北理研 化学研究チーム 例会 (平成23年度第3回 日時:平成 23 年 6 月 25 日(土)10:00 ~ 12:20 会 通算第137回) 場:理科教育センター 参加者:10 名 高体連大会等を終えてほっとした時期ですが、学校祭を控え忙しい学校も多いようです。今回の参 加者は 10 名と少なかったですが、いろいろと議論が盛り上がった例会となりました。 実験・教材の紹介 1 酸化還元反応の確認実験その2 西村 昇 (札幌西) 2年生化学Ⅰでの生徒実験の報告である。 実験1:過マンガン酸カリウム(硫酸酸性)水溶液と過酸化水素水の反応 教科書にある一般的な反応である。1年次の理科総合Aでの生徒実験でただ混ぜるだけだが、反応 そのものを見ているので、今回は過酸化水素水のおよその濃度を求める、簡易酸化還元滴定を行った。 過酸化水素水を硫酸酸性にして 0.050mol/L 過マンガン酸カリウム水溶液を駒込ピペットで量を確認 しながら滴下する実験である。理解の深まっている生徒は、その後の濃度計算も自力で進めていた。 実験2:硫酸酸性過マンガン酸カリウム水溶液(中性) と過酸化水素水の反応 過マンガン酸カリウムが中性条件下ではたらくと、Mn2+ では なくMnO2 で反応が終わることや、OH- が生じることを確認さ せたかった。 約3%過酸化水素水1mLを水で30mLにうすめ、そこへBTB溶液を 加える。さらに過マンガン酸カリウム水溶液を 1 滴加える。緑→青へ の変色が確かめられる。はじめ、フェノールフタレインを使って みたが、過マンガン酸カリウムの色と区別がつきにくかったこと もあり BTB 溶液を用いた。 実験3:過酸化水素とヨウ化カリウム水溶液の反応 過酸化水素が還元剤だけではなく、酸化剤として働くことを確かめさせたかった。 0.050mol/L ヨウ化カリウム水溶液を10mLはかりとり、硫酸を加え硫酸酸性とした。そこへ過酸化 水素水を数mL加える。溶液の色は黄色くなり、教科書の写真などと同じくなることを確かめられる。 そこへ、さらに過マンガン酸カリウム水溶液を数滴加えるとヨウ素 I2 の遊離がはっきりとわかる。 実験4:二酸化炭素中でのマグネシウムの燃焼 集気瓶に二酸化炭素を充填し、その中に添加したマグネシウムリボンを入れる。 マグネシウムが二酸化炭素から酸素を奪い取ることについて驚く生徒が多かった。 段取り力が不足しスムーズに実験を進められないものが多く感じる。 次の生徒実験は、電池と電気分解を予定している。 参加された先生方からの意見 ・実験によっては、プリントを事前に配布して調べ学習を十分にさせてから行った方が効果が上がる。 2 相対質量と原子量、物質量のシミュレーション 藤田啓太郎(室蘭栄) 実験の目的 ・相対質量(原子量)の概念について理解する 「どうして原子量にgをつけてはいけないのか?」を理解する。 ・相対質量(原子量)にgをつけた質量には、原子の種類に関わらず、 同じ数の粒子が含まれている ことを理解する。 「どうして原子量gの原子は、必ずアボガドロ数だけ原子があると 言えるのか?」を理解する。 実験 それぞれの粒に元素記号をつけ原子の話に繋がるようにした。 白米(Hm)、小豆(Az)、乾燥コーン(Kc)、大豆(Da)、大正金時豆(Tk) (1) 電子天秤を用いて10粒の質量をはかる。これを3回行う。 (2) それぞれの 1 粒あたりの質量を平均値として求める。 ※ 1 粒毎の質量は若干異なる。原子には同位体がある、と説明。また、誤差を含む実験値 の取り扱いの練習にもなる。ほぼ同質量となる人工物のビーズなどよりよいこともある。 (3) Kc 1粒あたりの質量を12として、これを基準に他の粒子の相対質量を求める。 (4) それぞれの粒子を、相対質量gだけはかりとり、そこに含まれる粒子数を数える。 (5) それぞれの粒子について、50粒分の質量をはかり、その質量で相対質量を割る。これに 50をかける。 結果の一部を示します。 粒子の種 白米 (Hm) 小豆 (Az) 乾燥コーン (Kc) 大豆 (Da) ① 0.22 g ② 0.22 g ③ 0.20 g (1) 10粒の質量 0.021 g (2) 1粒あたりの質量 ① 6.68 g ② 6.76 g ③ 6.82 g 0.114 g 0.177 g 0.390 g 26.4 (3) 相対質量 1.4 7.7 12 (4) 相対質量gの粒子数 66 68 68 69 1.07 g 8.90 g 18.72 g 相対質量(3) ÷ 50 粒の質量 1.308 1.348 1.410 ×50 65.4 67.4 70.5 (5) 50粒の質量 (3)元素の原子量に相当 大正金時豆 (Tk) 0.675 g 45.8 66 (4)アボガドロ数に相当 NA =MN/wより、(4)のアボガドロ数(モドキ) が求められる (5) 参加された先生方からの意見 ・物質量(mol)、アボガドロ数を意識させるにはよい。 ・相対質量の基準を変えた場合、何が変わり何が変わらないのかを実感できる。 情 報 交 換 1 新課程化学基礎について 2 物質量の指導について 連 絡 事 (1) 次回例会 項 平成 23 年 9 月 17 日(土) 理科教育センター または 10:00 ~ 12:00 札幌西高校 (後日あらためて連絡します) (2) 十勝大会に向けて (3) 来年度全国大会に向けて 実験書(実践集)を作成します。ご協力をお願いします。 問合せは、 藤田啓太郎(室蘭栄)までお願いします。 北理研 化学研究チーム 例会 (平成23年度第2回 日時:平成 23 年 5 月 21 日(土)10:00 ~ 12:20 通算第136回) 会 場:理科教育センター 参加者:13 名 今年度初めての理科教育センターでの開催でした。高体連支部大会直前でしたが、今回初めて参加 という 2 人を含め 13 名の先生方にお集まりいただきました。 実験・教材の紹介 1 酸化還元反応の確認実験 西村 昇 (札幌西) 実験1:マグネシウムは二酸化炭素中で燃焼するが窒素中では燃焼しない 一般的には、集気瓶を使い行う。しかし、窒素中で燃焼しないことを確かめたいのだが、窒素を完 全に充填できず、空気つまり酸素が残ることがある。そこで、ポリエチレン袋に窒素を充填し、火の ついたマグネシウムリボンを近づけ袋に穴をあけ、その穴に燃焼しているマグネシウムリボンを入れ ることにした。するとスッと炎が消え、窒素中で燃焼しないことが確かめられる。 窒素中では消える (右)二酸化炭素では、集気瓶内に炭素 ポリエチレン袋に窒素を充填し、 火のついたマグネシウムリボン を近づけ、そして入れる。 袋に引火したことはないが、 その恐れはある。 気をつけて行いたい。 実験2:コークスを使って酸化銅を還元 前回の例会で紹介されたコークスを使い酸化銅(Ⅱ)を還元しようと試みた。実際に製鉄で使われる コークスを生徒に見せることができないかという試みである。現在検証中である。 るつぼ内でハンドトーチを用いてコークスを 赤熱し、そこへ表面を酸化させた銅板をのせ、 さらに加熱後るつぼに蓋をしてそのまま放冷す る。すると、銅板の表面が酸化銅(Ⅱ)(黒)か ら銅(茶)や、酸化銅(Ⅰ)(赤)に変化してい ることが確かめられる。毎回成功するとは限ら ないので検証中である。 2 金属イオンの反応(乾式) 藤田啓太郎(室蘭栄) 使用する試薬量を減らし、安全に生徒一人一人が実験できる方法である。 ○呈色反応を確認する金属を含むものとして 塩化鉄(Ⅲ)、硫酸銅(Ⅱ)、硝酸鉛(Ⅱ)、硝酸銀 いずれも 0.1M 水溶液 これらを1 cm ×1 cm 程度のろ紙に 1 滴ほど滴下して乾かす。 ○金属イオンの呈色反応を観察するための指示薬として 水酸化ナトリウム、アンモニア ・・・ 1 M 水溶液 硫化アンモニウム、ヨウ化カリウム、クロム酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム、 ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム、チオンシアン酸カリウム ・・・0.1M 水溶液 10 %過酸化水素水 いずれも、1 滴ずつ滴下できる容器(スポイトビン、点眼ビン 等)に入れておく 硫酸銅(Ⅱ)に 硫化アンモニウムを加えた 金属イオンを染み込ませたろ紙はピンセットで扱う。A4 程度の紙の上で、指示薬を 1 滴ほど滴下 させ色の変化等を観察させる。 溶液は、端までドーナッツ状に色が変化し、沈殿は中心ほど濃く色が変化する傾向がある。 欠点は、白色の沈殿や2段階の色の変化を確認できないことである。 3 ビー玉と粘土でつくる結晶モデル 藤田啓太郎(室蘭栄) 「透明粘土」:シリコンを原料とした手芸用の無色透明な粘土で、促進剤を入れると固まるが、 入れなければ何度でも使える。50 gで 1470 円だった。 発売元:日清アソシエイツ(株)粘土営業部 ビー玉と透明粘土で六方最密構造、面心立方格子の結晶モデルを作ってみた。層の重ね方が違っ ても最密構造になることを確かめることができる。 4 アンモニア発生 金澤 豪(月 形) 塩化アンモニウム と 水酸化カルシウム を乳鉢で混ぜるだけである程度のアンモニアが発生する。 この変化の反応式の確認、アンモニアの 臭いの確認であれば、加熱をしなくても 十分かと思われる。 5 pHメーターなどの紹介 酸を10 n 杉山剛英(札幌旭丘) 倍薄めたときのpHの測定をし、理論とおりpHが1ずつ変化しpH 7へ近づくのかを確か めようとしたとき、pH計が正確でなければ生徒実験の意味がなくなる。 多くの学校で使われている 1 台 2 万円を超えるコンパクトpH計だが、故障が多く授業に支障をき たしていることが多いと聞く。