監査結果(要約)(PDF形式 314 キロバイト) - 新潟県

平成 21 年度
包括外部監査結果報告書
(要約版)
障害福祉に関する事務の執行について
平成 22 年 3 月
新潟県包括外部監査人
公認会計士
逸見 和宏
報告書中の表の合計は、端数処理の関係で総数と内訳の合計とが一致
しない場合がある。
第1
1.
監査の概要
監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に基づく包括外部監査
2.
選定した特定の事件(テーマ)
障害福祉に関する事務の執行について
3.
特定の事件を選定した理由
県の総人口が減少傾向にある中、障害者(身体障害者、知的障害者及び精神障害者)
の数は徐々に増加しており、平成 20 年度には約 14 万人と総人口の 6%近くに達してい
る。また、他県に比べて県立の障害福祉施設が多く、その運営に多額の県費が投入され
ている。こうしたことを背景に障害福祉関係予算も増加してきており、平成 21 年度一般
会計予算では 165 億円が計上されている。さらに、障害福祉施設については、指定管理
者制度を導入して運営を委託する事例や PFI 事業により民間に移管した事例など、運営
形態に大きな変化が見られる。
一方、国の障害者施策についても近年大幅な制度改正が行われている。
平成 15 年には、
従来の措置制度が障害者の主体性を尊重した支援費制度に改められ、利用者と事業者が
対等な関係で契約によりサービスを利用することとなった。さらに平成 18 年には、障害
種別に係わりなくできるだけ身近なところで福祉サ-ビスを利用することができるよう、
障害者自立支援法が施行された。
このように障害者を取り巻く環境が大きく変化し、障害福祉の重要性が増しているこ
とに鑑み、障害福祉に関する事務が関係法規に準拠して適正に執行されているか、そし
て効果的、効率的なものであるかを検証することが有効であると考え、特定の事件とし
て選定した。
4.
監査の視点
監査は、障害福祉事業、県立の障害福祉施設、指定管理者制度を導入している障害福
祉施設及び PFI 事業の 4 つの分野について実施している。監査の視点は以下のとおりで
ある。
①
障害福祉事業は関係法規に準拠して適切に行われているか
②
障害福祉事業は効率性、経済性及び有効性の観点から適切に行われているか
1
5.
③
障害福祉事業の効果は適切に把握されているか
④
障害福祉事業の実績数値が適切に把握され、予算と対比されているか
⑤
県立の障害福祉施設の運営は適切に行われているか
⑥
障害福祉施設を県の直営事業としていることに非効率性はないか
⑦
指定管理者制度を導入している障害福祉施設の運営は適切に行われているか
⑧
PFI 事業により整備された施設の有効性が適切に評価されているか
⑨
障害福祉施設は有効に利用されているか
⑩
委託契約の締結に競争性が確保され、実績把握が適切に行われているか
監査対象期間
平成 20 年度。ただし、必要に応じて平成 19 年度以前の年度も監査対象とした。
6.
監査対象機関等
監査対象とした機関等は以下のとおりである。
福祉保健部
障害福祉課、高齢福祉保健課、三条保健所、精神保健福祉センター
新星学園、はまぐみ小児療育センター、あけぼの園、にしき園
コロニーにいがた白岩の里
総務管理部
管財課
土木部
都市局営繕課
三条地域振興局
地域整備部
警察本部
交通部交通規制課
指定管理者
社会福祉法人豊潤舎(新潟県障害者リハビリテーションセンター)
社会福祉法人新潟県身体障害者団体連合会(新潟県障害者交流セン
ター及び新潟県聴覚障害者情報センター)
社会福祉法人新潟県視覚障害者福祉協会(新潟県点字図書館)
財政援助団体
医療法人責善会(はまなすホーム)
関係団体
社会福祉法人のぞみの家福祉会(緑風園)
(注)括弧は指定管理者等が運営する施設名である。
7.
監査実施期間
平成 21 年 7 月 22 日から平成 22 年 2 月 2 日まで
2
8.
9.
監査補助者
公認会計士
石川 勝行
公認会計士
本間
公認会計士
阿部 和人
公認会計士
小林 正則
公認会計士
坪沼 一成
弁
士
村上 昌弘
事務職員
大竹真理子
護
敏
利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載す
べき利害関係はない。
3
第2
1.
