浜北市一般廃棄物最終処分場におけるリスクマネージメント - 土木学会

VII-150
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
浜北市一般廃棄物最終処分場におけるリスクマネージメント
浜北市市民経済部環境事業課
氏原康博
(株)ホ−ジュン
水野正之
(財)地域地盤環境研究所
(正)本郷隆夫
岡山大学大学院自然科学科
(正)水野克己
京都大学大学院
1.はじめに
(正)○丹野泰子
地球環境学堂
(フェロー)嘉門雅史
写真−1 に示すように浜北市一般廃棄
内の浸出水調整槽の満水による 原因がある.不定期な
物管理型最終処分場を建設した.浜北市では地域の環
集中豪雨などによる 急激な浸出水の増加に対応して,
境汚染リスクを管理するために,未然防止 を中心とし
浸出水 を埋立地から浸出水調整槽に,瞬時に排除する
た施設の安全対策 と危機管理計画の策定並 びにごみ自
事は不可能である.これに対応するには,巨大な容量
体の減量化などリスクマネージメント を行った.
の浸出水調整槽と,それを処理するため膨大な能力の
本論では,浜北市が建設した最終処分場 と実施した
施設の安全対策をモデルとして,環境汚染 リスク評価
浸出水処理施設が必要となり,建設と維持コスト の経
済的なリスクが発生する.
するための 導入段階としてフォルトツリー 化した.対
表−1に,供用開始 2002 年 4 月から 2003 年 2 月ま
象は地下水と河川汚染事象 とし,大気汚染は省略した.
での最終処分場内の降水量と浸出水貯水量(埋立地か
このモデルに,供用開始約 1 年間 の降水量計測結果を
ら浸出水調整槽へ送る量)などの計測結果を示す.浸
加え,根本的な対策であるリスク が回避されているか,
出水貯水量の変動は,降雨などの自然現象で大きいこ
補完法であるリスクが予防,軽減,防止されているか
とが標準偏差 より判る. 表−1 に示すように , 338 日
で検証したので報告する.
間の計測期間中降雨 がゼロの日は 220 日あったが,浸
2.検証結果
出水貯留量 がゼロの日はわずか 38 日であった.また,
施設の安全対策を併せて検証結果を図
−1 に示す.
2.1
降雨有 りと降雨無しに分けて集計した結果を 表−2 に
埋立地内浸出水内部貯留
図−1に示すよ
示すが,降雨無しの浸出水貯留量が,浸出水貯水量全
うに,埋立地内浸出水内部貯留には,埋立地の浸出水
体の約 17.8%と,降雨が無い日でも,埋立地内の保護
集排水機能 の低下や埋立地内 の異常降雨や水処理施設
土中に浸出水が存在し,その占める割合は多い.
2.2 浸出水処理施設内 の浸出水調整槽の満水
図 − 2 に , 2002
えん提
年 5 月 29 日 から
雨 水調 整 池
2002 年 6 月 10 日ま
地下水モニタリング井戸
での降 水 量と浸出
緑地広場
地 下 水 モ ニ タリ ン グ 井 戸
地下水モニタリング井戸
原水槽
水処理施設内の浸
出水貯留量を示す.
