患者さんの食事満足度向上 〜盛付業務の改善及び質の向上

テーマ
患者さんの食事満足度向上 ~盛付業務の改善及び質の向上~
発
表
者 栄養士 薗田 紗智子
リ ー ダ ー 調理師 三浦 裕史
サ ー ク ル 名 AM 4:00の集い
サ ブ リ ー ダ ー 栄養士 薗田 紗智子
活 動 期 間 平成19年 4月~平成19年12月
管理栄養士 鈴木 由美
メ ン バ ー 栄養士 大塚 愛
会合回数
10 回
会 合 状 況
調理師 土屋 美子
1回あたりの会合時間
30 分
テーマ選定の理由
施
設
名 熱川温泉病院
・今年度の室料改定に伴い、更なる質の向上を提示された為、食事満足度向上に取り組みたいと思った。
・昨年度からの継続目標“予算内での食事の提供”を考慮し、食費の上昇を抑えた質の高い食事を提供した
いと思った。
①現状の把握
食事満足度は「味付」「盛付」「献立構成」の3つに大きく分類できる。
そこで、不満点の追及の為“嗜好調査”を実施。
第1回嗜好調査
平成19年5月 一般食喫食者 38名へ実施。
第2回嗜好調査
平成19年7月 一般食喫食者 32名へ実施。
第1・2回嗜好調査平均値
34.3
64.3
1.4
31.4
50
18.6
35.7
60
4.3
Ⅰ 献立構成(量等)に関して、良い・普通が8割となり、
満足している結果となった。しかし、日々の残菜量は
減少していない事から、量の過剰提供があげられる。
Ⅱ 味付に関して、意見にバラつきがみられた。これは、
個人の嗜好・味覚の違いが影響している結果となり、
それらを考慮出来ていない事があげられる。
Ⅲ 盛付に関して、普通・悪いが6割を占めた。
この事から、見た目の問題があげられ、
食事時間別で評価すると、“朝食の盛付が特に不満”
となった。
献立構成
味付
盛付
0%
50%
100%
良い
普通(適当)
悪い
②目標の設定
問題点の絞り込み
Ⅰ 量の過剰提供に対しては、料理別残菜量の把握・成分栄養管理の実施があげられる。
Ⅱ 個人の嗜好・味覚を考慮する為には、特別メニュー等の拡大があげられる。
Ⅲ 盛付をよくする為には、盛付業務の改善、食器類の見直し・購入があげれれる。
Ⅰ・Ⅱに関しては、時間的・人員的に無理が生じ、
ハード面の見直し等も必要となる為、栄養科のみでの改善が難しい。
したがって、今回はⅢの盛付業務の改善・食器類の検討を行う事にした。
嗜好調査 “盛付”項目の具体的数値
第1・2回嗜好調査平均値
良い 35.7%
普通 60.0%
悪い 4.3%
目標
第4回嗜好調査目標値
(平成19年11月実施予定)
良い 64.3%
普通 35.7%
悪い 0%
(目標数値は、第1・2回の平均値の悪い4.3%を普通に換算し、
その統合した値64.3%と良い35.7%を単純に逆転させたもの。)
③要因の分析
盛 調理師 三浦 裕史
具体的要因を分析した。
その中でも、
・時間がない
・技術が伴わない
・食材の偏り
以上の3点に重点を置くことにした。
④対策の立案
第2回嗜好調査
⑤対策の実施
試行
対策項目「盛付時間が十分にない」
以前は、ひと手間かける事で、患者さんへの気配りに繋がるのではないかと考えていた。
しかし、衛生上の問題やすぐにこぼれてしまう等の問題点があった為、
牛乳をコップへ入れる作業の手間を盛付業務に反映させたいと思い、パック牛乳へ変更した。
試行
対策項目「盛付技術が伴わない」
調理師 三浦 裕史
献立説明だけをしていた。
全体の料理を調理する前に、
見本分だけを調理・盛付し
献立説明時に、盛付方法も説明し
全体への周知徹底を行う。
試行
対策項目「食材の偏り」
食品コード 料理名/食品名
使用量
摂取量
色
g
g
◇料理
御飯
御飯
御飯
1088 こめ 水稲 めし 精白米
180
180 白
料理合計
180
180
使用量
摂取量
食品コード 料理名/食品名
g
g
◇料理 01 すき焼き
すき焼き すき焼き
11077 輸入牛肉 もも 赤肉 生
50
50 赤
6226 根深ねぎ 葉 軟白 生
83.33
50 白
4038 焼き豆腐
40
40 白
6099 しゅんぎく 葉 生
50.51
50 緑