監査対象の概要
障害福祉政策の動向
(1) 措置制度から支援費制度への移行
わが国の戦後の社会福祉は、戦傷病者、孤児、貧困者といった限られた者の保護・救
済から始まった。当時の障害福祉の考え方は、行政が中心となって障害者が生きていけ
るよう援助することに重点を置いており、障害者へのサービスも措置制度により行われ
てきた。措置制度とは、行政が提供するサービスの内容を決定し、そのサービスを事業
者に委託する仕組みである。
しかし、1980 年代以降、障害福祉にノーマライゼーションに基づく当事者主体、地域
福祉の考え方が登場する。これは、障害者一人ひとりの意志を尊重し、障害者と健常者
が区別されることなく生活や仕事をすることができる社会を目指そうとするものである。
ノーマライゼーションの観点からは、従来の措置制度は以下のような問題点を孕んでい
た。
①
利用者はサ-ビス内容や事業者を選択できない。
②
利用者と事業者の間に契約関係がないため、お互いの法律関係が不明確である。
③
事業者は委託された内容に沿った画一的なサービスしか提供できない。
これらの問題を解消するため、平成 15 年 4 月に措置制度に代わり支援費制度がスター
トした。支援費制度により、障害者は自らサービスを選択し、指定事業者・施設と契約
してサービスを利用することができるようになった。支援費制度の基本的な仕組みは[図
表 2‐1]のとおりである。
[図表 2‐1]支援費制度の仕組み
市町村
定
注
1
請
決
給
申
支
給
(代
払
費
支
援
領
)
3
注
受
求
理
請
の
②
指定申請
指定・指導
支
費
支
費
払
援
援
支
費
支
支
援
支
⑦
⑥
①
県
③ 契約
利用者
④ サービス提供
⑤ 利用者負担の支払 注2
4
指定事業者・施設
注1.施設入所の支援費支給決定に当たっては、3段階の障害程度区分を定める。また、
市町村が支援費の支給決定をした場合は、利用者に対して受給者証を交付する。
2.利用者及び扶養義務者の負担能力に応じて支払う(応能負担)
。
3.支援費は、サービスの提供に要した費用の全体額から利用者負担額を控除した額を
いう。
(2) 障害者自立支援法の施行
実際に支援費制度が始まると、新たな問題点が浮上してきた。
① サービス利用者の急増と財源不足
支援費制度によりサービス提供事業者の参入が進み、利用者及びサービス提供量
が急増した。措置制度では、行政がサービス提供先、サービス内容等を決定してお
り、福祉サービスはある一定量の枠組みの中で提供されていたことを考えると、当
然の結果とも言える。
問題は、支援費制度がその財源を租税に求めていることにある。制度開始当初か
ら補正予算を組まざるを得なくなるなど財源不足が露呈することになった。
② サービス水準の地域間格差
市町村が行う支給決定審査に全国共通のルールが整備されていなかったため、地
域ごとに支給決定人数に大きなバラつきが生じた。
③ 障害別の制度体系
根拠法が身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法と分かれているため、
サービスが法律に基づいた障害種別に応じたものとなり、利用者にとって不便なも
のであった。また、精神障害者は支援費制度の対象外とされていた。
このような支援費制度の問題点を解決するため、平成 18 年 4 月に障害者自立支援法が
施行された。これにより、障害の種別に係わりなく共通の仕組みにより共通のサービス
が受けられるようになった。
2.
