◉安楽往生の願い ちょいとしたアンケート用紙 のようなものに、住所・氏名・ 年齢と書き進めているとき、ふ だん気にもとめていなかった 年齢が48歳であることを自覚 する。テレビの歌番組など見な がら、いいかげんに質問に答え ているものだから、いましがた 歌っていたアイドルグループの 名前がふと浮かび、頭の中でP PK48などという、これまた いいかげんな言葉ができあがっ た。どうでもよさそうな連想な のであるが、昨年のある新聞記 事が心に残っていたものだから、 きっとそうなったのだろう。 その新聞によれば、PPKと は、長野県体育学会にて昭和 54年に発表された造語で、ピ ンピンコロリという言葉の略だ という。つまり、元気でピンピ ン生きて、最期は寝込まないで コロリと逝く。これはわたくし の発言ではなく「ぴんころ会」 会長が新聞でコメントしている ことなので、誤解なきよう。じ つは数年前から、これを祈願す る神仏が流行しており、ポック リ大師やら、コロリ観音など、 各地にはそんな神仏をめあてに ツアーが組まれて、年間5万人 16 広報古河 2012.5.1 ~古河のポックリ地蔵尊~ もの参拝者を迎えているところ もあるというのです。 このように、安楽往生、すな わち苦しまずに安らかにあの世 へ旅立つことを願う気持ちを形 にあらわした神仏は、新聞記事 の世界ではなく、わたしたち の身近なところにもあります。 たとえば、上大野の路傍には、 ポックリ地蔵尊として信仰され る、石造の地蔵菩薩立像があり ます。小堤のある女性は、声を ひそめてこんなふうに語りまし た。 「おいおい、あそこにある お地蔵さん知ってるかい。…… あ ん た、 若 い か ら( ? )知 ん な いだろうけど、ポックリだよ、 ポックリ。だれにも気づかれな いように、そーっとお参りに行 上大野のポックリ地蔵 くんだ。そうすっと効果があん だ」と、それも見てきたかのよ うに。ほかにも、このような安 楽往生を願う地蔵尊は、市内に 尾崎の万福寺の山門前や、山田 きゅうしょういん の久昌院の山門前にも。調べれ ばもっとあるのではないでしょ うか。 学問的には、急速に進む少子 高齢化社会が、そのような流行 を生む背景にあるのだとの解釈 もありますが、対象と参拝者が 誰なのかによってその意味は大 きく変わります。しかしながら、 いずれにしても、安楽往生の願 いは、いつの世にもあったに違 いありません。 ずいぶん前に、坂東市でポッ クリ不動尊を調べたことがあり ますが、そこは東京にも分院が あったほど昔から有名で、秋葉 原駅周辺の人々がバスに乗って お参りに来ていました。なんだ かそのあたりからPPK48な んて言葉が浮かんだのかもしれ ません。それよりも誰にも気づ かれずにお参りするポックリ地 蔵の話。若いから…と言われた の で す が、 な ん か 微 妙( ? )な 年齢でもありますが。 古河歴史博物館学芸員 立石尚之
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