2005 こんにゃく しらたき
40
40 白
17007 しょうゆ こいくちしょうゆ
15
15 黒
16025 みりん 本みりん
10
10 黒
3003 車糖 上白糖
5
5黒
料理合計
293.84
260
◇料理 01 ひじきの煮付け
ひじきの煮 ひじきの煮付け
9031 ほしひじき
6
6黒
6025 えんどう グリンピース 冷凍
5
5緑
6215 にんじん 根 皮むき ゆで
10
10 赤
14002 植物油脂類 ごま油
1
1黒
3003 車糖 上白糖
4.5
4.5 黒
17007 しょうゆ こいくちしょうゆ
9
9黒
17019 かつおだし
60
60 黒
料理合計
95.5
95.5
ホタテのおろし和え
◇料理 01 ホタテのおろし和え
ホタテのおろ
6132 だいこん 根 皮つき 生
55.56
50 白
6276 根みつば 葉 生
7.69
5緑
17007 しょうゆ こいくちしょうゆ
2
2黒
10313 ほたてがい 貝柱 生
20
20 白
料理合計
85.25
77
◇料理
フルーツ
フルーツ フルーツ
7134 メロン 温室メロン 生
90
45 橙
料理合計
90
45
御飯
献立を作成後、
色彩グラフに置換し、献立の
色彩イメージを把握する。
(色彩グラフはExcelにて作成)
すき焼き
(例)左図の様に、
献立作成ソフトにて作成
した献立を、Excelへ置換し、
グラフへ色彩を反映する。
以下の色彩心理も考慮
しながら、使用予定食材の
調整を行う。
第2回嗜好調査
ひじきの煮付け
ホタテのおろし和え
赤
華やかさ 活力
熱い 辛い ボリューム感
橙
食欲活性 幸福感
温かい 甘い 黄
爽やかさ ビタミンカラー
すっぱい 健康 元気
緑
和み 自然 くつろぎ
さっぱり フレッシュ
青
安らぎ 信頼感
冷たい スッキリ
紫
癒し 高貴さ
食欲減退 桃
優しさ 愛情
やわらかさ デザート
フルーツ
⑥効果の確認
一時的効果
牛乳をパックへ変更
見本作製及び、盛付説明
作成献立を色彩グラフへ置換
盛付時間15分拡大
盛付業務の均一化
同一色の献立削減
嗜好調査 “盛付”項目の具体的数値
第1・2回嗜好調査平均値
良い 35.7%
普通 60.0%
悪い 4.3%
結果
純粋さ 清潔感
白
(牛乳をパックの物へ変更した事により、コストに関しては…
さっぱり 味がない
前月仕入額 265,996円→今月仕入額 267,980円となった。
給食材料費に換算すると0.1円の上昇となり、影響は少なかったと考える。)
⑦対策の実施(本格的導入)
試行した結果、病棟・栄養科共に大きな問題なし。
⑧効果の確認
対策案の継続
調理師 三浦 裕史
(試行期間を含めた、3か月間に及ぶ対策実施の結果)
嗜好調査 “盛付”項目の具体的数値
第1・2回嗜好調査平均値
良い 35.7%
普通 60.0%
悪い 4.3%
目標
第4回嗜好調査目標値
(平成19年11月実施予定)
良い 64.3%
普通 35.7%
悪い 0%
結果
⑨歯止めと標準化
・2か月に一度の嗜好調査の継続
・盛付説明の徹底
・色彩を考慮した献立作成の継続
⑩反省と今後の課題
食事満足度向上に向けて、食事の質をどうしたら良くできるか考え、今回は“盛付業務”に着目し活動を
進めた。盛付が良くなったからと言って、食事満足度が向上したとは一概に言えないが、食事の質の向上
には直接的に繋がったと感じた。
今回の結果、目標値には及ばなかったが、嗜好調査の盛付項目は改善傾向を示した。
目標未達の原因としては、3か月と言う限られた期間での実行が考えられる。
詳細として次の様な事が言える。
・ 実施期間の前後において、嗜好調査対象者が入退院や食種変更により、約53%入れ替わった。
・ 実施期間前(8月)後(11月)では、献立内容が異なり実際の数値上でのフェアな比較が困難となった。
今後はこれらを考慮し、対策案の継続を行い、早急に目標達成行う。
また、“盛付業務”だけではなく、全体的な質の向上を目指す為、①の現状把握でも目標にあげた、
・ 料理別残菜量の把握、成分栄養管理の実施
・ 個人の嗜好に合わせた、特別メニュー(旧、選択食)の拡大
に取り組んでいきたい。