県内の障害者の状況
(1) 身体障害者
平成20年度の身体障害者数は89,816人であり、平成16年度比で9.3%増加している。障
害別構成比では、肢体不自由と内部障害(心臓、腎臓、呼吸器等の機能障害)の比率が
高く、両者で全体の80%強を占めている。
5
[図表2‐2]身体障害者の状況
(各年度4月1日現在、単位:人)
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
82,142
83,395
85,782
87,973
89,816
うち18歳未満
1,386
1,384
1,394
1,391
1,352
視覚障害
6,341
6,286
6,314
6,335
6,346
(7.7%)
(7.5%)
(7.4%)
(7.2%)
(7.1%)
9,452
9,289
9,373
9,444
9,425
(11.5%) (11.1%)
(10.9%)
身体障害者数
(構成比)
障 害 別 構 成 比
聴覚平衡機能障害
(構成比)
1,066
1,050
1,063
1,047
1,069
(1.3%)
(1.3%)
(1.2%)
(1.2%)
(1.2%)
49,196
49,736
51,062
52,516
53,462
(59.9%) (59.7%)
(59.6%)
音声言語機能障害
(構成比)
肢体不自由
(構成比)
16,087
17,034
17,970
(19.6%) (20.4%)
(20.9%)
内部障害
(構成比)
(10.7%) (10.5%)
(59.7%) (59.5%)
18,631
19,514
(21.2%) (21.7%)
(2) 知的障害者
大きな変動は認められず、15,000人程度で推移している。
[図表2‐3]知的障害者の状況
(各年度4月1日現在、単位:人)
16年度
18年度
19年度
20年度
14,628
14,935
15,517
15,000
15,126
3,154
3,242
3,421
3,024
2,924
12,824
13,224
13,793
14,221
14,595
(87.7%) (88.5%)
(88.9%)
(94.8%)
(96.5%)
知的障害者数
うち18歳未満
うち療育手帳所持者
(手帳取得率)
17年度
(3) 精神障害者
大きな変動は認められず、33,000~34,000人で推移している。
[図表2‐4]精神障害者の状況
(各年度3月31日現在、単位:人)
15年度
精神障害者数
入院患者数
(構成比)
通院患者数
(構成比)
3.
16年度
17年度
18年度
19年度
33,140
34,356
34,825
34,095
33,595
6,837
6,686
6,588
6,465
6,430
(20.6%) (19.5%)
(18.9%)
26,303
27,670
28,237
(79.4%) (80.5%)
(81.1%)
(19.0%) (19.1%)
27,630
27,165
(81.0%) (80.9%)
福祉保健部の組織
平成 20 年度の県福祉保健部の組織は[図表 2‐5]のとおりである。障害福祉に関する
事務の執行は、主として障害福祉課が担当している。
6
[図表 2‐5]福祉保健部の組織
( ) 内 の 数 字 は 平 成 20年 4月 1日 現 在 の 現 員 数 を 示 す 。
部
長
副
部
長
福 祉 保 健 課
総
務
係
(62)
予
算
係
企
画
係
情
報
地
域
・
統
福
計
祉
係
係
看 護 介 護 人 材 係
保
護
村
保
健
所
地域振興局健康福祉(環境)部に
併置
新
上 (21)
発
田 (64)
(下越動管センター)
※ 職員の現員数は各地域振興局健康
福祉(環境)部の職員数を記載
新
津 (29)
三
条 (48)
(県央動管センター)
長
係
人権啓発室
岡 (84)
(中越動管センター)
魚
援護恩給室
沼 (25)
(魚沼動管センター)
福祉・介護事 業者
福
祉
指
導
班
南
魚
沼 (50)
指導室(16)
介
護
指
導
班
十
日
町 (23)
医 薬 国 保 課
地
域
医
療
係
(41)
医
療
指
導
係
療
薬
薬
給
付
務
事
指
勤務医等確保対策室
(28)
高 齢
化 対
魚
川 (19)
渡 (29)
佐
係
魚 沼 地 域 医 療 整 備班
高齢福祉保健課
越 (76)
糸
係
係
導
崎 (23)
上
(上越動管センター)
国 民 健 康 保 険 係
医
柏
福
祉
事
務
所
