査票を送付・回収して検討を行った。
【結果】回答のあった施設の 80%に院内 Co は設置されていた。60%の施設では定期的な院外
からのCoの訪問があり,JOT Coの定期訪問は15%で,都道府県Coの定期訪問が59%であった。
院外からの移植 Co の定期訪問の有無とその施設での臓器提供数に関して検討したところ,脳
死下臓器提供では関連性が見られなかったが,心停止下臓器提供において両者に相関を認め
た。
【考察】全国的に院内 Co の設置は進んで来ている。院内 Co と地域の都道府県 Co は地連携が取
り易く,両者の協力体制確立により臓器提供の推進が図れる事が示唆された。移植医療は社会
的注目が高い反面,発生頻度は低いため常に新しい情報を提供するための窓口として,また患
者やその家族の臓器提供の希望を繋ぐために院内 Co の役割は今後ますます重要になると思わ
れる。
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教育講演 2
プレホスピタルからの脳蘇生の取り組み
鹿野 恒
市立札幌病院 救命救急センター
院外心停止患者の ALS の基本は,連続した胸骨圧迫,酸素投与による脳を含む全身臓器へ
の酸素化血液の供給および電気的除細動,薬物投与(エピネフリンなど)による「心拍再開」
にある。果たして,心停止患者に対する蘇生法はこの「心拍再開」に照準を合わせた ALS の
ままでよいのであろうか?
私たちは以前より薬剤投与および電気的除細動に抵抗性である心停止患者に対して,PCPS
を用いた心肺脳蘇生を積極的に実践してきており,2000 年には札幌市において『心原性院外
心停止患者に対する“pre-hospital PCPS order”システムを導入した治療戦略』(日本救急医
学会雑誌)を開始し,PCPS 導入時間の短縮化を図ってきた。現在,より効果的な脳蘇生を目
指し,心停止から 40 分以内の PCPS 導入を目標としているが,心停止から病院到着までの時間
は 33 〜 35 分程度であることから,病院での PCPS 導入に残された時間はわずかであり,たと
え搬入後 5 分以内に PCPS を導入したとしても,脳蘇生が叶わず遷延性意識障害となる患者も
存在する。これらの経験から,脳蘇生に対する PCPS のより効果的な導入時間帯は心停止後
20 〜 40 分程度にあるのではないかと考えている。その場合,病院内での PCPS 導入には限界
があり,pre-hospital での PCPS 導入を考慮する必要がある。しかし,PCPS の軽量化,現場で
のカニュレーションの安全性,病院外での高度医療処置に関する倫理的問題など,様々な問題
が存在している。
一方,ニューヨーク州では一昨年前に,慢性的な臓器不足を解消するため,院外心停止患者
を現場で救命できない場合,
“Organ Preservation Units”
を派遣するPilot programを開始した。
また,2005 年より国内で開始された院外心停止患者に対するウツタイン調査においても,
2009 年以降 1 ヵ月後生存者数・社会復帰者数は頭打ちとなっている。
世界の心肺脳蘇生法はこのままで良いのであろうか? 今後,
「心拍再開」に照準を合わせ
た ALS だけに頼るのではなく,「脳蘇生」を最優先とした PCPS を用いた蘇生法をこの日本に
おいて研究・開発し,心停止患者に対する脳蘇生の概念を変えていく必要があるのではないだ
ろうか?