秋月電子通商で販売されている、デジタルpHペンは、1 台 3700 円で 故障も少なく正確である。 実際に、pHを測定してみました。 また、温度を測れる(つまり熱電対付き)デジタルマルチメーター、1200 円で購入できます。 こちらもお買い得です。 購入の際、秋月電子通商では領収書を発行してくれません。振り込みの受領書か、代引きの領収書 となります。利用の際は、気をつけてください。 6 LEDライトの紹介 小原伸彦(札幌西) 手軽で安価な LED ライトが 100 円ショップ で販売されている。 顕微鏡観察等にも利用できる。 (実体顕微鏡として使いたいときなど) 情 報 交 換 1 新課程の教科書を比較 従来に比べ、出版社によって違いが 大きいようです。 2 今年度の化学研究チームの活動計画について 十勝大会での研究協議について 水や火を使えませんが、実験を交えて研究協議をできないかを検討中です。 研発者、募集中です。 来年度全国大会に向けて 実験書(実践集)作成します。ご協力をお願いします。 次回は、 平成 23 年 6 月 25 日(土)10:00 ~ 12:00 問合せは、藤田啓太郎(室蘭栄)までお願いします。 理科教育センター 北理研 化学研究チーム 例会 (平成23年度第1回 日時:平成 23 年 4 月 23 日(土)10:00 ~ 12:20 通算第135回) 会 場:札幌西高校 参加者:10 名 今年度最初の例会でした。PTA総会や部活動での生徒引率など忙しい方も多く、参加人数は 10 名でした。 実験・教材の紹介 1 NO、NO2 発生実験 西村 昇 (札幌西) 【概要】 二酸化窒素は有色の気体であるため、生徒の興味を引く実験に利用できる一方、有毒なためその取り扱 いには注意が求められる。そこで、閉鎖系での二酸化窒素発生実験を報告する。 【手順】 ①二股試験管に銅粉と硝酸を入れる。 ②銅に希硝酸を流し込み二酸化窒素を発生させる。 ③二股試験管内やポリ袋内が少し赤く着色するが、 これは管内に残っていた酸素と一酸化窒素が 反応して、二酸化窒素が生成したためである。 また、硝酸の濃度が濃いと二酸化窒素が発生することもある。 ④銅板を用いた場合、銅板の枚数や希硝酸の濃度にもよるが、 適切な量が溜まるまで数十分かかることもある。 ⑤袋を絞ってみると気体がたまっていることがわかる。うすく着色している が、おおむね無色(NO)である事の確認し、また、試験管内の液体の色の変 化(銅イオンの生成)も確認するとよい。 ⑥反応が止まりしだい、ガラス管を外し、酸素ボンベから酸素を注入すると、気体の色が濃い赤褐色に変 化する(NO2の生成)。 ⑦BTB溶液を入れたビーカー内にガラス管を差し込み、袋を絞って二酸化窒素を通じると黄色く着色する 事から、酸性物質(硝酸)が生成した事がわかる。 →上記⑥と併せて、オストワルト法の二段目と三段目に該当することを説明する。 説明後、参加者にも実験してもらった。 参加者から ・色の変化はよくわかる。 ・完全に閉鎖できず漏れる。 敏感な生徒がいるときにはできない。 ・ビニール袋は、細長い傘袋がよい。 などの意見があった。 2 「元素」に関する教材(?)の紹介 「エレメントランプ」カードゲームである。 金澤 豪(月 形) NHK教育でのアニメ番組「エレメントハンター」以来、子供向けのグッズがいろいろと でてきている。 3 「コークス」「石炭」の紹介 藤田啓太郎(室蘭栄) 鉄の還元等で教科書でも紹介され、実際に製鉄で使われているものだが、実物を見る機会はほとん どない。実物を見せることは大切。 通販で購入したものを紹介する。 火をつけようとしたが なかなか着火しない。 コークス 石炭 情 報 交 換 1 今年度のセンター試験より 第 4 問 問 1 ・・・誤りを含むものを、1 つ選びなさい。 正解は④で、明らかな誤りを含んでいる。 「④1-プロパノールに二クロム酸カリウムの硫酸酸性水溶液を加えて加熱すると、アセトンが生成する。」 しかし、誤りを含まないとなる③の文をあらためて読んでみると、 「③エタノールを、130 ~ 140 ℃に加熱した濃硫酸に加えると、ジエチルエーテルが生成する。」 ふつうは、「エタノールに、濃硫酸を加えてから加熱する・・・」だろうと・・・ そもそもこの実験を普通の高校生にさせるのか? 現実にあう教材が必要だし、入試問題もそうあっ て欲しいという意見が交わされました。 2 参加者より近況報告 新年度となり、各校の様子、授業の計画等情報交換しました。 次回例会(平成23年度第2回 問合せ先: 通算第136回) は、5月21日(土)10:00~ 藤田啓太郎(室蘭栄)(北理研研究部化学代表 ) 理科教育センター お気軽にどうぞ。
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