(復興)対策の推進についての提言(566KB)(PDF文書) - 出雲市

平成26年2月17日
出雲市男女共同参画推進委員会
目
次
はじめに
・・・1
提言項目
Ⅰ 地域における男女共同参画の意識づくり の推進
・・・2
Ⅱ 男女共同参画の視点を取り入れた防災(復興)体制 の確立
・・・4
Ⅲ 地域における男女共同参画 の視点での避難所運営及び復興の取組・・5
おわりに
・・・6
資
・・・8
料
出雲市男女共同参画推進委員会名簿
提言の経過
1
はじめに
平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災を受けて、内閣府は災害直後から避難所での
生活に関し、女性や子育てに配慮した避難所の開設及び進行管理、女性に対する暴力を
防ぐための措置、妊婦等への配慮について関係機関に取組を依頼しました。
しかし、避難所によっては、衛生用品等の生活必需品が不足したり、授乳や着替えを
するための場所がなかったりなど、女性への配慮が欠けている 場所がありました。また、
「女性だから」ということで当然のように食事の準備や清掃等を割り振られたところも
あったとのことです。
そのような状況を踏まえ、平成 23 年 6 月の東日本大震災復興構想会議の提言では「と
りわけ、男女共同参画の視点は忘れてはならない。」と、改めて、男女共同参画の必要
性が確認されているところです。
また、平成 23 年 12 月及び平成 24 年 9 月の中央防災会議において防災基本計画が修
正され、避難所での女性や子育て家庭のニーズへの配慮や、応急仮設住宅の運営管理及
び復旧・復興の場における女性の参画の推進等が位置づけられました。そして、平成
25 年 5 月には、過去の災害対応における経験を基に、男女共同参画の視点から、 地方
公共団体における必要な対策・対応について「男女共同参画の視点からの防災・復興の
取組指針」が示されたところです。
私たちは、過去の災害による教訓を活かさなければならないという認識のもと、そう
いった国の動きを踏まえ、「男女共同参画の視点からの防災(復興)対策」について議
論し、提言書としてまとめました。
出雲市におかれましては、この提言書に基づき、男女共同参画の視点での防災(復興)
対策について、検討・実行されますよう提言いたします。
2
Ⅰ 地域における男女共同参画の意識づくりの推進
★災害時に強い地域となるために、平常時からお互いを認め合い支え あう地
域づくりを進める
災害時において、男女が共同して防災( 復興)に対応できる強い地域となるために、平
常時から、すべての世代に対し、家庭・地域・学校・ 職場において男女共同参画の意識啓
発を行い、男女がともに認め合い支えあう地域づくりを進める。
具体的取 組
◎各年代・性別のニーズ に応じた男女共同参画啓発講座の充実・情報提供
◎女性の人権や社会的性差(ジェンダー)に敏感な視点での 情報発信
◎地域の拠点であるコミュニティセンターを中心と した男女共同参画講座の充実
◎男女共同参画の視点での避難所運営ゲーム(HUG)などの体験型訓練・啓発
講座の実施
◎被災地で起きているDV 等の被害事例を踏まえた学習機会の提供
推進委員会での意見より
〇東 日本 大 震災 から「 隣 近所 のつ な がり を大 切 に しよ う 」とい う意 識 が強 くな って き
てい る。 互 いに 支え あ う 意識 づく り が必 要。
〇日 頃の 近 所や 会社 に お いて の人 と 人と のつ な が り具 合が 災 害時 に出 て く る。
〇避 難所 運 営模 擬体 験 を 経験 した 人 は、お互 い 支 えあ う関 係 がも っと 深 く なる と思 っ
た。 平常 時 に準 備で き る こと や、 普 段の 取組 が 大 切で ある 。
○阪 神淡 路 大震 災・東 日 本大 震災 に おけ る女 性 、被害 者事 例 の学 習機 会 の 提供 、情 報