37
教育講演 3
中枢神経の画像診断:最近の進歩
山田 惠
京都府立医科大学放射線科
最近の中枢神経の画像診断の進歩の中で,主に MRI にターゲットを絞って本講演を構成す
る。中でも特に perfusion および diffusion weighted imaging に関して概説を試みる。
Perfusion-weighted imaging
MR を用いた脳灌流画像(MR perfusion-weighted imaging; MR-PWI)にはいくつかの方法
があるが,その中で最初に登場したのが造影剤を使った dynamic susceptibility contrast
(DSC)
法である。DSC 法はハーバード大学の研究チームにより最初に提唱されたもので,急速静注
した造影剤が引き起こす信号変化を経時的に超高速画像で記録することにより達成される。
データ処理は元画像における各ピクセルの signal intensity-time curve をコンピュータ解析す
ることにより行なわれる。ボーラス性の高い造影剤が組織に到達することにより磁化率効果で
脳実質の信号は一過性に低下するが,その後ベースライン近くまで急速に戻る。このボーラス
部分の解析を行うことによって灌流のパラメータが得られる[1,2]。
臨床的に重要なパラメータは疾患によって若干異なるが例えば虚血性脳梗塞のアセスメント
において重要なのは時間のパラメータである mean transit time(MTT)及び time to peak
(TTP)である。脳の血流状態を判定するに当たって核医学的手法とほぼ同等の情報を提供し
得るため蘇生後の脳血流の状態を評価するのに用いることができると考えられる。
Diffusion-weighted imaging
中枢神経の画像診断に拡散強調画像は欠かせ無いものの一つとなっているが,この手法から
派生した拡散異方性を可視化する技術が diffusion tensor imaging(DTI)である。ここで使わ
れる tensor という概念は建築学や流体力学で専ら活用されてきた数学的概念であるが,この
モデルが比較的シンプルであるため拡散異方性を表現するのにも応用され DTI という命名が
なされた。
脳における拡散異方性の可視化が最初に動物で試みられ論文として発表されたのが今から約
20 年前の 1990 年のことである。その後,急速に研究が進み,今では様々な領域で使用されて
いる。この手法は脳の基礎研究のレベルにとどまらず,現在では臨床にも幅広く応用されてい
る。特に tractography は脳腫瘍の術前検査として定着した感がある。本手法は卒中領域にも
応用可能である[3]。
参考文献
1. Yamada K, Wu O, Gonzalez RG, et al. MR perfusion-weighted imaging of acute cerebral infarction: Effect of the
calculation methods and underlying vasculopathy. Stroke 2002; 33: 87-94.
2. Kudo K, Sasaki M, Yamada K, et al. Differences in CT perfusion maps generated by different commercial
software: quantitative analysis by using identical source data of acute stroke patients. Radiology. 2010; 254:
200-209.
3. Yamada K, Mori S, Nakamura H, et al. Fiber-tracking method reveals sensorimotor pathway involvement in
stroke patients. Stroke 2003; 34: E159-162.
38
教育講演 4
我が国の脳低温療法の成績
長尾 建
日本大学医学部,駿河台日本大学病院循環器科・心肺蘇生・救急心血管治療
迅速な目撃者による 1 次救命処置(basic life support, BLS)と迅速な automated external
defibrillator(AED)用いた除細動は,社会復帰率を改善させるが,迅速な標準的 2 次救命処
置(advanced life support, ALS)は,その有効性が証明されていない 2)〜 8)。2002 年院外心室
細動(ventricular fibrillation, VF)患者に対する無作為試験で,低体温療法は社会復帰率を改
善させることが報告された。その後,American Heart Association(AHA)/ International
Liaison Committee on Resuscitation(ILCOR)は,低体温療法の Evidence based medicine
(EBM)を探究し,2003 年 3),2005 年 4),2008 年 5),2010 年 6)〜 8) にその有効性を報告した。
2010 年版の International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science with Treatment Recommendations(CoSTR)に基づく AHA ガイ
ドライン 7) と Japan Resuscitation Council(JRC)ガイドライン 8) では,低体温療法の EBM
レベル Class 1 として,院外 VF 心停止心拍再開後も昏睡状態にある成人患者に対する低体温
療法(32 〜 34℃,12 〜 24 時間冷却)は施行すべきであるとした。しかし,院外非 VF 心停止
や院内心停止後に心拍再開するも昏睡状態にある成人患者対する低体温療法は有益かもしれな
いとした。さらに,至適深部体温,冷却開始時間,冷却持続時間,冷却手法,復温速度などは
解明されていない。
本講演では,我が国における低体温療法の臨床研究と今後の低体温療法の戦略について報告
させて頂きたい。
文 献
1. American Heart Association in collaboration with International Liaison Committee on Resuscitation. Guidelines
2000 for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care: international consensus on science.
Circulation. 2000; 102(Supple I): I-1-I-384.
2. Nolan JP, Morley PT, Vanden Hoek TL, et al, for the international Liaison Committee on Resuscitation.
Therapeutic hypothermia after cardiac arrest: an advisory statement by the Advanced Life Support Task Force
of the International Liaison Committee on Resuscitation. Circulation 2003; 108: 118-121.
3. International Liaison Committee on Resuscitation. 2005 International Consensus on Cardiopulmonary
Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science with Treatment Recommendations. Circulation.
2005; 112: Ш -1- Ш -136.
