実用化が進む再生医療と関連銘柄

☆ トピックス
実用化が進む再生医療と関連銘柄
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◎
再生医療製品の実用化は諸外国に比べ進捗が遅い
◎
国を挙げた枠組作りが進んでいる
◎
再生医療市場の成長は周辺産業へ波及しよう
1.再生医療実用化の動向
iPS細胞や自家細胞(患者自身の細胞)
を利用した再生医療の研究はめざましく進
んでおり、一部では実用化に至っている。
これにより、現在の医療技術では治療が困
難な疾患の治療や、培養細胞を利用した創
薬に期待が集まっている。将来的には、疾
患の根治による社会保障費抑制効果なども
期待される。
しかし、わが国の再生医療実用化は、<
図表 1>からもわかるように諸外国に後れ
を取っている。日本は研究レベルでは世界
トップクラスであるものの、実用化のスピ
ードが遅いといえよう。
柳葉夕佳
<図表 1>再生医療製品の各国の開発状況
(品目)
2012年12月時点
100
88
80
上市製品
治験中
60
42
40
31
20
20
14
9
2
4
0
米国
欧州
日本
韓国
(出所) 経済産業省HPより当社作成
2.再生医療実用化に向けた枠組作り
再生医療の実用化が進まない理由のひと
つには、現行制度の不備が挙げられる。現在
の医師法では、保険収載されているジャパ
ン・ティッシュ・エンジニアリング(JG
7774・以下J-TEC)の培養皮膚・軟骨や
治験(薬事法上の承認を得るための臨床試
験)中の製品以外の再生医療は、医師が自ら
の裁量をもって保険外で行う「自由診療」と
なる。自由診療は医師の裁量に任せられる部
分が多く、効果の少ない治療である可能性も
捨てきれない。そのため、多くの人が安全に
再生医療の恩恵を受けられるよう、法整備が
急がれていた。
2013 年 11 月には「再生医療新法」、
「改正
薬事法」が成立。2014 年度には日本再生医
療学会による再生医療認定医制度が開始予
定であり、安全な再生医療を早期に提供する
体制の整備が進んでいる。「研究」から「産
業」へ、再生医療実用化の枠組作りは国を挙
げて行われている。
<図表 2>法整備の骨子
<現状>
医師法・医療法下での再生医療
臨床研究
自由診療
(研究としての再生医療) (がん免疫・美容外科など)
大臣承認
薬事法
規制なし
細胞加工の外部委託不可
再生医療製品の分類があいまい
分類は医薬品・医療機器のみ
その都度判断される
新法制定・薬事法改正
再生医療新法
改正薬事法
リスクに応じた手続き整備
再生医療等製品と医療機器に分類
第一種・第二種・第三種再生医療等の区分を設け、
それぞれ手続きの方法、認定基準などを定める
再生医療等製品
医療機器
細胞培養を届け出制にし、外部委託を 特性に応じた早期 第三者認証の
可能にする
承認制度の導入 対象拡大
(出所) 経済産業省HPより当社作成
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し
ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
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3.再生医療市場の成長は周辺産業へ波及しよう
再生医療を用いた医療産業そのものの成長に加え、
細胞培養装置、培地、治験支援など、再生医療にかか
わる周辺産業への恩恵も期待されよう。経済産業省の
調査によると、世界の再生医療の市場規模は 2012 年
1,000 億円→2030 年 12 兆円、細胞培養装置や培地な
ど周辺産業の市場規模は 2012 年 2,400 億円→2030 年
5.2 兆円への拡大が予測されている<図表 3>。
<図表 3>再生医療の市場規模予測(世界)
(兆円)
40
38
30
30
再生医療関連銘柄としては、再生医療製品を上市し
ているJ-TEC(JG7774)、心筋シートを治験中の
テルモ(4543)が挙げられる。大手医薬品メーカーは大
学と共同で iPS 細胞などを用いた基礎研究を行ってお
り、アルツハイマーといった現在完治が困難な疾患の
完治をめざす。医薬品ベンチャー各社も、培養細胞を
用いた医薬品の開発や治療ノウハウ提供を手掛けて
いる。周辺産業では、培地ではリプロセル(JG4978)、
タカラバイオ(M4974)、装置では小型の培養装置を提
供するカネカ(4118)などが挙げられる。治験支援企業
も再生医療製品承認早期化による治験数の増加など
で恩恵を受けよう。
当社は精神神経領域に強みを持つ大日本住友製薬
(4506)、石化製品から医薬品まで幅広く手掛ける旭化
成(3407)、医療業界に特化してインターネットを用い
た情報提供を行うエムスリー(2413)に注目する。
20
12
10
1
0.1
0
2012
2020
2030
2040
2050年
<世界市場規模の算出方法>
「各国の市場規模」=「現在の当該国の再生医療市場※1」×「再生医療の普及度※2」
※1「患者数」×「患者1人当たりにかかる費用」
※2 人口、所得(物価)、開発品目・既存市場、研究開発予算等から推定
(出所) 経済産業省HPより当社作成
<参考銘柄>
<参考銘柄>
医薬品
◎創薬に向けた基礎研究
◎培養細胞による治療
武田薬品工業(4502)
J-TEC(JG7774)
アステラス製薬(4503)
セルシード(JG7776)
大日本住友製薬(4506)
大塚HD(4578)
医薬品
ベンチャー
テラ(J2191)
協和発酵キリン(4151)
メディネット(M2370)
◎培養細胞による治療
ナノキャリア(M4571)
テルモ(4543)
オンコセラピー・サイエンス(M4564)
旭化成(3407)
カネカ(4118)
培養装置
検査機器
◎自家細胞がんワクチン
タカラバイオ(M4974)
培地
保存液
リプロセル(JG4978)
ニコン(7731)
セーレン(3569)
ニプロ(8086)
エムスリー(2413)
日立製作所(6501)
澁谷工業(6340)
治験支援
シミックHD(2309)
イーピーエス(4282)
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