発信 が必 要 であ り 、震 災 後に 深刻 化 する DV 被 害 につ いて 、過 去に おけ る 現実 を皆
が理 解す る こと が大 切 だ 。
▲ 推 進 委 員 会 にお い て「 避 難 所 運 営
ゲーム(HUG)」を模擬体験
3
~阪神・淡路大震災の被災者による手記~
震災からの数か月間、神戸の街は本当に暗かった。たくさんの家がなくなり、街灯もなく、
夜の闇が支配していた。そんな時あちこちでレイプ事件の噂を聞いた。
あってもおかしくない。そう思った。通りに人けも少なく、廃 墟のようなビルがあちこち
にあったからだ。しかし、兵庫県警はレイプ事件 1 件の報告もない、デマだと打ち消した。
新聞にも全く報道されなかった。神戸の市民は我慢強く秩序を守っていると外国のメディア
からも称賛された。・・・通勤通学途中の 20 代の女性たちを解体現場に引きずり込み、し
かも複数犯による犯行が多かった。お風呂に入りたい女の子たち複数で誘ってのお風呂ツア
ーなどは、最初からワゴン車を用意して実に計画的である。「レイプは女性の心を殺す」と
言っても過言ではない。
・・・2 件は警察に届けたが、
「あんたの将来のために黙って 忘れた
ほうがいい」と説得されて帰ったとのこと。しかし、それで彼女たちの傷は癒えるだろうか。
決して忘れられないと思う。
こ の よ う な 災害 の 場 合、 い つ も よ
り 大 き な 被害 を 受け るの は 弱 者 なの
だ か ら 。 弱者 を 支え る社 会 を 求 める
と き 、 こ の大 震 災で 新し い 秩 序 ―弱
者 ( 女 、 障が い のあ る人 、 高 齢 者な
ど ) を 支 える も のを つく っ て い かね
女性の目には見え るが 男性の目には見え にく い
問題が暮らしの中に は たくさんある。女性 が いき
いきと暮らせる社会 は 、子どもや高齢者や ハ ンデ
ィキャップのある人 た ちも安心して暮らせ る 社会
なのである。
ばと痛切に感じた。
ウ ィ メン ズ ネッ ト・ こ うべ 編
「 女 たち が 語る 阪神 ・ 淡路 大 震災 」 より 抜粋
~被災地からの相談~
眠れない、起き上がれない、死にたい、食事をとれない、パニックをおこす、体の
震えが止まらない、悪夢にうなされる、涙が止まらない、外出できない、動悸が激
しくなる、絶望感にうちのめされる、不安でいてもたってもいられない・・・
・震災後に夫の暴力がひどくなった
・仮設に移ってから暴力がエスカレートした
・支援に入った男性ボランティアから暴力をうけた
・被災者と知った派遣会社の担当者から セクハラを受けた
本 事 業の ホ ット ライ ンに 寄 せら れ たD V・ 性暴 力 ・セ ク ハラ ・虐 待の 相 談内 容 に、 災害 時
特有の暴力被害が浮き彫りになった。
平 常 時に 暴 力が 許容 され て しま う 社会 は、 緊急 時 にそ の 傾向 が顕 著に な る。 災 害時 や紛 争
時に、女性や子どもに対する暴力が増加するという事実は、国際的な調査でも明らかである。
特 定 非営 利 活動 法人 全 国女 性 シェ ル ター ネッ ト 編
「 24 時 間 の ホッ ト ライン と 被災 地 の女 性団 体 への
人 材 提供 雇 用創 出財 政 支援 事 業 報告 書」 よ り抜 粋
4
Ⅱ 男女共同参画の視点を取り入れた防災(復興)体制の 確立
★防災(復興)に係る組織、地域防災会議等への女 性の参画を促進する
防災(復興)のすべての過程において、男女共同参画の視点が反映されるよう、予防(計
画策定、避難訓練、学習会等)、応急対応、復旧、復興という防災のすべての過程、会議、
組織等において女性の参画を拡大 し、女性の意見を反映させる。
具体的取 組
◎女性への政策・方針決定過程への参画意識啓発・人材育成
◎出雲市防災会議等における女性委員の割合を高める
◎市防災担当部局の担当職員について女性職員の配置
推進委員 会での意見より