4. Neumar RW, Nolan JP, Adrie C, et al. Post-cardiac arrest syndrome. Epidemiology, pathophysiology, treatment,
and prognostication. A consensus statement from the ILCOR( AHA, ANCR, ERC, HSFC, IAHF,RCA, RCSA);
the AHAECCC; the CCSA, the CCPCC; the CCC; and the SC. Circulation. 2008; 118; 2452-2483.
5. International Liaison Committee on Resuscitation. 2010 International Consensus on Cardiopulmonary
Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science with Treatment Recommendations. Circulation.
2010; 122: s-249-s-638.
6. American Heart Association. 2010 American Heart Association Guidelines for cardiopulmonary resuscitation
and emergency cardiovascular care. Circulation. 2010; 122: s-639-s-946.
7. 日本蘇生協議会,日本救急医療財団 . JRC 蘇生ガイドライン 2010.へるす出版.東京.
39
Pros and Cons
脳蘇生からみた心蘇生の現況
石見 拓
京都大学 健康科学センター
心停止例後の社会復帰のためのカギを握るのが,早期の電気ショックと早期の良質な胸骨圧
迫である。
『救命の連鎖』の改善に伴い,院外心停止例の社会復帰率は改善傾向にあるが,目
撃のある心原性心停止例からの社会復帰率は 10%未満と依然低い。院外心停止例の社会復帰率
をさらに上昇させるためには,良質な胸骨圧迫が実施できる救助者の養成が求められる。
心肺蘇生は,約 50 年間,人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせを標準として普及してきた。心
肺蘇生の有効性は広く認識され,普及啓発が広く行われているが,心停止例に対して居合わせ
た市民が心肺蘇生を実施する割合は,依然 40%程度と不十分である。人工呼吸も行う心肺蘇
生法の複雑さ,口を接触することに対する抵抗感などが,心肺蘇生の普及,実施の妨げになっ
ていることが指摘されている。
こうしたなか,我々は,心停止から救急隊による心肺蘇生開始までが 15 分以内の成人心原
性心停止に対して,胸骨圧迫のみの心肺蘇生が,従来の人工呼吸付心肺蘇生と同程度に効果が
あることを明らかにした。胸骨圧迫のみの心肺蘇生であれば,短時間で効率よく多くの市民に
普及できる可能性がある。これらのデータを踏まえ,日本版蘇生ガイドライン 2010 では,主
に市民を対象として,胸骨圧迫のみの心肺蘇生を指導することの有用性に言及している。
一方で,子供の非心原性心停止では,人工呼吸の実施が社会復帰率向上につながることを示
唆するデータも明らかとなった。本講演では,胸骨圧迫のみの心肺蘇生はどのような症例に有
効なのか,新しいガイドラインに込められたメッセージをどのように理解し,実践すべきなの
か?院外での救命処置の現状はどうなっているのか? AED の普及が進む現在,更なる社会
復帰率の向上を図るために何が求められているのか? 我が国で得られた最新の知見を中心
に,より多くの脳蘇生を実現するための心蘇生のあり方について私見を述べる。
40
Pros and Cons
自動体外式除細動器(AED)導入の費用推計
小川 俊夫
奈良県立医科大学 健康政策医学講座
【目的】平成 16 年に市民による自動体外式除細動器の使用が認可されて以来,市中設置の除細
動器(市中 AED)の普及が急速に進んでいる。この市中 AED の導入費用と効果に関する研究
は,欧米では実施されているがわが国ではあまり実施されていないのが現状である。本研究は,
わが国における市中 AED の導入費用について推計を行い,その社会的意義について考察を実
施する。
【方法】わが国における市中 AED の販売台数と一台あたり費用より,わが国における市中
AED の導入費用総額を推計する。推計にあたり,市中 AED 一台あたりの本体購入費用を 30
