Dichotic Monitoring Test における注意と 耳優位性の関係について

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神経心理学 第 16 巻第 1 号
■原著
Dichotic Monitoring Test における注意と
耳優位性の関係について
田上裕子*
大東祥孝*
要旨:右手利きには右方向に注意のバイアスが存在するかどうかを,言語音と非言語音の
二つの dichotic monitoring 手法を用いて調べた。トライアル毎に先行音を置き,先行音
が鳴った側に注意を向けるよう指示した。言語音刺激においても,非言語音刺激において
も右耳の成績に注意の効果が見られなかったため,元々右に注意のバイアスがあるという
仮説を一部支持するものとなったが,左耳の成績は言語音刺激の場合のみ著しく向上し,
非言語音の場合には成績向上が見られなかったことから,意識的な注意であっても音種の
影響を受け,何らかの処理機構の関与が考えられることが示唆された。また,通常の言語
刺激における右耳優位が注意を傾けることによって左耳優位になった今回の結果から,少
なくとも言語刺激においては注意を向けることによって同側,交叉性の経路がダイナミッ
クに活性化され,変化しうる可能性があることが示唆された。
神経心理学 16 ; 32-38, 2000
Key word : 右方向バイアス,注意,耳優位性,ダイコティックモニタリングテスト,右手利き
Rightward bias, Attention, Ear advantage, Dichotic Monitoring Test (DMT), Righthandedness
I
示唆され(Teng,1981 ; Bryden,1982),要
初めに
因の一つとして意識的に注意を向けさせる指示
Dichotic Listening の手法は 1954 年 Broad-
によって注意の効果を調べようとした(Dean
bent によって発案され,課題内容は両耳に同
& Hua,1982 ; Bryden,Munhall & Allard,
時に音刺激を与えて何が聞こえたかを答えても
1983 ; Hugdahl & Andersson,1986)。その
らうものである(Broadbent,1954)。一般に
結果 REA の傾向に違いが見られなかった為,
右手利きにおいて言語刺激では右耳優位
意識的注意と dichotic 成績間の関係は希薄であ
(Right Ear Advantage ─ REA),また,非言
ると思われた。しかし最近になって Mondor
語刺激では左耳優位(Left Ear Advantage ─
& Bryden(1991)は注意を向けさせる方法に
LEA)になることが知られている。この左右
問題があると指摘し,ブロック全体に注意を傾
耳の非対称性についての仮説は,Kimura の言
かせる従来の方法を止め,各トライアル前に注
語野の存在によるものと(Kimura,1967),
意の方向を促すキュー(先行音)を刺激前に与
Kinsbourne の半球活性化による注意のバイア
えることにした。結果,右手利きには注意の効
ス説がある(Kinsbourne,1970)。しかし di-
果が左耳の成績のみに現れ,左手利きには注意
chotic の成績には他の要因も絡んでいることが
の効果が右耳の成績により強く現れた事などか
1999 年 8 月 5 日受付,1999 年 10 月 20 日受理
The relationship between attention and ear advantage in dichotic monitoring test
*
京都大学大学院人間環境学研究科,Yuko Tagami, Yoshitaka Ohigashi : Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
(別刷請求先:〒 606-8501 京都府京都市左京区吉田本町 京都大学留学生センター内大東研究室 田上裕子)
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ら右手利きには右方向に注意のバイアスがあ
SOA 450ms,750ms の場合は先行音刺激があ
り,左手利きには左方向に注意のバイアスが存
った側の耳に注意を向けてもらうよう指示し,
在しているのではないかと仮説を立てている
検査音が注意を向けていた側の刺激音と同じで
(Mondor & Bryden,1991 ; Mondor,1994)
。
ある場合は「1」を,異なる場合は「2」を押す
このバイアスについて Mondor は難易度の高
よう指示した。
言語音のサンプルは「補聴器適合評価用 CD
い条件下では被験者は自分の“preferred side”
に注意を向ける傾向があり,この“preferred
(TY-89)」の単音節語音から抜粋された破裂音
side”とは手の“preferred side”と同じなの
「ば,だ,た,か,が」の 5 音を Power