埋立地
河川
浸 出 水 処 理 施 設(管 理 棟)
管 径 1,000m m の 放 流 管
月 31 日降雨による
5
5
地下 水 質 電 光 表 示 板
駐車場
月 31 日だけの 浸出
洗車場
水 貯 留 量は 34.3m
3
である. 6 月 1 日か
ら 6 月 10 日までの
浸出水貯水量 は
駐車 場
地 下 水 放 流 ル ート
トラックスケール
写真−1
キーワード
連絡先
廃棄物最終処分場
〒379-0133
搬入道路
汚 染し た地 下水 ルー ト
浸出 水ル ート
リスク
駐車場
完成した浜北市最終処分場 (航空写真)
リスクマネージメント
群馬県安中市原市 1433-1 (株)ホージュン TEL027-385-0233
-297-
http://www.hojun.co.jp/
VII-150
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
地下水汚染
浸出水 内部貯留
えん 堤下モニタ リング井戸
(電光表示 版)
補修 期間中,一 時埋立地内 部貯留
三要 素並びに多 要素複合ラ イナー
浸出 水調整 槽損傷
に よる浸出 水流出
異常気 象
M
河川汚染
地下水位低 減対策
地下水位計
M
地下水 位上昇
M
( 別紙 )
電気的 漏水検知シ ステム
M
検査 済
浸出 水調整 槽満水
未処理放 流水の流 出
浸 出水処 理施設故 障
全面保 護土
地震によ る損傷
モニタリ ングの 損傷
防食処理
異常 気象
下水道 放流
直接採取
埋立 による損 傷
地震によ る損傷
全面保 護土
下流 側モニタリ ング井戸
施工不 良
施工不 良
面状砕石 層,底部8%水勾 配
M
汚染 地下水の 流出
検 査済
集排 水管機能 低下
観察池,せ せらぎ
(緑地公園 )
浸出 水処理施設
(下水道放流 )
遮水 シート損 傷
による浸 出水流出
観測ピット
M
劣化
紫外線, 温度劣化
人為的 な操作ミ ス
(高次思考 過程や
一 瞬の精神 的状態 )
全面保護土
M
変位計, 水分計,温 度計
スメクタ イト系コ ロイド溶 液
:原因
法面 部 HDPE/GCL + BCCL
底部
HDPE/GCL + BCCL + HDPE/GCL + BCCL
BCCLの透 水係数は K≦1×10-7 cm/ s
HDPE/ GCL重 合わせ部は 瓦理論
浸出 水貯留リス クに対応した 構造
トラベルタイム300∼400年
浸透収着(濾過吸着)
:回避 ( 根 本対策 )
:事象
プレ膨 潤,修復
:予防, 軽減,防止 ( 補完対策 )
:埋立地 内
M
:水処理 施設
:モニタリング
:事象 に直接的寄与
BCCL
:ベント ナイト 混合土
:事象 に間接的寄与
HDPE/GCL : HDPE付きベン トナイト シート
三要 素並びに 多要素複合 ライナー
図−1
施設の安全対策を併せた検証結果
22.2m である .6 月 1 日から 6 月 10 日まで降雨が無
3
表−1
2002 年 4 月∼ 2003 年 2 月の集計結果
かったことから,浸出水貯留量 の合計は 56.5m 3 とな
る.埋立地 に降った雨が保護土などに分散浸透するた
め,浸出水 が埋立地内の原水槽を経由して浸出水調整
槽に送られるまでに,最大 10 日間の時間的なズレが
生じている .これは浸出水処理施設内の浸出水調整槽
の満水の抑制,言い換えれば 浸出水調整槽 の大幅な浸
表−2
浸出水貯留量計測値との比較
出水量の変動抑制 をしているとも言える.遮水シート
保護として 埋立地内を全面保護土を行うことは,浸出
水調整槽 や浸出水処理施設 の負 担 低 減に寄与 してい
る.降水強度 とゴミ埋立が行われているため 値にバラツ
キがあるが浸出水変動抑制効果は,8.5 ∼ 39.2%であ
った.
40
降雨 当 日浸 出 水貯 留量 =34.3(m3 )
地下水汚染事象 の原因は,浸出水処理施
30
降 雨 量( mm)
設内の浸出水調整槽損傷と埋立地内 の遮水シート損傷
による浸出水流出 である.河川汚染事象の原因は,汚
染地下水と未処理放流水による流出である .浸出水調
整槽損傷は補修と補修による 一時的 な内部貯留にて回
20
30
降 雨 量(mm)
浸 出 水 貯 留 量(m3)
3.まとめ
40
20
降 雨 翌日 以 降浸 出水 貯 留量 合 計=22.2(m3 )
10
10
避できる.また,保護層より上に常時浸出水が内部貯
0
留するリスクは小さい.しかし,降雨が無い日でも,
埋立地内の保護土中に浸出水が存在し,約 17.8% と全
5/29 5/30 5/31 6/1 6/2
図−2
6/3
6 /4 6/5 6/6
6/7
6/8 6/9
6/10
0
5/29 から 6/10 までの降水量と浸出水貯留量
体から占める割合は大きい.汚染地下水や未処理放流
シート 損傷リスクは,ソフト的な対応だけでは地震な
水の流出は,浸出水処理施設 を経由した下水道放流に
どの自然現象 やヒューマンエラー(人的過誤 )などの
て回避できる.このため,遮水シート損傷が地下水と
存在により避けられない .三要素並びに多要素複合ラ
河川汚染事象に占める割合が大きい.埋立地内の遮水
イナー によるハード 的な回避の重要性が判る.
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