万円,バッテリー及び電極パッド交換費用をそれぞれ 4 万円,2 万円とし,耐用年数を考慮し
て推計を行う。
【結果】平成 22 年までの 6 年間で市中 AED は累計で約 25 万台販売されており,その導入費用
の総額は約 820 億円と推計された。導入費用の総額を都道府県別にみると,東京都の約 113 億
円から鳥取県の約 4 億円,人口一人あたりでは島根県の約 947 円から福岡県の約 445 円と差が
みられた。
【考察】本研究で推計されたわが国での市中 AED 導入費用総額約 820 億円のうち,平成 22 年度
には約 174 億円使われていると推計されたが,平成 22 年度の厚生労働省のがん対策予算 316 億
円などと比較すると,多額の費用が市中 AED に投下されていると考えられる。特に市中 AED
の多くは公的機関に導入されており,多くの公的資金が市中 AED に対して使われていると考
えられる。今後は「救急蘇生統計」の予後データなどを用いた市中 AED の費用対効果などに
ついても勘案し,施策として効果的な市中 AED の配置を実現する必要があると考えられる。
【謝辞】本研究は,平成 23 年度文部科学省学術研究助成基金助成金「自動体外式除細動器(AED)
の経済分析に関する研究」の一貫として実施した。
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教育ランチョンセミナー
法的脳死判定~臨床医のための脳死判定技術の取得~
横田 裕行
日本医科大学大学院 救急医学
2010 年 7 月に「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(いわゆる,改正臓器移植法)
」
が施行され,本人の臓器提供に関する生前意思が存在しなくても,家族の承諾があれば脳死下
臓器提供が可能となった。それに伴い 15 歳未満の小児からの脳死下臓器提供も可能となり,
また脳死下臓器提供数の増加が認められている。改正臓器移植法では脳死判定の方法や手順は
もちろん,どのような施設でどのような資格を有する医師が判定すべきかなどに関して法律の
施行規則やガイドラインに取り決めがなされている。例えば,関連学会の専門医,または認定
医の資格を持ち,かつ脳死判定に関して豊富な経験を有し,しかも移植にかかわらない医師が
2 名以上で行うことになっている。さらに,年齢によって法的脳死判定自体やその手順が異な
ることも確認しておかなければならない。また,脳死下臓器提供施設は臓器提供後に脳死診断
や臓器提供への手順に関して厚生労働省の検証を受けなければならないので注意が必要であ
る。そのために,法的脳死判定は平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金厚生科学特別事業「脳
死判定マニュアル」に準拠して行うことが必要である。また,「臓器提供施設マニュアル」や
日本臓器移植ネットワーク(JOT)臓器提供施設委員会が作成した「臓器提供施設の手順書」
は法的脳死判定や臓器提供時の手順が解説されており参考にすべきと考える。さらに最近,
JOT 作成した法的脳死判定が作成した脳死判定の手順も同ホームページから閲覧可能である
(http://www.jotnw.or.jp/jotnw/law_manual/index.html)
。法的脳死判定のポイントについて
画像を提示しながら解説をする。
42
シンポジウム
S17-1 これまでの 102 例の法的脳死判定事例よりみた
脳死判定エビデンスの集積
島崎 修次
国士舘大学大学院 救急システム研究科
脳死下での臓器提供事例に係る検証会議(以下「検証会議」委員会報告より)
【はじめに】平成 9 年 10 月に「臓器の移植に関する法律」が施行されて以降,以来 15 年間で
168 例の脳死下臓器提供が行われた。厚生労働省が脳死下での臓器提供事例の検証を行った総
数は 102 例に上る。
【目的】今回これまでの 102 例の検証事例を振り返り,救命治療,法的脳死判定等の状況,臓
器移植ネットワークによる臓器あっせん業務の状況全体を検証することとした。
【方法】臓器移植専門委員会及び検証会議にて検証が行われた 102 例の検証事例について医学
的検証を実施。
【結果】性別として男性は 57 人,女性は 45 人,平均年齢 44 歳入院から脳死とされうる状態の
診断までの平均日数は 6.37 日。診断に要した時間は平均で 3 時間 23 分,原疾患としてくも膜下
出血 42 例,頭部外傷 20 例,蘇生後脳症 20 例,脳出血 13 例,脳梗塞 5 例,脳腫瘍 2 例であった。