地域振興局健康福祉(環境)部に
併置
村
新
上
発
新
田
津
(津川地区センター)
策 係
住
宅
福
祉
係
中 央 福 祉 相 談 セ ン タ ー (27)
三
施
設
福
祉
係
保 健 環 境 科 学 研 究 所 (53)
長
岡
介 護 計 画 調 整 係
魚
沼
介
南
魚
沼
十
日
町
護
事
業
係
健 康 対 策 課
難 病
等 対
策 係
(28)
感 染
症 対
策 係
健
康
増
進
条
柏
崎
係
歯 科 保 健 ・ 食 育 推 進係
成
人
保
健
係
母
子
保
健
係
生 活 衛 生 課
営 業 ・ 公 害 保 健 係
新 発 田 食肉 衛生 検査 セン ター
(26)
食 の安 全 ・ 安 心 推 進係
長 岡 食 肉 衛 生 検 査 セ ン タ ー (11)
(9)
動 物 愛 護 ・ 衛 生 係
水
道
係
環境と人間の
ふれあい館分室
新
障 害 福 祉 課
計
画
推
進
係
精 神 保 健 福 祉 セ ン タ ー
(33)
自
立
支
援
係
在
宅
支
援
係
身 体 障 害 者 更 生 相 談 所
地域振興局健康福祉環境部、中央
福祉相談センターに併置
地 域 生 活 支 援 係
精
神
保
健
係
施
設
管
理
係
(9)
知 的 障 害 者 更 生 相 談 所
地域振興局健康福祉環境部、中央
福祉相談センターに併置
発
中
長
南
岡
魚
上
新
発
中
園 (20)
南
コ ロ ニ ー に い が た 白 岩 の 里 (137)
上
け
ぼ
の
に
し
き
園 (35)
新
星
学
園 (20)
沼
越
田
央
長
あ
田
央
岡
魚
沼
越
は ま ぐ み 小 児 療 育 セ ン タ ー (85)
児 童 家 庭 課
(18)
青 少
年 育
成 係
少子化対策・保育係
家
庭
福
祉
係
児
童
相
談
所
地域振興局健康福祉環境部、中央
福祉相談センターに併置
女
性
福
祉
相
談
所
中央福祉相談センターに併置
あ
か
し
や
寮
中央福祉相談センターに併置
若
新
7
寮 (21)
草
潟
学
園 (20)
新
発
田
中
央
長
岡
南
上
魚
沼
越
4.
福祉保健部の予算
福祉保健部の歳出予算(当初)を課別に示すと[図表 2‐6]のとおりである。平成 20
年度の障害福祉課の歳出予算は 17,333 百万円であり、平成 16 年度比で 13.9%増加して
いる。
[図表 2‐6]福祉保健部の予算
課 名
(単位:百万円)
16 年度
17 年度
18 年度
19 年度
20 年度
29,090
25,733
25,122
19,240
19,334
158
173
153
149
147
医薬国保課
17,694
27,609
31,783
33,740
36,274
高齢福祉保健課
24,648
25,991
28,051
27,755
28,749
健康対策課
8,265
7,369
7,330
4,289
4,642
生活衛生課
732
692
719
801
805
障害福祉課
15,212
13,416
14,370
17,426
17,333
児童家庭課
9,701
6,789
9,284
9,546
9,264
105,500
107,772
116,812
112,946
116,548
福祉保健課
福祉・介護事業者指導室
合 計
8
第3
1.
監査の結果及び意見
障害福祉事業
(1) 市町村交付申請額見積りの適正化
医療費等の公費負担制度に、市町村が実施主体となり県が費用の一部を負担するもの
がある。該当する制度は以下のとおりである。
①
自立支援医療費負担金・更生医療
②
重度心身障害者医療費助成(県障)
③
介護給付費等負担金
④
補装具給付費負担金
介護給付費等負担金の場合、県の負担額の精算は以下のように行われる。その他の制
度も時期の相違はあるものの、基本的な仕組みは同様である。
①
市町村からの交付申請
当該年度の 3 月
②
市町村からの実績報告
翌年度の 6 月
③
確定額の精算
翌年度の 3 月
市町村からの交付申請は概算によっているため、確定額の精算が必要になる。そして、
大半のケ-スで確定額が交付申請額に満たず、市町村が県に返還する結果になっている。
平成 20 年度の精算状況は[図表 3‐1]のとおりである。
[図表 3‐1]医療費等公費負担金の精算状況(平成 20 年度分)
a
b
交付申請額
実績報告額
325,579
313,565
重度心身障害者医療費助成
1,608,986
介護給付費等負担金、補装具給付費負担金
制度名
