第2回獣医衛生学実習 水質検査:給与水

第2回獣医衛生学実習
水質検査:給与水
測定項目
温度・濁度・色度・pH・臭気
蒸発残留物・過マンガン酸カリウム消費量・アンモニア性窒素
塩素イオン・硬度・鉄・一般細菌数・大腸菌群
午前の測定項目と手順
蒸発残留物:水中に含まれる溶解性および浮遊物質の総和
使用器具:蒸発皿 ピンセット シャーレ
蒸発皿に班名を書き、ホットプレートで、30 分乾燥させ、デシケーターで放冷する。
蒸発皿はピンセットを用いて扱い、シャーレにのせて運ぶ。
温度:坂口コルベンに温度計を入れ検水の温度を測定する。
(共栓付三角コルベンに移す前に測定する)
濁度および色度:検水をゴム管付き比色管に移し、濁度標準列、色度標準列と順次比較し、濁
度および色度を求める(比色管にはゴム管が付いており、それがクリップで止まっているので、
測定後クリップを開放して、検水を再び共栓付三角コルベンに戻し臭気の測定に用いる)。
pH:検水の pH を BTB 試験紙で測定する。
臭気:共栓付三角コルベン中の検水をよく振り混ぜた後、臭いを判定する(冷時臭気)。共栓を
外し、ホットプレートで加温し、40∼50℃に温める。ホットプレートからおろし、栓をしてよく振り混
ぜた後、臭いを判定する。(温時臭気)
鉄:使用器具:200ml ビーカー 共栓付 100ml 比色管
ビーカーに検水 100ml を入れ、10%塩酸 3ml を加え、50ml になるまで加熱濃縮する。
午後の実習項目と手順
鉄(オルトフェナントロリン法)
本法は、鉄イオンを全て Fe2+(第一鉄)とし、これにフェナントロリンを作用させ、このときに呈
する橙色の吸光度を測定し、検量線より鉄の濃度を求める方法である。
①(午前中に終了)
②放冷後、検水を共栓付 100ml 比色管にうつす。
③10%ヒドロキシルアミン溶液を1ml 加える。
④1,10-フェナントロリン溶液を5ml 加え、よく転倒混和する。
⑤酢酸アンモニウム・酢酸緩衝液を 20ml 加える。
⑥蒸留水を加え、全量を 100ml とする。
⑦以上をよく振り混ぜ、30 分間静置後、510nm での吸光度を測定する。
*鉄の濃度は検量線から求める。
蒸発残留物
①(午前中に終了)
以後、蒸発皿はピンセットを用いて扱い、シャーレにのせて運ぶ。
②デシケーター内で、5 分以上放冷した後、秤量する。
③検水 20ml を蒸発皿にとり、ホットプレートで蒸発乾固する。
④デシケーターに入れ、放冷させた後、秤量する。
⑤蒸発操作前後の重量差(X:mg)を求める。次式によって蒸発残留物を算出する。
蒸発残留物(mg/l)=X(mg)×1000/試料(ml)
注意:蒸発残留物は、吸湿性物質を含む場合も多いので、手早く秤量すること。
②および④は同じ天秤で測定すること。
アンモニア性窒素(ネスラー法)
有機物(動物の排泄物など)の分解によって生じるアンモニア塩を、その窒素量で表したもの。
この存在は、し尿、下水、動物排泄物による汚染が疑われる。ネスラー法は、現場対応であり、
簡便に定性が可能な方法である。
使用器具:共栓付 50ml 比色管
① 比色管に検水 50ml をとる。
② 酒石酸カリウム・ナトリウム溶液を2ml 加える。
③ 沈殿物を取らないように注意しながらネスラー試薬 1ml を加える。
④ よく混和し、10 分間放置する。
⑤ 400nm での吸光度を測定する。
*アンモニア性窒素の濃度は検量線から求める。
過マンガン酸カリウム消費量
過マンガン酸カリウム消費量は、水中の酸化されやすい物質によって消費される過マンガン
酸カリウムの量をいう。過マンガン酸カリウム消費量は、下水、工場排水、大小便の混入によっ
て増大する。有機性物質、第一鉄塩、亜硝酸塩、硫化物等は過マンガン酸カリウムを消費する。
よって、主に有機物の存在量を知ることを目的としている。
使用器具:沸騰ビーズ入り三角フラスコ、ガスコンロ、鉄板、軍手
①検水 100ml を沸騰ビーズ入り三角フラスコに入れる。
②1+2 希硫酸を 5ml 加える。
③0.01N 過マンガン酸カリウム溶液 10ml を正確に加える。
④ガスコンロで煮沸後 5 分間静置する。
⑤沸騰後直ちに 0.01N シュウ酸ナトリウム溶液を10ml 加え、脱色させる。
⑥0.01N 過マンガン酸カリウム溶液を用いて、微紅色が消えずに残るまで滴定をおこなう。
⑦滴定に要した 0.01N 過マンガン酸カリウム溶液量を求める。
⑧次式によって過マンガン酸カリウム消費量を算定する。
過マンガン酸カリウム(KMnO4 )消費量(KMnO4 :mg/l)
=0.316×(bF-10)×1000/試料(ml)
F:0.01N 過マンガン酸カリウム溶液の力価=1