いずれの検証事例も原疾患に対する的確な診断と適切な治療がなされていた。脳死とされうる
状態の診断では体温の測定部位,低血圧,脳波の記録時間に注意する必要があるが,いずれの
検証事例でも,法的脳死判定に影響を与える要因ではなかった。全例に法的脳死判定が行われ
ており,体温の測定部位,無呼吸テストの際の PaO2,血圧等に注意必要があった症例が散見
されたが,法的脳死判定は全ての検証事例についていずれも妥当に行われていた。
【考察】本検証の結果,以下の 5 つについて考察に至った。第一は,脳死というものが,年齢
や性別にかかわらず,誰にでも起きる可能性がある病態であるを再度認識した。第二に,関係
者の努力によりすべての事例について医学的に妥当な対応がなされていたことが改めて確認さ
れた。第三に終末期における臓器提供を含む選択肢の提示というテーマを通じて,特に家族が
避けられない死をいかに受け止められるかを医療現場はたいへん苦慮していた。そして,その
対応を通して臓器提供の有無に関わらず終末期医療のあり方,看取りのあり方の議論を高める
結果となった。第四に家族の意思決定を支援するネットワークや都道府県のコーディネーター
の献身的な活動とその効果が明らかになった。第五に,ドナーとその家族の尊い意思により,
臓器移植を受け,命が繋がれ,社会復帰を果たし,幸せにしている人が確実に増えているとい
う事実が改めて確認された。
今回 102 例の事後検証を通じて,今まで 1 例毎の検証では明らかすることが困難であった提
供施設での救命治療・法的脳死判定の現状や臓器移植コーディネーターの家族への対応及びそ
の家族の心情が明確にされた。このことは理解されにくかった脳死下での臓器提供について理
解を深める材料となり得る。本報告を多くの人に周知し脳死下での臓器提供の実際を知ってほ
しいと願うものである。
今後も臓器提供が法令・ガイドラインに従い,妥当・適正に行われることを望むとともに,
このまとめが臓器提供を広く一般社会への理解を深める一端となることを望む。
43
シンポジウム
S17-2 エビデンスに基づく不可逆的な昏睡の診断
木下 順弘
熊本大学 侵襲制御医学
【背景】全脳機能の不可逆的喪失を定義とする我が国の脳死判定基準により法的脳死判定を受
けた症例の報告は 100 例を超えた。厚生労働省の手順に従い,真摯に判定を行った臨床医の努
力によるものである。現行の基準は,深昏睡,全脳幹反射消失,平坦脳波,無呼吸と 6 時間以
上の観察である。これらの各項目はいずれも重要であるが,あくまで判定実施時点の当該機能
停止を観察しているに過ぎず,その後の不可逆性を十分には証明できていない。また,どのよ
うな症例が判定基準を満たさなかったのか,それらの症例の最終転帰も明らかではない。
【法的脳死判定報告例】男性 57 例,女性 45 例。平均年齢 44 歳。原因はくも膜下出血 42 例,頭
部外傷 20 例,蘇生後脳症 20 例,脳出血 14 例,脳梗塞 4 例,脳腫瘍 2 例。報告例の中には判定
項目を満たさなかった症例は一例もなかったが,仮にそのような症例があったとしても,“脳
死とされうる状態”の段階で除外されているのかもしれない。よって,非脳死を含む陽性/陰
性の対照例が明らかでないため,現行の法的脳死判定が必要十分かまた妥当かどうかの結論は
不明である。
【提案】現行基準のような必要条件の積み重ね法を脱却し,近年の医学の進歩を取り入れ,脳
機能の不可逆性を証明する脳死判定法が提案される必要がある。日本脳死・脳蘇生学会が実施
したワークショップで提案された,1)脳死後の頭部画像診断,2)脳血流検査,3)電気生理
学検査などの検討を積み重ね,脳死診断の客観性と確からしさを高めることが全脳機能の不可
逆的喪失を証明する方向となると考える。
44
シンポジウム
S17-3 小児脳死下臓器提供体制の構築について
荒木 尚,横田 裕行
日本医科大学 救急医学
「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律」が施行され,15 歳未満の小児からの脳死
下臓器提供も可能となり,小児脳死判定基準・実施施設や判定医の資格等が定められ,法的脳
死判定マニュアル・臓器提供施設マニュアルの刊行がなされた。2011 年 4 月国内初の 15 歳未
満の脳死下臓器提供が実施されたが,元来重篤な中枢神経病態に陥る割合が少ない小児におけ
る臓器提供の頻度について,関連学会において推測や議論がなされる中,特に除外項目として
の被虐待児の判別や,意思表示の有効性についての議論も少なくない。
今回,全国都道府県で開催された「臓器提供研修会」などにおいて,参加延べ人数 484 名と
