現場施工が容易な水性ゴムアスファルト系材料による 高耐久性優良左官外壁工法の開発・実用化 New Plaster Alliance 1. 開発の背景 太平洋マテリアル(株) (本社:東京都江東区、社 長:安西幸男)、秩父コンクリート工業(株) (本社: 東京都荒川区、社長:新井敬二)、(株)ニッケンビ ルド(本社:東京都江東区、社長:野村眞義) 、 (株) 日総(本社:大阪府堺市、社長:伏木剛志)、富士川 建材工業(株) (本社:神奈川県横浜市、社長:常山 洋)の 5 社で構成する「New Plaster Alliance」は、日 本の伝統構法である木造建築の耐久性を格段に向上 させた左官外壁工法として、 「マーベラス工法」を開 発した。 2. 概要および特長 「マーベラス工法」は、左官工事のマーベラス(以 下、ラス網)張り付け後、水性ゴムアスファルト系 防水材:マーベラス防水材(以下、防水材)を全面 に吹き付けることで、左官外壁の防水性を著しく高 めることを可能にした。また、防水材とマーベラス モルタル(以下、モルタル)の強い付着力でモルタ ルとマーベラス防水シート(以下、防水シート)の 間に水の浸入を防ぐことができる。防水材は平米当 り 200g の塗布量で防水性能を保つと共にラス網の防 錆処理も同時に行い、かつ今まで裏面からも起きた モルタルの中性化も抑止できる。 この複合防水仕様によりサッシ廻りからの雨水侵 入を防止できることから、木造建築の耐久性を高め、 ライフサイクルコストを低減できる。 図 1 マーベラス工法 工程図 ① 無機仕上げ材のマーベラスフィニッシュ(以下、 仕上げ材)は有機仕上げ材と比べ吸水量が多い。 しかし、塗り厚が厚く、紫外線劣化がなく、材 料の変質や強度低下もない。 ② モルタルは軽量で作業性も良く、吸水性、収縮 も少なく強度もあり、マーベラスネット(耐ア ルカリ性ガラス繊維ネット)を伏せ込むことに より、クラックの発生を抑止できる。また開口 部周りの耐クラック対策の評価は水平加力試 験により変形角 1/100[rad]までの耐クラック性 を持つ。 ③ ラス網は厳選し、縦・横の強度に対する方向性 がなく、耐クラック性を持つ。また、防水材の 塗布により錆に対する抵抗力を増強させた。 ④ 防水シートは透視性が良く施工しやすい。表面 は不織布を使うことにより、防水材の効果を十 分引き出す事に成功した。 3. 工程 1) 下地の確認 下地板、透湿防水シート、縦胴縁、板金、 先張り防水シート、防水テープなどが規定 通りであること。 外壁に衝撃を与える諸工事(内装、巾木、 棚取り付け等)は完了していること。 2)補助胴縁の張り付け 縦胴縁の中間位置に補助胴縁を張り付ける。 3)防水シートの施工 たるみやしわにならないように防水シート を張り付ける。 4)補強テープの貼り付け 開口部・貫通部廻り、防水シートの縦ジョ イント部に補強テープを貼り付ける。 5)ラス網の張り付け ラス網は千鳥張りとし、ステープルを縦胴 縁上の横力骨にエアタッカーを用いて留め 付ける。 6)防水材の塗布 6)-1 防水材に専用増粘剤を添加し、棒でかき混 ぜる。 6)-2 防水材の塗布:防水材をエアレス又はカッ プガンで開口部廻りに吹き付け、ラス網の 裏面にも材料が付着するように縦・横方向 に斜め吹きする。2 回吹く。(写真 1、2) 7)シーリング材の施工 主材+硬化材+水を攪拌し、開口部・貫通 部廻りにシーリング材を塗り、へらでなら す。(写真 3) 8)モルタル・ネットの施工 8)-1 モルタル下塗り 防水材指触乾燥後、モルタルを塗り付ける。 (写真 4) 8)-2 モルタル上塗り・ネット伏せ込み モルタルを上塗りし、表面にネットを伏せ 込む。 9)仕上げ材の施工 モルタル養生後、仕上げ材を塗り付ける。 写真 1 マーベラス防水材の塗布(一般部) 写真 2 マーベラス防水材の塗布完了 工事着工前の打ち合わせ 各材料の拾い出し・発注 下地工事等の確認 大工または左官工事 下地板 検査 透湿防水シート 補助胴縁の張り付け マーベラス防水シートの張り付け 開口部廻り等マーベラステープ貼り付け 縦胴縁、ファイアストップ ヨレ止め胴縁 通気水切り、板金 防水ラス・左官工事 マーベラス工事 マーベラスの張り付け 写真 3 開口部廻りの処理 マーベラス防水材全面塗布 開口部廻り等マーベラスシーリング材の塗布 検査 マーベラスモルタルの塗り付け マーベラスネットの伏せ込み 養生期間 検査 マーベラスフィニッシュの塗り付け 完成 図 2 マーベラス工法 施工フローチャートおよび範囲 写真 4 マーベラスモルタルの塗り付け 4. 性能 4-1. 止水試験 図 3、4 に防水材の止水性能を示す。試験は防水 シートにステープルを打ち込み、図 5 に示す方法 でステープルの穴及び防水シートからの漏水量を 測定した。 防水材を 200g/㎡塗布する事により、防水シー トの縦ジョイントやステープル穴からの漏水を防 止する事ができる。 4-2. 付着強さ試験 防水材に対するモルタルの付着強さを表1に示 す。試験の結果、モルタルの内部で破断し、良好 な接着性状を示した。 表1 付着強さ 付着強さ 主な破断位置 試験体仕様 (N/mm2) 防水材に モルタルを 塗り付け 4.0 塗布量 200 g/㎡ マーズラス防水シート 3.5 漏水量(ml) 3.0 2.5 4-3. 面内せん断試験(変形追従性) 富士川建材工業㈱保有の水平加力試験機を用い て面内せん断試験を行い、マーベラス工法の変形 追従性を検証した結果、1/100 [rad]の変形に対し て追従し、防水紙の継ぎ目やステープル周りに切 れなどの損傷は発生しなかった。試験終了後、試 験体の仕上げ表面に目視できるひび割れはなかっ た。(写真 5) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 3 6 9 12 15 時間(h) 18 21 24 図 3 マーベラス防水材の止水性能 0.10 塗布量 塗布量 塗布量 塗布量 漏水量(ml) 0.08 0.06 100 200 300 400 g/㎡ g/㎡ g/㎡ g/㎡ 18 21 4-4.散水試験 4-3 の試験終了後の試験体を使用し、雨水浸入の検 証のため散水試験を行った。モルタル部分をカッ トし、浸入の有無を確認した結果、浸入はなかっ た。(写真 6) 0.04 0.02 0.00 0 3 6 9 12 15 時間(h) 0.61 モルタル内部及 び防水材とモル タルの界面破断 24 図 4 マーベラス防水材の止水性能2(塗布量) 5. 今後の展開 「マーベラス工法」は、販売窓口が富士川建材工 業(株)で、材工で受注する。 本工法は、木造建築の外壁の通気外壁システムで あり防水シートから仕上げ材までを最高の品質で構 成した長期優良住宅外壁と言える複合防水外壁通気 工法である。開発 5 社は、今後、日本建築の美しさ、 風合いを保ちながら、これまでできなかった長期耐 久性を持つ「マーベラス工法」を積極的に提案して いく。 メスピペット内に水を入れ、 水の減少量を測定する 図 5 止水試験装置 写真 5 1/100 変形後 写真 6 散水試験後
© Copyright 2024 ExpyDoc