自立支援医療費負担金・更生医療
合 計
c
(単位:千円)
d
e=c/b
追加交付金
返還金発生率
13,098
1,084
4.2%
1,530,041
78,945
-
5.2%
4,060,914
3,969,013
94,310
2,409
2.4%
5,995,479
5,812,619
186,353
3,493
3.2%
返還金
返還金発生率は 2~5%で概ね許容範囲にあると判断されるが、中には 10%を超えてい
る市町村もある。また、全体として 2 億円近い金額が 1 年程度超過交付となっている事
実も無視はできない。
県は超過交付額を最小限にするため、市町村に対して引き続き交付申請額を厳格に見
9
積もるよう指導すべきである。
(2) レセプト点検の必要性検討
医療費の公費負担制度に、県が実施主体となっているものがある。該当する制度は以
下のとおりである。
①
自立支援医療費負担金・精神通院医療
②
措置入院費等公費負担金
③
障害児施設医療費
医療機関からは審査支払機関(新潟県国民健康保険団体連合会及び新潟県社会保険診
療報酬支払基金)を経由して診療報酬請求が行われる。平成 20 年度の公費負担額は[図
表 3‐2]のとおりである。
[図表 3‐2]医療費公費負担額(平成 20 年度)
制度名
(単位:千円)
公費負担額
自立支援医療費負担金・精神通院医療
1,181,234
24,787
措置入院費等公費負担金
296,091
障害児施設医療費
合
1,502,112
計
上記のとおり、県は審査支払機関を通じて医療機関に診療報酬を支払っているが、レ
セプト(診療報酬明細書)の点検は特に実施していない。
医療費の一部を負担するという点では、国民健康保険における市町村も同様の立場で
ある。そして、増大する医療費の適正化を図るため、ほぼすべての市町村で自らまたは
一部の業務を外部に委託するなどしてレセプト点検を実施し、費用を上回る効果を上げ
ている。
県においても、増大する医療費の適正化を図るため、費用対効果を考慮のうえレセプ
ト点検の実施を検討すべきである。
(3) 補助事業における運用の適正化
補助事業の対象事業者の中に他の制度に移行すべきものがあるほか、補助対象経費の
取扱いを明確にすべきものがある。
① 対象事業者の適正化(心身障害者通所援護事業補助金)
事業実施要領によれば、
「援護事業を実施する施設の利用人員は 5 人以上 9 人未満とす
る」と明記されているが、利用実員者が 10 人を超えている施設がある。利用人員基準は、
10
障害福祉サービス事業所への移行が困難な利用人員数であるが、それを超えている施設
についても移行が困難な場合は特例的に補助している。こうした補助はやむを得ないも
のの、特例措置を恒常的に行うことは望ましくない。
② 車両リース料(障害者自立支援特別対策事業・通所サ-ビス利用促進事業ほか)
事業実施要領に助成の対象経費として、人件費、修繕費等、使用料及び委託料の内容
が記載されている。使用料の具体的内容として、「送迎車両の借り上げ及びリース料」と
記載されている。しかし、送迎車両のリース取引がファイナンス・リース取引に該当す
れば、経済的には送迎車両の取得として取り扱う必要がある。一方で送迎車両を購入し
た場合は対象経費とならないので平仄が合わない。
③ 補助対象経費の範囲
i
福祉ホーム運営事業補助金
補助金額算定の際の対象経費(固定資産取得支出等)、及び対象経費から控除すべ
き収入(会計単位間繰入金収入等)の範囲が必ずしも施設間で統一されていない。ま
た、利用者負担金収入が対象経費から控除されていない例がある。
ii 精神障害者社会復帰施設運営費補助事業
水道光熱費の実績報告の際に、灯油在庫を控除している例と控除していない例があ
る。
補助対象事業者を適正にするとともに、補助対象経費の取扱いを明確にすべきである。
(4) 事業実績向上への継続的努力
相当額の予算を投じているにもかかわらず事業目的を達成したとは言い難い事業や、
利用実績が低迷している融資事業・補助事業がある。
①
職親委託費
訓練期間満了後の社会復帰割合が全国平均を大きく下回っている。
②
条例適合融資事業
融資実績が極めて低調である。
③
高齢者・障害者向け安心住まいる整備補助金
予算執行実績率が約 60%に止まっている。
④
精神障害者社会復帰施設運営費補助事業
就労者等割合が低迷している。
11
関係機関と連携して事業効果を上げるよう努力するほか、融資事業・補助事業につい
ては広報に努めるなどして利用促進を図るべきである。
2.