の質疑応答から体制構築について問題とされた点を整理し考察を加えた。また平成 23 年 11 月,
日本小児科学会教育研修委員会主催の小児救急教育セミナーで行った「模擬脳死判定委員会」
の内容を報告し,参加者の学習程度や反響についても報告する。
結論:小児の脳死下臓器提供を実施する可能性がある施設は,院内虐待防止委員会また診断
マニュアルの整備状況を再確認すると同時に,施設内,施設外との連絡網の構築や,児童相談
所・警察など関連機関と連携するための役割分担を定める必要がある。また死に行く子どもや
家族への配慮は極めて重要であり,終末期医療の一環としてグリーフケア等を念頭に置いた包
括的整備が重要である。脳死判定による医学的病態の理解を通し,医療者が患者家族と共に情
報や倫理観を共有し,意思に基いた臓器提供,提供後のケアに至るまで,プロセスを一貫して
正しく執り行う中で,医師患者間・医療従事者間の信頼の絆が築かれていくと思われる。
45
一般演題 1
Bd1-1 急速に脳死状態となった急速進行性全脳虚血症例
熊井戸邦佳,堤 晴彦,杉山 聡,平松玄太郎
埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター
【はじめに】我々は原因不明の凝固能異常を伴う症例を経験した。意識障害で発症し急速に深
昏睡,瞳孔散大,対光反射消失となった。当初,薬物中毒疑いで搬送されたが,全身状態不良
のためから全身状態の管理重点が置かれたが,画像上の変化は急激で脳の虚血を疑わせるもの
の病態ははっきりしなかった。集中治療を行ったにも関わらず,急速に脳腫脹を生じ,臨床的
脳死状態に至った。こうした経過の急速な症例を経験したので病因の考察を含め報告する。
【症例】24 歳女性。自宅トイレで意識消失した状態で発見され,近医に救急搬送された。前医
で JCS 300 両側瞳孔散大,対光反射消失の状態であった。血圧は正常だが軽度頻脈の状態あっ
た。気道確保されるも自発呼吸は保たれていた。WBC 19800,GOT 78,LDH 358 の異常以外
は問題なかった。また画像上は出血なく脳梗塞も否定されている。その後,代謝性アシドーシ
スの悪化があり,CK 20170 と高値となったため,薬物中毒を強く疑い当院に紹介転院となっ
た。転院後の頭部 CT で大脳皮質に沿った広範な虚血を認めた。しかし全身状態不良で血圧の
維持もままならず四肢の循環障害と多臓器不全をきたしていた。腎不全もあり血液透析と脱水
の補正を中心に治療を行うも,基礎に慢性的な下剤の使用による脱水状態が疑われた。こうし
た状態は改善しているにも関わらず頭蓋内の状況は改善せず全脳の虚血を生じ臨床的脳死状態
となった。
【考察】症状から多数の因子の関与が考えられるが,前医での MRI 画像は PRES 様のそれほど
重症感のない画像であった。脱水と凝固系の異常が主病態と考えられるが,意識障害での発症
から急激に臨床的脳死状態に進行した症例を経験したのでここに報告する。
46
一般演題 1
Bd1-2 心肺停止蘇生後の全脳虚血再灌流障害における
酸化ストレスと抗酸化能の変化
石川 浩平,井上 貴昭,田中 裕,角 由佳,竹本 正明,森川 美樹,
福本 祐一
順天堂大学医学部附属浦安病院 救急災害医学講座救急診療科
【背景】わが国における院外心肺停止(OHCPA)患者数は,年間約 25,000 人であるが,蘇生
され社会復帰に至る症例は 2%と極めて低く,医療経済的な観点や患者家族の視点から考慮
すると神経学的予後の予測が重要である。近年注目される活性酸素物質(Reactive Oxygen
Metabolites;dROM)及び抗酸化物質(Biological Anti-oxidant potential;BAP)は,心停止
後全脳虚血再潅流後に生じる脳神経細胞傷害を間接的に表す指標と考えられ,予後指標となる
可能性が示唆される。
【目的】OHCPA 患者について,搬入直後の dROM・BAP と生命学的予後の関係を明らかにす
ること。また自己心拍再開例において,dROM・BAP の経日的変化を明らかにし,神経学的
予後の関係を検討すること。
【方法】2011 年 5 月から 2012 年 2 月までに当院に搬送された OHCPA 患者を対象として,全
血液を採取し,簡易機器(FRAS4)を用いて ddROM・BAP を測定した。これらの,
(1)健
常人との比較,
(2)心拍再開・非再開症例群の比較,(3)生命予後による比較,を実施した。
心拍再開例については,経日的に測定した。
【結果】該当期間に測定可能であった OHCPA 患者は 55 名であり(平均年齢 61.3 ± 13.4 歳)