Mac7600/200 上で Macromedia 社の Sound
では無いかと述べている(Mondor,1994)。
今実験ではこの,右手利きには右に注意のバ
Edit16(Ver. 2J)にて視覚的に波形から切り
イアスが存在するかどうか,を異なる音刺激を
出し,それぞれを同一の長さ(231.5ms)に調
用いて調べた。もし半球の処理優位性に関らず
整したもので,男性の声である。これらの音を
右手利きには右方向へ注意のバイアスが存在し
組み合わせて 20 のペアを作り,検査音が右耳
ているなら,刺激音の種類によらず注意の効果
の刺激音と同じ場合の 20 トライアル,異なる
は左耳の成績に顕著に見られるだろうと思われ
場合の 20 トライアル,左耳の刺激音と同じ場
た。また,注意を向けてから時間がたつにつれ
合の 20 トライアル,異なる場合の 20 トライア
て成績変化の傾向が変わるかどうかも調べた。
ルの合計 80 トライアルをセットとした。これ
II
らは SOA3 条件に各々設けられ,全部で 240
方 法
トライアルとなった。これらのトライアルは 4
被験者:右手利き正常被験者,男女各 20 人
セッションに分けられ,1 セッションはそれぞ
の合計 40 人。年齢 19 歳から 35 歳(男 M ±
れの SOA 条件につき平等数の「1」正答と「2」
SD=24.05 ± 3.36,女 M ± SD=24.2 ± 2.76)。
正答を含んでいる。1 セッションは約 5 分であ
プロの音楽活動を行うもの,またプロ用の音楽
る。
非言語音のサンプルは同じく Sound Edit で
教育を受けた事がある者は含まれていない。
手続き:言語音刺激と非言語音刺激の二つの
作られた square wave tone,C4 ∼ G4 までの
dichotic 課題を用意した。今回は非言語音を用
261.6Hz,293.7Hz,329.6Hz,349.2Hz,
いているため,刺激音を口答してもらう方法で
392.0Hz に対応した 231.5ms の 5 音である。こ
はなく,刺激音の後に左右耳に同時に与えられ
れらを組み合わせた 20 のペアを言語音と同じ
た一つの検査音が刺激音に存在していた音かど
ようにして SOA 3 条件に 80 トライアルずつ設
うかをキー押しで答えてもらう dichotic moni-
けて,全部で 240 トライアルが 4 セッションに
toring の方法をとった。注意無し,注意有りの
分けられた。言語音と同じ規約が当てはめられ,
条件を比べるため,SOA(Stimulus Onset
1 セッションの長さは約 5 分である。
Asynchrony)0ms,450ms,750ms の 3 条件
1 トライアルは 2000Hz,100ms の純音によ
が設けられた。SOA とは先行音が右か左の耳
る予告音によって始められ,1 秒の無音の後,
に鳴り始めから刺激音が鳴るまでの時間を指
先行音のある場合は 600Hz,100ms の純音,
し,検査者は,先行音の鳴った側の耳に注意を
SOA(450ms か 750ms),dichotic の刺激音
向けるように指示した。SOA 0ms の場合は先
231.5ms,1 秒の無音,231.5ms の検査音,そし
行音が無いために dichotic の刺激がすぐに鳴
て 2 秒の無音から構成されている。被験者には
り,その後に続く検査音が左右耳のどちらかの
この 2 秒の無音間に異同判断を行ってキーを押
刺激音に存在していた音であれば,テンキー上
してもらう。キーが押されなかった場合は見逃
で「1」を押し,存在していなかった音であれ
しと見なされた。キーを押すには右手の人差し
ば「2」を押すよう指示した。先行音のある
指が使われ,待機中はテンキー上の「1」と「2」
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神経心理学 第 16 巻第 1 号
の間に置くように指示されている。なお,分析
には「1」と判断された正答のみを利用した。
それぞれの刺激の前に 30 トライアルから成る
練習を行い,また,目の動きによって成績に差
がでることが報告されている事をふまえ(Hiscock et al.,1985 ; Lefevre et al.,1977),被
験者間で大きな差が出ないように配慮する目的
で,実験は閉眼して行った。言語音,非言語音
図 1 言語音刺激
の各 4 セッションは音種ごとにまとめて提示さ
れ,間に 5 分ほどの休憩を入れている。半数の
被験者は言語音を先に,もう半数は非言語音を
先に行った。提示は Super Lab(Ver. 1.4)で
ランダムに行い,Mac Performa 5320 上で走ら
せた。ヘッドホンには Rion AD-02B を用い,
音圧は約 60db である。成績の他に反応時間も
記録された。
III
図 2 言語音 Ear Advantage
結 果
*EA =(右耳のスコア−左耳のスコア)÷(右耳のスコ
全体の成績:言語音の平均正答率 70.27 %
ア+左耳のスコア)