b:滴定時に加えた過マンガン酸カリウム溶液量(ml)+最初に加えた 10(ml)
塩素イオン(Mohr 法)
塩素イオンが多い場合は一般に有機物が多いので、下水、工場排水、人畜排泄物による汚
染の疑いが強い。
使用器具:共栓付 50ml 比色管
① 検水 50ml を 300ml コニカルビーカーにとる。
② 5%クロム酸カリウム溶液 0.5ml を加えて混和する。
③ 0.01N 硝酸銀溶液で微褐色が消えずに残るまで滴定をおこなう。
④ 滴定に要した 0.01N 硝酸銀溶液量(a)を求める。
―
Cl
(mg/l)=a×1000/ 検 水 量 (ml)×0.3545
(0 . 0 1 N 硝 酸 銀 1 m lは 0 . 3 5 4 5 m gの 塩 素 イ オ ン に 相 当 )
硬度
水中の Ca2+・Mg2 +量を、これに対するCaCO3 の mg/l に換算して示したものである。はじめ
に MgCl2 を添加するのは、検水にマグネシウムが存在しない場合でも明瞭な終末点を認めるた
めである。加えたマグネシウム量は、計算式で(bF−1)として補正する。検水中に Cu、Fe、Co、
Ni、Mn、Al などが存在する可能性のある場合は、滴定の終末点を明瞭にするために、検水に
10%KCN を数滴加える。
使用器具:共栓付き三角フラスコ
① 三角フラスコに検水 100ml をとる。
② 10%シアン化カリウム (KCN)溶液を数滴加える。
③ 0.01M MgCl2 溶液を 1ml 加える。
④ アンモニア緩衝液を2ml 加える。
⑤ EBT 試液を 5∼6 滴加える。
⑥ 0.01NEDTA 溶液で溶液の色が赤紫色から青色を呈するまで滴定をおこなう。
総 硬 度 (CaCO3 のmg/l)= (bF−1 )× 1 0 0 0 / 試 料 ( m l )
F:E D T A 溶 液 の 力 価 = 1
b:滴 定 に 要 したE D T A 溶 液 量 (b)
一般細菌数および大腸菌群の検査手順
一般細菌数
:普通寒天培地
大腸菌群
:BGLB 培地
使用器具:滅菌 10ml メスピペット(1本)、滅菌 1ml メスピペット(2本)
BGLB 培地(4本)、シャーレ(8枚)
*以下の1および2を上から順に行う。
1 滅菌 10ml メスピペット
① 滅菌中試2本に 9ml ずつ滅菌 DW を入れる(2での10倍階段希釈用となる)。
② BGLB 培地コントロール(
2 本)に 4ml ずつ滅菌 DW を入れる。
③ BGLB 原液用(2 本)に 4ml ずつ検水原液を入れる。
2 滅菌 1ml メスピペット
④ 滅菌シャーレコントロール用2枚に1ml ずつ滅菌 DW を入れる。
⑤ 滅菌シャーレ原液用2枚に 1ml ずつ検水原液を入れる。
⑥ 10 倍階段希釈 10−1用中試に、検水原液を 1ml 入れサスペンションする。
⑦ 10−1液を滅菌シャーレ 10−1用 2 枚に 1ml ずつ入れる。
⑧ 10−1液を 10 倍階段希釈 10−2用中試に 1ml 入れサスペンションする。
⑨ 10−2液を滅菌シャーレ 10−2用2枚に 1ml ずつ入れる。
⑩ ④⑤⑦⑨で作製したシャーレ 8 枚にそれぞれ普通寒天培地を全面に行き渡るように(約
15ml)入れ、ふたにつかないように注意して静かに混和する。
⑪ 普通寒天培地は寒天が固まったら逆さにしてシャーレ入れ(大)に、BGLB 培地はシャー
レ入れ(小)に入れて 37℃で培養する。
⑫ 普通寒天培地は 24 時間後、BGLB 培地は 48 時間後に判定を行う。
判定方法
普通寒天培地
コロニー数が 30∼300 以内の希釈倍率のシャーレをカウントし、原液の CFU/ml を算出する。
BGLB 培地
ガス産生(ダーラム管内の気泡)、乳糖分解能(培地色黄変(+))をチェックする。
給与水の条件(参照)
家畜衛生学:P116∼117
東京都水道局水質情報:http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/w_info/s_kijun
吸光度(510nm)
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
k
0
50
鉄
150
200
y = 0.0023x + 0.0341
R2 = 0.9996
100
μg/50ml
250
吸光度(400nm)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
20
60
80
100
y = 0.0053x + 0.0871
R2 = 0.9995
アンモニア性窒素
40
μg/50ml
120