このうち 7 名に自己心拍再開を認めた。OHCPA 群では健常群(n=21)に比較し,有意な
dROM 及び BAP の上昇を認めた(p < 0.05)。心拍再開群は非再開群に比べて有意に BAP が
低値であった(p < 0.05)。自己心拍再開例 7 例において,経過中死亡した 5 名は生存退院し
た 2 名に比較して,経日的に dROM の上昇を認め,BAP の再上昇を認めた。
【結語】OHCPA 患者における dROM や BAP は生命学的及び神経学的予後指標となる可能性
がある。
47
一般演題 2
Bd2-1 救急救命士に対する脳死・救急終末期医療教育の
必要性の検討−蘇生中止の判断のために必要な教育−
高山 祐輔 1),田中 秀治 1),高橋 宏幸 1),喜熨斗智也 1),白川 透 2),島崎 修次 1)
国士舘大学大学院 救急システム研究科,2)国士舘大学体育学部 スポーツ医科学科
1)
【背景】日本はかつてない高齢者社会を迎え,高齢者による救急搬送は 1,513,908 件とその
53%を占めるようになってきた。並行して高齢者の CPA も増加の一途をたどっており,救急
隊が現場で蘇生拒否を示している心肺停止傷病者に対応する事例が少なくない。一方でこれら
高齢者の OHCA の蘇生率は決して高くなく医療資源と救命率を検討すると蘇生中止を考える
時期になってきた。しかし今まで,救急救命士に対する脳死・救急終末期医療教育は決して十
分とはいえない。
【目的】救急救命士ならびに救急救命士養成課程の学生において脳死・終末期医療に対する意
識や知識を明らかにする事。
【方法・対象】救急救命士 48 名と救急救命士養成課程の学生 233 名(年齢,21.0 ± 0.5 歳,男
性 183 人:女性 50 人)を対象とし,救急救命士標準テキストに記載されている内容を把握,
次いで「救急医療における終末期医療に関する提言」を読解した後,救急終末期医療について
の無記名アンケートを行った。
【結果】脳死・終末期医療の内容は救急救命士テキストのみでは十分理解できていなかった。
脳死の病態や救急医療における終末期医療の現状把握には,「救急医療における終末期医療に
関する提言」を読む事で理解が深まったと 88%が回答した。しかし,現場で蘇生拒否を示し
ている心肺停止傷病者の具体的な対応方法が理解できたと回答したのは 18%で,多くの回答
者がより具体的な対処方法を望んでいた。
【考察】救急救命士あるいは養成課程の教育のみでは脳死・終末期医療について十分でないこ
とが明らかとなった。今後,病院前救急医療の現場に必要とされている救急終末期医療につい
ての知識を深めるため救急救命士にはより深い脳死・終末期医療についての教育が必要と考え
られた。
【結論】救急隊として蘇生拒否を示している心肺停止傷病者に適切に対応する為にはテキスト
による勉強のみならず,プレホスピタル独自の対応を盛り込んだシミュレーション訓練などの
実習内容を含むべきと考える。
48
一般演題 2
Bd2-2 Lance-Adams 症候群 11 症例に対する治療経験
恩田 秀賢,横田 裕行
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
【はじめに】当施設には年間に 300 ~ 400 症例の心肺停止患者が搬送されている。BLS,ACLS
などのコース普及に伴い,心肺停止患者の治療および管理など蘇生技術の進歩がみられ,予後
良好例も増えているものの,脳低温療法など集学的加療を行っても,脳蘇生に成功出来ない症
例もある。その中で,蘇生後脳症に伴うミオクローヌス(intention or action myoclonus)を
含むけいれん発作とされる Lance-Adams 症候群は発症後 24 時間以内に認められると予後不
良因子とされ,治療に難渋することが多い病態である。
【目的】Lance-Adams 症候群に対する当施設での治療方法およびその効果を調査した。
【方法】2011 年 1 月 2011 年 12 月までの 1 年間で当施設に搬送された心肺停止患者 326 例の中
で蘇生後に成功した 111 例を対象とした。それぞれの抗けいれん薬の種類および効果を検討し
た。
【結果】Lance-Adams 症候群 11 症例(9.91%)に抗けいれん薬が内服で投与されていた。全症
例が単剤抗けいれん薬投与で,有効血中濃度を維持しても症状改善を認めず,追加の抗けいれ
ん薬投与を必要としていた。2 剤目または 3 剤目の追加薬剤として,Levetiracetam が使用さ
れており,けいれんやミオクローヌスの発作消失や頻度の減少を認めた。効果があったのは