( S D = 1 5 . 1 8 % ), 非 言 語 音 の 平 均 正 答 率
71.46 %(SD=18.34 %)。これらに差は見られ
*
図 2 は ear advantage(EA)
を示したもので
なかった(t(478)=0.773,ns)。言語音を先に
行うか,非言語音を先に行うかという順序によ
ある。SOA による影響が見られ(F(2,117)
る成績差もみられなかった(t(478)= − 1.863,
=7.271,p<0.01),SOA 0ms の時に見られてい
ns)。
た REA が SOA 450ms,750ms につれ LEA に
全体の反応時間:言語音全体の正答時平均反
なっている。
応時間は 677.61ms(SD=192.24ms),非言語音
4way mixed ANOVA(Ear by SOA by Sex
全体の正答時平均反応時間は 748.55ms
by Order)の結果(被験者内要因 Ear,SOA,
(SD=217.55ms)。T 検定によるとこの二つの
被験者間要因 Sex,Order),Ear × SOA の交
間には差が見られた(t
(478)=3.785,p<0.01)
。
互作用(F(2,72)=7.519,p<0.05)と SOA ×
全体的に言語音と非言語音を総合すると順序
Order の交互作用(F(2,72)=5.537,p<0.05)
によって差が見られ(t(478)=4.029,p<0.01),
が見られた。図 3 にあるように非言語音の後に
言語音を先に行ったグループの方が非言語音を
行うと SOA 450ms で成績の向上が顕著に現
先に行ったグループよりも速いという結果にな
れ,SOA 750ms では 450ms 時の成績とそう変
っている(言語音先 M ± SD=675.40 ±
わらないが,言語音を先に行ったグループでは
209.80ms,非言語音先 M ± SD=750.76 ±
SOA 0ms に比べ 450ms で成績がかえって若干
199.86ms)。
落ちているが,それより注意を傾ける時間が長
言語音刺激による成績:右耳の成績は SOA
に よ る 影 響 を 受 け な か っ た が ( F( 2 , 1 1 7 )
かった 750ms では成績が回復している傾向が
見られる。
言語音刺激による反応時間: 4way mixed
=0.383,p=0.683),左耳の成績は SOA による
影響が見られた(F(2,117)=3.799,p<0.05)。
(図 1)
ANOVA(Ear by SOA by Sex by Order)の
結果,SOA の主効果のみ見られた(F(2,72)
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図 3 提示順序による言語音成績
図 5 非言語音刺激
図 6 非言語音 Ear Advantage
図 4 言語音・反応時間
=70.845,p<0.01)。(図 4)
非言語音刺激による成績:右耳の成績は
SOA の影響を受けて向上せず(F(2,117)
=0.585,p=0.559),左耳の成績にも SOA の影
響 は 見 ら れ な か っ た ( F( 2 , 1 1 7 )= 0 . 4 4 3 ,
p=0.649)
。(図 5)
図 6 は EA を表しているが,一貫して LEA
図 7 非言語音・反応時間
が見られた。
4way mixed ANOVA(Ear by SOA by Sex
by Order)の結果,Ear による主効果のみが
なした。次に順序による有意差については,言
見られた(F(1,36)=17.058,p<0.01)。
語音成績についてのみ,非言語音を先に行った
非言語音刺激による反応時間: 4way mixed
方が左右耳併せた注意の効果が顕著に現れた成
ANOVA(Ear by SOA by Sex by Order)の
績となり,言語音を先に行った場合は左右耳を
結果,Ear の主効果(F(1,36)=8.45,p<0.01)
併せると注意の効果があまり見られない結果と
と SOA の主効果(F(2,72)=12.55,p<0.01)
なった。非言語音においてはこのような順序に
が見られた。
よる注意効果の違いが見られないことから,練
図 7 によれば左耳の反応時間の方が右耳の反
IV
習効果とは決定できない。右半球の活性化が先
に行われることによって左右空間に対する注意
応時間よりも速い事が判る。
が促されたと見ることもできるが,多要因的で
考 察
ある可能性も否定できない。順序による反応時
まず全体的な成績差は言語,非言語間で見ら
間の違いでは言語先のグループの方が非言語先
れず,二つのテストは難易度的に比較可能とみ
のグループよりも全体的に速いが,これは全体
─ ─
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的に見て言語刺激に対する反応は非言語刺激に
ic の CVC 刺激で左耳に注意を向けた場合,右
対する反応よりも速いので,言語を先に行うこ
