12-I-048 2012 年 9 月 3 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 現代キャピタル・サービシズ・インク 【変更】 外貨建長期発行体格付 格付の見通し 債券格付 (証券コード:−) A 安定的 A → A+ → A+ ■格付事由 現代モーター(HMC)グループの自動車販売金融会社である現代キャピタルサービシズ・インク(HCS) の格付は、①親会社との強固な関係、②強固な営業基盤とそれに基づく高い収益性、③比較的安全性の高い ように商品設計された自動車担保金融スキーム、および④GE キャピタルによって強化が図られたリスク管 理手法・手厚い資金的バックアップならびにこれに基づく健全な資産内容を主に反映している。他方、①市 場における競争激化による収益への影響、②非預金金融機関として市場からの資金調達に依存することに伴 う流動性リスク、および調達と運用のミスマッチによる金利変動リスク、③家計債務負担問題の影響などに は一定の注意が必要と考えられる。 今回の格付変更は、親会社である HMC による自動車事業を中核とする、HMC グループの信用力の改善 を反映したものである。世界規模で着実に自動車販売を拡大させてきた HMC グループは、12 年上期には過 去最高業績を更新、収益性、財務ポジションともに強化されている。HCS の業績については、11 年には過 去最高業績を達成したが、12 年上期は、韓国経済が減速する中、同グループの国内販売の減少と貸倒引当金 の増加により減収減益となった。このため 12 年の業績は、前年業績を下回る可能性があるが、HMC との経 営の一体性に変化はなく、同グループの強固な国内営業基盤を背景に当社の業績は中期的に底堅く推移する 可能性が高いと考えられる。格付の見通しは安定的である。 1. 現代モーターグループの自動車販売金融を手がける金融子会社 HCS は、HMC が自動車販売金融を行うために 93 年に設立した金融子会社である。04 年以降、GE キャピ タルの資本・経営参加を受けており、現在の出資比率は、HMC が 56.5%、GE の海外持株会社(GE International Holdings Corporation)が 43.3%となっている。主な事業内容は、韓国国内における、HMC グル ープに属する HMC およびキア・モーターズ(KMC)の自動車販売金融、ならびに自動車販売金融で培った 顧客基盤を活用した住宅金融・消費者金融である。韓国の新車販売市場において 80%と極めて高いシェアを 有する HMC グループの国内新車販売金融における HCS のシェアは 12 年 3 月末現在 81.7%、同オートリー スのシェアは 83.7%と高水準となっている。また、HMC グループの強固な国内営業基盤を背景に同グルー プの中古車価格は比較的安定的に推移しており、HCS の自動車金融は、自動車の購入から完済までの間、担 保残存価値が融資残高を基本的に上回る商品設計となっている。他方、04 年に HCS の資本・経営に参加し た GE キャピタルは、以降、HCS に対してリスク審査を中心とする金融事業に関する経営ノウハウの移転を 進めたほか、クレジットライン(上限 10 億ドル)の提供による支援も行っている。 2. HCS の損益財務の状況 強固な営業基盤を背景に HCS の収益は国際金融危機の影響で韓国経済が大きく悪化した 09 年を含め、近 年増加傾向を維持してきた。12 年上期は、景気鈍化を背景とするグループの国内自動車販売の減少と貸倒引 当金の増加を主因に前年同期比減収減益となり、当期利益は同 31%減の 2,443 億ウォン(K-IFRS ベース、 以下同じ)となった。ただし、それでも ROA は 2.5%(営業債権平均残高ベース)と収益性は高水準に維持 されている。 1/3 http://www.jcr.co.jp 12 年 6 月末の当社の営業債権残高は、前年末比 0.3%減の 19.7 兆ウォン。このうちオートローン(新車お よび中古車)およびオートリースから成る自動車販売金融は 81.9%、消費者金融 9.6%、住宅金融 7.7%など となっている。なお、HCS は、自動車販売金融以外の資産構成比を 20%以下に抑制する方針である。他 方、不良債権比率は近年緩やか上昇傾向にはあるものの、不良債権処理もあって水準自体は 12 年 6 月末現 在 2.7%(要注意先を含むベースで 3.0%)と低水準に維持されている。 調達については、債券やコマーシャルペーパー(CP)の発行、銀行からの借入などにより行なわれてい る。流動性・金利変動リスクに対しては、HCS は保守的な財務運営により対処している。短期借入金残高に 対する現預金およびコミット済みクレジットラインの未使用枠の比率は、10 年末の 39.1%に対し、11 年末 63.5%、12 年 6 月末 73.1%と上昇している。また、金利変動リスクに対しては、短期借入金の構成比率の低 下、負債の平均残存期間が資産のそれを常に上回るように管理するなどによりリスクの抑制を図っている。 資本によるバッファーについてもレバレッジ倍率(借入/資本)により管理しており、8 倍以下とする目標に 対し 12 年 6 月末現在 5.8 倍と低水準に維持されている。