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1章 調査の目的と全体方針
1.研究の背景と目的
るといえる。東北地方においては、これらの小規模建築
1997年に採択された京都議定書で、我が国は温暖化ガ
への対策も大きな課題であると考えられることから、
スを1990 年比で6%削減することが決定した。この温暖
2000 ㎡以下の建物についても調査対象とした。
化ガスの増加要因に民生部門の増加があげられる。その
以上のような観点から調査対象とした建物を表 1 に示
なかで、東北地方は寒冷な地域にあって、暖房を中心と
した。調査票を配布した建物は5000棟を越え、回収でき
するエネルギー消費の削減が重要な課題となる地域であ
たのも 2000 棟を越える。
る。また、東北地方は南北に大きく伸びており、地域によ
る気候風土の違いは大きいと考えられる。
3.調査内容
そのようななか、東北地方における業務用建築の省エ
調査の内容は、エネルギー消費の現状だけでなく、近
ネルギー対策を検討する上で、その現状が必ずしも十分
年の推移と今後の動向も把握できるよう構成した。エネ
に把握されていない状況にあり、その実態やその特徴を
ルギー消費や省エネルギー対策の実態等、現状把握に関
明らかにする必要性が高い。また、このエネルギー消費
する調査は施設、光熱費等の実績データにもとづいたも
が今後どのように推移していくのかは、今後の地球環境
のとしたが、エネルギー消費の近年の推移や将来の動向
対策を検討する上できわめて重要な問題である。さらに、
については管理者の意識をもとに調査を行った。調査は
省エネルギー対策の現状や今後の可能性を明らかにする
各建物用途別に作成した調査票を 1998 年 10 月に郵送配
必要も高い。本報では、これらの事項を明らかにし、今後
布して実施したもので、主として建物施設管理者が回答
の省エネルギー対策の可能性を検討するための基礎情報
を行っている。
を得ることを目的に行った調査の一次報告とする。
エネルギー消費は 1997 年度の実績について調査を行
い、エネルギーの換算は改正された省エネルギー法に示
2.調査の対象
された換算値である表2によった。これによって、電力の
調査の全体像を図1に示したが、
東北地方6県を対象地
エネルギー換算は一次換算で、都市ガスは会社別の標準
域として、事務所、店舗、宿泊、学校、病院の5用途につ
熱量より換算を行った。
いて調査を行った。調査建物の選定に当たっては、県別
エネルギー消費のの推移と今後の動向においては、エ
の地域特性、規模特性、建築年代別特性が明らかになる
ネルギーの使用用途として暖房用、冷房用、照明用、給湯
ように配慮した。
用、昇降機用、OA機器用の6用途(病院については医療
また、建物の省エネルギー対策は、行政上省エネルギー
機器を追加)に分けて質問を設けているが、これらの項
法に基づいて、建築主の努力義務と判断基準の公表に
目も省エネルギー法にほぼ対応するものである。また、将
よって進められているが、本法は平成10年6月に改正さ
来のエネルギー増加予想については、京都議定書の数値
れ、平成 11 年 4 月から施行されている。本調査では、改
目標達成時期を想定して 10 年後の状況について質問を
正によって加えられた飲食店舗を除く建物5用途を対象
設けている。
とするものであり、この法律の枠組みに沿ったものでも
ある。また、今回の省エネルギー法改正によっても対象
する建物の規模は2000㎡以上と変更なく、東北地方にお
いてはこの対象にならない比較的小規模な建物も多くあ
1-1
(対象地域)
東北地方6県
(建物用途)
5用途:事務所、店舗、宿泊、病院、学校
建物施設状況
・建物構造
・建築設備
・省エネルギー対策
建物特性
(現状把握)
データ収集
・気候特性
・規模特性
・年代特性
エネルギー使用実態
・電力、石油、ガス
・使用用途
エネルギー使用動向
(将来動向)
・過去の推移
意識調査
・将来の動向
・省エネルギー対策動向
図1 調査の全体フレーム
表1 調査対象建物
表2 熱量換算値
施設種
地域
○事務所
県庁所在都市 自社ビル、テナントビル 抽出
○店舗
県全域
形態
抽出方法
配布数 回収数 回収率
1,501
第一種大規模店舗
全施設
348
第二種大規模店舗
25%抽出
435
生活協同組合
抽出
県全域
861
17都市抽出
県全域
抽出
91
旅館
抽出
49
全体
県全域
882
140
小学校
全施設
621
519
中学校
全施設
306
249
高校
全施設
小計
○病院
249
ホテル
小計
○学校
病院
20%
78
小計
○宿泊施設
306
29%
16%
430
308
1,357
1,076
79%
697
276
40%
5,298
2,047
39%
全施設
1-2
燃料
熱量換算値
重油
40,600 kJ/リットル
灯油
37,250 kJ/リットル
LPG
50,230 kJ/kg
電気
10,250 kJ/kWh
都市ガスは各社標準熱量による