半球の血流量が増える事が言われているが,そ
とによる練習効果が見られたと思われる。また,
の度合いは右耳に注意を向けた場合の左半球の
反応に右手を常に用いていたことも反応時間に
血流量増加よりも少ないと報告されている
何らかの影響をもたらしているかもしれない。
(O’Leary et al.,1996)
。従って活性化の関与が
言語音においても非言語音においても右耳の
考えられたとしても,Kinsbourne の言う活性
成績には注意による効果が見られなかった。こ
化による注意と今回の意識的な注意の機序は異
の傾向は,右手利きには右に注意のバイアスが
なると仮定した方が良いと思われる。
あるという Mondor の仮説を支持するもので
今実験で興味深い点は,言語刺激で見られる
ある。即ち,右手利きには注意のバイアスが初
通常の REA が注意を向けることによって反対
めから右方向に存在している為に,それ以上に
に LEA になっている事である。Mondor の結
意識的に注意を向けようとしてもその注意の効
果のように単に REA 率が減少したのであれ
果が見えにくくなっている,と捉える事が出来
ば,注意のバイアスが通常の REA に荷担して
る。しかし今実験結果では音種によって左耳の
いたことが示唆されるが,左耳の成績が右耳の
動きが異なることから,バイアスの無い方に意
成績を越える今現象にはどのようなメカニズム
識的注意の効果が現れて成績向上につながると
が働いていると考えられるだろうか。普通,聴
いう単純なものではないことが伺える。この注
覚刺激では交叉性の経路が強く,直接的な投射
意の効果が音刺激によって異なったという結果
を行っているために刺激と反対の半球が優位で
については二つの可能性が挙げられる。一つは
あるとされている。この時 dichotic 刺激では同
先行音の影響が言語音刺激と非言語音刺激の場
側性の経路が抑制されると言う説もあるが
合で異なる可能性である。先行音の影響とは, (Kimura,1967),脳梁切断者が左耳に提示さ
言語刺激の場合異種の刺激が混在するトライア
れた動物の名前(Gazzaniga et al.,1975)や
ルであったが,非言語刺激の場合,より同種に
数字(Corballis & Ogden,1988)を答えられ
近い刺激のトライアルであった為,先行音の効
た報告,同じく脳梁切断患者で,注意を向けさ
果が異なって現れる可能性である。また,同じ
せると左耳に提示された単語を答えられた報告
非言語音で構成されたトライアルと非言語音と
(Sparks & Geschwind,1968)もあり,定か
言語音の両方で構成されたトライアルでは,半
ではない。しかし一般には同側性は交叉性に比
球間の活性に違いがあったことも考えられる。
べて弱い情報伝達を行っているというのが通説
二つ目は Kinsbourne の様な処理半球の活性
である。Dichotic の REA も左耳からの刺激は
化による言わば受動的な注意のみならず,能動
まず右半球に投射され,脳梁を介して左半球に
的に注意を傾ける今回のような方法でも何らか
届くので,右耳からのより直接的で時間的にも
の半球活性化の関与が考えられる可能性であ
速い投射を行っている情報との競合に負けるの
る。しかし仮に,言語刺激による REA と非言
で は な い か と 言 わ れ て い る ( Sparks &
語刺激による LEA はそれぞれ処理半球の活性
Geschwind,1968)
。
化による注意によるものと仮定出来たとする
このことから考えると,左耳の成績が右耳の
と,今実験における言語刺激での右耳成績の一
成績よりも良くなることを説明する仮説とし
定性,非言語刺激における左耳成績の一定性は
て,1)右半球が行う単音の異同判断は左半球
予測可能であるが,言語刺激における顕著な左
よりも優れている,2)左半球は直接的な投射
耳の成績向上が説明できない。それは左耳の成
をする交叉性の情報を効果的に抑制し,脳梁を
績向上には言語刺激において右半球がより活発
介してくる情報に敏感に反応する事が出来る,
に活性化されなければならないことになるから
3)同側性の通常弱いとされている経路が使わ
である。実際,PET を使った実験では dichot-
れた,などが挙げられる。しかし 1)の仮説は
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現時点で右半球の言語優位性を指示するデータ
に乏しく,考えにくい。2)の仮説については,
脳梁を介する情報に敏感だとすれば,直接的な
投射を行う右耳に注意を向けた時の反応時間よ
りも長くなると想定できるが,今回の結果では
tening. Brain and Language 18 ; 236-248, 1983
3)Bryden MP : Laterality : Functional Asymmetry in the intact Brain. Academic Press, New
York, 1982
4)Corballis MC, Ogden JA : Dichotic listening in