〇女 性の 主 体的 な行 動 に より 、避 難 所の 運営 が ス ムー ズに い く。 女性 の 提 案、
意見 の出 せ る組 織づ く り が必 要だ と 思う 。
〇物 事を 決 める のに 、 協 議す る場 が ない とな ん と なく 決ま っ てし まう こ と が
ある 。平 常 時か ら男 女 一 緒に 考え る こと が必 要 だ 。
〇出 雲市 防 災会 議等 に 女 性の 参画 を 促進 する た め の工 夫に つ いて
・男 女共 同 参画 に関 す る 活動 を行 っ てい る団 体 等 から の推 薦 など によ り 委 員
を登 用
・保 健師 、 助産 師、 看 護 師、 保育 士 、教 員と い っ た災 害対 応 に深 く関 わ る 専
門 的職 業 に従 事す る 女 性の 登用
・市 役所 内 の職 員か ら 委 員を 任命 す る際 に女 性 を 積極 的に 登 用
・各 組織 か ら男 女 1 名 ずつ 参加 す るよ う依 頼
5
Ⅲ 地域における男女共同参画視点での避難所運営及び 復興の取組
★各地域での防災計画・避難所運営マニュアル等に男女共同参画の 視点を
盛り込む
★災害対応において、地域で互いに支えあう仕組みをつくる
大規模災害の避難所生活において、
「避難所運営の責任者が男性であることが多く、生活
物資、身体的配慮に対して女性の視点がない」
「固定的性別役割分担の意識のなかで女性に
育児、介護を含めた責任が担わされる」
「女性への性犯罪やDV等が増加する」などが大き
な問題となっている。安全な空間の確保や乳幼児を抱えた母親に対する子育て支援、非常
時に増大するDV被害への対応策など、男女共同参画 の視点を盛り込んだ防災計画、避難
所運営マニュアル等を作成する 必要がある。
また、平常時から各地区の支援者などの人材情報をはじめ、 住民情報を可能な限り把握
し、非常時の支援体制、仕組 みづくりを整えることが必要である。
具体的取 組
◎各地区災害対策本部等での男女共同参画の視点を盛り込んだ 計画・規約・
マニュアル・チェックリスト等の作成
◎市防災計画等への女性相談体制の記載
◎地域における災害時支援者リスト作成等の検討
◎地域で助け合う避難体制づくりの検討
推進委員 会での意見より
〇災 害の 場 では 、男 女 を 超え て助 け 合う 、お 互 い を認 め合 う 必要 があ る の に、 で
きて いな い 状況 が見 受 け られ た。 具 体的 に行 動 す るた めの 指 針、 具体 案 を 示し
考え てい く 必要 があ る 。
〇市 の防 災 計画 では ア ウ トラ イン が 決ま って い る が、そ れだ け では 役に 立 たな い 。
地域 にお け る防 災計 画 の 策定 状況 は、43 地区 の うち 、防 災計 画は 10 地 区、要
綱等 は 27 地 区で 作 成さ れて いる よ うだ が、今 後 、男 女共 同 参画 の視 点 の ある 計
画書 等を 作 成し てい く こ とが 必要 だ 。
○各地域の防災組織等において、名誉職が並んでいるだけでは何もできない。本
当に 動け る 組織 づく り が 必要 だ。
〇DV等の被害は、平常時に潜在化していたものが、非常時には顕在化する傾向
があ る。
6
おわりに
私たちは、「男女共同参画の視点からの防災(復興)対策の推進 」について議論す
る中で、『平常時からの男女共同参画の意識づくり 』を最重要事項として位置づけな
ければならないということを再認識しました。
会議の中では、避難所運営を 机上で模擬体験するHUGについて、委員で実際に体
験し、災害時の避難所ではどういった 状況になるのか、そしてどのような問題が発生
するのかといったことを体験しました。避難所において、一 人ひとりの人権を守 り、
お互いに思いやり支えあって避難所運営をしていくために必要なことは何かについ
て意見を出しあいました。
災害発生時には、臨機応変な対応が必要となるばかりでなく、地域の実情はさまざ
