3 - 建材試験センター

1002
日本建築学会大会学術講演梗概集
(北陸) 2010年 9 月
高反射率を有する防水材料における日射反射率の経年変化
その2 日射反射率の経年変化および洗浄効果
正会員
同
同
防水材料
洗浄性
日射反射率
色差
○清水市郎 1)
澤西良三 3)
東海林隆史 5)
同
同
同
田中享二 2)
輿石直幸 4)
三坂育正 6)
屋外暴露試験
1.はじめに
その1 屋外暴露試験および物性測定の概要 に従い、
6箇所の暴露地での暴露前後の試験体について、日射反
射率・洗浄効果、及び色特性の測定、検討を行った。
2.試験方法
試験体、暴露処理および洗浄処理、ならびに分光反射
率測定・色特性はその1に従って、測定を行った。
図1 分光反射率(シ-ト No1:暴露9ヶ月:洗浄前)
3.実験結果および考察
3.1
日射反射率、色特性および接触角の初期値
表1に暴露前(初期値)におけるシ-トの波長域毎の
日射反射率、色特性および接触角の測定結果を示す。
表1 日射反射率、色特性および接触角の初期値
日射反射率(%)
色特性
接触角
近紫外
(θ)
近赤外域 全波長域 L*
a*
b*
可視光域
79
1
58.5
64.1
60.9
80.7
-1.6
2.1
77
2
27.8
57.8
40.9
59.6 -14.3
13.8
90.5
3
54.3
65.1
59.0
79.6
-0.2
-0.1
69
4
54.1
73.4
62.3
77.9
-1.0
-0.2
73
5
49.2
69.7
58.2
74.5
0.4
-1.0
62
6
33.8
64.6
47.0
64.8
-1.4
2.4
70
7
82.0
84.4
83.0
94.8
-0.9
4.7
85
8
56.2
75.2
64.2
79.3
-1.1
3.3
77
9
57.0
75.9
65.0
79.2
-1.1
3.2
86.5
10
26.9
55.7
39.4
53.9
-0.6
2.9
【注】近紫外及び可視光域:300~780nm、近赤外域:780~2500nm、
全波長域:300~2500nm
シー
トNo.
図3 分光反射率(シ-ト No7:暴露9ヶ月:洗浄前)
80
暴露後の分光反射率
各暴露地における9ヶ月後の日射反射特性の例を図1
~3に示す。暴露期間を経過し、塩ビ系練込みタイプのシ-ト
No1の場合では各暴露場所において全波長域において反
射率が大きく低下し、特に暴露地Fが顕著であった。塩
ビ系塗装タイプのシ-ト No4の場合でも、全波長域において反
射率が低下した。加硫ゴム系塗装タイプのシ-ト No7の場合で
も全波長域において反射率が大きく低下した。特に可視
近赤外域反射率(%)
3.2
図2 分光反射率(シ-ト No4:暴露9ヶ月:洗浄前)
60
40
20
A
B
C
D
E
F
0
光域においての反射率の低下が著しい結果となった。そ
の他のシ-トについても、図示シ-トの例と同様に、暴露地によ
る差異があるが全波長域において日射反射率が低下した。
Long-term Performance of Solar High Reflectance Waterproofing
Materials
Part2 Aging in Solor Reflectance and its Improvement by Washing
―3―
図4 暴露地毎の近赤外域日射反射率(9 ヶ月後:洗浄前)
Ichiro SHIMIZU1), Kyoji TANAKA2),
Ryozo SAWANISHI3), Naoyuki KOSHIISHI4)
Takashi SHOJI5), Ikusei MISAKA6)
80
図4に全暴露地での9ヶ月後の近赤外域日射反射率を示
近赤 外域反射率(%)
す。全暴露地において、近赤外域日射反射率は低下した。
近赤外域日射反射率の低下は、地域による差違があり、
特に暴露地Fでの日射反射率の低下が大きかった。
3.3
洗浄効果
暴露後のシ-トについて、洗浄試験機により、所定の
A
60
B
C
40
D
E
20
F
0
洗浄を行った後に、分光反射率日射反射特性、近赤外域
反射率を測定した。日射反射特性の例を図5~7に示す。
図8 暴露地毎の近赤外域日射反射率(9 ヶ月後:洗浄後)
3.4
色特性と日射反射率の関係
各暴露地における9ヶ月後の測定値について、近赤外
域反射率と色差の関係を図9に示す。すべてのシ-トに
おいて、色差の変化が大きい場合ほど反射率の低下が著
しく、両者はほぼ直線的な関係にある。
60
図5 分光反射率(シ-ト No1:暴露9ヶ月:洗浄後)
近赤域反射率の低下分(%)
A
図6 分光反射率(シ-ト No4:暴露9ヶ月:洗浄後)
50
B
C
40
D
E
30
F
20
10
0
0
10
20
⊿E*ab
30
40
図9 色差と近赤外域日射反射率との関係(9ヶ月後)
4. まとめ
屋外暴露経時後、地域性に関わらず日射反射率は低下
した。低下の差異に関しては、シ-ト表面の物理的性
状・可塑剤の影響、又大気汚染物質の種類等からの検討
が必要である。色特性と日射反射率の関係では、反射率
図7 分光反射率(シ-ト No7:暴露9ヶ月:洗浄後)
の低下は汚れによる色の変化に依存しており、目視によ
多くのシ-トでは、洗浄処理によってほぼ初期の値まで
ってもおよその判断が可能であることを示唆している。
全波長域で反射率が回復している。初期反射率の値が大
謝辞
きかったシ-ト No7では、洗浄処理を行っても回復率は小さ
本研究は、(社)日本建築学会・防水工事運営委員会・近
かった。
赤外反射防水シート WG の研究活動として行ったもので
図8に全暴露地での9ヶ月後で洗浄処理後の近赤外域日
あり、ご協力いただいた委員各位に深く感謝致します。
射反射率を示す。全暴露地において、洗浄処理により
参考文献
近赤外域日射反射率は回復した。回復率はシ-ト種類に
1)輿石・田中・澤西・清水・東海林:高反射率を有す
よる差違があり、シ-ト表面の物理的・化学的性状に起因
る防水材料における日射反射率の経年変化
すると考えられる。
暴露試験の概要:日本建築学会大会(北陸)2010
1)建材試験センター,2)東京工業大学建築物理センター
3)株式会社ベルテック,4) 早稲田大学理工学術院
5)田島ルーフィング株式会社,6)株式会社竹中工務店
その1 屋外
1) Japan Testing Center for Construction Materials, 2)Tokyo
Institute of Technology, 3)Veltec Corporation, 4) Waseda
University, 5)Tajima Roofing Inc., 6)Takenaka Corporation
―4―