11 症例中 10 症例(90.9%)であった。残り 1 症例は各種薬剤抵抗性であり,発作頻度の変化
を認めなかった。
【考察】Lance-Adams 症候群に対する薬剤の選択は非常に困難である。Clonazepam や Valproate または,Piracetam などが有効であるという報告があり,最近は Levetiracetam の報告
も散見される。今回 11 症例に Levetiracetam を使用し 10 症例に効果が認められた。しかし,
今回の検討での問題点は,脳波による評価での有効性ははっきりせず,効果ありと判断する要
素としては,臨床症状の改善をもってしかないことであった。今後症例を積み重ねることで,
脳波検査もさらに施行し,有効性の評価方法も含めて,さらなる検討を行いたい。
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一般演題 2
Bd2-3 外傷に起因する児童入院患者 713 名における虐待関与の検討
鈴木 孝典,唐澤 秀治,陶山謙一郎,新美 淳,鈴木 健也,根本 文夫,
畑山 和己,内藤 博道
船橋市立医療センター 脳神経外科
【はじめに】近年児童虐待の数は増加傾向にあり,臨床の現場でも判断に悩むことが多々ある。
特に平成 22 年 7 月から施行された改正臓器移植法により 15 歳未満から脳死下での臓器提供が
可能となったが,臓器提供を行うためにも児童虐待を除外しなければならない。当院は三次救
急を主体とした地域の中核病院だが,そのような医療機関が経験する児童虐待の関与について
検討した。
【方法及び結果】1983 年 10 月から 2011 年 3 月までの 28 年間に脳神経外科へ入院となった患
者を対象とし,診療録を後ろ向きに調査して児童虐待患者の有無について検討した。調査期
間中に当科入院となった患者数は 19,569 名で,このうち 18 歳未満の外傷に起因する入院数は
713 名であった。初診時の主訴より受傷機転を「交通外傷」
「転倒・転落」
「運動」
「衝突・打撲」
「闘争」「その他」に分類すると,
「交通外傷」が 302 名(約 42%)と最多で「転倒・転落」が
267 名(約 37%)と続く。「運動」が 74 名,「衝突・打撲」が 33 名,「闘争」が 30 名,「その
他」が 7 名であった。入院となった患児のうち入院当初から虐待の疑いがあったのは 10 例あ
り,諸調査の結果虐待と判断されたのは 7 例であった。これら 7 例の患者の転帰は GR が 2 名,
MD が 2 名,SD が 2 名,VS が 1 名であった。
【結論】当科入院患者の中で外傷に起因する 18 歳未満の患者が占める割合は 3.5%であり,そ
の中で虐待が関与する割合は 713 名中 7 名(約 1%)であった。受診時に虐待の関与が疑われ
て入院となった患児はその後の調査で高率に(10 名中 7 名)虐待の関与がみられた。
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協賛企業一覧
(順不同)
小野薬品工業株式会社
大日本住友製薬株式会社
田辺三菱製薬株式会社
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株式会社大塚製薬工場
旭化成ファーマ株式会社
第一三共株式会社
テルモ株式会社
株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン
日本船舶薬品株式会社
レールダル メディカル ジャパン株式会社
NEC デザイン&プロモーション株式会社
コーケンメディカル株式会社
フクダ電子東京西販売株式会社
株式会社ノルメカエイシア
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
株式会社東機貿
エム・キューブ株式会社
アドミス株式会社
日本メドトロニック株式会社
株式会社高研
アイ・エム・アイ株式会社
綜合警備保障株式会社
株式会社ワコー商事
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
日本光電工業株式会社
株式会社テクノメディカ
アコードインターナショナル株式会社
スミスメディカル・ジャパン株式会社
ZOLL Medical Corporation
株式会社大修館書店
株式会社メディカ出版
株式会社荘道社
株式会社へるす出版
株式会社紀伊國屋書店
株式会社羊土社
株式会社文光堂
皆様の多大なる御協力に心より感謝致します。
第 25 回日本脳死・脳蘇生学会 総会・学術集会
会長 田中秀治