自己資本比率(CAR)は内部留保の蓄積による自己 資本の増加とリスク資産の減少により 11 年末の 13.0%から 12 年 6 月末現在 14.5%に上昇している。 3. 堅調に推移する現代モーターグループの業績 HMC グループは、HCS の親会社である現代モーター(HMC)ならびにその持分法適用子会社であるキ ア・モーターズ(KMC)という韓国第 1 位・第 2 位の自動車会社が中核となっている。なお、KMC は 11 年 からの K-IFRS の導入により連結子会社から持分法適用子会社に変わった。①当グループの韓国自動車市場 における極めて強固な営業基盤、②世界第 5 位(11 年)の販売台数が示す通り世界の自動車産業の一角を成 すに到った近年の着実な成長、③世界的に地理的分散のとれた国際自動車販売体制、④近年の品質改善努力 と市場における評価の向上、⑤HMC とその連結子会社である KMC 間のプラットフォームの統合や削減など によるコスト構造の改善などを背景として近年当グループの業績は拡大傾向が続き、財務ポジションも改善 傾向にある。国際金融危機による 09 年の世界同時不況下にあって、コスト構造改革、ウォン安効果に加 え、同年下期以降、世界経済が最悪期を脱したことならびに各国政府の自動車産業支援の効果もあり過去最 高業績を達成した HMC グループは、その後も世界ベースでの自動車販売の拡大により過去最高業績を更新 し続けている。12 年上期も同グループはコスト競争力および品質の向上を背景に堅調な業績を維持し、財務 ポジションも改善した。不透明感の高まる欧米経済の先行きとそれによる同グループの業績への影響には一 定の注意が必要と考えられるが、上述の要因を背景に同グループの業績は今後とも底堅く推移する可能性が 高いと考えられる。 (担当)田村 喜彦・幾島 ■格付対象 発行体:現代キャピタル・サービシズ・インク(Hyundai Capital Services, Inc.) 【変更】 対象 外貨建長期発行体格付 対象 第 7 回円貨社債(2010) 格付 見通し A+ 安定的 発行額 発行日 償還期日 150 億円 2010 年 11 月 18 日 2012 年 11 月 16 日 2/3 http://www.jcr.co.jp 利率 1.62% 格付 A+ 真 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2012 年 8 月 29 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:村岡 主任格付アナリスト:田村 喜彦 信吾 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2012 年 8 月 28 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「コーポレート等の信用格付方法」 (2012 年 8 月 28 日) 、 「信販・クレジットカード」 (2012 年 3 月 26 日)、 「親子関 係にある子会社の格付け」 (2007 年 12 月 14 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) 現代キャピタル・サービシズ・インク(Hyundai Capital Services, Inc.) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表 ・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、 当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■用語解説 長期発行体格付と短期発行体格付:債務者(発行体)の債務全体を包括的に捉え、その債務履行能力を評価したものです。このうち、期限 1 年以内 の債務に対する債務履行能力を評価したものを短期発行体格付と位置づけています。個別債務の評価では、債務の契約内容、債務間の優先劣後関係、 回収可能性の程度も考慮するため、個別債務格付(債券の格付、ローンの格付等)は発行体格付と異なること(上回ること、または下回ること)が あります。 格付の見通し:長期発行体格付または保険金支払能力格付が中期的にどの方向に動き得るかを示すもので、「ポジティブ」「安定的」「ネガティブ」 「不確定」 「方向性複数」の 5 つからなります。今後格上げの方向で見直される可能性が高ければ「ポジティブ」、今後格下げの方向で見直される可 能性が高ければ「ネガティブ」、当面変更の可能性が低ければ「安定的」となります。ごくまれに、格付の見通しが「不確定」または「方向性複 数」となることがあります。格上げと格下げいずれの方向にも向かう可能性がある場合に「不確定」となり、個別の債券や銀行ローンの格付、長期 発行体格付などが異なる方向で見直される可能性が高い場合には「方向性複数」となります。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp
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