左右耳の反応時間に統計的有意差はなく,それ
commissurotomized and hemisperectomized
subjects. Neuropsychologia 26 ; 565-573, 1988
どころか左耳の反応時間は右耳の反応時間より
5)Dean RS, Hua M : Laterality effects in cued
も若干速い(450ms 時と 750ms 時と併せた平
auditory asymmetries. Neuropsychologia 20 ;
685-690, 1982
均差 19ms)事から見ると,間接的な投射の優
位性も考えにくいと思われる。3)の同側性経
路の賦活は直接的投射を左半球に行うことにな
り,今回の反応時間においても,また Sparks
& Geschwind(1968)の結果とも符合する。
PET 研究による血流量的には,左半球の血流
6)Gazzaniga MS, Risse GL, Springer SP et al :
Psychologic and neurologic consequences of
partial and complete cerebral commissurotomy. Neurology 25 ; 10-15, 1975
7)Hiscock M, Hampson E, Wong SL et al : Effects of eye movements on the recognition
and localization of dichotic stimuli. Brain and
量は右耳に注意を傾けている時の方が左耳に注
意を傾けているときよりも多いことが報告され
ており(O’Leary et al.,1996),この結果から
は,左耳の成績が右耳より向上する結果になる
Cognition 4 ; 140-155, 1985
8)Hugdahl K, Andersson L : The “forced-attention paradigm” in dichotic listening to CV syllables : A comparison between adults and children. Cortex 22 ; 417-432, 1986
とは言い切れないが,O’Leary らの言う注意と
はブロック全体を通して注意を傾けるものであ
るので,今回のように各トライアル毎に注意の
方向を変化させるものとは機序が異なる可能性
も考えられる。長時間注意を片側に把持してお
く行為と,瞬時に注意を片側に向ける行為では
質的(もしくは量的)に異なることが十分考え
得るからである。
9)Kimura D : Functional asymmetry of the
brain in dichotic listening. Cortex 3 ; 163-178,
1967
10)Kinsbourne M : The cerebral basis of lateral
asymmetries in attention. Acta Psychologica
33 ; 193-201, 1970
11)Lefevre E, Starck R, Lambert WE et al : Lat-
少なくとも言語音において今回のように耳優
eral eye movements during verbal and non-
位性が逆転したことは,注意を向けることによ
verbal dichotic listening. Perceptual and
Motor Skills 44 (3, pt2) ; 1115-1122, 1977
って,想定されている同側性,交叉性の経路が
ダイナミックに活性化され,変化し得る可能性
があることを示唆していると思われる。また,
非言語音においては成績の逆転は見られず,反
応時間も左耳の方が速いままであったことか
12)Mondor TA : Interaction between handedness
and the attentional bias during tests of dichotic listening performance. J of Clinical and Experimental Neuropsychology 16 ; 377-385, 1994
13)Mondor TA, Bryden MP : The influence of at-
ら,音種によって意識的注意の処理機構が異な
tention on the dichotic REA. Neuropsychologia 29 ; 1179-1190, 1991
ることが考えられた。
14)O’Leary DS, Andreasen NC, Hurtig RR et al :
文 献
1)Broadbent D : The role of auditory localization
A positron emission tomography study of binaurally and dichotically presented stimuli : Ef-