県立の障害福祉施設
(1) 県立施設の民間移管
県立の障害福祉施設は、すべて大幅な支出超過の状況にあり、総額で約 17 億円にも及
んでいる。県立施設と民間の社会福祉法人の収支状況を比較・分析した結果、県立施設
の支出超過の主な原因が、職員の給与水準の高さにあることが判明した。
昭和 40 年代後半までは障害福祉施設が不足していたため、県が自ら施設を設置するこ
とにより県民のニーズに応えてきた。しかし、民間の施設整備が進んだ現在では県立施
設の役割は相対的に減少してきていると言わざるを得ない。
県の歳出削減の観点及び福祉を取り巻く環境変化を考慮すると、
「障害福祉施設検討委
員会報告書」
(平成 16 年 3 月)で提言している県立施設の民間移管は、今後も推進すべ
きものである。
(2) 給食業務の外部委託
給食を直営している施設について 1 食当たりの費用を算出(材料費と調理に携わる職
員の人件費を集計して直接費を算出し、食数で除したもの)した結果、1 千円をはるかに
超える施設があるなど一般の外食料金よりも割高であることが判明した。
施設入所者からの食費徴収額と直接費の差額は県の負担になり、控えめにみても年間
約 70 百万円に達する。また、調理師が 1~2 年程度で定年を迎える施設があるため、今
後の業務に支障が生ずる懸念がある。
こうした状況を踏まえて、県が多額の費用をかけて給食を直営する必要があるかどう
か検討すべきである。
(3) 委託業務の入札方法見直し
庁舎清掃、庁舎警備、ボイラー設備運転管理などの定例委託事業は、毎年の入札にも
かかわらず、直近数カ年において受託者変更事例が見られない。また、落札率が 95%を
超えるケースがほとんどであり、中には 100%のものもある。
委託業務に関しては、単年度契約、入札後の準備期間の不足など既存業者に有利に働
き、受託業者の変更を阻むと思われる要因がある。こうした要因を放置して毎年形式的
に入札を実施していても、根本的な問題解決にはつながらない。
委託業務の費用低減、提供役務の高度化といった入札目的を明確にしたうえで、入札
実施時期、契約期間、受託者選定方法等を目的整合的に再整理すべきである。
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3.
指定管理者制度を導入している障害福祉施設
(1) 指定管理者の選定方法
新潟ふれ愛プラザの指定管理者の公募は 4 施設まとめて行われ、4 施設すべてに単独で
応募(単独応募)するか、複数の団体により共同で応募(共同応募)しなければならな
い。しかし、対象施設の中には、新潟県点字図書館、新潟県聴覚障害者情報センターな
ど専門性と特殊性が高く、新潟ふれ愛プラザ開設以来運営を受託している法人以外には
運営することが困難であると考えられる施設がある。したがって、仮に新潟県障害者リ
ハビリテーションセンターの運営を希望する社会福祉法人があっても、共同応募を前提
とする限り、新潟県点字図書館などの指定管理者と組まなければ指定を得ることが難し
いと言える。このような状況は、指定管理者制度を導入した趣旨に反する恐れがある。
単独応募か共同応募に限っているのは、4 施設を一体管理することに重点を置いての措
置であるが、効率性確保がこの方法のみとは限らない。参入機会を確保するためには、
施設ごとの個別での公募についても検討すべきである。
(2) 施設の一括管理の必要性検討
新潟ふれ愛プラザは、施設の維持管理に関しては一体管理を前提としているものの、4
施設が個別の事業を行っているため、各施設の指定管理者は、維持管理も含めそれぞれ
個別に県と指定管理契約を締結している。
一体管理費(一体管理に要する費用)は、県から支払われた指定管理料の中から負担
率を定め、代表者に集められて支出管理されている。しかし、この一体管理業務の責任
と一体管理費の支出管理責任については、最終的には個々の指定管理者に帰属するため、
指定取消し等の事態が発生した場合、全体の一体管理費の維持が困難となりかねない。
管理形態の単純化、施設管理の責任の明確化といった観点から、施設の過半を運営す
る新潟県障害者交流センターの指定管理者が施設全体の維持管理に関する指定管理者と
なることが望ましい。
4.
PFI 事業
(1) 要因別分析情報の開示
県は PFI 事業の VFM を開示しているが、「県が直接実施する場合の財政負担額」と
「PFI 方式で実施する場合の財政負担額」とが総額表示されているに止まり、詳細な要因
別分析情報は示されていない。
PFI パイロット事業を分析した結果、県の財政負担削減率 40.8%のうち、13.4%が県
想定施設整備事業費の減少によるものであり、残りの 27.4%は県が直接運営する場合の
管理運営費の減少が主な要因であった。
事業者選定後の VFM 公表に当たっては、要因別詳細情報を開示することにより、施設
整備事業費や管理運営費の削減といった県財政に係わる VFM 効果を要因別に明示する
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ことが重要と考える。
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