光 化 学 オ キ シ ダ ン ト 高 濃 度 時 の NO・NO 2 ・NMHC に 関 す る 研 究 −愛知県における日ごとおよび測定局ごとの解析− ○川上七恵 1. は じ め に 近 年 、日 本 全 域 で 光 化 学 オ キ シ ダ ン ト (Ox)注 意 報 の 発 令 日 数 が 増 加 し て い る 。2007年 には、 愛 知 県 で 700人 以 上 の Oxに よ る と み ら れ る 被 害 が 報 告 さ れ て お り 、 Oxの 動 態 を 解 明 す る こ と が 必要で ある 。Oxの90% 以上は オゾ ン(O 3 )で あ り、O 3 は、酸素(O 2 )と 二酸化 窒素 (NO 2 )の 光 化学 反 応で生 成す る。 hν NO 2 +O 2 NO + O 3 (1) 式 (1)の 反 応 は 可 逆 反 応 で あ る が 、こ こ に 、非 メ タ ン 炭 化 水 素 (NMHC)が 存 在 す る と 、酸 化 さ れ た NMHCが NOと 反 応 し 、 O 3 と NOと の 反 応 と 競 合 す る た め 、 O 3 濃 度 が 増 加 す る 。 つ ま り 、 Ox 濃 度 の 増 加 に は 、NMHCお よ び NO 2 の 供 給 が プ ラ ス 要 因 と な っ て い る 。本 研 究 で は 、Ox高 濃 度 時 の NO、NO 2 、NMHC濃 度 の 特 徴 を 明 ら か に す る た め に 、2007年 度 に Oxが 高 濃 度 に な っ た 一 定 範 囲 の 気 象 条 件 の も と で 、日 ご と お よ び 測 定 局 ご と に Ox濃 度 と 朝 夕 の NO、NO 2 、NMHC濃 度 と の関係を解析した。 2. 解 析 対 象 図 1 に、Ox、NO、 NO 2 、NMHC 濃 度 を全 局全解析日について時間ごとに平均し た値を 示す 。Ox 濃 度は 、6 時 付近 を底に 60 40 20 0 0 ー ク が あ り 16 時 付 近 を 底 に 再 び 増 加 し て い た 。NO 濃 度 は 、1 時 ご ろ か ら 増 加し、7 時付近をピークに減少してい た。 NO2 ,NO濃度の 時間平均値(ppb) 上 昇 し 、 15 時 付 近 を ピ ー ク に 減 少 し て いた。 NO 2 、NMHC 濃 度 は 、 7 時 付 近 に ピ (a) 6 12 18 (b) 20 24 NO2 250 NO NMHC NMHC濃度の 時間平均値(ppbC) 3. 結 果 と 考 察 Ox濃度の 時間平均値(ppb) 愛知県の一般環境大気測定局で測定した大気汚染物質の濃度と、名古屋地方気象台が測 定 し て い る 気 象 デ ー タ を 用 い て 解 析 を 行 っ た 。 解 析 対 象 日 は 、 2007年 5月 か ら 9月 の う ち 、 Oxが 高 濃 度 と な っ た 一 定 範 囲 の 気 象 条 件 (日 積 算 日 射 量 、平 均 風 速 、最 高 気 温 が 、そ れ ぞ れ 10 Mj/m 2 以 上 、4 m/s以 下 、28̊C以 上 の 日 )で あ り 、大 陸 か ら の 移 流 の 影 響 が 大 き か っ た と 考 え ら れ る 場 合 を 除 い た 日 と し た 。2007年 度に 愛知県 でOx、NO、NO 2 、NMHCを 測定 してい る一 般 局 は 、 そ れ ぞ れ 64、 72、 72、 9局 で あ る 。 日 ご と の 解 析 で は 、 そ れ ぞ れ の 物 質 を 測 定 し て い る 全局の 平均 を用い た(全局平 均)。局 ごとの 解析で は、それぞ れの 相関を 考え る物質 をす べ て 測 定して いる 局を用 いて 全解析 日の 平均を とっ た(全 解析 日平均 )。 