in attention and memory span. J of Experi-
fects of level of language and directed atten-
mental Psychology 47 ; 191-196, 1954
2)Bryden MP, Munhall K, Allard F : Attentional
biases and the right ear effect in dichotic lis-
tion. Brain and Language 53 ; 20-39, 1996
15)Sparks R, Geschwind N : Dichotic listening in
man after section of neocortical commissures.
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神経心理学 第 16 巻第 1 号
Cortex 4 ; 3-16, 1968
16)Teng EL : Dichotic ear difference is a poor
the cerebral hemispheres. Neuropsychologia
19 ; 235-240, 1981
index for the functional asymmetry between
The relationship between attention and ear advantage in dichotic monitoring test
Yuko Tagami*, Yoshitaka Ohigashi*
*Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
The present study investigated Mondor’s theory ;
types of DMT ; the left ear performance improved sig-
that is, right-handed people bias their attention toward
nificantly in verbal DMT only. Because the right ear
right during a dichotic listening task. Attention was
performance did not improve, the rightward bias theo-
manipulated in two types of dichotic monitoring tasks
ry was partially supported. However, because the left
(verbal and non-verbal DMT) by presenting a tone cue
ear performance was not affected in non-verbal DMT,
to the ear from which the subject was required to
it was suggested that some kind of interaction between
match. It was hypothesized that if right-handed sub-
attention and perceptual asymmetry took place. In ad-
jects bias their attention to the right ear, the perfor-
dition, because the usual REA changed to LEA during
mance for the right ear would not be affected by ori-
the verbal DMT, the possibility that ipsilateral or con-
enting attention to the right, whereas the performance
tralateral activating processing mechanism could be
for the left ear would improve by orienting attention to
dynamically changed due to attention was also postu-
the left, regardless the stimuli used. The right ear per-
lated.
formance did not show the benefit of attention in both
(Japanese Journal of Neuropsychology 16 ; 32-38, 2000)
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