裁判員制度と陪審制は 別のもの 裁判員制度を陪審制になぞらえて、説明しているものを目にします。ですが、この二つの制度はまったく 別ものです。それを、裁判員制度はあたかも陪審制と同じものであるかのように説明、宣伝しているところに、 ウサンクササを感じます。 裁判員制度 1. 裁判員制度は被告人のための制度ではない。 裁判員の説明ビデオでの展開・・・「疑わしきは罰せず・疑わしきは被 告人の利益に」の説明が一切なく、「被告人に殺意はなかったのでは ないか」の判断から、「被告人に殺意はあった」の結論に転じている。 「裁判員制度で治安がよくなる」(検察広報官) *裁判員となることは、国民にとっても権利ではなく、義務。応じな いと罰金が科せられることもある。正当な理由がなければ辞退 できず、辞退を認めるか認めないかを決めるのは裁判所。 *憲法には、裁判員の記載がない。 *憲法で国民の義務としてあげられているのは、〈勤労の義務〉〈教 育を受けさせる義務〉〈納税の義務〉のみ。 2. プロの裁判官と一緒にやる。 「裁判のゆくえは、裁判長しだい」(検察広報官) 3. 重大犯罪のとき、被告人が犯罪を認めても認めなくてもやる。 陪審制 1. 陪審制は被告人の権利 *アメリカの憲法には「被告人は 陪審の権利を持つ」と書かれ ている。 *陪審員は、被告人の立場を守 る人。12 人の陪審員がそろっ て納得しなければ、有罪には ならない。 2. 陪審員のみでやる。 3. 被告人が有罪・無罪を争ってい る場合だけやる。 4. 被告人は裁判員の裁判を断れない。 4. 被告人は、陪審かプロの裁判 官かを選べる。 5. 刑罰を言いわたすことができる。 5. 陪審は刑罰にはかかわらず、 有罪か無罪のみを判断する。 6. 結論を多数決で出す。そして、その多数の中にプロの裁判官が 6. 多数決ではなく、全員一致で決 入っていなければならない める。 7. 三日ぐらいで判決を出す。数日で結論が出ないなら、部分判決 7. 時間がかかる。 (OJ シンプソン をする。 の場合は 10 ヶ月だった。) 8. 一審だけ。 控訴審でプロの裁判官の考えで補正される。 8. 陪審の裁判には不服申し立て ができない。 高山弁護士の講演・検察庁広報担当者によるビデオを使った説明会・最高裁判所のパンフレット より 裁判員制度と戦前の陪審制との近似性 1931 年「大日本陪審協会」が刊行した『陪審手引き』・・・ 「素人である一般國民にも、裁判手續の一部に参與せしめたならば、一層裁判に對する國民の信 頼も高まり、同時に法律智識の涵養や裁判に對する理解を増し、裁判制度の運用を一層圓滑な らしめようとする」 「我が陪審では、裁判官が陪審の評決意見には、拘束されないことになって 居ります」 「評決は過半數の意見によって決定するのであります。萬一陪審の答申を裁判所が 不當と認めた場合は、裁判所はこれを採擇しないのであります」 両裁判制度(戦前の陪審制・裁判員制度)の意義や性格に関する説明の何という近似性。・・・帝国軍隊 が朝鮮半島から中国大陸へと版図拡大を狙った侵略の時代だった。私たちの目の前にある裁判員制度 はどのような時代の産物か。 「裁判員制度はいらない」(高山俊吉)より (2008.10 村松真理子)
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