200 10 0 150 0 6 12 18 24 時 図 1 Ox,NO 2 ,NO,NMHC 濃 度 の 時 系 列 変 化 (全局・全解析日の平均) ΔOx(朝方) 全局平均(ppb) 40 (a) 20 0 100 200 -20 300 2 400 R = 0.17 ΔOx(朝方) 全局平均(ppb) NMHC濃度(朝方の平均値)全局平均(ppbC) 40 (b) 20 0 0 10 -20 20 2 30 R = 0.23 Ox濃度(朝方の平均値) 全解析日平均 (ppb) NO2 濃度(朝方の平均値)全局平均(ppb) 30 (c) 15 R2 = 0.19 0 0 10 20 NO濃度(朝方の平均値)全解析日平均(ppb) 朝方の NMHC,NO2,NO 濃度平均値とΔOx(朝方) および朝方の Ox 濃度(朝方の平均値)との関係 Ox濃度日最大値 全局平均(ppb) 図 2 120 (a) 60 R2 = 0.14 0 0 10 20 30 NO2 濃度(夕方の平均値)全局平均(ppb) Ox濃度日最大値 全局平均(ppb) そ こ で 、 朝 方 (6-9時 )の NMHCおよびNO 2 濃度の 平 均 値 と 6-9時 に か け て の Ox濃 度 の 増 加 量 ( Δ Ox ( 朝 方 )) と の 関 係 を 調 べ た 。 朝 方 (6-9時 )の NMHCお よ び NO 2 濃 度 の 平均値 とΔ Ox(朝 方)と の間に、日 ごとの 全 局 平 均 で は 正 の 相 関 が あ っ た が (図 2 (a)(b))、 局 ご と の 全 解 析 日 平 均 で は 正 の相関が見られなかった。 これは、朝 方のNMHCや NO 2 が、局所 的にで はな く、広 域 的 に 朝 方 の Ox濃 度 を 増 加 さ せ て い る ためと 考え られる 。 一方、朝方 のNO濃 度 の 平 均 値 と 朝 方 の Ox濃 度 の 平 均 値 に つ い て 局 ご と の 全 解 析 日 平 均 で は 負 の 相 関 が あ っ た が (図 2 (c))、 日 ご と の 全 局 平 均 で は こ の 相 関が 見 ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 朝 方 の NOは 局 所 的 に は Ox濃 度 を 下 げ る も の の 、 広 域 的 に は NOと Oxの 反 応 に よ っ て 生 じ る N O 2 が O xを 増 加 さ せ て い る た め と 考 え ら れ る。 次 に 、 夕 方 (16-18時 )の NO2、 NO濃 度 平 均 値 と Ox濃 度 の 日 最 大 値 と の 関 係 を 調 べ た (図 3)。 日 ご と の 全 局 平 均 に お い て Ox濃 度 日 最 大 値 と 夕 方 の NO2濃 度 と の 間 に は 正 の 相 関 が あ り 、 Ox濃 度 日 最 大 値 と 夕 方 の NO 濃度平均値との間に負の相関があ っ た 。こ れ は 、県 全 体 で O x 濃 度 が 高 い 日 に 、高 濃 度 の O x に よ っ て N O か ら NO2へ の 反 応 が 活 発 に 起 こ る た め 、 県 全 体 で 夕 方 の NO2 濃 度 が 高 く な り 、 NO濃 度 が 低 く な っ た と 考 え ら れ る 。 一方、局ごとの全解析日平均では夕方 のNO 2 、NO濃 度平均 値と Ox濃度 日最 大値お よ び 夕 方 の Ox濃 度 の 平均 値 と の 間 に 相 関 は見られなかった。夕方は朝方とは異な り NO濃 度 が 低 い た め 、 Oxと 反 応 し て 減 少 し た NO濃度と 、測 定局周 辺の 発生源 に よ り 増 加 し た NO濃 度 が重 な り 、 局 ご と の 特徴が 現れ なかっ たと 考えら れる 。 120 (b) 60 R2 = 0.47 0 0 3 6 NO濃度(夕方の平均値)全局平均(ppb) 図 3 夕 方 の NO 2 ,NO 濃 度 平 均 値 と Ox 濃 度 日最大値との関係
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