まであるため、状況に応じた対応が必要となります。例えば 、地理条件、人口密 度、
住民構成、保育施設や高齢者施設の有無、地域内の人のつな がりの強さ等によっ て、
必要な対策・対応は異なってきます。そういった各地域の実情に合わせ、女性、子ど
も、若者、高齢者、障がい者等の多様な視点を反映した防災対策の取組が必要である
と考えました。
そして、「平常時からの準備・取組が必要」、「日ごろからの一人ひとりの男女共同
参画の意識改革が必要」、
「お互いを支えあう関係を深める」といった意見が出されま
した。
災害時を乗り切るためには、行政に頼るだけでなく、地域で助け合う体制づくり や
コミュニティの構築といったことがとても重要な意味を持っています。市民一人ひと
りの意識が、災害時の困難な状況を乗り越える基盤になるとの結論に達しました。
男女が互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、共にその個性と能
力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、一人ひとりが安全で幸せに暮らせ
る地域になるための必要条件だと考えます。また、地域での男女共同参画の意識を高
めるためには、地域が自ら取り組むことが大切なことであり、その活動の積み重ねが、
地域の力を強めていくものと確信しています。
市におかれましては、関係部局・機関との連携を図られ、災害時における各地域で
の男女共同参画の視点のある具体的な取組を実施していただきますようお願い いた
します。
7
男女共同参画の視点からの防災(復興)対策の推進イメージ図
Ⅰ
地域における
男女共同参画の意識づくりの推進
安心安全で
暮らしやすい地域社会
Ⅲ 男女共同参画の
視点での避難所
Ⅱ 男女共同参画の
運営及び復興の取組
視点を取り入れた
防災(復興)体制の確立
男女共同参画の視点からの防災(復興)への取組は、地域住民の多様性 を認
め、互いに助け合う意識の浸透を促し、個人がより暮らしやすい地域社会を実
現する方策のひとつとして位置づけられる ものと考えます。
換言すれば、一人ひとりが互いに認め合い、支えあうことのできる地域社会
であれば、災害が起きたとしても、それを乗り越えていける力強い地域である
と言えるのではないでしょうか。
8
資
料
9
(1) 委員名簿
氏
名
性別
所属・活動等
備
考
会
長
1
江角 健治
男
出雲市男女共同参画まちづくりネッ
トワーク会議
2
小汀 泰之
男
川跡コミュニティセンターいきいき
まちづくり部
勝部 久子
女
小中学校長会(荘原小学校)
H 25.3.31 ま で
濵村 洋二
男
小中学校長会(東小学校)
H 25.4.1 か ら
4
高橋 悦子
女
わくわく出雲、子育て AShiTa の会
5
竹下 和子
女
6
内藤 正和
男
内藤組
7
中山 庸子
女
元福島大学教授、専門分野:社会学・
女性学
8
原 美知子
女
鵜鷺コミュニティセンター長
9
藤江 浩貴
男
島根県男女共同参画サポーターひか
わの会 直江街プロジェクト
10
渡部 直樹
男
穂なみデイサービスセンター・CSい
ずも
3
DV エキスパートセンター会員、島根
県女性相談センター西部分室相談員
副会長
専務取締役
【敬称略 50 音順】
*推進委員:出雲市男女共同参画のまちづくり条例第21条に基づく
*推進委員任期:平成24年7月24日~平成26年3月31日
10
(2) 提言の経過
開催日時
会議名
内
容
平成 25 年 8 月 5 日
平成 25 年度第 1 回推進委員会
協
平成 25 年 10 月 21 日
平成 25 年度第 2 回推進委員会
提言内容の協議
(HUG の体験)
平成 25 年 11 月 26 日
平成 25 年度第 3 回推進委員会
提言内容の協議
平成 25 年 12 月 20 日
平成 25 年度第 4 回推進委員会
提言内容の協議
▲推進委員会会議の様子
11
議